W・M・レヴィ著『The Pigeon』の一部分の要約


A4のコピー用紙七枚

「英語本ピジョン」要約
遠藤さんのムスコさんほんやく
*遠藤さんからもらう

***

第一章 鳩と人間の結びつき

◎鳩がどのように人間に扱われたかを、人間の歴史や文化を横断して読み解く。

○考古学的記録
・考古学的には、鳩は古代の人々に愛されただけでなく、聖なるものとして丁重に扱われたことが証明されている。
・ダーウィンの言説
 ライエルによる、H.ヴィラー、スチュアートの引用。エジプト第4王朝を浮き彫りにする、鳩の当時の役割。
・ラングドンによる言及…ゼウスとヘラの像の間にある像の頂点に止められた鳩。アレクサンダー大王時代の古代ギリシアにおけるコイン。
・ヒンドゥー教の神話。…愛の善神カマデヴァ。鳩により象徴づけられている。
・ディクソンによる、ミュレー作の“中央イタリア入門”の引用。…4羽の鳩が(水を?)飲む様子を描写したモザイク画。シンガー他によるキプロス、クレタ、ギリシアで発掘された鳩の小像に関する論評。

○イスラム教と多神教における鳩の扱い。
・ヘブライ一門とキリスト教以前の、鳩に対する敬愛。シュメール、アッカドの時代から、フェニキア、エジプト、ペルシア、ヒンドゥー、そして後のイスラム教の時代まで、鳩への尊崇は続く。
・ギリシアの文筆家クセノフォン、クテシアス、ルチアンらによる言明。アッシリア人やシリア人による鳩の尊崇。
・今日のイスラム諸国における、鳩への尊崇。1925年ボンベイでの、無知な鳩殺しに対する暴動。

○生け贄
・古代ヘブライでの贖罪の儀式に、生け贄として用いられた鳩。
・他の鳩と異なり、渡り鳥であるキジバト。生け贄にすることが許されていたが、通年入手できるものではなかった。

○ノアの洪水と鳩
・鳩は生け贄だけでなく、ノアの地へ喜びの便りをもたらす名誉も与えられていた。

○象徴としての鳩
・平和、潔白、優しさ、情愛の象徴として、旧約聖書に表されている。

○スターは「タルムード」から“flyers of pigeons are liars”という言い回しを引用している。“flyers of pigeons are liars”には2つの解釈があり、一方は鳩レースに参加する人々、もう一方は罠を仕掛けて他人の鳩を捕える人々をそれぞれ示している。このどちらも、証人たる人物にあるまじき行為であると言われている。前者は盗人、後者は密猟者と看做されるからである。

○キリスト教における鳩
・新約聖書にて、鳩の地位は最高位まで昇華し、鳩は聖霊の象徴たるものであることが読み取れる。
・今日のキリスト教団においても、鳩は潔白と平和の象徴である。

○戦争と鳩
・鳩は長い間、戦時下の通信手段として有効活用されてきている。馬や人間の足に較べると、圧倒的な速度を鳩は誇っているのである。
・中世の十字軍遠征期には、鳩は情報を伝える特使として常に用いられた。オランダ独立戦争期、スペインに抵抗したレイデンの住民は、伝書鳩の顕著な働きにより、外からの救援の通達を受け、町を守ることができた。
・普仏戦争期のパリ包囲と鳩。
・第一次世界大戦期に、伝書鳩の役割が顕著かつ友好なものになった。電話や電信の発達で廃れたというわけではない。
・第一次世界大戦期のイギリス…開戦時には、鳩の通信手段としての価値を理解していなかった。掃海艇部隊が、その有用性に最初に気づき、緊急時の伝書鳩サービスが設立された。
・第二次世界大戦期のイギリス…第二次世界大戦の初頭には、第一次世界大戦に学び、鳩の有用性を充分認識していた。民間企業もその価値に気づくようになった。1938年に、民間団体であるナショナル・ピジョン・サービスが設立された。これは当時の国防や軍隊と強い関わりを持っている。鳩の軍事利用が多く成される。

○ディッキン・メダルを勝ち取った鳩たち
・P.D.S.A.(People Dispensary for Sick Animals)…喋ることのできない動物たちの健康を保全し、そしてペットの飼育を促すための団体…によって、鳩たちがメダルを受ける。

○第一次世界大戦期のアメリカ合衆国
・イギリスと同様に、アメリカ合衆国が戦時に突入した際、鳩による軍事力は組織だっていなかったが、すぐにそのための機関が設立される運びとなった。軍事的価値が認められ、伝書鳩は派遣軍で重要な役割を担うようになった。

○チェア・エイミ
・イギリスで品種改良がなされた、恐らく最も優秀かつよく知られるレース鳩。第一次世界大戦時に、フランスのヴェルダンから放たれた鳩の中で、唯一生き残った。

○モッカー
・チェア・エイミほど有名ではないものの、その業績は勝るとも劣らない。D.S.C.とフランスのCroix de Guerreを受賞。榴散弾により左目を奪われ、頭頂骨を深く傷つけられたが、果敢にも帰還を果たした。

○スパイク
・チェア・エイミやモッカーと同じように、ニューヨーク大隊第77師団に配属されていた。しかし前2者とは異なり、特に注目されず傷つくこともなかった。フランス産。

○プレジデント・ウィルソン
・最初は戦車隊に配属され、航空機からも用いられた。第1師団に移籍し、米兵の生命を守るものと信用されていた。ヴェルダンから放たれ、胸と片足に傷を負ったが、クイジーの鳩舎に帰還した。

○その他の鳩たち
・ビッグ・トム…グラン・プレから、胸と足を負傷しつつも通信に成功。
・ジョン・シルバー…ムス・アル・ゴンヌで一本の足を失う。「宝島」の一本足の登場人物にちなんで名づけられる。

○第二次世界大戦期のアメリカ合衆国
・第一次世界大戦に学び、通信手段としての鳩は広く用いられるようになった。1938年初頭に、通身体により24の鳩舎がモンマウス駐屯地に作られた。1941年2月には、志願兵や徴収兵らに、鳩を放った経験に応じた特権や、鳩に関する任務に就く機会を与えた。それと同時に、レース鳩の鳩舎についての一斉調査が行われ、政府は鳩舎のオーナーたちに、軍への徴用の誓約を求めた。鳩部隊はその頂点まで発展したのである。

○基地
鳩部隊のための基地が数多く設置された。以下はその主要な一部である。
・モンマウス駐屯地(ニュージャージー州)
・クラウダー野営地(ミズーリ州)
・サム・ヒューストン駐屯地(テキサス州)
・クレイボーン野営地(ルイジアナ州)
・ベニング駐屯地(ジョージア州)
・ミード駐屯地(メリーランド州)
・ジャクソン駐屯地(サウスカロライナ州)

○歩兵中隊番号と配置
*米陸軍において、各地に配置された鳩通信部隊の番号、および設立経緯・功績などを紹介している。
・第209信号鳩歩兵中隊
・第829信号大隊
・第6681信号鳩歩兵中隊(暫定)
 北アフリカ会戦と、後のイタリア会戦に参加した。両会戦で多大な業績をあげ、第827信号大隊は、第6681信号鳩歩兵中隊へと名を変えた。第6681中隊の技術的業績は高く評価された。
 1944年7月15日、イタリアのチェチーナにて、第209信号鳩歩兵中隊が構成された。この隊は北アフリカへ派遣され、第5軍へ配属された後に、第7軍に移った。第5軍では一万を超える通信文を扱い、この一年間で20,202羽の鳩を扱うも、失った鳩の数はたったの266羽であった。
・第277信号鳩歩兵中隊
 かつては第1307信号鳩歩兵中隊であった。第277隊へ再編されたのである。イギリスのティドワースに到着したのは、1944年7月4日である。またこの時に、ジョージ・C・パットン将軍の指揮下にある第3軍に配属された。アッピオによると、この隊は3,000以上もの戦略上のメッセージを飛ばしたそうである。
・第278信号鳩歩兵隊
 かつては第1308信号鳩歩兵中隊であった。1944年9月26日にオマハ海岸に到着した。オランダのヴァルケンブルクに司令部を設立したのは同年10月14日である。同10月26日に第278中隊へと再編され、第9地上部隊へ転属された。134羽の鳩がロアー川横断時に用いられ、帰還率は98.5%だった。この隊はラインラント会戦と、中央ヨーロッパ会戦に関して表彰された。
・第278信号鳩歩兵中隊、F派遣隊
 1944年11月13日に、オランダのファルケンブルクにて編成。本隊の繁殖部門から成り立った。鳩の調教と輸送も行った。
・第279信号鳩歩兵中隊
 第280隊の人員により編成され、1943年4月1日にハワイにて立ち上げられた。琉球会戦の参戦が表彰された。
・第280信号鳩歩兵中隊
 この隊は“アメージング・ユニット”と呼ばれる。ルイジアナ州のクライボーン野営地で、1941年6月1日に、第2中隊として立ち上げられた。アメリカ合衆国で最初の信号鳩中隊である。もともとは戦闘部隊であったが、仕官と鳩の交代要員を担う部隊へと変わっていった。
・第280信号鳩歩兵中隊第2小隊
・第281信号鳩歩兵中隊
 第1小隊によって「ブラッキー・ハリガン」「ザ・ブラック・ウィドウ」「ザ・リトル・レッド・コック」「ジ・オールド・ヘン」が目覚しい活躍を遂げた。第1小隊はニューギニアとレイテの会戦に関して表彰された。
・第282信号鳩歩兵中隊
 「キャリコ」と「スヌーキー」の2羽の鳩が活躍した。
・第282信号鳩歩兵中隊、F派遣隊
・第283信号鳩歩兵中隊
・第284信号鳩歩兵中隊
・第285信号鳩歩兵中隊
 この隊は、敵軍の鳩による通信を可能な限り支配するために用いられた。敵の鳩を訓練し、地上部隊への効果的な通信手段を供給しようとした。
・第828補給中隊
 非戦闘部隊として組まれ、鳩による通信手段をいかなる情況においても供給する任務を負っていた。
・戦略事務局―O.S.S.(Office of Strategic Service)。のちのC.I.A.(Central Intelligence Agency、中央情報局)である。ビルマ会戦での鳩使用にて多大な活躍を残している。(即席鳩舎の写真あり)
・中国への派兵(部隊番号指定なし)
 ジョン・A・ウェッブ中尉とチャールズ・ハイツマン二等軍曹による、鳩と共に歩んだ行軍の道程は、オデュッセイアの一節のごときである。彼らは中国人ゲリラ兵の養成と鳩の訓練を任務とし、鳩は中国の沿岸侵攻で用いられる予定だった。しかし侵攻は日本本土へ切り替えられ、育てられた鳩が中国で用いられることはなかった。

○空軍
・第1306信号鳩歩兵中隊

・第1311信号鳩歩兵中隊

○落下傘兵
・第二次世界大戦の初頭に、鳩を扱う下士官兵が、各大隊の落下傘兵に3人ずつ配属された。落下傘兵に鳩を扱わせることで、任務を円滑に行うためである。

○海軍
・小さい規模ではあったが、海軍も鳩を扱っていた。1920年代の終わりに無線通信が用いられ、鳩による通信は廃れたが、最盛期にはレイクハースト駐屯地のみで3,000羽ほどの鳩が調教されていた。

○第二次世界大戦期に活躍したアメリカの鳩
・ブラッキー・ハリガン
・ビルマ・クイーン
・キャプテン・フルトン
・キャプテン・レダーマン
・G.I.ジョー
・ジュリアス・シーザー
・ジャングル・ジョー
・レディ・アスター
・ライルズ・ボーイ
・ウィスコンシン・ボーイ
・ヤンク

○2つの鳩舎で育った鳩
・片方を寝ぐらとし、もう片方で給餌されるといったように、2つの鳩舎で育った鳩がいる。考えられる限りでは、3つの鳩舎で育てることも可能である。しかし、軍事利用上の価値はさほどなかったとされている。

○夜間飛行可能な鳩
・前述の鳩と同様、軍事利用上の価値はあまりなかった。

○ドイツ
・欧州で最初に鳩の軍事利用に目をつけた国のひとつである。第二次世界大戦中に、ヒトラー親衛隊直属の鳩調教学校が設立された。個々の鳩に関する英雄譚は、他国に較べると皆無である。

○朝鮮戦争
・朝鮮戦争においても、鳩はアメリカ軍により用いられた。4ヶ月の間、一つの文書も失うことなく、通信が成された。

○一般のメッセンジャーとして
・古代の文献には、数多くの鳩に関する記述が残されている。紀元前950年頃に、ソロモン王は、文書送達者としての鳩の助けを用いて、彼の王国をイスラエルに作り上げた。多くの著述家がそう言っている。さらにペルシアのキュロス大王(紀元前529年)も、同様にして広大な領土に鳩を飛ばしていた。ギリシアでも、アナクレオン(紀元前563―478年)の記述によると、優秀な伝達者と看做されていた。アイルランドの詩人トマス・ムーア(1779―1852年)が鳩について詠んだ詩は、数多くの言語に訳されている。伝達者である鳩は、古代ギリシアの信託と深く関係しており、ヘロドトス(紀元前484?―425)やストラポン(紀元前63?―後21)による言明が残されている。
・古代ローマ人は、鳩の帰巣本能を熟知していた。いくつかの文献に、コロッセウムでの闘技の勝者を知らせるために鳩を用いたことが記録されている。オヴィド(紀元前43―後17)によれば、タウロステネスは鳩を紫に染めて放ち、彼のオリンピック競技における勝利を、エギナの父に伝えたそうである。この他にも、鳩の歴史を眺めると、バグダッドの支配者であるスルタンのノルディン・マフムードや、13世紀のアフリカで隊商たちが通信に用いたことなど、世界中で記録が残されている。
・今日の合衆国において、鳩は通例メッセンジャーとしては用いられていない。だが、必ずしもめったに使われないわけではない。禁酒法時代(1919―1933)には、密造者たちが、船と、陸上の事業拠点との間の通信に特に用いていたという事実がある。また、ある商社マンが、発注を彼の事務所へと中継させるために鳩を用いようとしている。この他にも、たった一つの定期券を鳩に運ばせて通勤していた一家の事件が報道されている。

○鳩に関する著述
・中国…残念ながら、中国の文献は、ほとんど入手できない。だが古くからの文明を持つその民は、鳩をこよなく愛している。そんな人々がたくさんいるに違いない。著者不明の詩(紀元前760年)と、宋王朝(960―1280年)の時代の著述がある。
・ギリシア…ホメロス(およそ紀元前950年)は数多く、鳩に関する著述を残している。ソクラテス(紀元前469―400)、プラトン著「国家」第5巻第8章にて)は鳥の繁殖における淘汰について言及している。アリストテレス(紀元前384―322年)は多数の論及を残し、鳩の特性について優れた知識を示している。ロードス島のアポロニウスと、オウィディウス(紀元前43―後13年)はギリシア神話における鳩の役割を伝えている。
・ローマ…鳩に関する古代ローマ人たちの、多くの事象からなる精密な学識は驚くべきものである。ヴァロや大カトーの他、ヴェルギリウス(紀元前70―19年)はアエネイスにおいて、鳩に関する記述を残している。大プリニウス(23―79年)は「博物誌」において、彼の鳩に対する熱狂と、鳩の血統について述べている。
・イギリス(戯曲)…ライリー(イギリスの劇作家、1554?―1606)は、彼の有名な詩の中で、鳩への愛着をうたっている。他にはドライトン(1563―1631)や、ウィリアム・シェイクスピア(1564―1631)も鳩についての著述を残している。シェイクスピアは「お気に召すまま」「ヘンリー四世」「ハムレット」「真夏の夜の夢」「じゃじゃ馬ならし」「コリオラヌス」で、鳩について言及するシーンを書いている。シェイクスピア自身が鳩を飼育していたか、腕の立つブリーダーとある程度親交があったのか、作中の鳩に関する場面は、詳細に鳩の特徴を表している。
・イギリス(詩)…他にはドライデン(1631―1700)、メアリ・ワートレイ・モンターグ女史(1639―1762)、アレクサンダー教皇(1688―1744)の詩に、鳩への愛着や、鷹に追われる鳩の恐怖を表現したものがある。またワーズワース(1770―1850)や、エリザベス・バレット・ブラウニング(1806―1861)、アルフレッド・テニソン(1809―1892)も鳩への愛をうたっている。
・イギリス(散文)…アレクサンドル・デュマ(1802―1870)の、鳩についての愉快な物語(「黒いチューリップ」)は、古い鳩舎の状態がよくないため、新しい鳩舎に移された鳩の感情を描いている。ディケンズ(1812―1870)は、鳩とその飼育に関する知識を明らかに持っており、「バーナビイ・ラッジ」や「ウィングド・テレグラフ」に反映されている。

○趣味としての鳩
・古代より、鳩は人間に飼われてきているということがわかった。世界の数多くの断片における、鳩文化の幅をどのようにして語ることができようか。普通の人間の立場から見た、その発展の記録は、世界中で皆無である。だが、世界中でみられるように、数多く展開された独特の品種は、多数の人から鳩が愛されていることの証といえよう。
・いったい何が、人をして鳩を愛せしむるのかを解明することは、困難を極める。鳩への愛は生来のものと見る人もいるだろう。解釈しがたいような鳩への愛を胸に抱く人は幸運に恵まれている。不幸のどん底に陥った時、筆舌に尽くしがたい安堵と慰めを鳩に見出せるからだ。
・真の愛好家が少年時代に初めて飼った鳥の思い出は、物語り難い輝きで彩られている。60年も前の記憶を、昨日の出来事のように思い出せるのだ。

○生計手段としての鳩
・ヒナ鳩と成熟した鳩は、文献が乏しいものの、前史の人類には十分に好まれた食物であることは疑いようがない。2000年前のローマでは好んで食されていた。フランスとイギリスにおいては、前者は大規模な、後者は小規模な飼育が行われたという違いはあるものの、どちらも食材として広く用いられた。アメリカ合衆国では、食卓で用いられるための飼育と販売は小規模だったが、産業として十分に認知されていた。中国では満州皇帝の食卓に出される鳥の一つであり、中国の人々は鳩の肉に薬効があると考えていた。

○科学的研究の手段としての鳩
・遺伝学…その研究に際し、鳩はあっぱれな存在である。早く育ち、子孫を6週間毎に育て上げられる。色の形質の遺伝を調べるにあたり、素晴らしく便利な対象として用いられた。
・生理学…身体器官の機能に関する研究で用いられた。細胞における呼吸と、その他の酵素の研究、またホルモンの研究に用いられた。
・栄養学の研究にて…20世紀におけるビタミンの発見が、この分野における革命的な知識を持っている。鳩はビタミン研究において主要な部分を占めてはいないが、ビタミンBの作用について特に突出している。
・その他の研究…鳩は寄生生物や、ヒトのパラチフスに類似した病理機能といった分野の研究にも用いられている。

*補足(藤本)
 平成十七年の秋頃、遠藤さんという中年女性から、
「はいっ、藤君(*注・皆からそう呼ばれていた)、どうぞ。軍用鳩に関する記述があるよ。うちの息子が翻訳したの」
 と、言われて、W・M・レヴィ著『The Pigeon』の一部分の要約をもらったのだが、誤字、脱字、誤訳だらけなのには閉口した。
 それでついつい、
「誤訳だらけですね。それに日本語の基礎がなっちゃいない」
 と、口を滑らせてしまった。
 途端に彼女はむっとした表情で、こう言った。
「そんなことない。正確よ」
 もちろん、正確であるはずがない。彼女の息子(素人。大学生)が、辞書を片手に翻訳したものにすぎないからだ。
 しかし、翻訳者に恵まれなかったとはいえ、名著といわれている『The Pigeon』であるだけに内容そのものは悪くない。
 ためになる記述がある。
 遠藤さん、ありがとう。

*補足二(藤本)
 伝書鳩やレース鳩に興味を覚える者であるならば、絶対に読んでおかなくてはならない本がある。日本鳩界の重鎮・関口竜雄が著した『鳩と共に七十年』である。人と鳩が織りなしてきた歴史、日本鳩界史、レース鳩の配合法など、鳩に関するさまざまな事柄が記されている。
 愛鳩の友社代表の明神庄吾社長(創立者・宮沢和男の後を継いだ二代目)が、以前、こんなことを言っていた。
「関口竜雄が『鳩と共に七十年』を執筆するときに、『The Pigeon』がどうしても見たいって言ってきてな、会社にある本を貸してあげたことがある」
 明神社長が伝えたかったことは、こういうことだと思う。
「W・M・レヴィの『The Pigeon』は、あの関口竜雄が参考にするほどの良書だぞ」
 私はそう解釈して、『The Pigeon』をアメリカの書店から取り寄せた。たかが本一冊で一万円以上もした。しかし、小野内泰治に次いで、日本で二番目に戦前戦中の伝書鳩に関する資料を持っていると自負している私にとっては、「当たり前の散財」の域を出るものではない。




戻る