軍旗祭 (『高田読本 三年生用』より)


表紙

題名
高田読本 三年生用
著者
高田市初等教育研究会
出版
高田市初等教育研究会

昭和十二、三年
備考
画像・本文とも、昭和五十八年十一月一日発行『高田読本 三年生用』(新潟県社会科教育研究会。復刻本)が底本。


軍旗


二 軍旗祭

小林君とふたりで、三十連隊の軍旗祭を、見に行きました。どこかの青年学校のせいとのあとから、杉でつくつた門をくゞつて行くと、中学校や女学校のせいとが、たくさん来てゐました。兵たいさんたちは、もうひろい営ていに、ずつと並んで、軍旗のくるのを待つてゐました。
軍旗が、旗護兵にまもられて出てくると、「気をつけ。」のがうれいが、かゝりました。いく度かせんさうに出たために、きれぢはやぶれてしまつて、ふさばかりになつた軍旗です。
やがて、軍旗が正めんのだんじやうに立つと、さゝげつゝの、がうれいがかゝり、らつぱがなり出しました。
千人からの兵たいさんが、きちんと、さゝげつゝをしてゐるやうすは、ほんたうにみごとでした。
次は、勇ましい分れつしきで、それが終ると、もう一度、軍旗に、さゝげつゝのれいをしました。
軍旗は、又旗護兵にまもられて、連隊本部の前のほうあんじよにうつされました。
そこに行つて見ると、お酒や、おそなへなどが、たくさんあげてありました。そして、じゆうにけんをつけた歩哨がふたり、番をしてゐました。軍旗は、天のうへいかが、御みづから、おさづけになつたもので、たいへんたふといものであると、聞いてゐたので、ほくはていねいにおじぎをしました。
兵しやの前には、五しきのテープが、かぞへきれないほどはつてあつて、風にひら〳〵して、大へんきれいでした。どの中隊の入口も、ばくだん三ゆうし・ひかうき・せんしやなどのかざりものが、してあります。それを見て歩いてゐると、急にきくわんじゆうの音がしたので、びつくりしてその方へとんで行きました。
もう〳〵としたえんまくの中から、耳もさけるやうな歩兵はうや、きくわんじゆうの音といつしよに、赤い火がとび出して、じつにものすごいものでした。
午後は、兵たいさんたちのきやうさうです。勇ましいぶさうきやうさうがあるかと思ふと、みんなふき出してしまふやうなおもしろいきやうさうもありました。又小学生のたいさうや、女学生のダンスなどもありました。そのころは、しばゐをやる所や、国防くわんなどは、はいれないくらゐ、人でいつぱいでした。すまふばも黒山のやうな人だかりで、わあ〳〵とはやしたててゐました。
かへらうとすると、向かふから、かさうぎやうれつが、やつてきました。あまり、おもしろいかつかうをしてゐるので、思はずみんな笑つてしまひました。
軍旗祭は、兵たいさんにとつて、一年中で一番たのしい日なので、どの兵たいさんも、みんな、にこ〳〵してゐました。



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