ムジナと猿とカワウソ


 昔々、ムジナと猿とカワウソの三匹が連れ立って弥彦参りに出かけました。途中、三匹はござ一枚、少量の塩、豆を一升拾いました。
 賢いムジナが言いました。
「猿君は木の上でござを広げて景色を眺めたらよい。カワウソ君は塩を池にまいて魚を浮かせて捕ったらよい。僕は残りの豆をもらって食べよう」
 猿とカワウソはムジナの言葉にうっかり賛成してしまいました。
 猿は喜んで木の上でござを広げて景色を眺めました。しかし、ござから滑り落ちて足をくじいてしまいました。カワウソは魚のいそうな池に塩をまいて水の中に潜りましたが、塩水が目に染みて真っ赤にただれてしまいました。
 猿とカワウソはだまされたと思って、文句を言うために、ムジナの家に行きました。
 ムジナは豆を全て食べてしまっていて、豆の皮を毛の間に挟んで苦しそうにうなるまねをしていました。
 「豆を食べ過ぎて体中がおできになってしまったよ。とても痛いんだ」
 猿とカワウソはまただまされて、
 「お互いさまだから仕方ない」
 と言って、そのまま帰ってしまいました。


参考文献
『日本の昔話』 柳田国男/新潮社



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