地名一覧


 読みづらいと思われる、支那・満州・朝鮮の地名を以下に紹介する。
 原則、日本語読みだけを記すが、現地語読みが浸透しているものや、呼称が一つしかないものは現地語読みのみを載せる。



地名 日本語読み 現地語読み
永嘉保 えいかほ
掖河 えきが
応県 おうけん
歓喜嶺 かんきれい
義州 ぎしゅう
原平鎮 げんぺいちん
向陽山 こうようさん
五常 ごじょう
山海関 さんかいかん
山河屯 さんがとん
四平街 しへいがい
承徳 しょうとく
饒河 じょうが
茹越口 じょえつこう
新京 しんきょう
新立屯 しんりっとん
水桶寺 すいとうじ
太原 たいげん
代県 だいけん
大同 だいどう
多倫 ドロン
張家口 ちょうかこう
張北 ちょうほく
鎮辺 ちんぺん
通遼 つうりょう
鄭家屯 ていかとん
鉄角嶺 てっかくれい
天鎮 てんちん
哈爾浜(*注・一) ハルビンまたはハルピン
繁峙 はんじ
万全 ばんぜん
伝家甸 フージャテン
南庄頭(*注・二) みなみしょうとう
穆稜 もくりょう ムーリン
陽高 ようこう
葉柏樹 ようはくじゅ
羅津 らしん

*注・一
 呉 智英『言葉の常備薬』という本に、哈爾浜の表記に関する記述がある。
 該当箇所を引用しよう。

***

  支那東北部に哈爾浜という都市がある。漢字が読みにくいので片仮名で「ハルビン」と表記されることが多い。一九〇九年(明治四十二年)伊藤博文が駅頭で暗殺されたり、旧満州国を代表する工業都市だったりで、日本人の間でも知名度が高い。しかし、戦前はもとより、戦後も三十年間ほどは、これを「ハルピン」と表記していた。
 これは「ハルピン」が正しいのか「ハルビン」が正しいのか。
 ネイティブスピーカーである支那人が発音しているのを実際に聞くと、日本人には「ハルピン」と聞こえる。ピとビの中間ぐらいの音だけれど、どちらかと言えばピの方である。だから、かつてこの町に住んでいた日本人は「ハルピン」と読んだのである。
 それを今「ハルビン」と書くのは、このローマ字綴りがHaerbinだからである。現地音尊重というつもりだろうが、今言ったように、実際には「ハルピン」と聞こえるのだ。
 支那語には、子音に無気音と有気音の区別がある。無気音は、呼気がほとんど感じられない。支那語の初学者は口の前に細長い紙を垂らし、これが揺れ動かないように発音練習する。この無気音と有気音をローマ字書きする場合、便宜的にそれぞれBとPで書き分ける。欧米人にとってはB音もP音も有気音だから、あくまで便宜的なものにすぎない。我々日本人は、無気音有気音を区別しないのみならず、支那語のローマ字表記に追随してもしかたがないのだから、実際に聞こえた通り「ハルピン」でいいのだ。

『言葉の常備薬』の百五十四〜百五十五ページまで引用


*注・二
 石坂准尉によると、「南庄頭」の「南」だけを「みなみ」と訓読みし、後に続く「庄頭」は「しょうとう」と音読みするのが正しい読み方であるとのこと。
 「なんしょうとう」とは読まないそうだ。




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