七・羅津港



 四月十四日、朝鮮北端のロシアと国境を接する羅津港に到着。船内に一泊し、翌十五日に上陸した。
 港に埠頭はなく、二、三隻の貨物船が停泊しているだけだった。
 人影は少なく、街が見当たらなかった。山間に民家がわずかに点在しているだけの風景は、白頭山から吹き下ろす寒風も加わって、心まで肌寒く感じた。
 十五日の夜は民家に分散宿泊した。

*補足(藤本)
 四月とはいえ、身を切るような寒さに羅津港は包まれていた。これから尊い犠牲者をたくさん出すことになる前途を暗示しているようで、何とも居たたまれない。

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