物惜しみ


 昔、あるところに二人の物惜しみが隣同士で住んでいました。
 あるとき、一方の主人が隣の主人の家に行って、
「悪いんだが、くぎを打ちたいので金づちを貸してくれないか」
 と、頼みました。しかし、隣の主人は、
「あいにく、金づちは人に貸してしまっているので手元にない」
 と、わびました。すると、家に来た主人はあきれ返ってこう言いました。
「世の中には物惜しみな人があるものだ。金づちを貸したくないばかりにうそをつくとは。仕方がない、わが家にある金づちを使うとするか」


参考文献
『日本の昔話』 柳田国男/新潮社



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