三十・向陽山



 昭和十二年十二月三日、北支太原から山河屯に凱旋。約一ヶ月滞在後、山河屯より十キロメートル離れた寒村向陽山に移駐した。

*補足(藤本)
 向陽山に移駐し、前部隊と交代するときの写真が石坂准尉の写真帳に残っている(写真公開は本編にて)。第七中隊の隊列の先頭に森大尉が写っているのだが、後々この中隊長は参謀中佐にまで登り詰める。
 戦後、森参謀の奥さんから石坂准尉は手紙を受け取っている。なかなか感動的な内容で、森参謀が皆に慕われているさまがありありとうかがえた。
 出世頭の中隊長に指揮された石坂准尉の軍隊生活を断じてこう言わせていただく。
「石坂准尉、あなたは何て幸せなんだろう。俺はうらやましくて仕方がないですよ。二十代の青春を全て国軍にささげた時間は無駄ではなかった。森参謀と知り合えただけでも愉快なことじゃないですか」


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