五十四・陣地



 昭和十九年八月十五日、初空襲。敵の侵攻迫るの報に肉薄攻撃部隊は増原岬に布陣、迎撃戦に備える。

*補足(藤本)
 岡本喜八監督の『肉弾』という映画があるが、この石坂准尉の絵を説明するのに適している。内容うんぬんではなく作品中の設定が、である。
 劇中、砂丘に掘ったたこつぼの中で主人公の兵隊がひたすら潜んでいる場面がある。いざ敵が来たら、それ行けとばかりに伏撃を敢行、必死の自爆攻撃をするためだ。
 何回も『肉弾』を鑑賞しているが、やっとこさ兵隊一人が入れるくらいの狭いたこつぼの中で、石坂准尉は何を考えていたのだろうか、と映画を見るたびに考え込んでしまう。

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