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| 表紙 |
| 題名 |
諸兵通信法教範草案 |
| 著者 |
＊ |
| 出版 |
成武堂 |
| 版 |
昭和十三年九月二十五日印刷 昭和十三年九月三十日発行 |
| 備考 |
昭和十四年二月二十三日陸軍省検閲済 |
| 陸普第四七八三号 （甲） 諸兵通信法教範草案配賦ノ件陸軍一般ヘ通牒 昭和十三年八月八日 陸軍省副官 国分新七郎 一 諸兵通信法教範草案 右刻成ニ付配賦ス 追テ本草案中部隊ト関係ヲ有スルモノノ実施ハ昭和十四年一月一日ヨリトシ該時期迄ニ本案ニヨラントスルトキハ適宜協定ノ上実施セラルル儀ト心得ラレ度 ＊＊＊ 第七篇 鳩通信法 通則 第百五十二 本篇ハ鳩通信実施上諸兵種ノ直接知得シアルベキ事項ニ関シ記述ス 第百五十三 鳩通信ハ特殊ノ技術ヲ要スルコトナク信書、要図等ヲ随処ヨリ簡易ニ現送シ得ルヲ特徴トス然レドモ使用ニ方リテハ予メ訓練ノ為時日ヲ要シ且通信ハ総テ訓練セラレタル鳩舎ニ齎サルルモノナルヲ以テ動モスレバ指揮官ト離隔シ通信ノ速達ヲ期シ得ザルノ不利アルモノトス又夜間ノ通信ハ昼間ニ比シ著シク困難ナルヲ通常トス 第百五十四 鳩ヲ使用スルニ方リテハ其ノ性能特ニ訓練ノ成果及鳩舎トノ連絡方法等ニ稽ヘ其ノ特性ヲ発揮スベキ時期ニ於テ之ヲ活用スルノ着意ヲ必要トス 第百五十五 鳩通信ノ為ニハ鳩部隊ヲ配属セラレ又ハ鳩部隊ヨリ鳩ノミヲ交付セラルルモノトス 鳩部隊ヲ配属セラレタル場合之ガ使用ニ方リテハ予メ鳩使用ノ方向又ハ地域、通信ノ時期、鳩舎位置等準備訓練ノ為準拠トナルベキ事項ヲ示シ速カニ訓練ニ着手セシメ其ノ成果ヲ待ツテ使用計画ヲ定ムルモノトス鳩ノミノ交付ヲ受ケタル場合ニ於テハ帰還スベキ鳩舎位置、訓練ノ程度特ニ距離、方向及閉置シ得ル日数等直接通信実施ニ必要ナル事項ヲ詳知シ之ガ使用ヲ誤ラザルヲ要ス 第百五十六 鳩ハ自己ノ鳩舎ニ通信ヲ齎スモノナルヲ以テ爾後ニ於ケル通信送達ノ方法ニ欠クル所アルトキハ著シク其ノ価値ヲ減殺スルモノトス而シテ鳩部隊ノ有スル伝達機関ハ極メテ僅少ニシテ小ナル部隊ニ在リテハ之ヲ欠如スルヲ一般トス故ニ鳩通信ヲ行ハントスル指揮官ハ鳩舎位置ト連絡スベキ各指揮官ノ位置トノ関係ヲ考慮シ両者ノ連絡ノ方法ヲ的確ニ講ジ置クコト肝要ナリ 第百五十七 鳩ノ帰還スル鳩舎ト関係指揮官トノ間ノ連絡ハ快速機関ニ依ルカ又ハ伝騎、自転車伝令等ニ依ルヲ通常トスルモ有、無線通信ヲ利用シ得バ頗ル有利ナリ之ガ為鳩部隊ヲ配属セラレタル部隊長ハ予メ鳩舎位置ヲ主要ナル連絡中枢若クハ幹線ニ近ク配置シ之ガ利用ノ処置ヲ講ズルト共ニ鳩部隊ニ対シ所要ノ伝達機関ヲ配属スルノ着意ヲ必要トス然レドモ鳩部隊ニ在リテハ縦ヒ此等連絡機関ヲ付セラレザル場合ト雖モ有ユル手段ヲ尽クシテ自ラ通信ノ速達ヲ期スルコト肝要ナリ 第一章 各種鳩ノ性能 第百五十八 鳩ハ素質及訓練ノ程度、年齢等ニ依リ著シク其ノ能力ヲ異ニスト雖モ移動鳩ニ於ケル通信準備訓練ト通信能力トノ関係左ノ如シ
第百五十九 固定鳩ノ能力ハ鳩舎馴致ノ度及年齢等ニ依リ異ナリト雖モ訓練期間ニ依ル能力ノ標準左ノ如シ
第百六十 往復鳩ハ食事棲息両鳩舎間ヲ往復シ通信ニ任ズルモノニシテ之ガ準備訓練ノ為ノ日数ト距離トノ関係概ネ左ノ如シ 十日 五粁 二十日 十乃至二十粁 三十日 三十粁 第百六十一 固定及移動鳩中適性ノモノニ対シ夜間訓練ヲ施シ夜鳩タルノ性能ヲ付属スルトキハ夜間ノ通信ニ任ジ得ルモノトス而シテ実用通信ニ任ジ得ル距離ハ固定鳩ニ在リテハ概ネ五十粁、移動鳩ニ在リテハ新地移動後ノ訓練日数ニ応ジ左記ヲ以テ限度トス 三日 一粁 七日 三粁 十日 五粁 第百六十二 通信実施ノ方向及距離ニシテ訓練ノ場合ト一致スルトキハ鳩ノ能力ヲ発揮スルコト最モ大ナリ然レドモ縦ヒ其ノ方向一致セザル場合ニ於テモ良ク訓練セラレタルモノハ移動鳩ニ在リテハ概ネ五粁又固定鳩ニ在リテハ概ネ五十粁以内ニ於テ大ナル影響ナク又其ノ距離ハ準備訓練ノ概ネ二倍ヨリ通信シ得ルモノトス 第百六十三 鳩ハ鳩舎ヲ離ルル時間永キニ従ヒ漸次鳩舎位置ヲ忘レ終ニハ帰巣シ得ザルニ至ルモノトス而シテ通信実施ノ為帰巣能力ヲ害スルコトナク鳩ヲ鳩舎外ニ閉置シ得ル期間ハ鳩ノ素質、訓練ノ度、閉置ノ方法等ニ依リ異ナルモ固定鳩ニ在リテハ概ネ一箇月、移動鳩ニ在リテハ新地ニ於ケル訓練時間ノ長短ニ依リ一乃至三日ヲ越エザルヲ可トス 第百六十四 鳩ハ寒暑ニ対スル抵抗力大ニシテ急激ナル変化ヲ与ヘザル限リ其ノ能力ニ影響ナキモノトス然レドモ零下三十度以下ニ及ブトキハ飛翔力漸次減退シ通信実施困難ニ至ルモノトス又烈風、豪雨、濃霧、夜暗ハ鳩ノ飛翔及通視、方向判定ヲ困難ナラシメ著シク帰巣ヲ不良ナラシム 第百六十五 鳩ノ帰巣ハ気象ト密接ナル関係ヲ有シ就中気流ノ影響ヲ受クルコト大ナリ又山岳及密林地帯等ニ在リテハ猛鳥（隼、鷹等）ノ被害大ナルヲ以テ特ニ注意スルコト必要ナリ 第二章 鳩ノ取扱 第百六十六 小部隊、斥候等鳩通信ヲ利用セントスルトキハ通常鳩隊ヨリ鳩ヲ受領シ之ヲ携行スルモノトス 第百六十七 鳩ヲ受領スルニ際シテハ特ニ通信ニ使用シ得ル方向、距離又ハ地域、帰還スベキ鳩舎位置等爾後ノ使用ニ必要ナル諸件ヲ的確ニ知悉スルコト必要ナリ 第百六十八 鳩ヲ取扱フニ方リテハ帰巣能力ノ根本タル巣ニ対スル愛着心ヲ減少セザル如ク其ノ取扱ヲ適切ニスルト共ニ其ノ活動力特ニ飛翔力ヲ損傷セザルコトニ注意スルヲ要ス 第百六十九 鳩ヲ携行スルニハ鳩部隊ニ於テ準備セル各種鳩籠ヲ使用スルモ状況ニ依リ此等ニ依ルコトナク適宜ノ容器ヲ利用シ或ハ手拭等ヲ以テ鳩体ヲ縛スル等簡易ニ携行シ得ルモノトス此ノ場合鳩体特ニ翼及尾羽ヲ損傷セシメザル如ク又呼吸ヲ容易ナラシムル如ク注意スルコト肝要ナリ 第百七十 鳩ノ携行竝ニ閉置間注意スベキ事項左ノ如シ 一、容器ハ常ニ清潔ニシ鳩数多キトキハ成ルベク切藁、干草等ヲ敷キ時時之ヲ交換シ鳩体ノ汚染ヲ防グヲ可トス 二、長時間ニ亙ル水与ノ中絶ハ著シク鳩ノ能力ヲ減殺スルモノナルヲ以テ一日少クモ二回清潔ナル水ヲ与フルヲ要ス夏季炎熱時絶水一日以上ニ及ブトキハ往々死ニ至ルコトアリ 三、飼与ハ携行二日以上ニ亙ル場合ニ於テ毎夕少量（一羽ニ対シ概ネ半握）之ヲ行フモノトス 右以外ノ飼与ハ鳩ヲ現地ニ執着セシメ帰巣力ヲ減殺スベキヲ以テ特ニ注意スルヲ要ス 四、機会アル毎ニ鳩ノ状況ヲ観察シ異状ノ有無ヲ検スルト共ニ駐止間ハ特ニ犬、猫、鼠、鼬等ノ害獣其ノ他ノ被害ニ対シ警戒シ鳩体ノ愛護ニ勉ムルヲ要ス 五、通信ノ実施ヲ予期スルニ至ラバ予メ鳩ノ胸当又ハ鳩ヲ包メル布片ヲ脱シ要スレバ休憩籠等ノ中ニ移シ十分ノ休養ヲ為サシムルト共ニ羽翼ヲ整ヘシムルモノトス 六、一時性瓦斯ニ対シテハ大ナル顧慮ヲ要セザルモ持久性瓦斯ニ対シテハ籠覆ヲ装シ又ハ所在ノ天幕、布片等ニ中和剤若クハ水ヲ湿潤セシメタルモノヲ以テ之ヲ覆ヒ止ムヲ得ザル場合ニ於テハ放鳩シ其ノ被害ヲ避クルモノトス 七、極寒地ニ於テ鳩ヲ携行スルニハ籠ニ覆ヲ付シテ風ノ侵入ヲ防止シ保温ヲ良好ナラシムル外鳩ノ飼与ニ注意シ栄養ノ衰退ニ基因スル凍傷ヲ予防スルモノトス 第百七十一 通信ヲ鳩ニ托スルニハ通常通信紙（複写用薄片）又ハ同大ノ薄紙ニ記載シ信書管内ニ収容ス 第百七十二 通信紙ヲ信書管ニ収容スルニハ第五図ノ如ク先ヅ通信紙ヲ横ニ二ツ折ト為シ次デ縦ニ二ツ折ト為シタルモノヲ更ニ横ニ三ツ折ト為シ其ノ一端ヨリ堅ク巻キテ信書管ノ内筒ニ挿入シタル後外筒ニ嵌挿ス 一箇ノ信書管ニハ通信紙二枚ヲ収容スルコトヲ得
第百七十三 信書管ヲ鳩脚ニ装着スルニハ先ヅ鳩ヲ籠ヨリ取出シ其ノ頭部ヲ軽ク自己ノ胸部ニ当テ左手ヲ以テ鳩体ノ後側面ヨリ拇指ヲ翼上ニ、他ノ四指ヲ腹部ニ廻ハシ食指ト中指トノ間ニ鳩ノ両脚ヲ挟ミテ鳩体ヲ完全ニ把握ス（第六図）
次デ右手ヲ以テ信書管ノ脚金ヲ鳩ノ左脚ニ装着ス 信書管ハ内筒（着色部）ヲ上方ニシ飛翔間ノ脱落ヲ防止シ且捲金ハ鳩脚ヲ緊迫セザル如ク注意スルコト肝要ナリ（第七図） 第百七十四 信書管ヲ有セザル場合ニ於テハ通信紙又ハ白紙ヲ適宜細長ク折畳ミ之ヲ脱落セザル如ク鳩脚ニ結着シテ之ニ代フルコトヲ得（第八図）
第百七十五 稍々大ナル要図、写景図其ノ他印刷紙片等ニシテ信書管ニ収容シ得ザル場合ニ於テハ通信距離概ネ五十粁以内ニ在リテハ信書筒ヲ用フルコトアリ 信書筒内ニハ鳩ノ体力、訓練ノ度等ヲ考慮シ左記数量ヲ収容スルコトヲ得 通信紙 三枚 半紙又ハ藁半紙 二枚 方眼紙（小） 一枚 信書筒ノ装着ニ方リテハ特ニ翼ノ運動ヲ妨ゲザル如ク注意スルヲ要ス（第九図）
第百七十六 放鳩ニ方リ特ニ注意スベキ事項左ノ如シ 一、放鳩前鳩体異状ノ有無竝ニ信書装着ノ良否ヲ点検スルコト 二、放鳩位置ハ成ルベク視界広闊ニシテ高所ヲ選ブコト特ニ夜間ハ電線、森林、樹木等鳩ノ飛翔ヲ妨グル地物ノナキ所ヲ選ブコト 三、陣地内ヨリ通信スル場合放鳩ノ位置ハ司令部、本部等ノ位置ヲ敵ニ察知セラレザル如ク適宜之ト隔離スルコト 四、日没ニ近ク通信ヲ実施セントスルトキハ通信距離ヲ顧慮シ日没迄ニ鳩舎ニ帰還シ得ル時間ヲ存シテ放鳩スルコト 五、放鳩ハ一羽ヅツ行フヲ原則トスルモ重要ナル通信又ハ訓練方向ノ関係等ニ依リ通信ノ確実ヲ期シ難キ場合ニ於テハ二若クハ三羽ヲ以テスルヲ可トス 六、放鳩ヲ行フニハ鳩ヲ背部ヨリ握リ之ヲ上空ニ放出スルコト（第十図） 七、飛行機上ヨリノ放鳩ニ方リテハ鳩ヲ前下（上）方ニ強ク放出シ鳩ヲシテ直接機体ニ触レシメザル如クスルコト
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