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| 表紙 |
| 題名 |
通信教範抜粋 総則及第一部 |
| 著者 |
教育総監部 |
| 出版 |
＊ |
| 版 |
昭和十六年十二月二十九日 |
| 備考 |
諸兵十四ノ一 |
| 第五篇 鳩通信法 通則 （略） 第一章 鳩ノ性能 第百三 移動鳩ノ能力ハ諸種ノ関係ニ依リ異ナルモ準備訓練ト通信能力トノ関係概ネ左ノ如シ （第百二十七）
第百四 固定鳩ノ能力ハ新鳩舎ニ対スル馴致、地形等ニ依リ異ナルモ準備訓練ト通信能力トノ関係概ネ左ノ如シ （第百二十八）
第百五 往復鳩ハ棲息鳩舎ト食事鳩舎トノ間ヲ往復シテ通信ニ任ズルモノニシテ其ノ準備訓練ト通信能力トノ関係概ネ左ノ如シ （第百二十九）
第百六 移動鳩及固定鳩中適性ノモノニ対シ夜間訓練ヲ為シ夜鳩タルノ性能を付与スルトキハ夜間ノ通信ニ任ゼシメ得其ノ通信能力ハ固定鳩ニ在リテハ約五十粁、移動鳩ニ在リテハ概ネ左ノ如シ （第百三十）
第百七 通信実施ノ方向訓練ノ方向ニ一致スルトキハ鳩ノ能力ヲ最大ニ発揮シ得然レドモ其ノ方向一致セザル場合ニ於テモ良ク訓練セラレタル鳩ハ移動鳩ニ在リテ概ネ十粁、固定鳩ニ在リテ概ネ五十粁以内ナルトキハ大ナル影響ナク且其ノ距離ハ準備訓練ノ概ネ二倍ヨリ通信シ得 （第百三十一） 第百八 鳩ハ寒暑ニ対スル抵抗力大ニシテ急激ナル変化ヲ与ヘザル限リ其ノ能力ニ影響ナキモ零下三十度以下ナルトキハ飛翔力減退シ通信実施困難ナルニ至ル又鳩ハ烈風、豪雨、濃霧、夜暗等ニ於テハ飛翔、通視及方向判定困難トナリ帰巣著シク不良ナルニ至ル 極寒時ニ在リテハ適宜保温ノ処置ヲ講ジ栄養ノ衰退、汚物ノ付着等ニ依ル凍傷ノ予防ニ注意ス （第百三十二） 第百九 鳩ハ一時性瓦斯ニ対シテハ感受性大ナラザルモ持久性瓦斯ニ対シテハ抵抗力極メテ小ナルヲ以テ籠覆ヲ装シ又ハ天幕、布片等ニ中和剤若クハ水ヲ浸潤セシメテ之ヲ覆ヒ止ムヲ得ザル場合ニ於テハ放鳩ス （第百三十三） 第百十 通信実施ノ為帰巣能力ヲ害スルコトナク鳩ヲ鳩舎外ニ留意シ得ル期間ハ鳩ノ素質、訓練ノ度、留意ノ方法等ニ依リ異ナルモ移動鳩ニ在リテ一乃至三日、固定鳩ニ在リテ概ネ一ヶ月ヲ超エザルヲ可トス （第百三十四） 第二章 鳩ノ取扱 第百十一 鳩哨ノ位置ハ勉メテ指揮官ノ位置ニ近ク且敵眼ニ遮蔽スルヲ要ス又第一線ノ鳩哨ハ敵弾ヲ考慮シ掩体ヲ設クルヲ可トス （第百三十五） 第百十二 鳩ニハ適時水与ヲ実施シ其ノ能力ヲ保持セシムルコト緊要ナリ之ガ為一日少クモ二回以上清水ヲ与ヘ夏季炎熱時ニ在リテハ回数ヲ増加ス （第百三十六） 第百十三 鳩哨ノ鳩ニハ通常単ニ水与ノミヲ実施シ飼与ヲ行ハズ但シ二日以上留意スルモノニ対シテハ毎夕清潔ナル飼料少量（一羽ニ対シ概ネ半握）ヲ与フ 鳩哨ニ於ケル豊富ナル飼与ハ鳩ヲシテ現地ニ執着シ帰巣心ヲ減退セシムルノミナラズ放鳩ニ際シ徒ラニ遊翔シテ通信時間ヲ遅延セシムルニ注意ス （第百三十七） 第百十四 鳩ヲ携行スルニハ通常鳩籠ヲ使用スルモ状況ニ依リ適宜ノ容器ヲ利用シ或ハ手拭、紙等ヲ以テ鳩体ヲ包縛ス何レノ場合ニ於テモ鳩体特ニ目、翼、尾羽等ヲ損傷シ或ハ鳩体ヲ汚染シ羽毛ヲ湿潤シ或ハ呼吸ヲ困難ナラシメザルニ注意ス通信距離大ナルトキ等ニ於テ特ニ然リ 鳩ヲ長期ニ亘リ携行スル場合ニ於テハ鳩籠ヲ水平ナラシムルノ外風塵、雨雪等ニ対シ防護シ適時大ナル容器若クハ小室ニ移シテ休息シ水浴ヲ実施セシメ以テ飛翔力ノ保有ニ勉ム （第百三十八） 第百十五 鳩ハ帰巣能力ヲ考慮シ鳩交付票ニ示サレタル日次迄ニ発信スルカ若クハ単ニ放鳩帰還セシムルコト緊要ナリ （第百三十九） 第百十六 発信ニ方リテハ通常左ノ順序方法ニ依リ準備ス 一、鳩及器材交付票ニ基キ使用鳩ヲ選出シ疾病、外傷ノ有無ヲ検シ且十分ナル水与ヲ為ス 二、発信ノ種類及量ニ依リ信書管若クハ信書筒ヲ準備ス 三、通信文ヲ受領セバ通信紙ニ鳩番号、放鳩月日時分及鳩哨名ヲ記入ス此ノ際要スレバ以前放鳩シタル鳩ノ番号、放鳩日時分及通信要旨、爾後ノ補充ニ関スル事項其ノ他所要ノ事項等ヲ付記ス （第百四十） 第百十七 信書管ヲ装着スルニハ先ヅ鳩ヲ籠ヨリ取出シ其ノ頭部ヲ自己ノ胸部ニ当テ左手ヲ以テ鳩体ノ後側面ヨリ拇指ヲ翼上ニ、他ノ四指ヲ腹部ニ廻ハシ食指ト中指トノ間ニ鳩ノ両脚ヲ挟ミテ鳩体ヲ完全ニ把握ス次デ右手ヲ以テ内筒ヲ上方ニシテ信書管ヲ鳩ノ左脚ニ装着ス此ノ際脚金（アシガネ）ヲ過度ニ緊迫セザルニ注意ス 第七図 （第百四十一）
第百十八 信書筒ヲ装着スルニハ蓋ヲ鳩ノ頭部ニ向ハシムル如ク背部ニ当テ両端ノ「ゴム」紐ヲ首及尾羽下ニ掛ケ特ニ飛翔ヲ妨ゲザル如クシ要スレバ紐ヲ結縮シテ信書筒ヲ適合ス 第八図 （第百四十二）
第百十九 発信スルニハ通信紙等ヲ折畳ミテ信書管若クハ信書筒内ニ挿入シ又ハ鳩脚ニ縛着シ確否ヲ更ニ点検ス 信書筒ハ稍々大ナル要図、写真、「フィルム」其ノ他印刷紙片等ニシテ信書管ニ収容シ得ザル場合ニ於テ用フルヲ可トス 信書筒内ニハ鳩ノ体力、訓練ノ程度等ヲ考慮シ夫々左ノ如ク収容スルコトヲ得
（第百四十三） 第百二十 通信紙又ハ半紙ヲ鳩脚ニ縛着スルニハ之ヲ細長ク折畳ミ或ハ紙縒（コヨリ）トナシテ行ヒ要スレバ更ニ糸、細紐等ニテ脱落セザル如クス 第九図 （第百四十四）
第百二十一 鳩哨員ハ鳩ノ使用ヲ考慮シ絶エズ所属指揮官ニ其ノ現況ヲ報告シテ鳩補充ノ時機ヲ失セザラシムルト共ニ空籠ハ成ルベク速カニ鳩通信所ニ還送ス （第百四十五） 第百二十二 鳩ニ鳩哨付近ノ地形地物ヲ認識セシムルトキハ鳩舎位置ヲ忘レ且現地ニ対スル執着性ヲ増加スルヲ以テ鳩哨ノ鳩籠ハ覆ヲ装シテ外界ノ目視ヲ遮断スルヲ可トス輸送途中ニ於テモ此ノ着意ヲ必要トス但シ夏季炎熱時ニ在リテハ籠内ノ通風ヲ妨ゲザルコト緊要ナリ （第百四十六） 第百二十三 発信ノ為放鳩スベキ位置ハ為シ得レバ視界広闊ナル高所ヲ選ブヲ可トスルモ敵ト近ク相対スルガ如キ場合ニ於テハ特ニ其ノ位置ヲ察知セラレザル如ク毎回変更スルコト緊要ナリ多数ノ鳩ヲ同時ニ放鳩スル場合ニ於テ特ニ然リ 発信ノ為ノ放鳩ハ一羽ヅツ行フヲ本則トスルモ重要ナル通信ヲ実施スル場合、途中害鳥ノ被害ヲ予期スル場合、使用地域外ヨリ放鳩スル場合、留置時間ヲ甚ダシク超過セル場合、気象不良ナル場合等ニ於テハ同時ニ二、三羽ヲ使用スルヲ可トス （第百四十七） 第百二十四 日没ニ近ク通信ヲ実施セントスルトキハ通信距離ヲ顧慮シ日没迄ニ鳩舎ニ帰還シ得ル如ク時間ノ余裕ヲ存シテ放鳩スルコト緊要ナリ此ノ際勉メテ薄暮ノ訓練ヲ重ネタル鳩ヲ使用スルヲ可トス （第百四十八） 第百二十五 放鳩ヲ行フニハ第十図ノ如ク鳩ヲ握リ上空ニ放出ス
飛行機上ヨリ放鳩ヲ行フニ方リテハ鳩ヲ「プロペラ」回転方側ヨリ放出シ鳩ヲ機体特ニ尾翼ニ激突セシメザルコト緊要ナリ （第百四十九） 第百二十六 飛行機ヨリ鳩ヲ投下補充スルニハ落下傘ヲ付セル徒歩籠大ヲ使用スルヲ可トス 鳩ヲ戦車内ニ収容スルトキハ戦車ヨリ発スル瓦斯及熱ノ為ニ鳩ヲ衰弱セシムルヲ以テ概ネ二日毎ニ休養セシムルヲ可トス 飛行機ヨリ投下補充シ若クハ長時間戦車内ニ収容セル鳩ハ為シ得ル限リ若干時間休養セシメタル後使用ス （第百五十） |
