十五・万里の長城〜その一



 万里の長城の北の起点張家口は、二日前の戦闘の跡生々しく、城壁の各所が崩れ、多数の弾痕があった。市街に人影はなく、路傍には支那兵の死骸が数体放棄されていた。

*補足(藤本)
 張家口、この『口』は関門を意味するが、恐らく開拓の始めに張家の人々がパイオニアとなってこの地に根を下ろしたものであろう。元来支那には(日本と逆に)開発者の姓をそのまま地名に取った例が多く、銭家店、范家屯というような地名は満州その他の新開地至る処に見受けられる。

支那事変 戦跡の栞』(上巻)の百六十ページから引用

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