十六・万里の長城〜その二



 承徳を出発してから三昼夜、いよいよ最前線が近い。右前方に広がる万里の長城を遠望しつつ、輸送トラックは全速力で永嘉保に向かった。

*補足(藤本)
 承徳から三昼夜、休みなく猛進し続ける輸送トラックに乗せられた兵隊の疲労は大変なものであったろう。しかし、徒歩の行軍に比べれば楽なくらいである。
 石坂准尉はいつも言っている。
「軍隊生活で何が一番辛いかっていえば、ドンパチするより行軍なんだ。命令で歩けって言われてしまったら、ひたすら歩き続けなければならないんだから。三八式をはじめとする歩兵装備一式が重いのなんのって。自分の体重とほぼ同じ重さの荷物を背負って歩くのは本当に大変だった」


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