十三・承徳 |
昭和十二年八月十八日、北支に出動命令下る。 ハルピンに集結した部隊は列車で熱河省承徳に向かった。承徳駅は市街から約二キロメートル離れたところにあり、お城のような真新しい建物だった。 駅周辺に民家はなく、乗降客は一日数十名だという。 |
*補足(藤本) 熱河省(現・河北省)の首都・承徳は、清王朝第四代の康熙帝が「避暑山荘」と名づけた離宮を建設したことで知られる。ほかに金竜殿と呼ばれる二大ラマ廟もあり、なかなかの観光地である。もちろん、最前線へと急ぐ石坂准尉が名所巡りなどできるはずもなかったが。 |
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