鳩に関する、フランスの法律 伝書鳩飼育者並に其の使用に関する法令


伝書鳩飼育者並に其の使用に関する法令(一九二七年二月十八日付)

第一条

 仏国民にして伝書鳩の鳩舎を創設し、永久的なると一時的なるとを問はず此の種家禽を受領し発送し又は売買せんとするものは予め当該県知事の許可を得るを要す。

第二条

 各外国人は内務大臣より特に許可せられたる場合の他、仏国内に鳩舎を創設維持し此の種家禽の取引をなし受領するを禁ず。前項実施の外国人は国家の認むる鳩連盟中の会員たることを要す。

第三条

 永久的又は一時的に伝書鳩を受領するものは、二日以内に市町村役場に申告し、其の所属を明かにするを要す。

第四条

 売買贈与継承に依る鳩の移動並に出産、死亡、損傷、失踪による鳩舎の移動は、飼育者又は許可せられたる商人の届出により之れを行政官憲の有する規定の帳簿に記載せらる。

第五条

 毎年内務大臣の指定する日時に於て、市町村吏員の区別する所に従ひ鳩調査を実施す。

第六条

 仏国に存在し仏国領土内に行動する鳩は接目無き足環を鐶し且つ其の履歴を明かならしむるを要す。

第七条

 伝書鳩と野鳩とを混生せしむる鳩舎を禁ず。
 両種を保有する飼育者は各別の鳩舎を設け相互の交接を禁ぜざるべからず。

第八条

 本法令の第一第七条項目の条規に違反する者は五十法以上五百法の科料に処す。

第九条

 一八八九年四月四日の法令第六条を廃し訓練休止期間と雖も鳩舎を開放するを得。

第十条

 伝書鳩の種属を保護し一般的利益を顧慮し伝書鳩を競点射撃用として使用することを禁ず。本目的の為めに故意に伝書鳩を売買し又売買せんと試みたるものは五十法乃至五百法の科料に処す。

第十一条

 虚偽又は不完全なる申告、届出、足環の除去、交換、偽造其他あらゆる手段を以て伝書鳩の存在、所持、履歴等を秘匿し又は秘匿せんとしたるものは二百法乃至二千法の科料に処す。公認足環の分配に預るものに之を受領する権利なきものに故意に交付したる時も亦同一科料に処す。
 法令を以て足環を装すべき規定せる日時以後に於て、正規足環を保持せざる伝書鳩を発見せるときは官憲の処理する所に従ひ之を射殺す。
 国家の安寧に害ある諸連絡に伝書鳩を使用せるものには五百法乃至五千法の罰金及三ヶ月以上五年以内の拘留に処す。但し平戦両時に於て対外秩序に関する法令違反する重罰犯に関しては刑法陸海軍々法会議法売国に関する一八八六年四月十八日の法令及対外秩序に反する犯罪の懲罰をこと〴 〵く規定せる一九一八年十一月四日の法令を適用す。

第十二条

 自己の所有せざる鳩を捕縛し又は損傷し或は捕縛損傷せんと試みたるものは其の手段時期の如何を問はず刑法第四〇一条の定むるところに依り罰す。
 然れ共自己所属地に損害を及ぼせる鳩を殺せしものは起訴せらるゝこと無し、但し鳩の種属を認識するを得ざりし場合に限る。

第十三条

 政府は右各項の外仏国伝書鳩の諸行動、放鳩、外国鳩の入国、放鳩の諸規定、足環、及諸帳簿、携帯、分配に関する諸規定、民間伝書鳩、飼育、機関の編組法並に民間政府間の諸協調に関し省令を以て規定するところあるべし。
 内務省陸海軍省の提議に依り政府は法令に依りて外国鳩の輸入及び免税、通過、仏国鳩の輸出並に両種伝書鳩の仏国領土内に於ける諸行動を禁止することを得。

第十四条

 本法令はアルゼリーに於ても適用せらる。
 一八九六年七月廿二日、一八九六年十二月十三日、一八九八年三月四日、一九二〇年八月一日の諸法令は之を廃棄す。

参考文献
『鳩(改訂版)』 松本 興 著 三省堂
「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C10073321400、自大正15年11月至昭和3年3月 軍事調査班調査書綴 航空部.騎兵監部 徴募課の分含む(防衛省防衛研究所)」



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