伝書鳩やレース鳩が登場する書籍・映像作品など


 伝書鳩やレース鳩が登場する小説、映画、音楽などを紹介する。
 あくまで、個人の好みでまとめた、ささやかな一覧なので、伝書鳩やレース鳩が関係している作品を網羅しているわけではない。また、各作品を五段階にランクづけしているが、著作物そのものの出来栄えよりも、作品内における鳩の登場回数や活躍の度合いなどに重きをおいて評価している。

*伝書鳩やレース鳩ではなく、単に鳩が登場するだけの作品も一部ある。

*こちらの
「鳩メモ」にも情報あり。



書籍

題名 孤独な戦い
著者 宮沢和男
出版 愛鳩の友社
評価
 ★★★★★

 わが国の鳩文化を長年にわたって担い続けてきた宮沢和男(愛鳩の友社の創立者)の鳩レース小説。月刊誌『愛鳩の友』に連載された後、昭和四十九年に単行本化される。「最初で最後の本格的な鳩レース小説」と言っても過言ではない、鳩飼い必読の名著。
 宮沢和男は日本鳩レース協会の重職を歴任し、日本鳩界史に名高いミュニィエ号の導入者としても知られる。平成十六年五月、全国の愛鳩家に惜しまれつつ、この世を去る。



『サイパンから来た列車』
題名 ポッポ班長万歳  *表題作を含む五作品を収録
著者 棟田 博
出版 光人社
評価 ★★★☆☆

 『拝啓天皇陛下様』の作者として著名な棟田 博の兵隊小説。私が知る限り、鳩兵を題材にした作品は数編しかなく、本作はその中の一つ。
 軍用鳩に関する記述はほとんどないが、鳩班に配属された主人公が個性的である。箸にも棒にもならない変わり者の兵隊、という設定なのである。


『悲しき戦記』
題名 鳩  *表題作を含む二十五作品を収録
著者 伊藤桂一
出版 講談社
評価
 ★★★☆☆

 ある日のこと、小島部隊(包頭駐屯)の鳩係である黒住は、放鳩訓練のために立ち寄った部落で敵の攻撃を受ける。
 この不意の出来事の裏には、ある隠された理由があった。
 作者は兵隊小説の大家・伊藤桂一。

  題名 軍用鳩 みどり号
著者 池田宣政 作/樺島勝一 画
出版 大日本雄弁会講談社
評価
 ★★★★☆

 『少年倶楽部』(昭和四年九月号)に掲載された軍用鳩の小説。シベリアの地を飛ぶ、みどり号の苦闘が描かれている。
 チタ軍に包囲された騎兵斥候の一隊。「さ、行け、最後の通信だ。そして一番大事な通信だぞ」。全滅間近の斥候隊から、みどり号が放たれる。
 果たして、みどり号は、ウラジオストック郊外にある本隊にたどり着くことができるのであろうか。

   
題名 ダーウィン爺の鳩小屋 一つの田園物語
著者 J・H・ユーイング 作/羽仁恵子 訳
出版 婦人之友社
評価
 ★★☆☆☆
 『婦人之友』の昭和二十五年十一月号と十二月号に掲載された短編小説。
 ダーウィン爺の飼っている、タンブラー種の鳩が、空を舞う。
 その光景を目にした、養育院の孤児・ジャックは、居ても立ってもいられなくなる。
 自分に鳩のような翼があれば、どこかに飛び去っていけるのに……。
 ある日のこと、ジャックは、古い屋敷に一人で暮らしているダーウィン爺に宛てて、こんな手紙を出す。
 朝から晩まで喜んで働き、鳩の世話をするので、家に置いてほしい、と……。
題名 シートン動物記6 伝書鳩アルノー  *表題作を含む三作品を収録
著者 アーネスト・T・シートン 作/藤原英司 訳
出版 集英社
評価 ★★★★★

 『シートン動物記』の中に伝書鳩を題材にした小編『伝書鳩アルノー』がある。このお話を読めば、伝書鳩とは何たるか、門外漢でも理解することができる。また、鳩が見舞われるさまざまな困難──猛禽類、狩人、鳩泥棒には、誰しもが感情移入して目頭が熱くなることだろう。
題名 飛べ! ブラック・サンダー(全十四回)
著者 長峰洋一郎 作/橋本真一 画
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆

 『愛鳩の友』(昭和四十五年四月号から昭和四十六年五月号まで)に掲載されていた鳩レースの漫画。残念ながら、単行本化されていない。
 『レース鳩0777』に比べると『飛べ! ブラック・サンダー』の知名度はなきに等しいが、内容は悪くない。漫画特有の誇張された表現はあるものの、鳩レースでの不正方法や鳩賭博の実態などが描かれている。『レース鳩0777』に並ぶ鳩レースの漫画として、もうちょっと認知されてもよいと思う。

題名 レース君(全五回)
著者 絵守きよし
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆


 『愛鳩の友』(昭和四十九年十一月号から昭和五十年四月号まで)に連載されていたレース鳩のギャグ漫画。いたずら好きな「レース君」の活躍が描かれている。
 なお、編集部の手違いにより、第四回と第五回の掲載が入れ代わっていて、昭和五十年三月号に最終話となる第五話が、昭和五十年四月号に第四話が載っている。
 
     
  題名 ゴンチャンとケンチャン(全五回)
著者 不明
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆


 『愛鳩の友』(昭和三十一年六、七、八、九、十一月号)に掲載されたギャグ漫画。第一回から第三回までは「飼い始めの巻」(1~3)、第四回が「初放鳩の巻」(1)、そして第五回はNo.5と表記されているだけで副題がなく、作品名も『ケンチャンとゴンチャン」に変わっている。
 子供の頃に鳩を飼っていたことがある人なら、ゴンチャンとケンチャンという二人の少年に親近感を覚えると思う。

  題名 人の世は(全二回)
著者 古旗淘太
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆


 ジョンという名の鳩の目を通して物語が進む、一人称形式の短編小説(『愛鳩の友』の昭和三十二年三、四月号掲載)
 ジョンの飼い主である、高田兼一(高校二年生)は、複雑な家庭環境に置かれている。母親が三年前に亡くなっていて、実業家の父親・紳一郎は、女中の春と男女の関係にあるのだ。
 さて、この紳一郎の取引先である、中村呉服店から、もらい受けてきた鳩がジョンである。
 店の主人である中村は名うての鳩飼いで、日本競翔鳩協会の理事をしている。しかし、協会内では派閥間の対立が生じていて、中村は反主流派の地位にある。
 ジョンは、中村鳩舎の代表鳩「長龍」号の子である。しかし、いまだジョンには鳩舎がない。古びたニワトリ小屋に押し込められている。
 物語の終盤になって、ジョンのために鳩舎が作られる。そして、ジョンは、はじめての舎外運動に出される。
 そのとき、ジョンは、以前に住んでいた中村鳩舎のことを思い出す。
「ちょっとだけ行ってみようかしら」
 飼い主の兼一が心配しているにもかかわらず、ジョンは本能の力に流されて、中村鳩舎を目指して飛んでいってしまう。
「人の世はままならぬものと聞くが、鳩の世もまた、ままならぬものである」
 と、結ばれて小説は終わる。
     
  題名 鳩が取りもつ縁かいな(全五回)
著者 矢橋利一
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆


 『愛鳩の友』の昭和三十八年八、十月号、昭和三十九年一、三、五月号に連載された鳩小説。
 酒飲みで暴力を振るう夫・鉄三に愛想を尽かした妻・お敏が、東京の家を出て、実家のある羽幌(北海道)に帰ってしまう。
 さて、この羽幌において、東京~羽幌間千キロレースがおこなわれる。レースには、鉄三とお敏の息子・光夫(高校生)が、愛鳩(北風号)を参加させる。
 お敏は、放鳩委員の許可を取って、光夫の愛鳩・北風号の脚に手紙を付す。
 そうして、レースがはじまると、東京に住む、光夫と鉄三は、北風号を介して手紙を受け取る。彼らは、ここではじめて、家を出たお敏が羽幌にいることを知る。
 東京~羽幌間千キロレース終了後、光夫の家に、放鳩委員がやってくる。
 光夫は、お敏から託されたという二羽の鳩を、放鳩委員から受け取る。シオン系の鳩と、ケンタッキー系の鳩である。実はお敏は、光夫以上に鳩に詳しく、「鳩狂女」と鉄三から呼ばれるほどだった。
 光夫はこの二羽を、羽幌一号、羽幌二号と名づける。そして、この羽幌号に手紙を付して、羽幌のお敏に向けて飛ばすことを計画する。家に帰ってきてほしい、と頼むためだ。
 酒飲みで暴力を振るう鉄三は、お敏がいなくなってから、充分に反省していて、今は酒を断っている。そして、お敏が育てたこの鳩なら、必ず羽幌にたどりつくはずだ……。
 光夫と鉄三の思いを乗せて、羽幌号が飛び立つ。
     
  題名 はとにもらった花嫁衣裳(全五回)
著者 矢橋利一
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆


 『愛鳩の友』(昭和三十七年十一、十二月号、昭和三十八年二、四、五月号)に連載された、映画・テレビ用の脚本。しかし、実際に映像作品にはならなかったらしく、『愛鳩の友』誌での掲載にとどまる。
 愛鳩家の邦夫少年の家は貧しく、彼は鳩レース用の記録時計を持っていなかった。せっかく、レースで愛鳩(春風号)が速く帰ってきても、ゴム輪をわざわざ、記録所まで届けなければならない。
 さて、邦夫少年には、兄の忠夫と姉の小夜子がいるが、兄の勤め先の部長が小夜子を見初めたことから、二人は近く結婚する運びとなる。そして、この玉のこしの恩恵といってよいのか、兄の忠夫は部長からお金を借りて、その金で邦夫少年の欲しがっていた記録時計を買う。
 こうして、記録時計を手にした邦夫少年は、見事、レースで優勝する。
 賞金の三十万円は、姉・小夜子の花嫁衣装に充てられる。
     
  題名 青空にはばたく(全二回)
著者 桑原 作/高橋好文 画
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆


 日本伝書鳩協会九州支部の某会員が投稿した文芸作品(『愛鳩の友』の昭和四十一年八、九月号掲載)
 二郎という名のレース鳩が、舎外訓練や放鳩訓練を経て、鳩レースに挑む。
 五百キロレース後のこと、二郎が舎外訓練をしていると、ある一羽の雌鳩に出会う。
 この小柄で、かわいらしい雌鳩に、二郎は、たちまち、恋する。
 喜ばしいことに、彼女の方も二郎に好意を抱く。
 こうして、二羽の鳩はつがいになり、その後、彼らの間に子供が生まれる(雌鳩が卵を二つ生む)
 しかし、幸せな家庭生活がはじまってすぐに、八百キロレースがおこなわれる。
 このレースに参加する二郎は、妻と自分の子供(卵)のことが気にかかって、居ても立ってもいられない。
 二郎は、自鳩舎を目指して、一生懸命に飛ぶ……。
     
  題名 奇跡の鳩
著者 金元昇市 作/御所原天生 画
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆


   『愛鳩の友』(昭和三十九年九月号)に掲載された小説。「実録小説」とうたっていることから、ある程度、事実を反映して創作された短編と思われる。
 なかなか、舎外運動に出してもらえない鳩がいる。
 鳩はこれが嫌で、すこぶる不満であった。
 しかし、ある日のこと、ようやっと舎外運動に出してもらえる。
 鳩はうれしさのあまり、時間を忘れて飛び続ける。
 そうしたら、大変、迷い鳩になってしまう。自鳩舎とは別の小さな鳩舎に行き着き、そこで夜を明かす羽目になる。
 ここの鳩舎を管理しているのは、十歳くらいの少年だった。
 彼はなかなかいい人で、また、鳩舎の鳩たちともすぐに仲良しになる。
 鳩はすっかり、ここが気に入ってしまって、この鳩舎で生涯を過ごしたいと思う。
 しかし、その願いと相反して、ある日、鳩舎にやってきた二、三人の青年の目に鳩の姿がとまり、彼らにもらわれていく。
 そうして、新しい鳩舎にやってきた鳩だったが、幸い、新しい飼い主も好人物で、鳩を大切に世話してくれる。
 鳩は恩義に報いようと、鳩レースで結果を出す。
 優勝したのである。
 その後も、鳩の直子(ちょっこ)や孫が鳩レースで大活躍する。
 さて、今ではもう十二歳になり、随分と長生きした鳩だったが、飼い主が最近、鳩に「英雄号」という名をつける。
 脚環番号「AU52年一四八」にあるAUの部分をもじって、エーユー(英雄)としたのだ。

*直子(ちょっこ) 人間でいう実子と同じ意味。直接の子。
     
  題名 鳩と少年
著者 馬野善輝
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆

 『愛鳩の友』の昭和三十三年四月号に掲載された脚本(「教育映画オリジナル・シナリオ」との表記あり。脚本どまりで映像化されていないものと思われる)
 小学六年の杉山正雄は、小児まひにより右足を引きずっている。また、正雄は、片脚が不自由な鳩を飼っていて、自分と同じ境遇に置かれていることに格別な思いを寄せる。
 ある日、その大切に飼っている鳩が鳩小屋から盗まれてしまう。
 犯人は同級生の田中 進で、常日頃、正雄にいじわるをする嫌な人物だった。
 しかし、進は、根っからの悪人ではなかった。ほどなく、罪の意識にさいなまれて、進は、鳩の脚に謝罪の手紙を付して放鳩し、鳩を正雄のもとに帰す。
 正雄のもとに鳩が飛んで帰ってくると、正雄は、
「お母さん、鳩が舞いもどつてきたよツ」
 と、大声で叫んで、喜ぶ。
     
  題名 鳩をめぐる夜話(全二回)
著者 猪俣春吉
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆

 『愛鳩の友』(昭和三十六年十二月号と昭和三十七年一月号)に掲載されたオムニバス形式の小説(三話構成)
 第一話「お天道様だけが知っていた」では、コンディションのよかった灰胡麻のレース鳩が、ハヤブサに襲われて失踪する一方で、それほど強い翼を持っていない、灰二引のレース鳩が、わが子会いたさに底力を見せて、レースで優勝する。灰胡麻の鳩の飼い主は「調子がいいだけでは、鳩は帰らないんだなあ」と思い、灰二引の鳩の飼い主は「おれの鳩は、やっぱり粘り強いんだなあ」と思う。ハヤブサの襲撃について触れられていないのが少し変だが、それはレースの過程を目にすることのできない鳩レースのこと、彼らは灰胡麻の運命を知る由もなく、レースで優勝した灰二引の鳩でさえ、あずかり知らない出来事だった。灰胡麻の鳩の遭難を目にしていたのは、お天道様だけだった。
 第二話「足の不自由な少年と迷い鳩」では、事故によって片足の自由を失った少年が、その不具を同級生から、日々、からかわれて、悔し涙に暮れる。しかし、あるとき、傷ついた鳩を保護し、飼うようになってから、少年はその鳩の姿に勇気づけられて、人生に希望を見いだす。
 第三話「彼には鳩がエンゼルだった」では、満蒙の地で虜囚の苦しみを味わった主人公が、帰国後、一羽のやせ衰えた鳩と出会って生きる力を得る。衰弱していた鳩が次第に元気になっていく様子を見て、鳩に教えられるところが多々ある、と主人公は思う。その後、主人公は、涙ぐましい努力を重ねて、一軒の飲食店を出す。くだんの鳩も、ずっと主人公のそばにいて、エンゼルと名づけられる。エンゼルはやがて死んでしまうが、店の常連の中に学校の先生がいたことから、学校で鳩の話をしてほしい、と主人公は依頼される。そうして、主人公は、子供たちの前で、鳩について大いに語ることとなる。
     
  題名 幻覚の中で聞いた『鳩』の話
著者 滝野省三 作/御所原天生 画
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆

 『愛鳩の友』の昭和四十年十一月号に掲載された投稿小説。
 ある冬の寒い夜のこと、庭にある鳩舎の方から、金属同士をすり合わせるような音が聞こえてくる。主人公が不思議に思って外に出てみると、誰もいないはずの鳩舎の中が明るい。鳩舎に電灯はついていないので、わけが分からない。
 しばらくの間、主人公は、恐怖と不安で足がすくんでしまって、その場に立ち尽くす。
 しかし、背後から突然、
「どうしました?」
 と、声をかけられて、主人公はハッと後ろを振り返る。
 すると、人間ほどの大きさの鳩が立っている――いや、正確にいうと、主人公はいつの間にか、小さくなっていて、鳩と同じサイズになっていた。
「君はいったいだれなんだ?」
 主人公が鳩に聞く。
「わたしをおぼえていらっしゃらない?」
 鳩はそう答えるが、主人公には、この鳩が誰なのか覚えがない。
「そう、それなら、わたしの幼いころの話をして聞かせましょう。そうすれば、あなたもキットわたしを思い出してくれるでしょう……」
 一体全体、この鳩は何を語るのであろうか。
     
  題名 銘鳩(全三回)
著者 二宮和昭
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆


 『愛鳩の友』(昭和五十七年五月号から七月号まで)に掲載された投稿小説。
 デルバール系の銘鳩・パセフィック号を父に持つ、二羽のレース鳩がいる。灰のタイタニック号と、シルバーのヒンデンブルク号だ。タイタニック号は短距離向きの筋肉をしていて、一方のヒンデンブルク号は夜目が利く(長距離向き)
 父親譲りの才能か、タイタニック号が五百キロレースで優勝を果たす。その後、ヒンデンブルク号も、羽幌千キロレースで優勝する。
 しかし、このレースに参加していたタイタニック号が、いつまでたっても帰ってこない。
 一年、二年と、ときが過ぎ去ってゆく。
 そうして、三年半たった、ある日のこと、飼い主の少年のもとにタイタニック号が戻ってくる。
 このタイタニック号について、作者(二宮和昭)は、こう締めくくる。
「きっと、少年は絶対レースに出さないだろう。いや、ひょっとしたら出すかもしれない」
 レースの途中、ハヤブサに襲われたとはいえ、三年半もたってから帰還するなど、レース鳩としては、お話にならない。しかし、反対に考えれば、三年半たっても、自分の鳩舎を覚えていて、この鳩は帰り着いたのである。
 もう一度、タイタニック号を飛ばしてみたい、と思っても不思議ではない。
 鳩飼いの微妙な心情が、この短い一文の中に込められている。
     
題名 三鳩士(全三回)
著者 二宮和昭
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆

 『愛鳩の友』(昭和五十八年七月号から九月号まで)に掲載された投稿小説。
 シオン系とローセンス系の血を引く三羽の鳩――アトス号、ポルトス号、アラミス号がいる。これに、カトリス系とデズメット・マタイス系の血を引くダルタニアン号を加えた計四羽の鳩が、選手鳩として、このお話に登場する。
 くだんの四羽は、手はじめに、百キロレースに参加することになるが、彼らの飼い主である少年は、このレースの持ち寄り時に、ある選手鳩を見かける。その鳩は、燃えるような目と、濃い羽色をしており、なかなか印象的な個体だった。
 さて、百キロレースを無難な成績で切り抜けた四羽は、次の二百キロレース、その次の三百キロレースに進む。そして、少年が目標にしていた五百キロレースに、四羽は挑戦する。
 五百キロレースが開始されると、四羽の鳩は先頭集団を形成してレースを引っ張る。しかし、我孫子付近に至ると、ある一羽の鳩が、四羽と熾烈(しれつ)な競争を繰り広げる。百キロレースの持ち寄り時に目撃された、あの鳩である(燃えるような目と、濃い羽色をした個体)
 やがて、レースが終わって、成績が発表される。
 結果は、分速一四〇三・三二メートルの好記録でダルタニアン号が第二位、アラミス号が第三位、アトス号が第四位、ポルトス号が第五位だった。
 四羽全てが一桁入賞を果たす優秀な成績である。しかし、少年は、うれしい気持ちと惜しい気持ちが入り交じった、何とも言えない複雑な感情を抱く。五百キロレースの第一位を、あの例の鳩に、持っていかれてしまったからだ。
  題名 飛翔(全四回)
著者 二宮和昭
出版 愛鳩の友社
評価 ★★★☆☆

 『愛鳩の友』(昭和五十九年五月号から八月号まで)に掲載された投稿小説。
 ブルー・ライトニング号、ハイド・アビラティ号、フラッシュ・アイ号というレース鳩がレースに挑む。しかし、五百キロレースのときに、フラッシュ・アイ号は、ハヤブサに襲われて、右目を失ってしまう。そのため、フラッシュ・アイ号は、種鳩に回されて、選手鳩を引退する。
 翌年の春、六百レース(野辺地)の火ぶたが切って落とされる。このレースには、フラッシュ・アイ号の直子(ちょっこ)が参加していた。
 レースの途中で、フラッシュ・アイ号の直子(ちょっこ)は、チョウゲンボウに襲われるが、これを何とか振り切って、自鳩舎に帰り着く。
 結果は、総合十位という輝かしいものだった。

*直子(ちょっこ) 人間でいう実子と同じ意味。直接の子。
     
題名 昭和鳩伝説 白い雲(全二回)
著者 じゅん
出版 日本鳩レース協会
評価 ★★★☆☆

 『レース鳩』(平成十七年四月号、五月号)に掲載された小説。どのような事情か不明だが、連載が第二回で打ち切られている。
 ある日、中学生の香月一男は、学校に迷い込んできた一羽のレース鳩を保護する。鳩は翼を傷めていて、ほとんど飛ぶことができない。香月は、動物病院に鳩を連れていって手当てした後、脚環をもとに飼い主に電話する。すると、飼い主は、鳩をそのまま飼ってほしいと意外なことを口にし、今度、家に遊びにきてほしいと言う。
 そこから、香月と川上真二の交友がはじまり、香月は鳩のことを学んでゆく。そして、香月は、百キロレースに挑戦するが……。

*『レース鳩』誌では連載二回までしか読めないが、インターネット上に全文が公開されている(下記のリンク先参照)

白い雲
http://ncode.syosetu.com/n8461cc/
題名 鳩と少年
著者 ひろ・けん一
出版 鳩友
評価 ★★★☆☆

 『鳩友』(昭和四十五年一月号から四月号まで)に掲載された小説。著者は以前に『天使たち』を『鳩友』誌に連載している。

 ――立派な系統の鳩や鳩レースの勝ち負けも重要だが、もっと大切なことがある……。
 ――他鳩舎にふんを落として帰還してくる銘鳩……。
 ――養子に出された子供の鳩が連合会で優勝し、高松宮杯を獲得する……。

 など、鳩と少年をテーマにした、味わい深い連作が胸を打つ。
  題名 伝書バトものがたり(全四十四回)
著者 木村徳太郎 作/菊矢京介 画
出版 毎日小学生新聞
評価 ★★★☆☆


 一郎、三郎、五郎、千代ら、伝書鳩として、この世に生を受けた鳩たちのお話。
 彼らは、舎外運動、放鳩訓練などを経て成長し、遭難した漁船の危機を知らせる。このとき、一郎が、けがをするアクシデントに見舞われるが、彼は無事に保護されて、ことなきを得る。しかし、この漁船遭難事件の後、突然、一郎が鳩舎を飛び出して、どこかに行ってしまう。素行の悪かった一郎が、鳩舎の中で居場所を失っていたからだ。一郎は、嫌われ者だったのである。
 そうして、一郎は、外の世界で知り合ったドバトたちの中に入って、暮らすことになる。しかし、伝書鳩として今まで生きてきた一郎は、なかなか、ドバトの輪の中に入れない。伝書鳩とドバトでは、物事の考え方や暮らし向きなど、さまざまな点で異なっていた。そのうち、一郎は、ある陰険なドバトに目をつけられて、取っ組み合いのけんかになる。
 一郎は、ドバトたちからも嫌われて、ここでも居場所を失ってしまう。
 そんな中、ドバトたちのところに千代がやってくる。一郎の身を案じた、心優しい千代が、彼を連れ戻しにきたのだ。
 こうして、一郎と千代が連れ立って、自鳩舎を目指す。しかし、台風が来襲していたことから、一郎と千代は思うように飛ぶことができない。
 見かねた一郎は、千代に戻るように言って、彼女の身の安全を図る。
 それから、一郎は、単独で飛び続けるが、ふと、家の中に取り残されている人間の子供(二名)を見つける。
 彼らを放ってはおけない。
 一郎は子供たちに近づいて、救援を呼ぶ手紙を受け取る。
 そして、大慌てで、ドバトたちのところに一郎は戻るが、ここで、千代のあとからやってきていた三郎と出くわす。
 一郎が三郎に事情を話すと、三郎はその手紙を受け取って、すぐさま、知り合いの自衛隊員のもとに向かう。自衛隊の助けを借りるために……。
     
  題名 鳩班長
著者 田波又男 作/本田庄太郎 画
出版 朝日新聞
評価 ★★★☆☆


 朝日新聞(昭和八年十月二十日)に掲載された童話。小学四年生の愛鳩家・道夫が学校の小使室で飼鳩の脚に手紙をつけていると、担任の木村先生がやってきて声をかけられる。ちょうどその頃、学校では軍から譲り受けた伝書鳩の飼育係を募集していた。
 木村先生から報告を受けた校長から、道夫は鳩の世話係を命じられる。

     
  題名 ニュース紙芝居
著者 不明
出版 読売新聞
評価 ★★★☆☆

 読売新聞(昭和十四年五月二十一日)に掲載された軍用鳩の漫画。討匪戦に活躍する丸山隊の軍用鳩・隼号が討伐状況を背に勇躍飛び立つ。しばらくすると、突如として現れたオオタカが隼号に襲いかかってくる。
 落ちんとして描く曲線。
 隼号は傷を負ったものの、オオタカの魔手から逃れる。
 隼号は日本国旗目指して飛び続ける。兵隊に抱かれたときには息が切れていたが、完全に任務を果たす。

     
題名 軍用犬 太郎号 (「友情の巻」)
著者 山田政治
出版 犬の研究社
評価 ★★★☆☆

 『犬の研究』(犬の研究社)の昭和十七年六月号に掲載された四コマ漫画。
 
以下、その解説文を引用。

***

①勇敢なる太郎号は敵弾の中を最前線の陣地へ弾丸を運んで突進して行きます
②任務を終えての帰り途、叢の中に敵弾に重傷を負つた軍鳩を発見しました
③軍鳩は重大任務をおびてゐました。太郎号は鳩を背中に伝令地目指して驀地!
④太郎号の友情に依つて軍鳩は無事に任務を果すことが出来ました。太郎号万歳!
題名 怪盗追撃  *表題作を含む三作品を収録
著者 佐川春風
出版 大日本雄弁会
評価 ★☆☆☆☆

 東京全市を震撼させる、神出鬼没の怪盗・天鬼(てんき)
 この泥棒の手にかかれば、地下室の鉄扉や、水に囲まれた大金庫も、粘土細工のおもちゃのように、何らの用をなさない。大銀行や大実業家の財貨が次々に盗み出されてしまう。
 都下の全警察が血眼になって天鬼逮捕に奔走する。しかし、天鬼は非常線をやすやすと潜り抜けて、追跡から逃れる。
 警察無能の声が高まる中、少年探偵の池上富士夫が登場し、天鬼逮捕に乗り出す。
 劇中、富士夫の協力者である西森少年が天鬼に捕らわれる。
 西森少年は、伝書鳩を放って、富士夫に居場所を知らせる。


『日本文学全集88 名作集(三)』
題名 橋  *表題作を含む十七作品を収録
著者 池谷信三郎
出版 集英社
評価 ★★☆☆☆

 シイカという名のミステリアスな女性に恋した男が、その熱に浮かされて犯罪を犯す……。
 全体的に、もやがかかったような不思議な短編で、ストーリーラインをうまく説明できない。
 シイカという女が何者であるのか最後まではっきりしないし、その彼女と交わす会話は詩的で、つかみどころがない。
 この小説の各所に出てくる伝書鳩も、何を意図し、何を象徴しているのか、よく分からない。


『堀辰雄初期ファンタジー傑作集 羽ばたき』
題名 羽ばたき Ein Marchen  *表題作を含む二十二作品を収録
著者 堀 辰雄
出版 彩流社
評価 ★☆☆☆☆

 母親を亡くし、孤児になってしまった美少年・ジジは、千羽の鳩がすみ着くU塔に暮らしながら、日々、泥棒をする。ジジのそばには一羽の鳩がいて、ジジの犯行現場には鳩のふんが必ず落ちていた。
 ジジは美少年であることから、たわむれに女装して盛り場に出かける。うそのように周囲をだませたが、一人の男に感づかれて、あとをつけられる。これに腹を立てたジジは、男とスケート場で取っ組み合いになり、彼を負傷させる。
 その後、警察がU塔に踏み込んで、ジジを逮捕しようとするが、鳩のふんのほかには何も見つからない。しかし、ジジと以前によく遊んでいた少年たちは鋭かった。ジジのいる部屋を突き止めて、ジジに声をかける。
 追い詰められたジジは、U塔の窓に飛び上がって、そのまま宙に身を躍らせる。
 その途端、U塔に巣くう千羽の鳩が一斉に飛び立ち、空を埋める。まるでジジに飛行術を教えるかのように……。
 ジジは地上に墜落して命を落とす。



『海野十三全集』(第四巻)
題名 電気鳩  *表題作を含む十作品を収録
著者 海野十三
出版 三一書房
評価 ★★☆☆☆

 電気鳩は羽毛が紺青色で、翼の先には太い金の筋が二本通っている。動きはぎこちなく、足を妙に引きずる癖がある。実は外国のスパイが作った機械仕掛けの鳩なのである。
 日本に外国のスパイが潜入しているのが判明したのは、愛鳩家の高一少年のお手柄だった。

『愛鳩の友』(平成十七年十二月号)の百二十五ページから引用(*藤本の執筆記事)



『海野十三全集』(第六巻)
題名 怪塔王  *表題作を含む八作品を収録
著者 海野十三
出版 三一書房
評価 ★☆☆☆☆

 日本海軍の最新式戦艦・淡路が座礁する。
 いつの間にか、陸の方に淡路が引き寄せられていって、乗組員が妙だと思ったときには、九十九里浜の浅瀬に乗り上げていたのだ。
 海辺から一キロメートルほど離れたところにある怪塔に住んでいる、怪塔王の仕業であった。怪塔王は磁力砲を使って、淡路を航行不能に陥れたのだ。
 この事件に端を発した、怪塔王の悪だくみに対し、日本海軍、青年探偵の帆村荘六、一彦(中学一年生)とミチ子(小学四年生)のきょうだいが力を併せて立ち向かう。

 劇中で、二羽の伝書鳩を預かった一彦が、「この伝書鳩は何時放すんですか」と塩田大尉に聞く。大尉は「放すのがいいときがくれば、きっとそれとわかるだろうよ」と答える。しかし、その先を読み進めても、最後まで伝書鳩は放たれない。鳩の一文字すら見当たらない。
 伏線を張っておきながら、それが回収されない、という、構成に難のある小説。


『少年小説大系』(第一巻)
題名 怪洞の奇蹟  *表題作を含む十作品を収録
著者 滝沢素水
出版 三一書房
評価 ★☆☆☆☆

 宝部子爵の兄が亡くなったとき、その兄の子である綾衣姫はわずか二歳。宝部家を継ぐにはあまりにも若い。しかも、その母は、綾衣姫を産んだ年に亡くなっていた。
 綾衣姫にさしたる後見人がいなかったことから、現在の当主、すなわち、宝部子爵がはかりごとを巡らす。宝部家を乗っ取るために綾衣姫を殺そうとしたのだ。しかし、宝部子爵に使えていた石阪がこれをいさめる。石阪が綾衣姫を引き取って、自分の娘として育てるという。宝部子爵は、綾衣姫の出自を絶対に明かさないことを条件にして、石阪に莫大(ばくだい)な財産を分け与える。
 さて、ときは流れ、宝部子爵の亡き兄の忘れ形見である綾衣姫は、綾子と名を変えて、石阪家で平穏に暮らしていた。しかし、あるとき、彼女の素性を知った悪人に綾子はさらわれてしまう。
 悪人は綾子を交渉材料にして、宝部子爵を脅迫するつもりなのだ。
 綾子の義理の兄・光雄と、光雄の叔父である民之輔は、石阪式飛行機を用いて綾子の救出に向かう……。

 劇中に、とらわれの身の綾子が、父と兄に連絡を取るために、鳩に手紙を結んで放つシーンがある。


『少年小説大系』(第三巻)
題名 見えない飛行機  *表題作を含む五作品を収録
著者 山中峯太郎
出版 三一書房
評価 ★★★☆☆

 大石正男君の叔父・正成が、外国の間諜にさらわれる。正成の大発明「見えない飛行機」が狙われたのだ。
 「見えない飛行機」の設計図とひな型、そして、その開発者である正成の身が外国に渡れば、大変なことになる。
 正男君は、父親の正年(大日本航空会社社長)・兄の正明(陸軍航空少尉)・愛犬のタケル号(軍用犬)・上杉少佐(正年と正成の友人)・青木伍長(自動車隊)とともに、誘拐された正成の救出に当たる。

 劇中、敵の間諜が残していった伝書鳩を放って、その後ろを飛行機で追跡するシーンがある。伝書鳩が鳩舎に戻れば、そこがすなわち、敵の隠れ家であろう、という寸法だ。
 なお、本作は、大東亜戦争前に発表された児童向け小説である。戦後、ポプラ社から、同名の『見えない飛行機』、改題された『神変黒衣党』という本がそれぞれ発売されているが、内容に改編が見られる。反戦平和という、戦後ならではの思想の影響を受けて、作中に登場する日本軍が別組織に変えられていたり、愛国主義的な記述が削除されていたりする。
 原書の講談社版で本作を読むか、その講談社版を忠実に収録した、三一書房の『少年小説大系』(第三巻)で『見えない飛行機』を読んだ方がよい。


『少年小説大系』(第十三巻)
題名 伝書鳩  *表題作を含む十三作品を収録
著者 村井弦斎
出版 三一書房
評価 ★☆☆☆☆

 題名こそ『伝書鳩』だが、話の本筋に鳩はほとんど関係しない。味わいある雰囲気を醸し出すための演出、もしくは印象的な場面を作り出すためのデコレーションとして、著者が鳩を登場させたのであろうか。
 時間に余裕のある人にだけ、本書をお勧めする。



『少年小説大系』(第二十七巻)
  題名 ダイヤの行方  *表題作を含む三十作品を収録
著者 大下宇陀児
出版 三一書房
評価 ★★☆☆☆


  高島清子さんの家に遊びに行った帰り道、田村文雄君は、赤色のがま口を拾う。中には紙切れが入っていて、以下のように書いてあった。「高島平太郎のダイヤモンドは、青い封の葡萄酒の中にあり。葡萄酒をもっているのは、次の五人の人たちなり――」
 ――高島平太郎!
 間違いなく、高島清子さんの父親の名である。
 以前の高島家は西洋館で暮らすほど裕福で、ダイヤモンドなども所有していた。しかし、今は落ちぶれていて、貧しい暮らしをしている。
 田村君は、何かの都合によって失われた、このダイヤモンドを見つけることができれば、高島家を再興できるのではないか、と考える。しかし、簡単にことは運ばなかった。ダイヤモンドを狙う二人の悪漢が田村君の前に立ちはだかったのだ。
 田村君は無事に、五本のぶどう酒の中に隠されているダイヤモンドを発見することができるのだろうか……。

 劇中に伝書鳩が出てくる。この鳩が鳥もちをつけられて飛べなくなっているところを田村君に保護される。近所の子供たちのいたずらであった。
 後にこの鳩は、悪漢の飼い鳩であることが分かり、田村君は信書管に入った通信文から、悪者たちの動静をつかむ。
   


『香山滋全集』(第十三巻)
題名 秘島X13号  *表題作を含む七作品を収録
著者 香山 滋
出版 三一書房
評価 ★★☆☆☆

 ターンと響く一発の銃声。
 旋盤工をしている岸本正人少年が、銃声のした方を見ると、一羽の鳩が落ちてゆくのが見える。鳩の脚には、小さなアルミニウムの通信筒がつけてあり、それがキラリと光る。
「伝書鳩をうつなんて、ひどいことをするやつだっ」
 岸本少年は大急ぎで庭に飛び出し、撃たれた伝書鳩を抱き上げる。
 すると、伝書鳩を撃った、四、五人の少年がやってくる。
「おい、そのハトはおれたちがうったんだぞ。こっちへよこせ」
 一番の年上らしい少年がそう言う。
 しかし、岸本少年は、こう答える。
「伝書鳩は、ちゃんと持主のある飼い鳥だ。それを知っててうつなんて、きみたちはどろぼうとおんなじだ」
 この発言を耳にした少年たちは激高し、岸本少年に襲いかかる。そして、伝書鳩をつかみ取るや、それを力任せに地面にたたきつけて、靴の底でねじりつける。
 この蛮行に岸本少年は怒りを爆発させて、思いっ切り、一人の少年を殴りつける。
 たちまち、岸本少年の気迫に少年たちは恐れおののき、その場から退散する。
 その後、岸本少年は、伝書鳩の亡きがらを持ち主に返すために、方々を探し回る。やがて、ヘンリー・モルガン博士の伝書鳩であることを知ると、岸本少年はモルガン博士の家を訪ねる。モルガン博士によると、この伝書鳩は、世界秘境探検家協会と連絡を取るために用いていたのだという。
「どうだ。きみは、わたしと一しょに秘島X13号に出かける気はないかね?」
 思いがけないことに、モルガン博士は、岸本少年にそんなことを言う。
「とつぜんこんなことを言い出して、きみは信用しないかも知れないが、じつは、わたしはずっとまえから、きみのような勇気と正義感に富む助手を探しつづけていたんだ。もし承諾してもらえれば、わたしもどんなに心強いかしれない」
「ぼくのほうからお願いしたいくらいです。先生! ぜひ連れていってください!」
 こうして、岸本少年は、モルガン博士の助手として、秘島X13号の探検に乗り出す。


『山田風太郎 ミステリー傑作選9 笑う肉仮面 少年編』
題名 なぞの黒かげ  *表題作を含む十五作品を収録
著者 山田風太郎
出版 光文社
評価 ★★☆☆☆

 青山博士は、黒かげの怪人と称する悪党から、研究書類を出すように脅迫されている。薄く、軽く、魔法瓶のように外の寒さから体を守ることができる、新式の防寒衣が狙われているのだ。
 どこかの国家がこの研究書類を手に入れたら、北極や南極でも独り占めにできる。何としても、書類を守らなければならない。しかし、青山博士は、研究のために北海道に向かうことになっており、青山博士は、小学五年生の鮎子、小学四年生の小太郎、石川助手の三人に、家に残って研究書類を守るように言いつける……。

 作中、小太郎の飼っている伝書鳩・銀河が、犯人を出し抜く切り札として登場する。


『論創ミステリ叢書49 大倉燁子探偵小説選』
題名 鳩つかひ  *表題作を含む二十六作品を収録
著者 大倉燁子
出版 論創社
評価 ★★★☆☆

 高級ダイヤモンドを買った資産家たちのもとに、伝書鳩が送りつけられる事件が続発する。
 伝書鳩にダイヤモンドをつけて放鳩せよ、さもなくば命を取る、という手口である。
 これは脅し文句ではなく、犯人の指示に従わなかった実業家・富田氏がすでに殺されている。
「鳩を飛行機で追いかけたら、どうでしょう?」
 今回で四番目のターゲットとなる杉山三等書記官が、立松捜査課長に言う。どこかの鳩舎に飛んで帰る伝書鳩のあとを追えば、犯人の居所が分かるかもしれない……。
 しかし、立松捜査課長は、こう答える。
「海か砂漠ならいざ知らず、東京及びその近郊では絶対不可能です。犯人はこの弱点を巧におさえている強か者、いかにすれば犯人を誘き出せるかが問題です」
 鳩の帰巣本能を悪用したこの事件に対し――立松捜査課長指揮のもと――赤星刑事が捜査に当たる。


『論創ミステリ叢書91 梅原北明探偵小説選』
題名 吼ゆる黒龍江  *表題作を含む十六作品を収録
著者 梅原北明
出版 論創社
評価 ★☆☆☆☆

 ときは昭和十二、三年。
 日露混血の永田太郎少年(ロシア名――トロフィミッチ・アレクセイ・ペトローウィチ)は、生まれ故郷のハルビン(満州国)から、ハバロフスク(ソビエト連邦)に移り住む。ロシア東支鉄道が満州国に売却されたことによって、鉄道員だった父――ステバノフ・アレクセイ・ペトローウィチ(ロシア人)が、国に戻ることになったからだ。しかし、ステバノフの妻――すなわち、永田少年の母親・繁子が、日本人であったために、ペトローウィチ一家は、あらぬスパイ疑惑をかけられる。独裁者・スターリンが君臨する、密告社会のロシアにおいては、いかにもありそうなことだった。こうして、太郎少年の両親は、いわれのない罪科によって、ゲ・ペ・ウ(ロシア秘密警察)に粛清されてしまう。
 この悲劇から一人逃れた太郎少年は、復讐(ふくしゅう)を誓う。仇(かたき)の国・ロシアの秘密を探って、この情報を満州国に持ち込もう、と。

 劇中に、ロシア側の伝書鳩が出てくる。太郎少年は、この伝書鳩が携行する、暗号化された通信文を手に入れ、これを満州国の国境警備隊に手渡す。
題名 南海の決死隊
著者 茂野幽考
出版 六芸社
評価 ★★☆☆☆

 舞台は鹿児島県の奄美大島。
 帰化某国人――C・W・ゼリナスとその一派が暗躍する。この外国スパイの蠢動(しゅんどう)に対し、南条 茂という快男児が立ち向かう。
 南条は、十二羽入りの固定鳩舎を庭先に設ける。そして、軍から払い下げられた軍用鳩をそこに収容し、『軍用鳩通信教程』に従って厳格な訓練を施す。
 南条は、この軍用鳩を放って、活動状況などを報告する。


『蜻蛉玉』(内田百閒集成十五)
題名 伝書鳩  *表題作を含む四十三作品を収録
著者 内田百閒
出版 筑摩書房
評価 ★★★☆☆

 夏目漱石の門下・内田百閒の佳作。前述した村井弦斎作『伝書鳩』とは打って変わって、こちらの『伝書鳩』は、題名どおりの内容に仕上がっている。
 伝書鳩に興味のある初心者には打ってつけかもしれない。軍用鳩ファンにとっても「中野の軍用鳩調査委員会うんぬん」などの楽しめる記述がある。

題名 伝書鳩
著者 丸木砂土 作/池田永一治 画
出版 大阪毎日新聞社
評価 ★★★☆☆

 『サンデー毎日』の昭和七年十二月二十五日号(歳末爆笑号)に掲載された短編小説。
 山田君夫婦が、以下のように言い合って、一つがいの伝書鳩を飼いはじめる。「伝書鳩を飼おうよ」「そうね。鳩は平和の使いだわ」「国家非常の際には、陸軍のお役にも立つというものだ」「ノアの箱舟へ、オリーブの枝をくわえて飛んで帰ってきたのも鳩でしょう」「鳩に三枝の礼ありさ。行儀のよい鳥だ」
 山田君夫婦はよく日曜日に、奥さんの里の老母に会いにいく。そんなときは決まって、奥さんが鳩に通信文を付して放つ。そうして、山田君夫婦の住む洋館に鳩が帰り着くと、女中のおきよがその通信文を開封する。しかし、その通信文に用件が書いてあるというのに、奥さんは、里の実家から電話をよこす。「おきよ? あたしよ。今鳩を帰らしたからね。通信管を外す時に、手荒くやっちゃ嫌よ」「はあ。御用は?」「鳩から聞いてよ」
 おきよは、ついでに電話で用件をおっしゃってくれたらよさそうなものだ、と思う。
題名 伝書鳩
著者 岡田三郎 作/高木 清 画
出版 大阪毎日新聞社・東京日日新聞社
評価 ★★★☆☆


 『サンデー毎日』の昭和十四年一月号に掲載された短編小説。
 あるとき、けがをした伝書鳩が半田清信の家の庭先に飛び込んでくる。
 半田と内縁関係にある春枝はこの伝書鳩を保護し、脚環から飼い主を割り出す。そして、春枝は鳩を届けるために飼い主の家に向かう。しかし、家はすでに取り壊されていて、現在は鎌倉に住居が移転していることを、春枝は近所の人から教えてもらう。
 その後、春枝は、伝書鳩を届けに行くために、向かいの家に住んでいる二騎八重子とともに鎌倉まで出かける。鎌倉を往復するまでの約三時間、同じときを過ごすうちに、春枝と八重子は親密になる。しかし、そんな二人の関わり合いが、後に春枝の人生に少なからぬ影響を与えることになる……。
題名 茴香物語
著者 住吉の鳩飼
出版 中央普鳩会本部
評価 ★★★☆☆

 『普鳩』の昭和十八年五月号に掲載された短編小説。
 ある日、早大生の春海は、所属先の鳩レースクラブ(長翔クラブ)で、ドイツの愛鳩家が鳩の尾羽にウイキョウ油を塗って鳩レースに出場させているとの話を聞く。尾羽にウイキョウ油が塗ってあると、ほかの鳩がそれに惹きつけられてついていくので優勝できるという。
 この話をうのみにした春海は、さっそく自分の雄鳩の尾羽にウイキョウ油を塗ってレースに出す。しかし、成績は芳しくない。実は、ウイキョウ油を塗るのは雌でなければならず、塗布する箇所も尾羽ではなく肛門部だった。
 ウイキョウ油でベトベトになった尾羽に不自由しながら、春海の愛鳩がレースから帰ってくる。
題名 嗚呼忠烈翼の碑
著者 松沢もとを
出版 中央普鳩会本部
評価 ★★★☆☆

 『普鳩』の昭和十八年六月号に掲載された短編小説。
 無鉄砲部隊として知られる○○部隊が快進撃のあまり、敵陣深く突っ込んで孤立する。幸い、今はまだ夜なので、敵の目を逃れているが、夜が明けたら確実に見つかるだろう。
 そこで、部隊長は思い切って、敵陣に斬り込むことに決する。
 軍刀を振りかざしてゆく部隊長に続いて、○○部隊は○○城に向かって突っ込み、城門に取りつく。
 やがて、夜が明けると、救援を呼ぶために四羽の軍用鳩を放つ(*注)
 果たして、軍用鳩は通信文を無事に届けられるのか。また、救援部隊はやってくるのか……。

*基本的に、鳩は夜間に飛べないので、夜明けを待って放鳩した。


『近代劇十編』
題名 伝書鳩  *表題作を含む十作品を収録
著者 イーデン・フィルポッツ 作/細田枯萍 訳
出版 敬文館
評価 ★★☆☆☆

 イギリスのダートムア近傍の田舎家に、ある老夫婦が住んでいる。
 夫のハリィは死の床にあり、妻のミリィがその世話をしている。
 衰弱し切っているハリィだったが、口は達者で、文句や愚痴をとめどなくしゃべる。特に、隣人のエリアスの話になると、口汚く彼のことをののしる。以前にハリィは、エリアスの豚をくすねたことがあって、彼から訴訟されているのだ。
 やがて、ハリィは、銃を持ってくるようにミリィに言いつける。そして、銃を手にしたハリィは、エリアスが飼っている、五十円もする伝書鳩を撃ち殺そうと狙いを定める。


『学校劇傑作集 第二学年用』
  題名 伝書鳩  *表題作を含む七作品を収録
著者 佐々木緑亭
出版 盛林堂書店
評価 ★★★☆☆


 二郎と三郎の二人の子供が、三羽の鳩を捕まえる。愛玩動物として、家で飼育しようというのだ。しかし、在郷軍人の長兄・初太郎が、この鳩の姿を見て、驚く。脚に丸い金の輪をはめている、陸軍の伝書鳩だったからだ。
 このことを教えられた、二郎と三郎は、すぐに鳩を逃がす。そして、二郎と三郎は、この鳩のように、お国の役に立つために、将来は兵隊になりたい、と思う。
   

 
『昭和名作文庫』
  題名 伝書鳩  *表題作を含む九作品を収録
著者 北村小松
出版 三邦出版社
評価 ★★★☆☆


 悪漢・朱達光が巡らした姦計によって、黄正祝少年の飼っている俊鳩が奪われる。朱はこの鳩から子を取って、漢口の伝書鳩ダービーで優勝するようになる。
 黄少年をかわいがっている木下小太郎海軍少佐は、ある秘策を用いて朱に逆襲するが……。
 帝国軍人と支那少年の心温まる触れ合いを描く時局小説。
   


『ヌリエ・マンガ 僕の絵日記』
題名 伝書鳩  *表題作を含む十作品を収録
著者 岡 堅児
出版 順風社
評価 ★★★☆☆

 線画の漫画が載っていて、それを塗り絵として楽しむことができる絵本。
 勇少年と太郎少年が遊んでいると、伝書鳩が入ったかごを手にした、勇少年のお父さんがやってくる。
「お母さんが勇の手紙を早く読みたいといふからお家の鳩を持つて来たヨ」
「アツ素的早速手紙を書かう」
 勇少年はそう言うと、伝書鳩に手紙を付して、空に放つ。
 お父さんが言うには、伝書鳩は軍用に使われていて、敵弾の飛び交う中にあっても、味方の陣地に手紙を届けるのだという。そして、立派な手柄を立てた鳩には、勲章が与えられるそうである。
 果たして、手紙をたずさえた伝書鳩は、無事に勇少年の家にたどり着けるのだろうか。
題名 白い伝書鳩  *表題作を含む七作品を収録
著者 唐沢道隆
出版 フタバ書院成光館
評価 ★★★☆☆

 雄三と、その兄の和雄は、東京の伯父さんから、稲妻号という名の伝書鳩をもらう。
 鳩のかわいらしさに心を奪われる二人。
 翌朝、友達も興味津々な様子で、伝書鳩を見に雄三の家にやってくる。
 しかし、その日、雄三が学校から帰ってくると、稲妻号の姿が見当たらない。母に聞くと、稲妻号は牛の背山に連れていかれたという。和雄が牛の背山から稲妻号を放鳩しようというのだ。
 牛の背山は、鳩であれば、二、三分もかからずに帰ってこられるところにある。しかし、雄三がしばらく待っても、稲妻号が現れない。雄三は、稲妻号がハヤブサに襲われたのではないかと心配になる。
題名 伝書鳩少年団
著者 近藤健児
出版 児訓社出版部
評価 ★★★☆☆

 出征する兄に代わって、伝書鳩の世話をすることになった康次郎少年。康次郎は、お宮に友達を集めて、伝書鳩少年団を結成する。
 ある日のこと、康次郎は鳩とともに漁船・忠孝丸に乗って沖に出るが、嵐に巻き込まれて帰れなくなってしまう。しかし、康次郎の鳩・三郎号が放たれたことによって忠孝丸の位置が分かり、救助船が派遣される。無事に帰り着いた忠孝丸の船員は、鳩と伝書鳩少年団のおかげだ、と言って、鳩豆をたくさん持って、康次郎のもとにお礼にくる。康次郎がこのことを戦地の兄に手紙で知らせると、その兄は、自分のかわいがった鳩が役に立ったことを喜んで、一層、軍務に励むようになる。
題名 軍馬ト軍犬
著者 大日本雄弁会講談社
出版 大日本雄弁会講談社
評価 ★★★★☆

 軍馬、軍犬、軍鳩の説明と、それらの軍用動物の活躍を紹介している絵本。
 軍用鳩では――昭和十三年五月、山西省で活躍した軍用鳩第七十七号と、昭和十四年四月、通化(満洲)の北方で活躍した軍用鳩第百十二号および軍用鳩第百十三号が取り上げられている。
題名 テガラヲタテル デンショバト
著者 岡 ノボル 作/長谷川ハセオ 画
出版 綱島書店
評価 ★★★★☆

 ここは南方戦線の、とある部隊。
 味方との連絡が途絶えてしまったために、兵隊が伝書鳩を放つ。
「コノテガミハ ダイジナ モノダ シッカリ タノムゾ」
 兵隊の言葉が分かったのであろうか、勇ましく、伝書鳩が飛び立つ。
 しかし、伝書鳩がジャングルの上を飛んでいると、ワシに出くわす。たちまち、伝書鳩は、ワシの鋭い牙にやられて、とらわれの身となる。
 が、そんなとき、日本軍の飛行機が飛んできて、その轟音(ごうおん)にワシが肝をつぶす。
 伝書鳩は、その隙を突いて、さっと逃げ出す。
「オオ ヨク トンデ キテ クレタネ」
 伝書鳩が目的地に到着すると、兵隊が労をねぎらってくれる。そして、孤立した部隊を救うために、すぐに攻撃の準備が整えられる。


『少年少女よみもの
ひろがる雲』
題名 鳩と守備兵  *表題作を含む二十七作品を収録
著者 石森延男
出版 三省堂
評価 ★★★☆☆

 満州に住む叔父を頼るため、神戸を出帆する汽船に乗り込んだ、ある少年が、同じ船に乗り合わせた兵隊と知り合う。しかし、船が大連に着くと、あいさつを交わす間もなく、別れ別れになってしまう。
 さて、叔父が経営する雑貨屋を手伝うことになった少年。
 ある冬の日、少年は北の町に商用に出かける。そして、用事を済ませた少年が駅の待合室で汽車を待っていると、いつかの兵隊と偶然再会する。
 兵隊は、鳩係になったと言って、鳩を使って手紙のやり取りをしようと話すが……。


『戦場の月』
題名 伝書鳩  *表題作を含む九作品を収録
著者 山本和夫
出版 中央公論社
評価 ★★★☆☆

 ある兵隊のもとに、伝書鳩とおぼしき鳩が迷い込む。
 兵隊は、この迷い鳩を支那の子供たちにやって、手紙のやり取りをするようになる。「豚肉七キロ」「ネギとキュウリを十キロ」などと、部隊で必要な物資を調達する際に、この鳩を使って、子供たちが住んでいる村との連絡に用いる。
 そんなあるとき、村から放たれた鳩が、「支那軍が百名ばかり襲撃してきた」との通信文を持ち帰る。すぐさま部隊は出動し、村の守備に当たるが……。
題名 小弓御所
著者 村井弦斎
出版 春陽堂
評価 ★★☆☆☆


 古河の公方(くぼう)足利政氏(あしかがまさうじ)の次男・朝若丸(ともわかまる)が、弓術の試しをするために、逸見山城守(へんみやましろのかみ)を従えて、利根の川岸にやってくる。そうして、朝若丸が、堤の上から辺りを眺めていると、一羽のクジャクバトが飛んでくるのを目にする。
 朝若丸が矢を放つと、見事、クジャクバトの胴中を射抜く。しかし、逸見山城守が、仕留めたクジャクバトを持ち帰ると、鳩の脚に小さな薄紙が結びつけてあることに気がつく。
 薄紙を解いて、広げてみると、そこには、女の美しい手蹟(しゅせき)で、こう書いてあった。「深山の秋の里より速く峯も谷も皆な錦を染めて候ふになど御をとづれの候はぬ、父も御入りを待ち詫びて候ふ、一筆啓上」うんぬん。
 文を見た朝若丸は、
「昔し唐の張九齢は多くの鴿を家に飼ひ親知に書を与ふる毎に鴿の足に結びて往く所を教ゆれば百里の遠きも必ず之に達せしと聞く。左れば鴿を飛奴と号せり、今此の鳩も亦た必ず飛奴の類ならん、如何なる人の何処より何方へ送る使者なるか」
 と、言う。
 そして、朝若丸は、鳩の使者とは知らずに、この鳥を射殺してしまったことを心から悔いる。しかし、逸見山城守が、はたと顔を上げて、こう言う。
「如何に若君、某唯今想ひ出だしたる事の候ふ、隣国岩舟山には孔雀鳩と申す鳩の候ふよし、察するに此鳩は尾の形孔雀に似たれば孔雀鳩にや候はん、然らば此文も岩舟山より出でたりと覚えたり」
 この耳寄りな情報を聞いた朝若丸は、
「然らば山城是より我身を岩舟山に案内候へ」
 と、逸見山城守に命じる。
 こうして、朝若丸と逸見山城守は、鳩の飼い主に会いに行くため、岩舟山に向かう。
  題名 一顰一笑 新粧之佳人
著者 須藤南翠
出版 東京堂
評価 ★☆☆☆☆

 ある女との表向きの連絡手段を絶たれたことから、このままでは無情男子との恨みを買うかもしれないと思い悩む男・浮田。しかし、陳という萩原伯の雇い人から鳩を放すように進言されると、浮田は普仏戦争時の故事に触れつつ、その支那人を才人であると褒めちぎる。
「成程爾だ是りやア何も気が着なんだネ、仏蘭西が普西亜の大軍に巴里の城を囲まれた時に英雄ガンベタが軽気球で囲を脱れ城中へ通信の為に、鳩を使つたのが最初で軍用鳩をさへ使ふやうに成たから是ならモウ大丈夫に相違なしだ、宜い所へ考へが付た陳公も中々才子だ、実に感服〳〵」
   


『青い船』
題名 ヴエニスの鳩  *表題作を含む三十七作品を収録
著者 竹久夢二
出版 実業之日本社
評価 ★★☆☆☆

 昔、イタリアに、一羽の伝書鳩を飼っている若者がいた。その頃のイタリアは、北の方の国と戦争状態にあり、この若者も出征することになる。
 ある日のこと、若者の軍隊に、敵軍が国境を越えてヴェニスに向かっている、との情報が入る。
「ヴェニスを救わねばならぬ」
 若者はそう叫んで、危急の知らせを付した鳩を空に放つ。鳩は、弾丸や硝煙の中をくぐって、一路、ヴェニスを目指す。
   


『扉』
題名 鳩  *表題作を含む八作品を収録
著者 窪川稲子
出版 甲鳥書林
評価 ★★☆☆☆

 鳥の飼育を望む夫に、気のない返事をしてごまかす妻がいる。鳥の世話をする趣味を持ち合わせていないのだ。しかし、夫が、ある店先で見つけた小鳩の話をすると、「あら、かわいいわね小鳩のひよっこ。買いましょうよ」などと、珍しく理解を示す。彼女の母性的性格が刺激されたようだった。
 そうして、家にやってきた、つがいの鳩に例えられて、この夫婦に横たわる、男女の距離感が描かれる。
題名 鳩を放つ  *表題作を含む七作品を収録
著者 藤森成吉
出版 玄文社
評価 ★★☆☆☆

 雌雄一対の鳩を、ある夫婦が飼いはじめる。一つは当時生まれて半年の子供のため、もう一つは彼ら夫婦の気持ちに色彩を添えるため、との理由からである。しかし、はじめこそ、いろいろ物珍しがっていた夫婦だったが、次第に鳩に対する興味を失っていく。鳩を飼育することに、新しい変化も期待も持てなくなると、やっかいな気持ちが生じるようになる。ほかのどんな飼い鳥と比べても手間がかからず、丈夫なので、アワや米を与えておけばいいだけだというのに、その簡単な世話も怠りがちになる。そうして、一年余りたった夏のこと、鳥かごから臭気がたつようになると、日当たりのよい縁側から北側の物置部屋に、鳥かごが移動する。いよいよ、鳩の存在が忘れ去られてしまう。


『水上滝太郎全集』(第五巻)
題名 鳩―おとぎばなし―  *表題作を含む十二作品を収録
著者 水上滝太郎
出版 岩波書店
評価 ★★☆☆☆

 世間的に華々しい名声を上げられず、読書以外の何事にも感興を持たない、四十過ぎの博士がいる。
 そんな博士が、中学時代の恩師の娘を嫁にもらう。博士は昔、離婚しているので、これが二度目の結婚となる。
 薄ら寒い宵、書斎の暖炉の近くで、博士は新妻といすを並べる。まだ、一度も、娘と口を利いていない。今、差し向かいになっても、博士は所在なさに苦しむ。そんなとき、娘が突然、顔を上げて、「うちには鳩が二羽いるんですよ」と、無邪気に話しかけてくる。思いもかけない娘の様子に、博士はまぶたを熱くする。



『小波童話名作集』
題名 鳩のお花  *表題作を含む作品を収録
著者 巌谷栄二
出版 主婦之友社
評価 ★★☆☆☆

 両親のいない娘・お花は、叔母さんの家の厄介になっている。
 意地の悪い叔母さんから下女のようにこき使われるお花。
 昼間は忙しくて本を読む暇がないので、いつも夜更かしして勉強している。しかし、あまり夜更かししたせいで、とうとう目を悪くしてしまう。お花は目医者に通うこととなった。
 ある日のこと、お花は、お花と同じように目を悪くした鳩を保護する。お花は毎日、目医者からもらった薬を鳩につける。そんなことが一週間ほど続くと、やがてお花と鳩の目がよくなる。
 お花の目が治ると、叔母さんの言いつけが輪をかけて厳しくなる。十里ほど離れた、叔母さんの友達の家に手紙を持っていて、その返事をもらってこいというのだ。
 十里といえば大人の足でも一日かかる。家を出たものの、お花は途方に暮れる。そんなとき、お花のもとに、いつかの鳩がやってくる。鳩はお花の手にある手紙をくわえると、どこかに飛んでいく。
題名 黒いチューリップ
著者 アレクサンドル・デュマ 作/宗 左近 訳
出版 東京創元社
評価 ★★☆☆☆

 ときは十七世紀のオランダ。チューリップ作りの大家・コルネリウス青年は、無実の罪を着せられて投獄される。そして、断頭台で処刑されそうになるが、大赦が出て、命をとりとめる。しかし、そうはいっても、釈放されたわけではない。一生涯、牢獄で暮らす運命にある。
 獄中生活の中、コルネリウスは、ローザという、看守の娘と出会い、恋仲になる。
 コルネリウスはローザの協力を得て、ひそかに隠し持っていた、黒チューリップの側芽(そくが)を植木鉢に植える。いまだ作られたことのない黒色のチューリップが開花すれば、ハルレム園芸協会から十万フロリンの賞金が出るのだが……。

 劇中、レーヴェスタインとドルトレヒト間を鳩が往復して手紙を運ぶ。
  題名 ヘーグ奇怪塔
著者 押川春浪
出版 大学館
評価 ★★☆☆☆


 上述した小説『黒いチューリップ』のストーリーを換骨奪胎して書かれた、押川春浪の一作。
 登場人物の姓名が日本名に変えられていたり、作品の根幹をなす花がチューリップではなくバラになっていたり、十万フロリンの賞金が百万ドルに差し替えられたりしている。しかし、それでいて、作品の内容は原作に沿っていて、うまく要約されている。
 人によっては、デュマの原作より面白く読めるかもしれない。
   


『ドイル傑作集Ⅱ 海洋奇談編』
題名 あの四角い小箱  *表題作を含む六作品を収録
著者 コナン・ドイル 作/延原 謙 訳
出版 新潮社
評価 ★★☆☆☆

 アメリカのボストンから、イギリスに向けて出港する蒸気船・スパルタン号。このスパルタン号に乗船した主人公・ハモンドは、恐ろしい妄想にとりつかれる。
 乗り合わせた二人の男――マラーとフラニガンが、小箱に仕込んだ爆発物でもって、二百名の乗客を爆殺しようとしているのではないか……と。

題名 緑の伝書鳩
著者 蔡 丙錫
出版 大東社出版部
評価 ★☆☆☆☆


 池田、山下、三宅の三人の青年が、ある荒れ果てた家の中で、伝書鳩が飛んでくるのを待っている。伝書鳩の脚には、それぞれの妻からの手紙が結びつけられている。
 やがて、三宅の白色の鳩と、山下の赤色の鳩が飛来し、両君の妻が書いた、熱烈な恋文が届く。そして、最後に、池田の緑色の鳩が飛んでくる。しかし、池田の緑色の鳩に付してある手紙が白紙だったことから、三人は当惑する。山下は、「これや呆れてしまつたね。一体どうしたと言ふんだらう?」と言い、三宅は、「夫の手紙の返事の代りに、白紙とは一寸考へもんだな」と言って、池田夫婦の絆に疑問を呈す。しかし、池田は、「つまり妻が、持つてゐる愛情は、それを口で言ひ表はすにはあまりに広闊であり、筆で書き表はすには、あまりに深遠なるものだからさ」と言って、一人で納得する。無論、その都合のよい言い分に、山下と三宅は同意しない。池田の妻の不貞をなじる。これに対し、池田は、「馬鹿なことを云ふな。俺の妻はそれでも、あらゆる女性の中で、もつとも貞操の正しい、人の範となるべき、節婦の一人だぞ!」と抗議する。
 そうして、自身の妻の貞操について、三人が言い争いになったとき、その場にいた信子が、彼らの仲裁に入る。しかし、その仲裁の内容は、実に物騒なものだった。それぞれが覆面をして、三人の妻のもとに押し込み、強姦(ごうかん)すればよい、というのだ。貞操を汚された妻が自害するのかどうか、見てみようというわけである。
 こうして、池田、山下、三宅の妻たちを試す、貞操比べがおこなわれる……。


『将兵を泣かせた 軍馬・犬鳩武勲物語』
題名 鷲とたたかふ  *表題作を含む二十五作品を収録
著者 上沢謙二
出版 実業之日本社
評価 ★★★☆☆


 河原部隊の一隊が、逃げゆく敵を追って、京漢線の山岳地帯を進む。しかし、深く入り込んでしまったために、後軍との連絡が途絶える。そこで、本隊と連絡をつけるために、一羽の軍用鳩が放たれる。
 やがて、軍用鳩は、本隊の真上まで飛んでいく。
 しかし、どうにも様子がおかしい。
 スーッと降り立つのではなく、バターリッと落ちてきて、地上に横たわってしまう。
 鳩係の兵隊が軍用鳩に近づくと、
「あツ」
 と、声を上げる。
 軍用鳩の胸から腹へ血がしたたっていて、脚まで真っ赤に染まっていたのである。
 飛行途中に、軍用鳩は、猛禽類(もうきんるい)に襲われて、命からがら、ここまでやってきたのだ。
「これは大変だ、さア、手当を」
 兵隊が、軍用鳩の脚から通信管を取っている間、河原隊長は、ヨードチンキを、その彼のくちばしにつぎ込む。
 翼の傷を見ると、銅貨ほどの大きな穴が開いていて、骨にまで食い入っている。
 河原隊長が豆やトウモロコシを軍用鳩の口に持っていくが、彼には食べる力もない。見る見るうちにグッタリとなって、ついに冷たくなってしまった。
「おお、日本の鳩は、鳩でもかうだ。自分の役目を終らぬ間は、重傷にも屈しないで、長距離の間をこらえてやってくる。さうして役目を終ると同時に生命も終るのだ。役目と生命と同じなのだ。ほんたうに勇士だ。無言の勇士とはこれだ」
 そう言った河原隊長が兵に命じる。
「みんなこの勇士を手厚く葬つてやれ」


『将兵を泣かせた 軍馬・犬鳩武勲物語』
題名 両足の遺骨  *表題作を含む二十五作品を収録
著者 上沢謙二
出版 実業之日本社
評価 ★★★☆☆


 南京城外に近い、どろどろの細道をゆく、二人の輜重特務兵がいる。
「よいしよ、よいしよツ」
 糧食を山と積んだ車を、一人が引いて、一人が押す。
 そんなとき、後ろから車を押していた高山米蔵特務兵が、地面ばかり見ていたので、道端の草むらの中から、足輪をはめた軍用鳩の脚がニューッと出ているのを見つける。
 高山特務兵がその脚をつかんで、軍用鳩を引き出すと、すでに彼は息絶えていた。
 右の翼から胸にかけて赤黒い血がこびりついている。敵弾にやられて、ここに落下したらしい。
 右の足輪を見ると「仙台東星十一号一二年生」とあり、左の足輪には「四七号」と刻んである。
 やがて、二人の特務兵は、目的地に着くと、戦死した軍用鳩を手厚く葬る。そして、遺体の一部を内地に返してやろうと思って、軍用鳩の両脚を切り取る。
 二人は、東京中野の軍用鳩調査委員会に宛てて、こんな手紙を書いた。
「昭和十二年十二月一日午後六時三十分、南京戦線の道中に於て、敵弾に撃ち落され、名誉の戦死を遂げてゐた鳩君を路傍に発見しました。鳩君も一度は本国へ帰りたかつたでせうに。吾等は自分達を顧みて、このまま見棄てて行き過ぎることができませんでした。せめてりつぱな最期を遂げてゐたこの鳩君の一片の遺骨を、故国へ送ります。何卒懇ろに葬つてやつて下さい。」


『将兵を泣かせた 軍馬・犬鳩武勲物語』
題名 翼を血に染めて  *表題作を含む二十五作品を収録
著者 上沢謙二
出版 実業之日本社
評価 ★★★☆☆


 山西省の山岳地帯をゆく、千田部隊の一支隊(先発隊)が、敵の攻撃を受ける。谷間を進むわが方に対して、敵はその頭上から銃火を浴びせてくる。言うまでもなく、日本軍は圧倒的に不利な状況下にある。このままでは全滅を免れない。
「おい、大下一等兵!」
「はツ」
「鳩を出せ」
 隊長が鳩係の兵隊に命じる。軍用鳩を飛ばして、本隊に救援を呼ぼうというのだ。
 そうして、三羽の軍用鳩が放たれる。しかし、目ざとい敵は、三羽の軍用鳩を銃撃し、そのうちの一羽(百十二号)に手傷を負わせる。
 その日の夕方、二羽の軍用鳩が本隊に到着する。
 通信文を受け取った部隊長は、すぐに救援部隊を派遣する。
 しかし、軍用鳩は三羽いたはずだ。負傷した、もう一羽、百十二号はどうしたのだろう。
 ただ、本隊では、それを知る由もないから、全く問題にされなかった。
 さて、翌朝のことである。
「クークー、クークー……」
 当番の柴田伍長が巡視をしていると、鳩の鳴き声を耳にする。
 柴田伍長が鳩舎の前にやってくると、腹部を血で真っ赤に染めた、一羽の軍用鳩の死骸(しがい)を見つける。足輪を見ると、「千田部隊一一二号」と刻まれていた。
「これは先発隊が持つて行つた鳩だ。それがここまで帰つて来たのだナ。可哀さうにやられたのか」
 手傷を負いながらも、懸命になって鳩舎に戻り、そして、絶命した百十二号の勇姿に、皆は涙を流す。


『将兵を泣かせた 軍馬・犬鳩武勲物語』
題名 一隊の生命の親  *表題作を含む二十五作品を収録
著者 上沢謙二
出版 実業之日本社
評価 ★★★☆☆


 北支の趙県から四キロメートルほど離れたところにある、賈店村の付近で、秋葉隊長以下五十名の部隊が、六百の敵に包囲される。
 多勢に無勢、敵は数を頼みに押し込んでくる。このままでは、到底、持ちこたえられない。
 そこで、この危急を本隊に知らせるために、軍用鳩が放たれる。しかし、敵の銃撃によって撃ち殺されてしまう。
「次、二番目」
 二羽目の軍用鳩が放たれる。しかし、またもや、敵の銃撃によって、撃ち落とされてしまう。
「次だ、三番目だ」
 これが最後の鳩である。この三羽目が駄目だったら、もはや、秋葉隊の命運は尽きる。
「頼むぞ!」
 秋葉隊長と兵たちの思いを乗せて、最後の軍用鳩――第一七五一号が飛び立つ。
 ――パーンパーン!
 敵弾が走る。
 しかし、第一七五一号は、着弾距離を離れて、天高く舞い上がる。
 やがて、一つの点になり、消えてしまう。
 この様子を双眼鏡で見ていた秋葉隊長は、
「行った〳〵、えらいもんだなア」
 と、言う。
 そして、
「おうい、みんな聞け! 鳩は行つたぞ、援軍は間もなく来るぞ、一歩もひくな!」
 と、大声を張り上げる。
 この秋葉隊長の言葉を耳にした兵たちは、勇気を百倍にする。
 しばらくすると、不意に、喊声(かんせい)が上がる。
「新手の敵か、味方の援軍か」
 兵たちはドキッとする。
「来たぞ、友軍が来たぞ!」
 再び、秋葉隊長が大声を上げる。
 何と早い、援軍の到着であろうか!
 しかも、友軍の猛射が目覚ましい。次第に敵が浮き足立つ。
 秋葉隊長は、この機を逃さず、
「突撃用意!――突撃!」
 と、号令を下す。
 この味方の動きに、敵はひとたまりもなく壊走する。
「ありがとう」
「よかった〳〵」
 こうして、秋葉隊長と、救援部隊の大野隊長は、感激の握手を交わしたのだった。
 なお、後で計算してみると、第一七五一号は、分速一キロメートルの速さで本隊に到着したという。


『漫画漫文 飛びある記』
題名 鳩の兵隊さん  *表題作を含む十四作品を収録
著者 紙左馬
出版 読物と講談社
評価 ★★★★☆

 ここは相模原の陸軍通信学校。
 軍用鳩について、鳩飼育係の宗方から僕(主人公)が、実地のレクチャーを受ける。
 現在の飼育羽数、餌、信書管、移動鳩車など、宗方がいろいろと教えてくれる。
 例えば、
「鳩部隊の現役は幾歳までゞす」
 と僕(主人公)が質問すると、
「普通十二、三歳までは働けますが、優秀なのになれば二十歳位でも、まだ元気旺盛な奴も居ます」
 と、宗方が答える。


『芳朗お伽噺 金糸雀の歌』
題名 鳩の使  *表題作を含む七作品を収録
著者 中西芳朗
出版 同文館
評価 ★★★☆☆

 パルチザンに町が襲われる。しかし、電信も電話も、汽車でさえも、雪に埋もれて使用できない。
 町に住む少女・敏子ちゃんが、鳩の白ちゃんを抱き上げて、その脚に小さな紙片を結びつける。そして、敏子ちゃんは、涙に声も震えながら、こう言う。
「鳩ちやん、お気毒だが、町の人のため、お使に行つておくれ、南の町の兵営まで。けれど気を付けて行つておくれ、たとへ鳩でも、のがすまいと外には悪者が待つて居る」
 こうして、鳩の白ちゃんは、助けを呼ぶために、町を飛び立つ。


『実演童話十二集』
題名 鳩の招魂祭  *表題作を含む十二作品を収録
著者 内山憲堂 三輪寿雄
出版 南海書院
評価 ★★★☆☆

 パルチザン討伐の任を帯びた、第十一師団所属の日本軍五百が、パルチザンの妨害工作(電信および電話線の切断)に遭って消息を絶つ。しかし、一隊の案内に当たっていた、茂雄君と美代子さんのお父さんが、伝書鳩を放ったことから、ニコリスクにいることが判明し、ことなきを得る。一隊を救うために、救援隊が派遣されたのだ。
 残念ながら、一隊の居所を伝えた伝書鳩は、茂雄君と美代子さんの家に帰るのと同時に、死んでしまう。敵弾によって、白く美しい翼が真っ赤に染まっているのが無残だった。
 その後、この伝書鳩は、第十一師団の招魂祭で手厚く祭られる。


『ベルギー童話集』
  題名 鳩の巡礼  *表題作を含む十四作品を収録
著者 加治亮介
出版 金蘭社
評価 ★★★☆☆


 十字軍の放ったタカによって、サラセン人の住む土地に暮らす鳩たちが、次々に命を落とす。手紙を運ぶことのできる鳩は、十字軍から秘密探偵として危険視されたのだ。
 こうして、鳩たちは仕方なく、サラセンの地を捨てて、北国ノルウェーに移り住むが、これを歓迎する、妖精の女王フリーヤから、氷の御殿に来てほしい、と招待を受ける。
   


『ベルギー童話集』
題名 ベルギーに行った伝書鳩  *表題作を含む十四作品を収録
著者 加治亮介
出版 金蘭社
評価 ★★★☆☆

 妖精の女王フリーヤから招待を受けた鳩の王様は、仲間の中で一番美しい、つがいの白鳩を、氷の御殿に遣わす。しかし、そんなとき、妖精の国では、困ったことが起きていた。もうすぐ、二月十四日のヴァレンタイン祭がやってくるというのに、贈り物を配るための四輪馬車の引き手がいなかったのだ。
 途方に暮れたフリーヤ女王は、御殿に招待した白鳩たちに、大変に強い羽根を持った伝書鳩であることを見込んで、四輪馬車の引き手になってくれるように頼む。
 さて、ヴァレンタイン祭の当日、フリーヤ女王の依頼を受けた白鳩たちは、「ヴァレンタインの手紙」を銀の車に乗せて、各家を巡り、心がけのよい男女を結婚させるために奔走する。
 その後、この忠実な白鳩たちは、フリーヤ女王に気に入られて、百年もの間、そばに置いておかれる。
 白鳩たちがノルウェーを去ったのは、ベルギーの乙女・イヴーネの招聘(しょうへい)を受けてからのことである。


『新しい童話 二年生』
  題名 鳩のばうけん  *表題作を含む二十四作品を収録
著者 渋沢青花
出版 金の星社
評価 ★★☆☆☆


 正夫君が飼っている、子供の姉弟鳩が、はじめて鳩舎の外に出る。
 空の広さや、花の美しさなど、物珍しい景色に、二羽の子鳩は興味津々。
 しかし、そのうちに雨が降り出す。
 二羽の子鳩は寒さを覚え、困ってしまう。
 仕方がないので、二羽の子鳩は、瓦屋根の下に入り込んで、雨をしのぐ。
 しばらくすると、二階の戸が開いて、正夫君のお父さんが現れる。
 二羽の子鳩は、正夫君のお父さんに抱き取られて、鳩舎の中に戻される。
 そうして、お父さん鳩とお母さん鳩のところに戻った二羽の子鳩は、心細い思いをしたことを話す。
 すると、お母さん鳩は、二羽の子鳩をこう諭す。
「それが、世のなかといふものです。世のなかのことは、こやのなかにゐては、わかりません。世のなかには、こはいこと、かなしいこと、さびしいことが、たくさんにあります。おまへたちは、はじめて世のなかを見て、おどろいたでせう。もうこりたから、これからは、けつして外へ出ないと、おいひだが、いまにまた、きつと出たくなりますよ。世のなかのものは、みんなさうして、一どでこりず、二度でこりず、だん〳〵に、世のなかへ出てゆくのです。そして、もつと〳〵たくさんの、こはいこと、かなしいことに出あふとともに、たのしいこと、うれしいことにも、出あふのです」
   


『実演童話 第一集』
題名 三ちゃん鳩  *表題作を含む四十作品を収録
著者 鹿児島県女子師範 鹿児島県立第二高等女校友会談話部
出版 鹿児島県女子師範 鹿児島県立第二高等女校友会談話部
評価 ★★★☆☆

 伝書鳩に憧れているお宮の鳩――三ちゃんが、新聞社の鳩の中に潜り込んで、いっちょまえに伝書鳩を気取る。
 もちろん、気取っているだけなので、伝書鳩の用をなせずに、どうにもならなくなる。
 ここで、三ちゃんは考える。
「僕はもう伝書鳩になつてしまつたのだ。だから、こんなりつぱな脚環などはめられたんだ。宮鳩なんかは、こんなモダンは夢にも見たことはないんだ。僕も出世したなァ。一生懸命に後の伝書鳩について飛ぶのはバカらしい。それよりも、ゆつくりととんで、宮へ帰つて、みんなを一つうらやましがらせて、おどろかしてやらう」
 はじめこそ、三ちゃんのハッタリが利いて、三ちゃんはお宮の鳩たちのヒーローになる。しかし、すぐに、三ちゃんが逃げ帰ってきたことが知れて、三ちゃんは大恥をかく。


『草笛吹けば』
  題名 鳩  *表題作を含む二十作品を収録
著者 北川千代
出版 四条書房
評価 ★★☆☆☆

 警察官の息子・純一が、駐在所の前に立っていると、鎮守さまの鳩が目の前をかすめる。純一は、この鳩を捕まえようとするが、父にとめられる。昨日も父は、百姓の子供が鳩に石を投げようとしているのを見つけて、うんと叱ったそうである。
 それから四、五日たった頃、ご飯を食べている純一の耳に、ズドンという空気銃の音が響く。純一が「あっ」と思ったのと同時に、父が「こらっ」と怒鳴って、外に飛び出す。しかし、どうしたことか、鳩を撃ち殺そうとした者が地主の息子であることを知った父は、態度をころっと変える。鳩を撃ち損じた地主の息子に、「貸してごらんなさいまし、わたくしが撃ってお上げしましょう」と申し出たのだ。警察官の息子であることを誇りに思っていた純一だったが、そのとき、はじめて、父を小さくみすぼらしく感じる。

   


『草笛吹けば』
題名 鳩の子とのこされたヒヨコ  *表題作を含む二十作品を収録
著者 小野政方
出版 四条書房
評価 ★★☆☆☆

 正子の姉・民子が、勤め先の小使いから、伝書鳩のひなをもらってくる。
 ひなは、正子の母が飼い鳥屋から買ってきた、麻の実、ヒエ、トウモロコシを食べて、日に日に大きくなっていく。
 ある日、正子の父が、四羽のヒヨコ(ニワトリ)を正子のために買ってくる。しかし、五日目の朝、どら猫にヒヨコが襲われ、四羽のうちの三羽が死んでしまう。
 父は、一羽だけ残ったヒヨコを哀れむ。
 夜、父は、ヒヨコとともに一緒に眠る。
 朝、目覚めると、鳩のひなとヒヨコが父の膝の上に飛び上がり、鳩のひなのお尻の下にヒヨコが潜り込む。
 鳩のひなとヒヨコが互いに安心している様子を見た父は、心から神様に感謝する。


『朝とひるとよる』
題名 でんしょばと  *表題作を含む二十一作品を収録
著者 下畑 卓
出版 増進堂
評価 ★★★☆☆

 杉林の中で放たれた、二羽の軍用鳩が、自鳩舎を目指す。
 途中で、飛行機に出合ったり、汽車の上を飛んだりしながら、軍用鳩は飛び続ける。
 やがて、練兵場の鳩小屋に近づくと、大勢の兵隊が立っているのが目に入る。
「さあ やっと かへったよ」
 軍用鳩は、そう言って、地上に降り立つと、兵隊のいる方に向かう。
 兵隊の手の中には、おいしい豆がたくさん乗せてあるのだった。


『童話と童話劇
夢の小函』
題名 皇子と伝書鳩  *表題作を含む十三作品を収録
著者 青木音明
出版 船唄詩社
評価 ★★★☆☆

 リラという王が治めるある国に、隣国が攻め込んでくる。リラ王がたくさんのお供を連れて獣狩りに出かけた隙を突かれたのだ。
 城を守る留守兵は百人ほどしかいない。一方の敵軍は万を数える。皇子のフリーは、この危急を知らせるために、二羽の愛鳩の脚に手紙を結んで空に放つ。
 衆寡敵せず、あと一時間もすれば落城するかと思われたとき、にわかに敵軍の後方が騒がしくなる。フリー皇子が放した鳩によって、援兵がやってきたのだ。


『教育小説 青葉若葉』(上巻)
題名 白鳩館  *表題作を含む三作品を収録
著者 繁野天来
出版 春陽堂
評価 ★★★☆☆

 古道具屋の文蔵少年が、水菓子屋のばあさんから白い伝書鳩を譲り受ける。
 この伝書鳩を、人々がこぞって、通信用途に利用したことから、毎日、少なからぬ金が文蔵少年の懐に入る。しかし、そうした評判は、好ましくないやからをも引き寄せる。無法者たちの目について、文蔵少年の伝書鳩が盗み出されてしまったのだ。
 無法者たちは、一週間ほど、伝書鳩を馴致(じゅんち)する。無法者たちの親分である源八との通信に、これを用いようというのだ。そして、もうこれならばよかろう、という頃合いになって、手紙を付した伝書鳩を飛ばす。手紙には、相馬屋に押し入って金を盗み出す算段が記されていた。
 しかし、無法者たちのもくろみは破綻する。一週間ほどの馴致(じゅんち)では、伝書鳩が新しいすみかを覚えられるはずもなく、文蔵少年のもとに伝書鳩が帰ってきたからだ。
 文蔵少年が、この物騒な手紙を警察に届け出たことにより、源八をはじめとする無法者たちは、お縄になる。
題名 白い鳩をたづねて  *表題作を含む十三作品を収録
著者 吉田紘二郎
出版 日本評論社出版部
評価 ★★☆☆☆

 真一(しんいち)が大切にしている白い鳩が盗まれる。松大夫(まつだいふ)という悪人の仕業である。
 松大夫の息子の勘六(かんろく)が、
「父ちやん、俺今度は雪のやうに白い、そして頭に青い星のある鳩が欲しいだ」
 と、言うので、松大夫が真一の鳩を奪ったのである。
 白い鳩のことが心配でならない真一は、松大夫の後を追って、彼の家を訪ねる。
「僕は君が今日僕の白い鳩を盗んだから、それを取り返しに来たんだ」
 と、真一が言う。
 しかし、松大夫は、
「白い鳩を? 馬鹿ぬかしくされ」
 と、言って、取り合わない。
 果たして、真一は、松大夫から、白い鳩を取り戻すことができるのだろうか。


『男の声』
題名 鳩飼ひ  *表題作を含む七作品を収録
著者 生田 葵
出版 祐文社
評価 ★★☆☆☆

 三十羽ほどの鳩を飼っている、お新という娘が、競り市で白い鳩を手に入れる。
 白菊(しらぎく)と名づけられた、その鳩は、半月ほど、お新の家の鳩小屋でならされてから舎外に出される。しかし、帰巣本能の強い鳩のこと、半月の馴致では足りなかったと見えて、白菊はどこかに飛んでいったまま、失踪してしまう。
 それから一ヶ月ほどたった頃、お新が競り市に行くと、白菊が競りに出されているのを目にする。
 お新の心は燃えるようになり、気づいたときには、またもや、白菊を購入していた。そして、今度は、念には念を入れて、お新に思いを寄せるように、白菊の世話をする。しかし、お新の心の半分も伝わらなかったらしい。白菊は再び、どこかに飛び去ってしまう。
 しかし、お新は、白菊にまた……。


『幼稚園お話集』(中編)
題名 伝書ばとのたより  *表題作を含む四十作品を収録
著者 日本幼稚園協会
出版 フレーベル館
評価 ★★☆☆☆

 お姉ちゃんの秀子ちゃんとその弟の一郎くんが外で遊んでいるときのこと、一羽の伝書鳩がやってきて、ドングリの木にとまる。
 秀子ちゃんと一郎くんが、そっと近づいて、伝書鳩を捕まえる。
 伝書鳩の脚には手紙がつけられていて、こんなことが書いてあった。
「お友だちへ、
 この手紙を受け取った人は、またお返事をくださいませ。ぼくは東京にいる子どもです。今、幼稚園でこの手紙を書いてはとにつけて、とばします。この手紙がどんな方にとどくかわかりませんが、大きくなったら東京に遊びにいらっしゃい。この手紙にお返事をください」


『聊斎志異』(下巻)
題名 鴿異
著者 蒲松齢
出版 平凡社
評価 ★★☆☆☆

 『聊斎志異』の巻六に「鴿異」(こうい)という話が載っている。価値観は人それぞれ、豚に真珠、といったらよいのか、考えさせられる内容である。
 無類の鳩好きで、名だたる鳩飼いとして知られる公子・張幼量。張は全種の鳩を集めようとしており、鳩の世話も徹底していた。
 ある夜、張は、白衣を着た少年の訪問を受け、素晴らしい鳩を見せてもらう。鳩の世界で得意になっていた張は己を恥じつつ、鳩を譲ってほしいと頼む。そうして、張は、その少年から二羽の白鳩を譲り受け、雌雄をそれぞれ、三羽ずつ育てる。
 あるとき、張の父の友人である某公から、どれくらい鳩を飼っているか、と張は問われる。鳩がお好きなんだろうな、と張は思い、上等の鳩を二羽、某公に贈る。しかし、その後、某公に会っても、某公はちっとも鳩のお礼を口にしない。我慢できなくなった張が鳩のことを聞くと、肥えていてうまかった、と某公は言う。張はびっくりしてしまって、あれはそんじょそこらの鳩ではなく韃靼(だったん)といわれている、と説明する。しかし、某公は、味にも全く変わったところはなかった、と的外れな感想を述べる。張はすっかり落ち込んでしまって、飼っている鳩をみんな人にあげてしまう。たった数日で一羽もいなくなる。


『義太夫節浄瑠璃未翻刻作品集成 37 丹生山田青海剣』
題名 丹生山田青海剣
著者 並木宗輔
出版 玉川大学出版部
評価 ★☆☆☆☆

 源 満仲が加茂明神に参詣した帰り道、乗り物の中に一羽の白鳩が飛び込んでくる。満仲は、源家の氏神授け給う、と喜んで、これを飼養し、かわいがる。
 この白鳩は、その後のシーンで、光源氏の命が危うい、との文を脚に結ばれて放たれる。
題名 常夏草紙
著者 曲亭馬琴
出版 藤谷崇文館
評価 ★★☆☆☆

 鳥田荘二時主(とりたのしょうじときぬし)の娘・撫子(なでしこ)は、美人の誉れ高い淑女である。毛牆(もうしょう)や西施(せいし)も面(おもて)を恥じ、絳樹(こうじゅ)や青琴(せいきん)も鏡を覆うほど、といわれている。そして、時主の家の東隣に住んでいる稲城補二郎(いなきほじろう)も、まれに見る美少年であった。
 ある日、補二郎が書き物をしていると、一羽の鳩が迷い込んできて、机の下に隠れる。タカに追われたのか、あえぐこと、甚だしい。
 野鳥は人を恐れて、その足音を聞けば、たちまちにして飛び立つ。しかし、この危急に及んでは、かえって人の助けを求める……。
 これを哀れに思った補二郎が鳩を保護する。
 そうして、十日余りたつと、鳩がなれてきて、そのまま、補二郎の家にすみ着く。鳩は、男山(おとこやま)と名づけられて、補二郎から非常にかわいがられる。
 男山は、時主の前栽(せんざい)に飛んでいって、落ち葉などをよく拾った。
 時主のしもべの中で、隣家の鳩のことを知らない者は、誰一人としてなかった。
 そこで、以前から補二郎に恋い焦がれていた撫子は、一計を案じる。
 男山の脚に、補二郎に宛てた恋文を結びつけたのだ。
 しかし、色を好まない補二郎にその気がなかったことから、男山を介して受け取った恋文の扱いに、補二郎は困ってしまう。
 補二郎は男山の脚に、断りの文を結びつける。
 が、悪いことに、時主にその文が渡ってしまう。
 これを目にした時主は、補二郎を密夫だと誤解し、撫子の不貞を疑う。
 時主は、男山を殺すように家来に命じる。
 男山を打ち殺せば、艶簡(ふみ)のやり取りが途絶える、と、時主は思ったのだ。
題名 南総里見八犬伝(全十巻)
著者 曲亭馬琴
出版 岩波書店
評価 ★☆☆☆☆

 『南総里見八犬伝』の肇輯巻之三の第五回「良将 策 を 退て衆兵仁を知る 霊鴿書を伝て逆賊頭を贈る」に、鳩が登場する。
 該当箇所を以下に引用しよう。

***

「兵粮乏しくなりぬるよしは、予も又これを患ざらんや。物を思へば空のみか、彼此となく瞻望れば、東南のかたなる豆畑に、鴿夥求食あり。彼何処より聚ふと見れば、滝田の城より旦に来て、夕になれば還るかし。鳩は源家の氏の神、八幡宮の使者とぞいふなる。これによりて不意、些の術を獲たりしかば、則神に祈りつゝ、壮佼どもにこゝろ得さして、窃に〓
(あみがしら+巾+隹)して件の鳩、五六十を捕たり。かくて数通の檄文を書写め、件の鳩の足に結びて、放さばかならず城へ還らん。さるときは人怪みて、鳩をとらへてその書を見つべし。よしや捕ることなく共、結目解て落るもあらん。城中にあるとあるもの、この檄文を披閲て、逆を去、順に帰す、こゝろ起らば変を生じて、城は攻ずも 必破れん。縡もし成らば国の仇、賊主定包をのみ誅して、民の望を果すべし。城兵予て定包に、従ふこゝろなきものも、こなたへ参らばなか〳〵に、誅せられん、と阽みて、仇の為に城を守るか。是も又不便なり。誠に小児の智にひとしく、果敢なき謀に似たれども、曩に此方へ寄するとき、待崎のほとりなる、白籏の神に祈れば、山鳩の祥瑞あり。今又こゝに鴿の祐あらばと祈るのみ。
題名 帰れ白鳩
著者 田郷虎雄
出版 東和社
評価 ★★★☆☆

 画家の篠崎曉風(しのざきぎょうふう)は、若い頃は、無名だったために、充分な収入を得られず、友永美枝(ともながみえ)との仲を、美枝の父親から認めてもらえなかった。そのため、美枝は、友永家を家出同然の状態で飛び出して曉風(ぎょうふう)と結婚する。
 その後、曉風(ぎょうふう)と美枝は、波子と修二の二子をもうけるが、相変わらずの貧しい日々を送る。
 そうした中、悲劇が起こる。
 波子が病に倒れて重体になったのだ。
 治療費の当てのない美枝は、途方に暮れて、実家の父親を頼ることにする。
 その翌日、曉風(ぎょうふう)のもとに、美枝の手紙とともに、大金の小切手が送られてくる。しかし、それ以来、美枝は姿を消して、曉風(ぎょうふう)や子供たちの前に現れることはなかった……。

 劇中に、二羽の伝書鳩(チルチルおよびミチル)が登場する。
 この二羽が活躍して、事件に巻き込まれた波子の窮地を救う。
題名 娘と息子たち
著者 細川 健
出版 秋元書房
評価 ★★★☆☆

 十七歳の女子高生・令子の住む家には、二十五、六羽の鳩がいる。令子の兄・一也が世話をしている愛玩動物だ。
 ある日、この鳩たちの中に、信書管を着けた一羽の伝書鳩が迷い込む。しかし、通信文を取り出しても、文章が暗号化されていて読むことができない。そこで、日本新聞の並木記者(一也の大学の先輩)に協力を仰いで、暗号化された通信文を解いてもらうが……。


『全国の先生方の新作童話集 ふしぎな帽子』
  題名 鳩をよぶ口笛  *表題作を含む十四作品を収録
著者 越野慶吾
出版 児童憲章愛の会
評価 ★★☆☆☆


 今年で小学五年生になる三郎は、鳩を飼っている。
 三郎は、学校で勉強しているときも、「早く家に帰って、鳩を相手に遊びたいなあー」と思うほど、鳩のことが好きだった。
 そんなある日のこと、三郎の鳩が何者かによって盗まれてしまう。
 三郎は、われを忘れて近所を探し回る。しかし、鳩の姿はどこにも見当たらない。
 それからというもの、三郎は毎日、行方知れずになった鳩を探し回るようになる。
   


『童話集 でんしょ鳩』
題名 伝書鳩と詩集  *表題作を含む十五作品を収録
著者 山本あきら
出版 日本基督教協議会文書事業部
評価 ★★☆☆☆

 六年生の行男と、事務員をしている姉・サユリが晩ご飯を食べている。
 いつになく晴れ晴れしているサユリが、「ユキちゃん、ほら、あたしの詩がここに出てるわよ」と言って、薄っぺらい雑誌を取り出す。そして、頼みもしないのに、自作の詩を朗読する。
 行男は、一人ではしゃいでいる姉が面白くなくて、黙っている。しかし、もらえる原稿料で何でも買っていい、とサユリが言うので、行男はずるそうに、「じゃ、伝書鳩でいいよ」と、答える。
題名 岬の少年たち
著者 福田清人
出版 旺文社
評価 ★★☆☆☆

 岬の漁村に住んでいる少年・ビン。彼はある日、白髭をたくわえた、旅の老人から、赤玉と青玉をもらう。
 赤玉を握り締めると、何ものをも恐れない勇気が湧いてくる。青玉を握り締めると、悪い心が和らいで、冷たい心が温かくなる。このビー玉くらいの大きさの不思議な玉を手にしたビンの冒険譚が語られる。

 劇中、海賊の巣窟に潜り込む際に伝書鳩が放たれる。ビンの身に危険が迫ったら、仲間のもとに知らせるように打ち合わせてあったのだ。


『クローバーの誓い』
題名 恋の伝書鳩  *表題作を含む十九作品を収録
著者 大石もり子 作/三上英夫 画
 マリ企画
評価 ★★☆☆☆

 伝書鳩のモモは、巣のある八百屋ではなく、せんべい屋に帰ってしまう困った鳩。せんべい屋の娘・お葉さんが、モモを八百屋まで届けに行くのが毎度のことになっていた。
 そんなある日、モモの世話をしている勇さんがせんべい屋に現れる。
「ごめんなさいよ、ヤッチャ場から参りました。八百留さんのお話しだと、いつも伝書鳩を届けて下さっているそうで、お礼に伺いました」
 気まぐれなモモによって出会うことになった勇さんとお葉さん。その後、二人は、めでたく結婚することになる。
題名 ぼくらの青空通信
著者 田辺政美 作/広野瑞枝 画
出版 文研出版
評価 ★★★☆☆

 負傷して家に迷い込んできた伝書鳩を保護した小学生――田口たつひこ。
 たつひこは、伝書鳩にピッポという名を与えて、けがが治るまで、飼うことにする。
 やがて、ピッポの傷が癒えると、たつひこは、ピッポの脚に通信管を付して、放鳩する。
 通信管の中には、氏名と電話番号を添えた、こんな手紙を入れておいた。
「二月二十八日の夕方、このハトが、うちのベランダにいました。羽にけがをしていました。ハト小屋をつくって世話をしましたが、少し元気になったので飛ばします。ぼくは、今度小学校六年生になります。いっしょうけんめい世話をしました。このハトの持ち主のかた、この手紙を読んだらぜひ連絡をください」
 その後、ピッポは無事に、もとの飼い主のところに飛んでいって、たつひこの手紙を届けてくれる。
 しかし、どうしたことか、ピッポはまた、たつひこの家の鳩小屋に帰ってきてしまう。
 これは、どういうことかというと、ピッポは、たつひこの家の鳩小屋を寝床に定めて、餌は飼い主のところの鳩小屋で食べるようになっていたのである。すなわち、意図せず、二点間の往復通信が実現する。
 ここから、ピッポを介した通信文のやり取りが、二点間(たつひこ~飼い主)でおこなわれる。
 しかし、ピッポの飼い主であるイサム(中学生)が謎めいていて、カタカナで記した、ぶっきらぼうなメッセージしか、たつひこによこさない。
 一体、イサムという中学生は、何者なのか?
 たつひこは自転車に乗って、イサムの家を訪ねるが……。
題名 鳩を撃つ  *表題作を含む六作品を収録
著者 五木寛之
出版 新潮社
評価 ★☆☆☆☆


 平和の象徴というイメージがあるためか、恐怖の対象として鳩を登場させている作品は少ない。しかし、本作は珍しく、突如として大量発生したドバトに、精神をむしばまれていく男の話がつづられている。
 伝書鳩が登場しないので、本項の趣旨に反するのだが、内容が珍しいので取り上げる。

  題名 鳩が来る家  *表題作を含む十三作品を収録
著者 倉阪鬼一郎
出版 光文社
評価 ★☆☆☆☆


 『鳩を撃つ』に続いて『鳩が来る家』を紹介する。本作も『鳩を撃つ』と同様に、恐怖の対象として鳩を描いている珍しい恐怖小説である(ただし、伝書鳩は登場しない)
 狂死した父と自殺した母。嘗羅家(なめらけ)最後の生き残りである嘗羅雄作は、父が鳩を恐れていた理由を悟る。そして、母が淫売にやつした末に命を絶ったわけも……。

     
題名 青空士官
著者 吉川英治
出版 早川書房
評価 ★★★★☆


 新聞社が伝書鳩を使って通信していた頃の雰囲気が味わえる一作。かの吉川英治の小説だけあって、作品世界にぐいぐい引き込まれる。
 腕のいい電信技手でありながら、意地っ張りな性格がたたって、方々の電信局をクビになっている青年が、ひょんなことから、とある二流新聞社の鳩係として雇われるが……。

題名 灯台と伝書鳩
著者 高野てつじ
出版 天佑書房
評価 ★★★★☆


 一年前のこと、灯台に住んでいる啓二少年は、灯台視察船・羅州丸の視察員に対し、伝書鳩が欲しいと頼む。そして、その羅州丸が、啓二のいる灯台に一年ぶりに回航してくる。「君ですね、伝書鳩がほしいって言ったのは」。羅州丸に乗ってやってきた弘少年に、啓二はそう、声をかけられる。
 とっさのことで何のことか分からず、ポカンとする啓二。しかし、弘が、背中に背負っているかごの中から伝書鳩を取り出すと、「あっ! 鳩」と、啓二は言って、状況を飲み込む。
 その後、啓二は、鳩飼育の手ほどきを弘から受けて、夜間通信をおこなえるまでに腕を上げる。
 そんなある日のこと、管理標識を見て回る見回船に、啓二と弘が鳩を携行して乗り込む。海上から放鳩訓練しようというのだ。しかし、見回船が故障し、嵐に見舞われたことから、のっぴきならない事態となる。
 海上に取り残される啓二たち。
 啓二は、救助船を呼ぶために、通信紙を付した愛鳩を空に放つ。



『羆』
題名 鳩  *表題作を含む五作品を収録
著者 吉村 昭
出版 新潮社
評価 ★★★☆☆


 道を究めようとする者は、ひたすら、いばらの途を突き進む。世間一般でいうところの平凡かつ幸せな一生には興味がない。たとえ、最後に破滅が待ち受けているとしても、求道者は求道者らしくあらねばならないと思っている。
 本作の主人公も、あらゆるしがらみに背を向けて、鳩レースだけに打ち込む。生半可な気持ちでは鳩レースの競翔家が務まらないことを思い知らされる作品。



『水中都市・デンドロカカリヤ』
題名 手  *表題作を含む十一作品を収録
著者 安部公房
出版 新潮社
評価 ★★☆☆☆


 鳩兵に飼育されていた、ある軍用鳩が、剥製、銅像、弾丸に変容していく様を語る短編小説。
 フランツ・カフカ作『変身』のような物語だと思ってもらえれば差し支えない。
 ちょっと難しい内容なので、人によっては退屈な時間を強いられるかもしれない。
  題名 戦時下動物活用法  *表題作を含む十作品を収録
著者 清水義範
出版 新潮社
評価 ★★☆☆☆

 戦時下において、いかに動物を戦争に協力させるか、という趣旨のユーモア小説。
 著者は、鳩、犬、猫などの戦時利用について、ああだこうだ冗談交じりに述べる。
 荒唐無稽と卑猥が合わさったジョークはつまらないばかりか、売国的とさえいえる。特に大東亜戦争当時の言葉遣いを茶化しているところがいただけない。

     
  題名 少年探偵 怪人二十面相
著者 江戸川乱歩
出版 ポプラ社
評価 ★★☆☆☆


 羽柴家が所有している鎌倉時代の観世音像を盗み出すと宣言した怪人二十面相。
 名探偵・明智小五郎の助手である小林少年は、観世音像に化けて怪人二十面相の隠れ家に潜入する。しかし、怪人二十面相の罠にかかって捕らえられてしまう。
 小林少年は、監禁されている地下室から伝書鳩のピッポを放って助けを呼ぶが……。
 本作以外にも、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズに伝書鳩が登場する(『宇宙怪人』『鉄塔の怪人』『妖人ゴング』)
     
題名 怪人二十面相・伝 PARTⅡ
著者 北村 想
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆

 江戸川乱歩の代表作『怪人二十面相』。本作は、劇作家の北村 想が、『怪人二十面相』に独自の解釈を加えて続編化した作品で、前作『怪人二十面相・伝』に続くPARTⅡとなる。
 青銅の魔人を名乗る怪人二十面相は、「皇帝の夜光の時計」を盗み出す。しかし、明智探偵の助手・小林少年は怪人二十面相の後をつけ、怪人二十面相が逃走用に使う乗用車のトランクの中に潜り込む。やがて、走り出した車のトランクが開いて、一羽の鳩が飛び出す。小林少年が怪人二十面相の行き先を明智に知らせるために、伝書鳩を放ったのだ。
  題名 鳩を飛ばす日
著者 ねじめ正一
出版 文芸春秋
評価 ★★☆☆☆


 和菓子屋の一人息子・聡少年のもとに、叔母さんの家から養子に出された、みつ子がやってくることになった。いとことはいえ、よその子が一家の一員になることを聡少年は嫌がる。しかし、みつ子と会ってからは、何のわだかりもなく妹の面倒を見るようになる。
 聡少年が飼っている伝書鳩・はやて号を、きょうだいで仲よく世話している場面がほほ笑ましい。

     
題名 空とぶこども共和国
著者 本田忠勝
出版 愛知書房
評価 ★★★☆☆


 著者は伝書鳩を飼っていた少年時代の思い出をもとに、現実離れした平和思想や在日朝鮮人問題などを本書に記している。
 児童文学の体裁だが、左寄りの思想に振り切れていて、明らかに内容が偏っている。
 左であれ、右であれ、バランス感覚を欠いた読み物は、子供たちに見せるべきではない。
  題名 お金と正義(全二巻)
著者 神田昌典
出版 PHP研究所
評価 ★★☆☆☆

 「フリーター五右衛門」こと、ロック・ミュージックを愛する男――石川貴和。
 彼はある日、一年前に自殺した姉・美子の携帯電話のメモリーにダイイングメッセージが残されていることに気がつく。
 どうやら、美子の死の真相は、彼女が生前に勤めていたヒューマン・マジック社に残されているらしい。石川は、美子の娘である彩香とともに、ヒューマン・マジック社と対決する。

 彩香が飼っている伝書鳩・ペガサスが登場する。美子の死の秘密が詰まっているメモリーチップをペガサスが運ぶ。
     
題名 拝金
著者 堀江貴文
出版 徳間書店
評価 ★★★☆☆

 ライブドア事件で世間を騒がせた堀江貴文の半自伝小説。
 無職の青年・藤田優作は、行きつけのゲームセンターで、自分の運命を変える男・堀井健史と出会う。
 この六本木ヒルズに居を構える富豪に、藤田は連れ出される。絶品のフグやトリュフを味わえる季節限定の料理屋に行ったり、芸能人が接待してくれるカラオケ店などで遊んだりする。
「藤田優作、君はどのくらいの金持ちになりたい?」
 堀井にそう問われた藤田は、以下のように答える。
「そうだな、金で買えないものはない、そう言えるくらいかな」
 庶民には想像しにくい、富める者の世界を知った藤田は、成り上がるために起業することを決意する。
 藤田は、堀井から受けた二百万円の融資をもとに、鳩レースと伝書鳩をモチーフにした携帯電話用のゲームを開発する。
 ゲームはヒットし、藤田が立ち上げた会社の年商は五十億円を突破する。そして、東証1部上場を果たし、プロ野球チームやラジオ局を買収しようとさえする。しかし、世間の風は冷たかった。マスコミは、風雲児の藤田をことあるごとにバッシングし、ありもしないスキャンダルをでっち上げる。ついには東京地検特捜部までもが……。
題名 ダイヤモンド広場
著者 マルセー・ルドゥレダ 作/田沢 耕 訳
出版 岩波書店
評価 ★★★☆☆

 クルメタ(カタルーニャ語で「小鳩」の意)とあだ名されている女性――ナタリアのお話。スペイン内戦を挟んで、彼女は人生を強く生き抜く。

 劇中に、鳩が登場する。
 ある日、ナタリアの家に、けがをした鳩が迷い込む。これを契機に鳩小屋をこしらえて、別の鳩をもらってきて羽数を増やす。
 本作は、この鳩飼育に関する場面が多く、読み応えがある。
題名 ワシとハト
著者 ジェームズ・クリュス 作/大塚勇三 訳
出版 岩波書店
評価 ★★☆☆☆

 本作は、いわゆる枠物語。『千夜一夜物語』におけるシャフリヤール王がワシ、シェヘラザードがハトに相当する。
 岩の裂け目に追い詰められた鳩が、何やかんやと小話をして、ワシの気をそらす。ワシは鳩を食べたくてウズウズしているのに、鳩は機知に富んだ、魅力的な話を続けて、ワシを押しとどめる。その間、鳩はひそかに尾羽を使って、後方に抜け穴を掘る。そして、最後にはその穴から脱出して、ワシから逃れる。
 物語の最後、鳩を食べ損ねたワシが、自嘲して、こう述べる。
「最後の最後に、おまえはおれに、いちばんためになる話をしてくれたな。つまり、『ワシとハトの話だ』。おれは、この話をよくおぼえておこう。」
  題名 はるかな国の兄弟
著者 アストリッド・リンドグレーン 作/大塚勇三 訳
出版 岩波書店
評価 ★★☆☆☆

 ファンタジー世界――ナンギヤラを舞台にした、児童向け冒険小説。
 カール・レヨンとヨナタン・レヨンの兄弟が力を合わせて、ナンギヤラを脅かす悪と戦う。
 劇中にソフィアという女性が出てくるが、彼女はたくさんの白い鳩を飼っている。この鳩たちが通信任務を果たし、カールとヨナタンに力添えをする。
   
題名 人はふさわしい死を死ぬ
著者 R・ライト・キャンベル 作/石井清子 訳
出版 晶文社
評価 ★★★☆☆

 十歳の少年(主人公)と、その祖父――ヘンリー・バウドム老人は大の仲良し。
 二人は鳩レースで好成績を収めるために、日々、レース鳩の訓練に励んでいる。しかし、バウドム老人が卒中の発作を起こして倒れると、次第にバウドム老人は弱っていく。
「わしは自分の家のベッドで生まれた。子どもたちも同じように家で生まれたんだ。だから、同じようにして死にたい。馴れないベッドじゃ、気持よく死ねないもんな」
 自身の死を悟ったバウドム老人が、少年にそう話す――病室のベッドの上ではなく、自宅のベッドの上で死にたい、と。
 少年は、バウドム老人の願いをかなえるために、夜の病院に忍び込む。バウドム老人を手押し車に乗せて、自宅のベッドまで運ぶのだ。
 一方、この出来事より以前、少年の愛鳩・ディケンズが、九六〇キロレースに参加していた。
 ディケンズは、ハヤブサに襲われたり、暴風雨に見舞われたり、と散々な目に遭っていたため、いまだに鳩舎に帰っていなかった。
 そうした中、少年の奮闘によって、自宅のベッドの上にバウドム老人が横たえられる。
 固い握手を交わす、少年とバウドム老人。
 少年の目から涙があふれる。 
 少年は、満足して目をつむっているバウドム老人を見届けると、屋外の鳩舎に向かう。
 すでに夜が明けていた。
 少年が空を見上げると、白と灰色がかったブルーの点が目に入る……。
題名 メアリーの鳩
著者 アン・ターンブル 作/渡辺南都子 訳
出版 偕成社
評価 ★★★☆☆


 レース鳩を飼育している父親の影響を受けて鳩好きになった女の子・メアリーのお話。雇用主に疎まれているアカかぶれの父親が、鉱山の閉鎖を機に解雇されており、メアリー一家の生活は非常に苦しい。とうとう、その日の糧に困った母親が、メアリーが面倒を見ているレース鳩を絞めて食卓に出してしまう。激怒したメアリーは、お屋敷に奉公している姉のもとを目指して家出する。
 児童文学ではあるが、大人でも充分に楽しめる。全国の愛鳩家にお勧めしたい。

  題名 鳥と少年
著者 アーリン・ペダーセン 作/山内清子 訳
出版 佑学社
評価 ★★★☆☆

 田舎から都会に引っ越してきたグンナル少年は、レース鳩を飼っているマーチン老人と町で出会う。
 不登校児のグンナルと、独り暮らしのマーチン。
 お互いの置かれている状況が縁になったのか、二人は深く心を通わせる。
 学校になじめない少年、孤独に暮らす老人、少年の両親の離婚危機など、さまざまな社会問題が語られる。作者の母国・ノルウェーでは本書がテレビドラマ化されている。
   
題名 空の王さま
著者 ニコラ・デイビス 作/ローラ・カーリン 画/さくまゆみこ 訳
出版 BL出版
評価 ★★★☆☆

 工場の煙が立ち上る、ある町に、イタリアのローマから一人の少年が引っ越してくる。しかし、少年は、自分をよそ者だと思って孤独感にさいなまれる。
 少年の家の隣にエバンズという老人が住んでいて、彼はレース鳩の飼育を趣味にしている。少年は、エバンズの飼っているレース鳩がサンピエトロ広場の鳩に似ていると思って、故郷ローマのことを想起する。
 少年はエバンズのところに毎日通ってレース鳩を見にいく。そして、少年はエバンズから一羽のレース鳩をプレゼントされる。少年はこの鳩を「レ・デル・チエーロ」(空の王さま)と名づけて、かわいがる。
 その後、少年は、鳩の放鳩訓練に立ち会うようになる。また、エバンズが体調を崩すと、少年はこの老人に代わって、鳩の面倒を見たり、鳩を鳩レースに参加させたりする。
 あるとき、ローマが放鳩地の千六百キロレースが開催される。少年の愛鳩「空の王さま」が、この長距離レースに参加する。しかし、二日二晩待つも、いまだに「空の王さま」は鳩舎に帰ってこない。放鳩地であり、また少年の故郷でもあるローマの方が環境がいいから、「そこにいたくなったのかもしれない」と少年は言う。しかし、エバンズは、「いいや、そんなことはないさ。あいつは、自分の居場所じゃないと、おもうはずだよ」と述べる。
 エバンズの言葉どおり、「空の王さま」は千六百キロのかなたから帰還する。少年は泣き笑いしながら、「空の王さま」を腕の中に抱く。そのときから、少年はこう思う。やっぱりここが自分の居場所なのかもしれない、と。
題名 熱帯雨林の彼方へ
著者 カレン・テイ・ヤマシタ 作/風間賢二 訳
出版 新潮社
評価 ★★★☆☆

 ブラジルのジャングルに、突如、現れた、謎のプラスチック――マタカン。
 この万能の可塑性物質は、鋼よりも頑丈で、ダイヤモンドよりも固く、それでいてシルクのように柔らかく、ティッシュペーパーほどの薄いシーツに延ばせる。
 マタカン・プラスチックの使い道は万能であり、植物、靴、衣服、宝石、玩具、車、家電製品、模造食品など、何にでも加工できた。
 このマタカンの出現とともに、奇妙な人物たちが行動を起こして、世界と関わりを持つ。
 額のそばに、回転する球体が浮かんでいる日系人――カズマサ、聖人――シコ・パコ、魔術師――マネ・ペーナ、幸運の予言者――バティシュタ、三本の腕を持つビジネスマン――J・B・トゥイープなど、である。
 この奇妙な登場人物たちをつなぐマタカンに秘められた真実とは……。

 予言者・バティシュタが、「ディヤパン鳩株式会社」の代表を務めていて、伝書鳩を使ったメッセージ・サービスをおこなっている。
 劇中にバティシュタが登場すると、伝書鳩に関する描写が必ず入る。
題名 千夜一夜物語(全十三巻)
著者 不明
出版 岩波書店
評価 ★★☆☆☆

 『千夜一夜物語』には、鳩が出てくる話がいくつかある。
 とりわけ、以下の二つの話は、通常の鳩ではなく、伝書鳩が登場する。

***

『オマル・アル・ネマーン王とそのいみじき二人の王子シャールカーンとダウールマカーンとの物語』

 ↑首に手紙を結びつけられた二羽の伝書鳩が、アフリドニオス王にその手紙を届ける。

***

『「女ぺてん師ダリラ」とその娘の「女いかさま師ザイナブ」とが、「蛾のアフマード」や「ペストのハサン」や「水銀のアリ」とだましあいをした物語』

 ↑「女ぺてん師ダリラ」の亡き夫は、伝書鳩の管理役をしていて、月に千ディナールもの俸給をもらっていた。「女ぺてん師ダリラ」とその娘の「女いかさま師ザイナブ」は、うまく立ち回って、この名誉ある職と地位に就く。いっとき、「水銀のアリ」に、カリフから預かっている四十羽の伝書鳩を盗まれてしまうが、「女いかさま師ザイナブ」が「水銀のアリ」の嫁になることで、「女ぺてん師ダリラ」のもとに鳩が戻る。

『世界の名作図書館 38 ジャングルの王子 ヒマラヤの伝書ばと』
題名 ヒマラヤの伝書ばと
著者 ダン・G・ムカージ 作/白木 茂 訳
出版 講談社
評価 ★★★★☆


 インドに住むある少年と、伝書鳩・ゲイ=ネック(「美しい色をした首」の意)との触れ合いを描いた児童向け小説。二部構成からなる。
 第一部は、ゲイ=ネックの訓練の様子や、彼が猛禽類に襲われる場面など。
 第二部が圧巻で、ゲイ=ネックは第一次世界大戦に軍用鳩として出征する。
 仲間の軍用鳩・ヒラの死や、ドイツ軍の弾薬置き場と食糧倉庫の場所をゲイ=ネックが友軍に伝えるシーンなど、見どころが多い。
 終盤、ドイツ軍機の銃撃を受けて、信書管をつけたゲイ=ネックの脚がだらんと垂れてしまうところが壮絶だ。
題名 黒い伝書バト
著者 武田武彦 作/深尾徹哉 画
出版 小学館
評価 ★★★☆☆

 『小学五年生』(昭和三十年六月号)に掲載された小説。
 敏夫とルミ子は、女優をしている継母を好きになれない。死んだ実母は泣いたことがなかったのに、今度来た継母は、映画スターだけあって、泣くことがうまかった。
 そんなきょうだいの様子に、父は腹を立てて、敏夫の頬をピシャリとたたく。
 敏夫は、込み上げてくる涙をグッと飲み込んで、自分の部屋に駆け込む。
 妹のルミ子が、
「おにいさん、いたかった?」
 と、慰めの声をかける。
「いたくなんかないさ。僕、ママなんて、ぜったいよばないぞ。」
 その夜、二人は、なかなか、眠れなかった。
 時計が深夜二時を打つ。
 門の前に自動車が止まって、誰かが帰ってくる。継母のマネジャーをしている松山であろうか。
 しばらくすると、妙なことが起こった。天井がミシミシと変な音を立てているのだ。誰かが屋根の上を歩いているらしい。
「あっ、たいへんだ。伝書バトをぬすみにきたんだ。ルミ子っ、おいで!」
 二人は、非常はしごを使って、屋上に上がる。すると、そこにある鳩舎の前に、変な男が立っている。インディアンのお面をかぶり、黒マントをまとった、謎の怪人である。
 この怪人は、敏夫が大切にしている黒い伝書鳩を盗み出して、煙突の中に姿を消す。
 二人は、父親にこのことを知らせて、煙突に通じている部屋に行く。しかし、そこには継母がいるだけで、怪人の姿がない。継母が言うには、一時間前からここにいて、セリフを覚えていたという……。
 そんなとき、女中が慌てて駆けてくる。
「だんなさま、いまお玄関に警察のかたが、おみえになっています。」
 警察の話によると、宝石泥棒を追って、ここにやってきたという。容疑者は、継母のマネジャーである松山とのこと。
 そうして、家の隅々まで捜索がおこなわれるが、盗まれた宝石は見つからなかった。
 松山を尋問しても、
「とんでもない。わたしが宝石泥棒だなんて、デタラメもはなはだしい。」
 と、言って、容疑を全面否定する。
 しかし、そのとき、敏夫が声を上げる。
「パパっ、わかったよ。黒い伝書バトだよ。松山のやつ、おまわりさんのくるのをしって、ぼくの伝書バトをぬすみ、ハトの通信管の中へ宝石をかくして、とばしてしまったのさ。」
 怪人に化けた松山は、煙突の中に入るしぐさをしただけで、実際に煙突の中に入ったわけではなかった。だから、継母は、怪人に変装した松山の姿を見ていなかったのだ。
 翌日、敏夫や警察など、関係者一同が飛行機で大阪に移動する。そして、父の会社の屋上にある鳩舎に行く。そこで待ち構えていると、疲れてヘトヘトになった黒い伝書鳩が帰ってくる。敏夫が黒い伝書鳩を抱き上げて信書管を開けると、中から宝石が出てくる。
「ごめんなさい。わたくし、もう映画のほうはやめます。いいママになるため…。」
「ママ、ほんとう…?」
 敏夫とルミ子は、継母を「ママ」と認めて、うれしそうに抱きつく。
題名 悪魔の谷の伝書バト
著者 白木 茂 作/石井勝利 画
出版 光文社
評価 ★★★☆☆

 『少年』(昭和三十四年六月号)に掲載された少年向け小説。
 とある小さな村の近くにある谷間(通称・悪魔の谷)に救助隊が派遣される。小型飛行機が行方不明になっているのだ。
 ジャック少年は、この救助隊に参加したかったが、父親の許しが出ないので諦める。
 仕方なく、ジャック少年は、友人のピエール少年を誘って、山にスキーをしにゆく。伝書鳩のジプシーを懐にしのばせて……。
 そうして、二人は、山でスキーに興じるが、ちょっとした好奇心から悪魔の谷をのぞいてしまう。
 すると、飛行機が、悪魔の谷に墜落している光景が目に映る。
 二人は悪魔の谷を下りて、飛行機のあるところまで急ぐ。そして、気を失っているパイロットを抱き起こす。
「右足がおれているらしい……それにひたいがきれている……。」
 パイロットの手当てをする二人。
 しかし、気がつけば、天候は激しい吹雪に変わっていた。
「ぐずぐずしていると、みんなこごえしんでしまう。どうしよう――そうだ、ジプシーをわすれていたぞ!」
 こうして、救援を呼ぶために、伝書鳩のジプシーが放たれる……。


『アーサー・ランサム全集 6 ツバメ号の伝書バト』

題名 ツバメ号の伝書バト
著者 アーサー・ランサム 作/神宮輝夫 訳
出版 岩波書店
評価 ★★★☆☆


 八人の少年少女が鉱山に行って金を探す。しかし、子供たちの行く先々に、つぶれソフトとあだ名されている男がたびたび現れる。子供たちの邪魔をしようというのか……。
 やがて、子供たちは、金とおぼしき鉱石を見つけて、インゴット作りに精を出す。しかし、精製された金属は、どう見ても金に見えない。
 そんなとき、山火事が発生する。子供たちは連絡用として持ってきていた伝書鳩を放って通報するが……。

 イギリスのカンブリアを舞台にした、子供向けの冒険小説。全編にわたって伝書鳩に関する記述がある。


『マンスフィールド短編集』
  題名 鳩氏と鳩夫人  *表題作を含む十五作品を収録
著者 キャサリン・マンスフィールド 作/安藤一郎 訳
出版 新潮社
評価 ★☆☆☆☆


 鳩氏、鳩夫人という名の鳩がいる。鳩夫人が走り出すと、鳩氏は彼女の後ろをもったいぶったようなお辞儀をしながら追いかけてゆく。
 明日、英国からローデシアに発つことになっているレジナルドが、意を決して、いとしのアンに求婚する。しかし、この鳩たちのような夫婦生活になるとの理由で、アンから結婚を断られてしまう。

   
題名 魔王
著者 ミシェル・トゥールニエ 作/近田 武 植田祐次 訳
出版 二見書房
評価 ★★★☆☆

 比喩、寓意、幻想、象徴が入り交じったような難解な作品。哲学的な小説といってよい。後述する映画『魔王』の原作。
 少女の狂言によって、強姦未遂の罪に問われる主人公・アベル。しかし、第二次世界大戦の勃発が彼を救う。兵役に就くのと引き換えに、嫌疑が棄却されたのだ。
 こうして、アベルはフランス軍の鳩兵になるが……。


『現代ソヴェト文学18人集』
  題名 わたしの鳩小屋の話  *表題作を含む八作品を収録
著者 イサーク・バーベリ 作/江川 卓 訳
出版 新潮社
評価 ★☆☆☆☆

 一九〇四年、ニコラーエフ市中学校予科を目指すバーベリ少年は、ロシア語と算数の二科目で満点を取れば、鳩を買ってもらえるという約束を父親と交わす。そして、見事、バーベリは、入学試験で満点を取るが、賄賂でもって裏口入学した生徒のために席がなくなってしまい、不合格を言い渡される。しかし、バーベリはこの出来事にめげず、翌年、一学年への編入試験に挑戦し、目的を果たす。
 約束どおり、鳩を手にするバーベリ。しかし、幸運はつかの間のことだった。ポグロム(ユダヤ人虐殺)がはじまったのだ。バーベリは、いざりのマカレンコに平手打ちされ、鳩を殺される。義理の祖父・ショイルじいさんも命を奪われる。
   
  題名 ウィーヴワールド
著者 クライヴ・バーカー 作/酒井昭伸 訳
出版 集英社
評価 ★★☆☆☆

 保険会社で働いている、二十六歳の青年――キャルフルーン・ムーニー(通称・キャル)
 キャルはある日、自鳩舎に入った際に一羽のチャンピオン鳩を逃がしてしまう。
 三十三号と呼ばれているその雄鳩の後を追っていくと、さまざまな種類の鳥が輪を描きながら、一箇所に集まって飛んでいる光景に出くわす。三十三号もその輪の中にいるようだ。
 三十三号が心ゆくまで空中のうたげを満喫し、レース鳩として仕込まれた習慣に従って、鳩舎に戻ってくるのを待つしかない。
 キャルはそう思ったが、やがて、ある一軒家の二階の窓枠に三十三号がとまっているのを目にする。
 一軒家はちょうど、引っ越し作業の最中で、作業員が荷を運び出しているところだった。キャルは作業員に断ってから一軒家の塀に上り、三十三号を捕まえようとする。しかし、キャルはバランスを崩して、塀の上で大きくよろける。
 そのときである。
 眼下の光景が一変する。
 作業員が運んでいたじゅうたんがすっかり広げられて、庭を覆っているではないか。
 これが運命の瞬間だった。キャルは、じゅうたんに封じ込められている異世界を垣間見たのだ。
     
題名 海鳴りの石(全四巻)
著者 山口 華 作/君島美知子 画
出版 銀の鈴社
評価 ★★☆☆☆

 主人公の父はファンタジー物を手がける小説家。しかし、父は執筆途中の作品を投げ出して旅に出てしまう。
 そうした中、父が中途で書くのをやめてしまったファンタジー世界「レープス」が、主人公の夢に現れる。主人公は幻想世界で、フェナフ・レッドという若君になって、さまざまな冒険をする。

 劇中に伝書鳩が登場する。特に第三巻の上巻に、鳩に関する記述が多い。
  題名 グリックの冒険
著者 斎藤惇夫 作/薮内正幸 画
出版 岩波書店
評価 ★★☆☆☆


 シマリスのグリックは人間に飼われている。かごの中と幾つかの部屋だけが、知り得る世界の全てといってよい。しかし、ある日のこと、伝書鳩のピッポーから外の世界について教えられると、グリックの心は大きく揺さぶられる。やがて、居ても立ってもいられなくなったグリックは、はるか遠くにあるという北の森を目指して旅立つ。
 ドブネズミのガンバ三部作の第一作として知られる冒険譚。

 
     


『野上彌生子全小説1 縁 父親と三人の娘』

題名 鳩公の話  *表題作を含む二十七作品を収録
著者 野上弥生子
出版 岩波書店
評価 ★★☆☆☆


 みなしごの伝書鳩・鳩公は、おそよという女性に飼われている。
 ある日、おそよの主人が鳩公のために雌鳩を買ってくる。鳩公のお嫁さんである。しかし、鳩公は主人の計らいをよそに、雌鳩に突っかかっていく。気に食わないらしい。が、よくしたもので、次第にけんかすることが少なくなり、連れ立つようになる。
 そんな頃のこと、おそよがこたつに入って、うとうとしていると、縁側の方から、とんという何者かの飛び降りたような音が聞こえてくる。
 おそよは、家の周囲をうろついている黒猫の青い目を思い描く。


『野上彌生子全小説1 縁 父親と三人の娘』

題名 弾正と呼んだ鳩  *表題作を含む二十七作品を収録
著者 野上弥生子
出版 岩波書店
評価 ★★☆☆☆


 鳩をたくさん飼っているある家に、黒猫が現れる。庭に散乱する、血と肉がついた、鳩の羽根は、無残そのもの。
 以前にも鳩が猫に襲われているので、今度こそ突き殺してやる、とその家の主人は息巻いて、猫退治のために用意された槍を構える。そして、さるすべりの幹に飛び移った猫に向けて、槍の穂を走らす。が、傷は浅い。まんまと逃げられてしまった。
 騒動が落ち着いた頃、庭にまかれたきびを目当てに飼い鳩たちが集まってくる。しかし、弾正と名づけられた鳩の姿が見えない。
 著者は、温順、平和といった、一般的な鳩のイメージとは異なる弾正の気性、いや、鳩の真の性質について語る。
  題名 鳩どもの家  *表題作を含む三作品を収録
著者 中上健次
出版 集英社
評価 ★★☆☆☆


 高校三年生の比呂志の生活は荒れている。タイヤ泥棒をしたり、いかがわしい店に出入りしたりしている。家族との仲も悪く、口論が絶えない。
 比呂志の実の父は他界しており、現在は母の再婚相手である、欄間職人の継父が一家の大黒柱になっている。継父と母との間には、弟の悠樹が生まれている。
 あるとき、比呂志は、大阪に働きに出ている、姉の菊子のもとを訪ね、悠樹に頼まれていた白い鳩を小鳥屋から買ってくる。悠樹は数羽の鳩を飼っている愛鳩家なのだ。
     


『状況』(第二十二号)
題名 まぼろしの鳩  *表題作を含む四作品を収録
著者 梶野 辰
出版 状況同人会
評価 ★★☆☆☆

 昭和二十九年の暮れ、ある地方都市の一隅で――。
 中学二年の浩三、姉の広子、そして母親の常が営む売店に、今年も落ち葉が降り積もる。
 ある日、浩三は、屋根の掃除をしている際に、落ち葉に埋もれた、一羽の鳩を見つける。鳩は病気にかかっていて、飛べないらしい。
 浩三はこの鳩を保護するが、常は面白くなかった。鳩にかまけて浩三の勉強がおろそかになっていったからだ。
 そんな折、浩三の鳩を広子が無断で持ち出し、情夫にプレゼントしてしまう。この出来事にショックを受けた浩三は、熱を出して寝込む。

題名 東京スカイツリー 世界一のひみつ
著者 小林弘利
出版 角川グループパブリッシング
評価 ★★☆☆☆

 後述するドキュメンタリー映画の書籍版。
 映像作品では充分に説明することのできなかった、東京スカイツリー建設にまつわる詳しい内容を知ることができる。また、映画に登場する二羽の鳩――クルックー(雄)とジョンピー(雌)のキャラクターも、映像版よりも掘り下げられていて、彼らの心情がよく分かる。


『原っぱで夕焼けを見ていた頃 サザエさんをさがして その5』
題名 伝書バト  *表題作を含む四十一作品を収録
著者 朝日新聞be編集グループ
出版 朝日新聞出版
評価 ★★☆☆☆

 朝日新聞に連載されていた『サザエさん』の中から、いくつかの漫画を取り上げて、そこに描かれている当時の世相や風俗を振り返る、という企画の本。昭和四十八年三月十四日の朝刊に載った『伝書バト』が収録されている。
 神社の境内で、たくさんの鳩にえさをやるカツオ。しかし、その中に、カツオが飼っている伝書鳩が紛れているのを見つけて、「アー!!!」と声を上げる。「ウチのデンショ鳩なのに、道ぐさなぞくって! 一晩よ~く考えろ」と鳩にお説教するカツオであった。
題名 佐藤好春と考えるキャラクターとアニメーションの描き方
著者 佐藤好春 画/釘宮陽一郎 著
出版 ナツメ社
評価 ★★★☆☆

 アニメーターの佐藤好春が、アニメの作り方について解説している本。
 アニメの企画・制作・宣伝に至る、一連の流れを学ぶことができる。
 本書の中に、『鳩よ天まで』というアニメ映画の企画書が出てくる。
 アニメのあらすじ、イメージボード、キャラクター、絵コンテ、レイアウト、原画、動画、仕上げ、撮影、アフレコ、宣伝など、実制作の行程が詳しく紹介されている。
 まるで、現実に存在しているアニメ映画の設定資料集を見ているような錯覚を起こす。
 もはや、ここまで細部が詰められているのなら、実際にスポンサーを探して、制作してしまえばいいのではないか、と思った。
 ちなみに、『鳩よ天まで』のストーリーは、こんな感じである。
 ハヤテ号は驚異の百パーセントの帰還率を誇る優秀な伝書鳩。
 新聞社に勤める記者・藤原千吉(ふじわらせんきち)は、愛鳩のハヤテ号を抱えて、各地を飛び回る。
 しかし、このハヤテ号には困った癖があった。
 以前、飼われていた民家に、必ず戻ってきてしまうのだ。つまり、新聞社近くにある、この民家に、わざわざ、信書管を取りに行かなければならなかったのである。
 しかし、千吉は、かえってこれを都合よく思う。この民家には、里菜(リーナ)・メルクスという幼なじみが住んでいたからだ。
 千吉は、ハヤテ号の奇行を逆手に取って、リーナへの手紙を添える。リーナにとっても、この手紙は、大変うれしいものだった。
 ハヤテ号は、恋のキューピッドになっていたのである。
 さて、日露戦争が勃発すると、千吉は記者として従軍する。しかし、新聞社の野営地に敵軍の攻撃があって、千吉は負傷してしまう。
 倒れた千吉は、澄み切った青空を見つめながら、手紙を付したハヤテ号を空に放つ……。
  題名 新・殺人の棋譜
著者 斎藤 栄
出版 中央公論社
評価 ★★☆☆☆

 江戸川乱歩賞に輝いた前作『殺人の棋譜』の続編。
 二十歳の女子大生・万理が友人のみどりとともに軽井沢の山荘に泊まっていたところ、突如押し入ってきた強盗犯に捕らえられてしまう。万理はそのとき、体勢を崩した拍子に鳩かごに手をつくが、これを伝書鳩のチルチルは合図があったと勘違いして空に飛び立つ。
 その後、鳩舎に帰り着いたチルチルに通信文がつけられていないことを奇異に思った両親は万理の身を案じて警察に相談するが……。

     
題名 潜行山脈 顔のない刑事・突破行
著者 太田蘭三
出版 角川書店
評価 ★☆☆☆☆

 自由党の大物代議士・氏家一孝の令嬢が誘拐される。
 犯人の要求は身代金一億円。しかし、その身代金の受け渡し方法が変わっていた。五千万円の小切手×二枚を二羽の伝書鳩に付して空に放てというのだ。
 こうして、犯人から送られてきた伝書鳩に一億円分の小切手がつけられて放鳩される。しかし、身代金を払ったにもかかわらず、氏家の娘は帰ってこない。犯人が人質の引き渡し場所として指定した、陣馬高原の和田峠の茶店に警察が駆けつけても、現場には氏家の娘の衣服をまとったマネキンが放置されているだけだった……。
題名 番外警視
著者 南 英男
出版 文芸社
評価 ★★☆☆☆

 法の網をくぐり抜ける犯罪者を人知れず抹殺する特命刑事・神保徹也。本作は、この「番外警視」を主人公にしたハードボイルド小説の第一作目に当たる。
 神保の出身大学の先輩で、警察庁の特別監察官である雨宮俊行が何者かによって殺される。
 警察庁長官・芳賀弘幸の命のもと、神保が事件の捜査に乗り出す。雨宮の死には、警察内部の人間が関与しているようなのだが……。

 超法規的な死刑執行人である神保は、その非情な性格とは裏腹に、レース鳩の飼育を趣味にしている。
 鳩の面倒を見る神保の姿を、本作の各所で楽しめる。
題名 番外警視 虫けらども
著者 南 英男
出版 文芸社
評価 ★★☆☆☆

 厚生労働省の事務次官・若松清貴が、複数の社会福祉法人から公的補助金をキックバックさせて、私腹を肥やしているらしい。
 厚生労働省の社会福祉課で働く鳥居大介の内部告発を受けて、特命刑事の神保徹也が動く。
 調査を進めていくうちに、建設会社の経営者や暴力団の組長などの名が捜査線上に浮上する。しかし、事件の黒幕は意外な人物であった……。

 前巻に続いて、鳩の面倒を見る神保の姿が本巻の随所に出てくる。
 物語の最後辺りでは、神保の愛鳩十三羽が殺し屋の工藤圭吾によって撃ち殺される、という衝撃的なシーンがある。
題名 番外警視 悪徳
著者 南 英男
出版 文芸社
評価 ★★☆☆☆

 特命刑事の神保徹也が、顔見知りの小学生・波多野あゆみから相談を受ける。閉店した家電スーパーの駐車場で黒ずくめの男が死体を捨てているのを目にした、というのだ。しかも、犯人に気づかれて、あゆみは顔を見られているそうである。
 さて、そんなことがあった後、あゆみの母親が何者かによってさらわれる。言うまでもなく、あゆみが死体遺棄の現場を見てしまったことが関係している。
 誘拐事件の結末は最悪だった。あゆみの母親が殺されたのだ。あゆみはそれを苦にして……。

 前巻で鳩を失った神保は、新たに十羽のレース鳩を仕入れる。
 神保の宿敵である工藤圭吾との銃撃戦において、この鳩が決定的なチャンスを作り出す。


『鞍馬天狗 4』
題名 角兵衛獅子  *表題作を含む二作品を収録
著者 大佛次郎
出版 朝日新聞社
評価 ★☆☆☆☆

 鞍馬天狗(くらまてんぐ)こと倉田典膳(くらたてんぜん)は、勤王の志士であるため、新選組をはじめとする佐幕派から常に命を狙われている。
 本作『角兵衛獅子』(かくべえじし)では、財布を落として途方に暮れている角兵衛獅子(かくべえじし)――杉作(すぎさく)に、倉田が金を恵んでやったことから、倉田の居所が新選組に露見する。杉作の親方が、隼の長七(はやぶさのちょうしち)という目明かしであったため、杉作が恩人である「倉田」の名を口にすると、長七はピンときて、倉田の居場所に探りを入れたのだ。
 そうして、倉田が身を潜めている寺・松月院に新選組が手配されて、倉田対新選組の立ち合いになる。
 近藤 勇(こんどういさみ)の短筒(たんづつ)が、逃げようとする倉田の背に向けられたとき、杉作が近藤の腕にしがみついたため、短筒の狙いがそれる。助けてくれた恩人を、窮地に立たせてしまったことを、杉作が悔やんでのことである。
 こうして、倉田は、杉作の助けによって、松月院から脱出する。また、杉作も、倉田のもとに引き取られて、以後、倉田と行動をともにする……。

 劇中に伝書鳩が出てくる。
 奉行の密使に化けた倉田が大阪城に潜入しようとしていることを知った、暗闇のお兼(くらやみのおかね)が、これを一報するために鳩を放つ。
題名 鳴門秘帖
著者 吉川英治
出版 講談社
評価 ★☆☆☆☆

 ときは徳川第十代将軍・家治の治世。
 阿波徳島藩主・蜂須賀重喜は、ひそかに西国大名をまとめて、倒幕の兵を挙げるはかりごとを巡らす。その不穏な動きを受けて、公儀隠密の甲賀世阿弥が阿波に潜入する。しかし、それからというもの、世阿弥から何の音沙汰もないまま十年のときがたつ。
 もはや、世阿弥は死んだものと判断される。しかし、実は、阿波の剣山に世阿弥は幽閉されていて、その懐中には、蜂須賀阿波守のたくらみをしたためた秘帖があった。
 この秘帖を巡って、法月弦之丞らの公儀隠密と、阿波徳島藩の侍たちとの間で剣戟が起こる。

 劇中に、天満浪人こと同心の俵 一八郎が、鳩使いとして登場する。鳩の脚に手紙を付して放鳩するシーンがある。
  題名 吟遊 直九郎内探記
著者 赤木駿介
出版 光文社
評価 ★☆☆☆☆

 俳句をたしなむ主人公・高瀬直九郎は、大目付・高木伊勢守の命を受けた隠密。幕閣が動き出す前に、諸藩で巻き起こるお家騒動を穏便に解決するのが役目である。

 高瀬が飼っている伝書鳩・筆丸が登場する。しかし、文庫本の表紙に高瀬より大きく筆丸が描かれている割に出番が限られている。第三話の冒頭で通信文を持ってくる程度なのだ。

     
題名 八幡鳩九郎
著者 山手樹一郎
出版 春陽堂
評価 ★★★☆☆

 江戸を舞台にした時代小説。紫公方(むらさきくぼう)と称する悪の権化に、真っ向から対決する浪人・八幡鳩九郎の活躍を描く。
 八幡鳩九郎の名のとおり、本作の主人公は、雪と名づけた白鳩を飼いならしている。
 雪の能力は、ずばぬけていて、善人と悪人を見分けたり、味方や敵の居所を知らせてくれたりする。物語の後半では、雪の助けによって、命を落としかけた鳩九郎が難を逃れる。
 全編にわたって、雪が登場し、八面六臂の働きを見せる。愛鳩家なら読んでおいて損はない。


『逃亡者』
題名 鳩侍始末  *表題作を含む八作品を収録
著者 城山三郎
出版 新潮社
評価 ★★★☆☆

 第十一代の尾張藩主・徳川斉温(とくがわなりはる)のもとで、鳩侍(はとざむらい)として勤めている久世藤吾(くぜとうご)。この鳩侍とは、斉温の飼っている鳩の世話係を指す。
 鳩係といっても待遇はよい。久世がもし、この職にありつくことができなかったら、彼の生活は、立ちゆかなくなっていただろう。それに、久世自身、鳩を愛していたので、このお役目をありがたく思っていた。しかし、その一方で、久世は内心、忸怩(じくじ)たる思いがあった。藩内の分水溝工事が、いまだに未着工であることがたたって、久世の父・源之丞は、割腹自殺を遂げていたからだ。
 庄内川が豪雨で氾濫したとき、当時、代官の地位にあった源之丞は、城下の騒ぎをよそに、川面が堤いっぱいにみなぎるまで、堤の切り崩しに反対する。これは切り崩しの影響によって災禍を被る小田井一円を思ってのことである。しかし、城下に不安を及ぼした罪は重い。源之丞は自らの命を差し出して責任を取ったのだ。
 さて、久世が鳩侍になったのは、殿(斉温)に直接、源之丞の悲願である、分水溝工事の実現を訴えることができる、と思ったからである。しかし、久世は、役儀違い、などと称して自分の気持ちを偽り、いまだに殿に直訴できずにいた……。


『まぼろし城』
題名 渦潮の果て  *表題作を含む三作品を収録
著者 高垣 眸
出版 講談社
評価 ★★☆☆☆

 肥後と薩摩の国境に一人の鳥刺しが立っている。鳥かごには雌鳩がおとりとして入れられている。しばらくすると、雄の使い鳩の姿が空に浮かび上がる。おとりの雌鳩を慕ってやってきたのだ。しかし、鷹匠(たかじょう)の放ったオオタカによって使い鳩が捕らえられてしまう。
 鳥刺しは、鳩を譲ってくれと鷹匠に頼むが、鷹匠はうんと言わない。
 一方、鷹匠が鳩の遺骸を調べると、脚に雁皮紙がつけられていることに気がつく。鷹匠は鳥刺しを間者だと断定し、自身も薩摩の隠密見張り役であると明かす。


『夢裡庵先生捕物帳 飛奴』
題名 飛奴  *表題作を含む七作品を収録
著者 泡坂妻夫
出版 徳間書店
評価 ★★☆☆☆

 夢裡庵こと同心の富士宇衛門が、寒烏(さむがらす)の黒兵衛という盗っ人を捕まえる。黒兵衛が盗みに入ったところはいくつもあったが、日本橋の小網町にある米問屋・大坂屋に押し入って、三十両もの大金を盗んでいたことが明らかになる。しかし、おかしなことに、大坂屋からその訴えがない。
 夢裡庵がいぶかって大坂屋に行ってみると、ある不正が判明する。大坂屋は、大坂の米相場をいち早く知るために、大坂から伝書鳩便を受け取っていたのだ。
 大坂屋は、下手な泥棒騒ぎによって店を調べられると、鳩舎の存在が露見するので、それを嫌がって、金が盗まれたことをお上に黙っていたのだ。
 夢裡庵は大坂屋にこう言う。
「いいか。相場というものは、一種の博打だ。博打にいかさまな手を使ったら、指の一本や二本、命が亡くなったとしても文句は言えねえのだ。相場に鳩を使うなどとは、博打のいかさま同様不埒なことだ」
  題名 鳩ぽっぽ警視の危険な調書
著者 志茂田景樹
出版 サンケイ出版
評価 ★★☆☆☆


 鳩ぽっぽ警視こと倉田千三は、ゲーブルという名の伝書鳩を飼っている。ゲーブルは通信文を届けるだけのただの伝書鳩と違って、あらゆることをやってのける。人間の考えていることを察して理解したり、車を尾行したり、道案内をしたり、日本酒をたしなんだり等々。

 ここまで設定がぶっ飛んでいると、ああだこうだ言っても仕方がない。読み捨ての娯楽小説だと思って楽しむべきだろう。

     
  題名 鳩ぽっぽ警視の過激な賭け
著者 志茂田景樹
出版 サンケイ出版
評価 ★★★☆☆

 鳩ぽっぽ警視シリーズの第二弾。浅見太一と、その伯父である浅見義男が誘拐されたことを受けて、倉田が捜査に乗り出す。倉田と浅見太一は、高校時代のクラスメートなのだ。
 誘拐犯から浅見家への連絡手段として、同家で飼われているレース鳩が利用されるほか、前作から登場している倉田の愛鳩・ゲーブルが縦横無尽に活躍する。
 圧巻なのは、ホテル銀座アサカイのスペシャルルームでのぬれ場シーン。鳩の形をした黄金の浴槽で、倉田と朝海美子が愛を交わす。

 なお、鳩ぽっぽ警視シリーズは、第三作目の『鳩ぽっぽ警視と翔んでる殺人狂』まで刊行されている。しかし、この第三作目では伝書鳩のゲーブルが一切登場しない。単なるミステリー小説になってしまっている。これでは、鳩ぽっぽ警視の名がすたる。
     
  題名 鳩約聖書
著者 草薙 渉
出版 光文社
評価 ★★☆☆☆

 ラジオDJの西城タケハルと、人語を解す鳩・ゆとり郎が織りなす全編笑い満載のドタバタ小説。
 伝書鳩評論家の村竹金蔵や、ゆとり郎のお嫁さんであるシオン系の雌鳩など、興味深いキャラクターが物語を盛り上げる。
 著者は第二回小説すばる新人賞を受賞している草薙 渉。

     
  題名 ウィンダリア 童話めいた戦史
著者 藤川桂介
出版 角川書店
評価 ★☆☆☆☆


 海の国・イサと山の国・パロの間に勃発した戦争とその悲劇を描いている作品。主人公・イズーとその妻・マーリンに起こる不幸は『雨月物語』が下敷きになっている。
 イサのアーナス王女とパロのジル王子は白い伝書鳩・クックウを介して恋文をやり取りするほどの仲だった。しかし、両国の戦争という悲運に見舞われた二人はそれぞれの軍を率いて衝突する。

     
題名 GOSICK ―ゴシック―  *第七巻に収録
著者 桜庭一樹
出版 角川書店
評価 ★★★☆☆

 一九二十年代の欧州を舞台にしたティーン向け小説。
 安楽いす探偵のような推理力に恵まれた美少女・ヴィクトリカが、日本からきた留学生・九城一弥とともに数々の事件を解決していく。
 本巻では、ソヴュール王国最大のスキャンダルにして未解決のままになっている、王妃ココ=ローズの首なし死体事件に二人が挑む。

 物語の各所に伝書鳩が登場し、その愛らしい姿が描写される。ヴィクトリカが鳩の脚に紙片を結びつけて、空に放つシーンが印象的である。

題名 ノーブルウィッチーズ  *第三巻に収録
著者 島田フミカネ&Projekt World Witches 原作/南房秀久 著
出版 KADOKAWA
評価 ★☆☆☆☆

 第二次世界大戦がモチーフの「ワールドウィッチーズシリーズ」(代表作『ストライクウィッチーズ』)の一作。
 ときは一九四四年。
 第506統合戦闘航空団の結成を快く思わない某勢力によって、同航空団A部隊の格納庫が爆破される。
 幸い、死者は出なかったが、多数の負傷者を出し、クリス・キーラ少佐以下のガリア諜報部が第506統合戦闘航空団を封鎖し、捜査に当たる。クリスによると、今回の事件はサボタージュの可能性が高く、内部に犯人がいるという……。

 本作に伝書鳩が登場する。ある人物が、この秘密の通信法を用いて暗躍する。

  題名 鳩とクラウジウスの原理
著者 松尾佑一
出版 角川書店
評価 ★★★☆☆


 小さな広告会社に勤めている青年・磯野のもとに、学生時代の友人がやってくる。一人は、常にドイツ軍の軍服を着ていることから、ロンメルと呼ばれている男。もう一人は、天真らんまんな女――通称・犬さん。現在、二人は無職で、行くあてがない。そうしたことから、磯野の家に転がり込む。
 三人の共同生活が続く中、磯野はひそかに鳩航空事業団という不思議な団体に所属するようになる。この組織は、伝書鳩を使って恋文を届けるサービスを全国に展開している。磯野は管制室の管制員として、鳩の運行の監視業務に従事する。
   
題名 はとの神様
著者 関口 尚
出版 集英社
評価 ★★★☆☆

 埼玉県の岩槻に住む三人の小学生――みなと、悟、ユリカ。
 彼らはライツィハーという名のレース鳩を連れて家出する。北海道の稚内から、ライツィハーを放鳩しようというのだ。
 三人はそれぞれ、悩みを抱えている。それらの思いを乗せてライツィハーが飛ぶ。しかし、とうとう、ライツィハーが鳩舎に帰ってくることはなかった。
「神様なんて、いない」
 三人はそう思うのだった。
題名 ひこうき雲
著者 梅田うめすけ
出版 文芸社
評価 ★★★☆☆

 愛鳩家の少年・三沢公和は、友人の木戸文男と、その妹・木戸乃理子とともに共同鳩舎を結成する。はじめは浮浪者の死体が発見されたパチンコ屋に鳩小屋をこしらえるが、その後、お寺に鳩小屋を作って鳩レースに参加する。しかし、木戸の父親が不慮の事故で亡くなると、木戸きょうだいは引っ越しを余儀なくされる。
 そうした中、海越えとなる、秋の七百キロレースが幕を上げる。乃理子がかわいがっているシルバーの鳩・チャコは、無事に帰還できるのだろうか。
題名 鳩護
著者 河崎秋子
出版 徳間書店
評価 ★★☆☆☆

 東京都内の出版社に勤めている、二十代後半の女性・小森 椿(こもりつばき)
 ある日、この椿の住むアパートの窓に、白色の伝書鳩(メス)が衝突する。
 鳩がけがをしていたので、椿はこれを保護し、ハト子と名づける。
 その数日後、公園で鳩に餌やりをしている男――幣巻(ぬさまき)に出会う。「お前、白い鳩を飼っているな」と幣巻(ぬさまき)が言う。白色の鳩を保護していることは秘密にしていたので、幣巻(ぬさまき)の発言に、椿は驚く。
 また、ハト子に関して、「お前は俺の次の『鳩護』になるんだ」と、わけの分からないことまで言われる。
 さらに、幣巻(ぬさまき)と全く同じ夢を見ていることも判明し、ますます謎は深まる……。


『八月の銀の雪』
題名 アルノーと檸檬  *表題作を含む五作品を収録
著者 伊与原 新
出版 新潮社
評価 ★☆☆☆☆

 園田正樹は、役者になる夢を諦めて、現在は不動産管理会社で営業職をやっている。
 正樹は目下、築三十六年の古アパート「ニューメゾン塚田」の全戸立ち退きに取り組んでいるが、三〇三号室に住んでいる加藤寿美江という老女が立ち退きを拒否している。しかも、三〇三号室に迷い込んできた鳩を、寿美江は保護しているらしい。動物の飼育はアパートの規約に触れる。
 そうして、正樹が三〇三号室の様子を見に行くが、寿美江が世話をしている鳩は、ただのドバトではなく、誰かに飼われている鳩だと分かる。その脚に「アルノー19」と記された脚環をはめているからだ。
「この子は迷い子なんだよ。ほんとの家に帰りたいに決まってるじゃない。ここを明け渡してほしいんなら、まずはこの子の飼い主をさがし出すことだね。立ち退きの話なんて、それからだよ」
 寿美江に、そう言われてしまった正樹は、鳩の飼い主を探すため、東日本鳩レース協会に問い合わせるが……。
  題名 野川
著者 長野まゆみ
出版 河出書房新社
評価 ★★☆☆☆

 両親の離婚によって、都心から田舎に移り住むことになった中学二年生の少年・井上音和(いのうえおとわ)。武蔵野の自然に囲まれた環境のもと、音和は新聞部に入って、鳩の面倒を見るようになる。鳩は通信用に使われる、れっきとした伝書鳩だ。

 かつて用いられた、新聞社の伝書鳩について語られたり、音和が新聞部の鳩を訓練したりするシーンが本作の見どころ。
     
題名 クロノスの飛翔
著者 中村 弦
出版 祥伝社
評価 ★★★☆☆

 通信隊の鳩係として、大東亜戦争に従軍した経験を持つ男・坪井永史。彼は戦後、新聞社の記者になり、学生運動にのめり込む女子学生を取材することになる。
 調査を進めていくうちに、日本の国家を根本から揺さぶるような陰謀を坪井は知る。そして、水面下で、極右組織が恐ろしい計画を進めていることまで明らかになる……。
 ときは流れて、現代。
 かつて坪井が勤めていた新聞社に、溝口俊太という青年がやってくる。倉庫整理のアルバイトをするためだ。しかし、やがて、溝口は異変に気づく。サングラスをかけている、石崎という老人が、自分のことを監視しているようなのだ。そして、社の屋上に古くさい鳩舎があるのを溝口は目にする。
 そこらあたりから、不思議な運命の歯車が動き出す。
題名 虚空の冠
著者 楡 周平
出版 新潮社
評価 ★★☆☆☆

 新聞、ラジオ、テレビ、出版などを手がける、一大企業グループのトップにまで登り詰めた男――渋沢大将(しぶさわひろまさ)の一代記を描いた小説。
 終戦後、渋沢は、極東日報社の新米記者として職に就くが、その頃に偶然、米軍艦艇と連絡船「きく丸」の衝突事故に遭遇し、その一報を伝書鳩で社に伝える。しかし、終戦から間もない頃で、日本は占領軍の支配下にあったため、米軍の不注意と怠慢によって発生した事故が公にされることはなかった。
 真相を知る渋谷が口をつぐむ代わりに、渋谷は日本の要人に近づくことが許される。
 それからというもの、渋谷は、新聞記者として独自のスクープを連発する。そうして、だんだんと名声と地位を高めていった渋谷は、最終的には、マスメディアの一大企業グループの頂点にまで、のし上がる。
 しかし、渋谷の晩節はスキャンダルにまみれる。それは渋谷が伝書鳩でもってチャンスをつかんだのと同様に、伝書鳩でもって、とどめを刺されることになるのだが……。
題名 韃靼の馬
著者 辻原 登
出版 日本経済新聞出版社
評価 ★★☆☆☆

 対馬藩士・阿比留克人(あびるかつんど)が、八代将軍・徳川吉宗への献上馬を求めて、韃靼の地に向かう冒険小説。ストーリーは、朝鮮通信使来訪に伴う、日朝間の緊迫した情勢を描く前半部と、上述した献上馬探しの後半部からなる。
 重要な通信文を付した鳩がかごごと盗まれたり、鳩舎に帰ってきた鳩を取り上げたり、と、本作は伝書鳩通信に重きが置かれていて、物語の各所に鳩が登場する。
 特に小説の最後、主人公の阿比留が幼なじみの椎名から、「唐金屋から聞いたが、伝書鳩を飼ってるんだってな」と問われて、いたずらっぽい笑みを浮かべてうなずく場面が印象に残る。
題名 暗号名『鳩よ、翔びたて』
著者 井上卓也
出版 文芸社
評価 ★☆☆☆☆

 大手広告代理店に勤める秋山和正とその妻・久美子が昭和十年にタイムスリップし、リヒャルト・ゾルゲや尾崎秀実らと協力して、アドルフ・ヒトラー暗殺を企てるというお話。

 劇中に伝書鳩が出てきて、通信文をやりとりするシーンがある。しかし、鳩のことを調べずに著者が記しているので、誤りが目立つ。脚環のことを「足管」と、いまいちな表記をしたり、見ず知らずの家に鳩が飛んできて通信文を届けたりするのだ。


『ラスト・ワルツ』
題名 アジア・エクスプレス
著者 柳 広司
出版 角川書店
評価 ★★☆☆☆

 日本陸軍内に創設された諜報組織――通称・D機関の面々の暗躍を描くミステリー小説。
 本作『ラスト・ワルツ』は、『ジョーカー・ゲーム』シリーズの第四集に当たる。この『ラスト・ワルツ』に、伝書鳩が登場する短編『アジア・エクスプレス』が収録されている。
 D機関の諜報員・瀬戸礼二は、満州鉄道の特急列車・あじあ号に乗車する。在満ソ連領事館の二等書記官――アントン・モロゾフと、列車内でコンタクトを取るためだ。
 モロゾフは、金と引き換えにソ連の情報を日本に流している。
 このモロゾフから、新聞紙上を通じて連絡があった。内容は「最重要、大至急」。大切な秘密情報を伝えたいらしい。
 瀬戸は偶然を装って、モロゾフと接触するつもりだった。しかし、事件が起こる。ソ連の諜報機関スメルシュによって、あじあ号の便所内でモロゾフが暗殺されるのだ。
題名 遥かなる昭和  *表題作を含む三作品を収録
著者 小諸悦夫
出版 鳥影社
評価 ★★☆☆☆

 つがいの伝書鳩を飼うことになった桜田家。博一、昭二、学ら、子供たちの手を借りて、父の宗雄が鳩小屋をこしらえる。
 順調に育っていく、つがいの鳩。やがて、卵がうまくかえって、その数が六羽に増える。
 そんな頃、伝書鳩のレースがあることを知った宗雄は、博一を連れて、横浜から鳩の放鳩訓練をする。しかし、いつまでたっても鳩が帰ってこない。途中の山で、猛禽類に襲われたのか、結局、二羽の鳩を失ってしまう。
 秋も深まった晩のこと、残った四羽の鳩も鳩泥棒に盗まれる。虚脱状態になる子供たち。しかし、事件が起こってから二日後、ある一人の中年男性が桜田家を訪れる……。
題名 大谷刑部戦記
著者 竹中 亮
出版 学習研究社
評価 ★☆☆☆☆

 戦国武将・大谷吉継を主人公にした架空戦記小説。
 関ヶ原の戦いの勝敗が逆転し、西軍である石田三成方の勝利に終わる。
 その後、江戸城が陥落し、ついには徳川家康を討ち取るまでの物語が描かれる。

 単行本の第二巻に、忍鳩と称する伝書鳩が出てくる。大谷吉継の命を受けた、忍者の井辺武助によって、西軍の連絡手段として鳩が用いられる。
  題名 ホワイト・バレンタイン
著者 イ・ウンギョン 脚本/高橋千秋 作
出版 竹書房
評価 ★★☆☆☆

 後述する映画『ホワイト・バレンタイン』のノベライズ版。
 絵を学ぶために大学を辞め、今は祖父が経営している本屋を手伝っている、二十歳の女性・ジョンミン。
 ある日、ジョンミンは、迷子の伝書鳩を保護し、鳩の脚についていた信書管から手紙を取り出す。どこか悲しくて不思議と懐かしい手紙……。
 ジョンミンは、この手紙に返事を書いてみようと思いつく。しかし、子供の頃に文通をしたことがあるが、ほとんどそのとき以来、手紙を書いていない。ジョンミンは、楽しいような、怖いような気持ちになりつつ、ペンを手に取る。

     
  題名 はとよひろしまの空を
著者 大川悦生 作/二俣英五郎 画
出版 ポプラ社
評価 ★★★☆☆

 子供向けの反戦図書。平成十一年にアニメ化されている。
 昭和二十年八月六日、伝書鳩のミチルは突然の悲劇に見舞われる。
 広島に投下された原爆によって飼主のあきら少年を失ったのだ。
 そして、生き残ったミチルも、体の異変を覚える……。
     
  題名 アニメ版 はとよひろしまの空を
著者 大川悦生 原作/大川弘子 大川富美 作
出版 ポプラ社
評価 ★★★☆☆

 前述した『はとよひろしまの空を』は平成十一年にアニメ化されている。本書はそのアニメ版『はとよひろしまの空を』を絵本に仕立てたもの。
 ちなみに、アニメ版『はとよひろしまの空を』の16ミリフィルムとVHSは一般には販売されていないため、これを鑑賞するには、学校や公民館などで時折催される上映会に足を運ぶしかない。

     
題名 アニメ おさるのジョージ ハトさんのおうち
著者 マーガレット・レイ&ハンス・アウグスト・レイ 原作/モニカ・ペレス 翻案/ジョー・ファロン テレビアニメ脚本/山北めぐみ 訳
出版 金の星社
評価 ★★★☆☆

 後述するアニメを絵本に仕立てたもの。
 アニメの画面をそのまま切り取るのではなく、全ページ、新規のイラストを描き下ろしている。
 アニメ版に比べると、ストーリーの一部がカットされているが、ページ数が限られる絵本にあっては致し方ない。
 巻末に、おさるのジョージが、鳩のための「木」をどういう方法で作ったのか、この絵本を読む子供たちに向けて、考えてもらうコーナーがある。
題名 えきばとのいちにち
著者 宮川健二 作/村岡美佳 画
出版 新世研
評価 ★★☆☆☆

 駅で暮らす鳩の一日を描いた絵本。伝書鳩は登場しないが、愛らしい鳩の姿を楽しむことができる。
 鳩のことをよく知らない人が鳩を取り上げると、大抵、見栄えのよい白鳩を登場させる安易な傾向がある。しかし、本作の主人公は、一般的な羽色(灰二引)をしているので、ドバトらしい容姿を少しも損なっていない。また、写実的な挿絵も、駅で日々見られる場面――ベンチに座って居眠りする人、駆け込み乗車する人などを鮮明に思い起こさせる。いい本だと思う。
題名 窓辺の鳩
著者 ナディーヌ・ブルン−コスム 作/ヤン・ナッシンベンネ 画
河野万里子 訳
出版 太平社
評価 ★★☆☆☆

 海難事故とおぼしき出来事によって、父を失った少年がいる。少年の母は「旅行に行ったのよ」と言って、一家の大黒柱の死を隠そうとするが、少年はその言葉がうそであることを知っている。
 向かいの家の屋根に鳩が来るようになった。大きな丸い目玉で、じっとこちらを見つめている。
 ある朝のこと、何羽かいる鳩のうち、白色の鳩がいなくなっていた。少年は思う。父が乗った船とともに、鳩も旅に出てしまったのかもしれない、と。
題名 はばたけ はとさん
著者 手島悠介 作/岩淵慶造 画
出版 岩崎書店
評価 ★★★☆☆

 小学一年生のめぐみが、学校から帰る途中に、傷を負った伝書鳩を保護する。
 めぐみの手当によって、元気になった鳩。
 めぐみが手紙を付して空に放つと、鳩は持ち主の三男少年(小学四年生)のもとに帰り着く。
 それから少したった頃、めぐみの家の隣に住む四五郎じいさんが、けがを負う。しかし、めぐみが暮らす島には医者がいない。嵐のせいで無線電話も故障している。窮しためぐみは、三男からもらった白鳩を放って医者を呼ぼうとするが……。
  題名 ハトの子 クロッケ ~つり糸に泣く野鳥たち~
著者 佐々木一弘 作/金島絵子 画
出版 創樹社
評価 ★★☆☆☆

 多摩川に架かる橋の橋桁で暮らす、ドバトのクロッケの成長を描いた、児童向け小説。
 多摩川のさまざまな野鳥が登場し、クロッケと交流する。
 物語の軸としては、釣り人の残すテグス(釣り糸)の問題が取り上げられている。これが鳥の脚にからまると、脚を切断したり命を失ったりするからだ。
 著者は本書のあとがきで、こう述べている。

「豊かな自然が、いつまでも残り、生き物すべてが平和に幸せに暮らせるように」――そんな願いをこめて、この物語を書きました。クロッケの成長する姿を通して、みなさんが自然のすばらしさや不思議さ、豊かな環境を守ることの大切さを感じてくださったら幸いです。

 なお、本作の劇中にビットという名のレース鳩が登場する。レース中、のどの渇きを覚えたビットが多摩川に飛来し、クロッケと出会う。
     
題名 ねじまき鳩がとぶ
著者 青山邦彦 作/青山邦彦 多田敬一 画
出版 パロル舎
評価 ★★★☆☆

 大都会の片隅に、ある青年が手作りのおもちゃを売っている、「おもちゃのいえ」という小さな店がある。
 いつものように客がなく、青年が一人、のんびりと本を読んでいると、とてもきれいな少女が店にやってくる。
 おもちゃの一つを買っていった少女に、青年は恋をする。
 そんなある日のこと、青年は、通りがかった家に、少女が買っていったおもちゃがつるされているのを目にする。
 青年は店に戻ると、夢中になって、おもちゃの伝書鳩を作りはじめる。そして、完成した伝書鳩に、「あれから あなたのことがわすれられません… また ぜひ、ぜひ、あそびにきてください、待ってます!! 「おもちゃのいえ」のおとこより」と、記した手紙を付して飛ばす。しかし、少女からの返事がくる前に、玩具メーカーの社長をやっている、少女の父親が、青年の店にやってくる。「このハトをわがキングトーイ社からうりだしてはみないかね?!」。青年が上の空で社長の話を聞いていると、あっという間に伝書鳩が連れていかれる。
 キングトーイ社で量産された、おもちゃの伝書鳩は、一大ブームを起こす。人々がこぞって、伝書鳩を買って空に放つ。しかし、あまりにも数が増えてしまったため、伝書鳩が信号機に衝突したり、電線・アンテナにからみついて、停電・交通まひが相次いで起こったりする。事態を重く見た政府は、キングトーイ社に伝書鳩の製造・販売を取りやめるように命じ、前代未聞の強制回収に踏み切る。こうして、伝書鳩は、町から姿を消す。
 少女からの返事もこず、そして、ごみのように回収されていく伝書鳩の姿に心を痛める青年。しかし、ある日のこと、一羽の伝書鳩が青年のもとに飛んできて手紙を届ける。少女からの手紙であった。「たのしいおてがみ ありがとうございました。とても うれしかったです。でも ハトは すぐ 父にとりあげられてしまい、へんじも こんなに おそくなってしまいました。ごめんなさい… 父は ああいったひとで すこしごういんなところがあるのですが さすがに このさわぎで こりたみたいです。ハトも ようやく かえしてもらえました。わたしはこどものころから おもちゃが だいすきでした。だから おもちゃのハトで おてがみをいただいたときの うれしさといったら… もっと おはなし きかせてください。あなたのつくる おもちゃの…」
 ようやく、青年のもとに戻った伝書鳩は、静かに翼を休めるのだった。
題名 くろずみ小太郎旅日記 その2 盗賊あぶのぶんべえ退治の巻
著者 飯野和好
出版 クレヨンハウス
評価 ★☆☆☆☆

 旅の途中、くろずみ小太郎が、とある茶店でお団子を食べていると、伝書鳩が一羽、ぱたぱたと飛んでくる。くろずみ小太郎の師匠・しろずみ仙人の手紙を、鳩が持ってきたのだ。
「くろずみ小太郎へ じつはさきごろ 盗賊あぶのぶんべえに いきなりおそわれ 弟子たちはみんなやられ なんと くの一のむかごのこはるが とらわれてしまったのじゃ なんとか助けにもどってきておくれ しろずみ仙人」
「ややっ! これはたいへんだ」
 くろずみ小太郎は文を握って、一目散に炭焼き山に向かう。
題名 ミー子と動物たちとのないしょ話
著者 大森美恵子 作/森田拳次 画
出版 酣灯社
評価 ★★☆☆☆

 すがすがしい五月のある日、ふと、誰かが見つめているような気がしたミー子は、仕事の手をとめて顔を上げる。すると、玄関先に置いてあるフランス人形の横に鳩がいるのが目に入る。玄関や窓を開け放していたので、迷い込んだようである。
 鳩には脚環がついていて、その内側に貼ってある紙テープに、飼い主の住所と電話番号が記されていた。
 ミー子が飼い主に電話すると、飼い主はお礼の言葉とともに、鳩を引き取る専門の業者を手配する旨を述べる。

題名 小学館のテレビ絵本 オバケのQ太郎4 ハトになったQちゃんのまき
著者 藤子不二雄 原作
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆

 後述する、漫画およびアニメと内容はほぼ同じ。
 一見すると、各ページがアニメのセル画のように見えるので、アニメ版の映像を抜き出して画面作りをしているように思える。しかし、絵は全て、この本のために描き下ろされた新規のイラストである。
 本文が、ひらがな、カタカナ、アルファベット(QちゃんのQの字のみ)だけで構成されているところから、本書は幼児向けの絵本であることが分かる。そして、その読書層への配慮を意識したせいなのか、Q太郎が伝書鳩になって届ける手紙の数がよっちゃんとゴジラ宛ての二通にとどまり、内容が簡略化されている(原作漫画では四通、アニメ版では三通)
題名 子バトのクウク
著者 神戸淳吉 作/赤坂三好 画
出版 理論社
評価 ★★★☆☆

 白い羽色をした伝書鳩・クウクと、たばこ屋さんの伝書鳩・ポポの二羽が、野鳩のデデに連れられて動物園に行く。しかし、ポポがほかの家の鳩につられていなくなってしまう。
 ポポのあとを追うクウクとデデ。
 そうして、ポポがいるとおぼしき鳩小屋にクウクとデデは潜入する。しかし、ポポと出会えないばかりか、伝書鳩であることが露見して、鳩小屋を管理している男の子に捕まってしまう。


『光と影のドラマ』
題名 羽  *表題作を含む八作品を収録
著者 佐倉秀樹
出版 日本文学館
評価 ★☆☆☆☆

 昔、伝書鳩をしていた雄鳩が運転するタクシーに、銃を手にした逃走犯(人間)が乗り込む。犯人は戯れに「目的地はアヴァロンだ」と告げる。しかし、意外にも鳩は「はい、アヴァロンね」と答えて、車を走らせる。
 何か話せ、とせかされた鳩は、伝書鳩をしていた頃の思い出を語る。
 ブルーという名の青い鳥に恋し、匿名の手紙を書いては毎日渡しに行っていたこと。そして、鳥獣戦争のさなか、東の最果ての地にあるアヴァロンに手紙を届けに行ったことを……。
題名 パズルノート 天文台の謎の部屋
著者 ニコリ
出版 ニコリ
評価 ★★★☆☆

 パズルを解きながら、物語を楽しむことができるゲーム冊子。パズルの最後の謎を解いたら、ニコリのウェブサイト上にある特設ページにアクセスし、キーワードとなる、ひらがな六文字を入力すると、エピローグにたどりつける。

 丘の上にある廃天文台の三階。主人公の男子中学生は、放課後になると、ここにやってきて過ごすのが日課になっている。最近は、同級生の羊介とハルが増えて天文台が騒がしくはあるが……。
 そんなある日のこと、一羽の伝書鳩が天文台に迷い込む。しかも、伝書鳩は手紙をくわえている。「中はパズル? なんだこの手紙!」。開封した手紙の内容に驚く一同であった。
題名 ガラよ 行け!
著者 かたおか徹治
出版 旺文社
評価 ★★★☆☆

 『中一時代』(昭和四十九年三月号)に掲載されたレース鳩漫画。
 ある日、愛鳩家の村瀬が愛鳩に舎外運動をさせていると、レース鳩の血を引くドバトがつられて、村瀬鳩舎に迷い込む。
 森 ひろし少年は、この迷い鳩を村瀬から譲り受けると、繁殖させて、二羽の仔鳩(ガラ、ムク)を取る。しかし、猫にかみ殺されてしまい、ガラと名づけた鳩だけが手元に残る。
 ひろしは、このガラを訓練して、二百キロ競翔に出場させる。いい結果は残せなかったが、ガラともう一羽(級友の大和田の鳩)が体を張って、レース中に襲いかかってきたタカを撃退する。
 ほかの鳩の安全を守ったことから、ひろしは鳩協会から表彰状を贈られる。しかし、その肝心のガラが鳩泥棒に盗み出されてしまう。ひろしは「こんな物!」と言って、表彰状をぐちゃぐちゃに丸める。
 しかし、そのとき、ガラが姿を見せる。鳩泥棒のもとから脱出してきたようである。
 ひろしは、鳩の餌を手のひらに乗せて、「おいで」と言って、ガラを呼び寄せる。しかし、ガラは、そっぽを向いて、家の屋根に飛んでいってしまう。そこには、ガラの連れの雌鳩がいて、むつまじげに戯れ合う。いつの間にか、ガラはガールフレンドを作っていた。
 ひろしは、鳩の餌をガラに投げつけて、「どこかへいっちまえ!」と言う。そして、ガラの飼育を諦める。
 ドバトの血を引くガラにとっては野原や神社で自由な生活を送る方が幸せである、と、ひろしは考えたのかもしれない。
 ひろしは、涙を流して、飛び去っていくガラを見つめる。
 そして、手を上げて、「ガラ~ッ」と叫ぶ。
題名 泣くな!十円 (「伝書鳩の巻」)  *第二巻に収録
著者 つのだじろう
出版 秋田書店
評価 ★★★☆☆

 小学五年生の聖徳十円は、団地のおばさんの家にすみ着いた鳩を五羽もらってくる。クラスメートの上野君が飼っている伝書鳩を目にして、鳩の飼育に興味を覚えたのだ。
 十円が、手に入れた鳩を上野君に見せると、意外なことが分かった。脚環をつけた鳩が紛れていたのだ。
 上野君は驚きの声を上げて、こう語る。
「きっとこいつはハトレースに出て……まよいバトになったんだぞ! まよってその団地にメスと住みついちゃったんだ!」
 優秀な鳩を手に入れて気をよくした十円は、このことをクラスのみんなに自慢するが……。

題名 レース鳩0777(全十四巻)  *0777は「アラシ」と読む。
著者 飯森広一
出版 秋田書店
評価 ★★★★☆

 昭和五十年代の『少年チャンピオン』に掲載されていた鳩レースの漫画。
 作品の出来栄えは、さして注目に値するものではないのだが、日本鳩界に与えた影響は計り知れない。漫画という親しみやすい媒体でレース鳩のことを知った当時の子供たちが続々と鳩を飼いはじめて、にわかに鳩レースがブームになったのである。
 現在、鳩レースの競翔家の中には『レース鳩0777』世代の強豪が数多くいて、鳩界の重責を担っている逸材をも輩出している。
題名 愛怨情夜 (「伝書鳩」)
著者 つつみ 進
出版 久保書店
評価 ★★★☆☆

 小学生の荻野少年は、母親を亡くしている。そして、父親が再婚したことから、現在は継母とともに暮らしている。
 実の母親を失った悲しみと、継母を性欲の対象として求めてしまうことに、荻野少年は日々悩む。
 ある日の夜、荻野少年は、父親と継母の男女の営みを見てしまう。
 継母が床の中で、荻野少年のことを、いろいろとなじっているのを聞いて、荻野少年はショックを受ける。
 荻野少年が鳩小屋の中にエロ写真や0点のテストの答案を隠していること、精液で固くなった荻野少年の下着がたんすの奥から出てきたこと、継母が昼寝をしていると、こっそりとその体をなめるように見つめていること、などである。
 しまいに、継母が、
「気味の悪い子」
 と、言うと、荻野少年は、とどめを刺されたように絶望する。
「モォだめだ。なにもかもおしまいだ…」
 荻野少年は自分の鳩小屋に火をつけて、鳩を逃がす。
「モォ帰って来るンじゃないぞ~~~~!!」
 荻野少年はそう言うと、屋上から飛び降りて、自ら命を絶つ。そして、飛び上がっていく鳩につけられた信書管のふたが不意に開いて、実母の写真がヒラリと落ちる。
「ね……お母ちゃん。ハメッコって本当なんだね…」
「ふふ……そうね」
 荻野少年の脳裏に、そんな幻想の会話が交わされる……。
  題名 少年探偵団 怪人二十面相
著者 江戸川乱歩 作/田中 顕 画
出版 竹書房
評価 ★★☆☆☆

 前述した『怪人二十面相』を漫画化した作品。小林少年が伝書鳩のピッポを放つ場面が絵になっているのがうれしい。しかし、どうにもいただけないのが、ピッポを勝手に白鳩にしているところ。江戸川乱歩の原作には一言足りともピッポが白鳩であるとは記されていないし、ポプラ版の挿絵も灰二引で描かれている。
 この漫画に限らないが、伝書鳩とギンバトの違いが世間では把握されていないことがままある。

     
題名 一郎鳩君子鳩
著者 芳賀まさお
出版 三光社
評価 ★★★☆☆

 大山君子ちゃんは、隣組のおじさんからもらった、つがいのジュズカケバトの世話をしている。
「鳩の日記を書いたらどうかね。お前があんなに、かはいがって飼ってゐるんだからな。」
 君子ちゃんは、お父さんから、そう勧められて、鳩の飼育日記を書きはじめる。
 つがいのジュズカケバトの様子や、その夫婦の間にできた、二羽の子バトの成長などを丹念に記す。
 ちなみに、二羽の子バトのうちの片方は、君子ちゃんの名を冠した君子鳩というのだが、君子ちゃん同様に体が弱かった。
 君子ちゃんは、この君子鳩を丈夫に育てようとするうちに、自身の体のことを考えるようになる。
 運動をしたり、食べ物に気を使ったりするようになったのだ。
「君子さんは、とても丈夫になりましたね。」
 学校の先生が、すっかり健康になった君子ちゃんを見て、そう言う。
 鳩のためにしてやったことが、君子ちゃんの健康につながったのである。
題名 南極のペンちゃん (「伝書鳩の叔父さん」)
著者 芳賀まさお
出版 中村書店
評価 ★★★☆☆

 太郎君とペンちゃんが叔父さんの家を訪ねる。そして、叔父さんの鳩小屋で、鳩に餌を与えたり、叔父さんから鳩の種類について説明を受けたりする。
 帰り際、太郎君とペンちゃんは、叔父さんから伝書鳩をもらう。しかし、その帰り道、太郎君がつまずいて転倒したはずみに、かごから伝書鳩を逃がしてしまう。これがそこいらの小鳥だったら、処置なし、なのだが、もらった鳥は伝書鳩である。
 太郎君とペンちゃんは、叔父さんの家に伝書鳩が帰っていると思って、来た道を引き返す。
  題名 のらくろ漫画全集 (「のらくろ軍事探偵」「のらくろ探検隊」)
著者 田河水泡
出版 講談社
評価 ★★☆☆☆

 漫画『のらくろ』は、雑誌『少年倶楽部』に連載されていたが、本書はそれを一冊にまとめた全集。そのうちの二作品――「のらくろ軍事探偵」と「のらくろ探検隊」に伝書鳩が登場する。
 「のらくろ軍事探偵」では、猛犬連隊(のらくろ軍曹の所属する連隊)に伝書鳩が敵状報告をもたらす。
 「のらくろ探検隊」では、のらくろが忘れた探検地図を伝書鳩が届ける。
     
題名 ロボット三等兵 (「ジンギスカン作戦」)  *上巻に収録
著者 前谷惟光
出版 マンガショップ
評価 ★★☆☆☆

 信書管を帯びた軍鳩がやってくるのを、笑顔で迎えるロボット三等兵。しかし、そんなロボット三等兵をよそに軍鳩の態度は素っ気ない。「重大な命令書だ 三ト兵なんかに見せられるか」とむげに言う。そして、胸の階級章を指しながら「こらっ こうみえても上ト兵だぞ ケイレイしろ」と気合までかける。「だから三ト兵はなさけないよ」と、嘆息するロボット三等兵であった。
  題名 機動戦士ガンダム MS BOYS ―ボクたちのジオン独立戦争―
(STEP.04 戦うという意味)  *第一巻に収録
著者 高山瑞穂
出版 角川書店
評価 ★★☆☆☆

 『機動戦士ガンダム』の世界では、ミノフスキー粒子の登場によって、通信機器の信頼性が失われている。電子戦の影響を受けない鳩通信は、宇宙世紀時代の戦争で復活したローテクノロジーの一つなのかもしれない。
 本作では、コーカサスの山中に潜むジオン軍が、鳩車を用いた鳩通信をおこなっている。
   
  題名 はじめの一歩 (「Round1 THE First Step」)  *第一巻に収録
著者 森川ジョージ
出版 講談社
評価 ★☆☆☆☆

 いじめられっ子の主人公・幕之内一歩が、鴨川ボクシングジムの鷹村から、マイク・タイソンが愛鳩家であることを教えられる。
 子供の頃のマイク・タイソンは気が小さくて、いじめられっ子だった。しかし、かわいがっている鳩を殺されたことに腹を立てて、いじめっ子らをたたきのめす。そのときにはじめて、マイク・タイソンは、自分の拳に潜むダイナマイトパンチに気がつく。そして、二十歳でヘビー級の世界チャンピオンになる。
   
題名 マイク・タイソン物語
著者 中 大輔 作/木村シュウジ 画
出版 竹書房
評価 ★★☆☆☆

 ボクシングのヘビー級チャンピオン――マイク・タイソンの半生を描いた作品。近所の不良たちに飼鳩を殺されたことに逆上したタイソンが、彼らを殴り倒すシーンが漫画になっている。
 なお、劇中に鳩が描かれているページは以下のとおり。
 二十~二十一ページ、三十六~三十八ページ、四十六ページ、百十四ページ、百十九ページ、百四十五ページ、百八十九ページ、二百三十五ページ、二百四十三ページ。
題名 北斗の拳 (「死を喰らうヤツら!!の巻」)  *第十九巻に収録
著者 武論尊 作/原 哲夫 画
出版 集英社
評価 ★☆☆☆☆

 さらわれたリンを追って、元斗皇拳の使い手・ファルコが修羅の国に渡る。ケンシロウもまた、同じ目的で修羅の国に上陸する。
 修羅の国の修羅との激しい戦いの末に、ファルコは瀕死の重傷を負う。
 ファルコを抱き支えるケンシロウ。
 そんなとき、海のかなたから、元斗の伝書鳩がやってくる。付されていた手紙には、ファルコの恋人・ミュウが懐妊していることが記されていた。ケンシロウはファルコにこう述べる。「これで元斗皇拳は滅びぬ! おまえの子がきっと立派な伝承者となろう」。ファルコは涙を流して喜び、やがて、事切れる。
題名 ジョジョの奇妙な冒険 Part2 戦闘潮流
(「ハトと女の子の巻」)  *第七巻に収録
著者 荒木飛呂彦
出版 集英社
評価 ★☆☆☆☆

 シーザー・ツェペリに会うため、はるばるローマにまでやってきた、ジョジョ(ジョセフ・ジョースター)とロバート・E・O・スピードワゴン。しかし、シーザーの態度は非友好的で、ジョジョにあてつけるように女とじゃれ合う。腹を立てたジョジョは、波紋を込めたスパゲティをシーザーに放つ。しかし、シーザーに簡単にはね返されてしまう。
 仲の悪い二人の間を取り持とうとして、スピードワゴンが二人を𠮟責(しっせき)するが、ジョジョもシーザーも聞く耳を持たない。シーザーが、ジョジョの波紋能力が弱いことを指摘したうえで、「おまえの波紋ではこの女の子にさえ勝てやせん」となじれば、ジョジョは、懐いている鳩を指さしながら、「ならばてめーはこのハトにさえ勝てやしねえぜ!」と、シーザーに言い返す。
 そうして、とうとう、波紋を用いた、けんかをはじめる二人。
 シーザーの必殺技・奥義波紋シャボンランチャーによって、ジョジョはピンチに陥るが、そのとき、シーザーといちゃついていた女の口から鳩が飛び出し、その鳩がシーザーの口内に飛び込む。大きくよろめくシーザー。ジョジョはあらかじめ、波紋を込めた小鳩を女の口の中に仕込んであって、シーザーの隙を突いたのだ。ジョジョは勝ち誇ったように、こう言う。「もう一度いうぜ てめえは「ハトにさえ勝てねえのさ」!」
題名 ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン
(「集中豪雨警報発令 その③」)  *第六巻に収録(通巻第六十九巻)
著者 荒木飛呂彦
出版 集英社
評価 ★☆☆☆☆

 ぬれぎぬを着せられて収監された、空条徐倫(くうじょうジョリーン)を連れ出すために、彼女の父である空条承太郎がグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所にやってくる。
 これに対し、事件の黒幕であるエンリコ・プッチ神父は、ホワイトスネイク(スタンド)を繰り出して、承太郎の記憶とスタンド能力を奪う。
 仮死状態に陥る承太郎。彼を救うには、DISC化されて持ち出された、承太郎の記憶とスタンドを取り返さなければならない。徐倫の戦いがはじまる……。

 承太郎のスタンドが記録されているDISCがスピードワゴン財団に託されるシーンで、サヴェジ・ガーデンという名の伝書鳩が登場する。

題名 ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン
(「緑色の墓標 その①」)  *第八巻に収録(通巻第八十八巻)
著者 荒木飛呂彦
出版 集英社
評価 ★★☆☆☆

 ときは十九世紀のアメリカ。北アメリカ大陸を横断する、総距離約六千キロメートルの大レース――スティール・ボール・ランに、ジャイロ・ツェペリとジョニー・ジョースターの二人が挑む。
 スティール・ボール・ラン・レースの4th.STAGE中盤、リンゴォ・ロードアゲインが聖骸の一部(脊椎)の位置情報を付した伝書鳩を放つ。しかし、ルーシー・スティールが鳩舎に先回りして鳩を捕まえ、ファニー・ヴァレンタイン米大統領への情報伝達を防ぐ。
 ルーシーはその後、聖骸の脊椎部分を情報に基づいて手に入れる。そして、ジャイロとジョニーに接触して聖骸の脊椎部分を彼らに託す。
題名 変人偏屈列伝 (「ニコラ・テスラ」)
著者 荒木飛呂彦 作/鬼窪浩久 藤井伸幸 画
出版 集英社
評価 ★☆☆☆☆

 実在した奇人変人の人生を漫画化した連作集。タイ・カッブ、康 芳夫、メアリー・マロン、サラ・ウィンチェスター、コリヤー兄弟、そして、鳩好きだったニコラ・テスラのエピソードが収録されている。
 ニコラ・テスラが最も愛した純白の雌鳩がいる。テスラが口笛を吹けば、どこからともなく飛んできて、テスラの肩にとまる。人混みの中でも公園でも、鳩はテスラを見つける。テスラもすぐに彼女だと分かる。テスラにとってこの雌鳩は、男が女を愛するように愛している存在だった。
 ある晩のこと、テスラの部屋の窓にこの鳩が現れる。どうしたことか、鳩は涙を流している。鳩のただならぬ様子からテスラは悟る。「そうか…………キミは自分が近いうちに死ぬからさよならを言いに来たんだね。でも安心するがいい………わたしが一晩中ずっと見守ってあげるよ。安心して私のそばで眠りなさい…」。テスラはいつだって自分の信念をやりとげる自信はあった。しかし、彼女がいなくなって、テスラは自分の人生が終わったことを知る。
 鳩が死んでから一年。テスラは何もかも失い、自室で眠るように死んでいるのをメイドに発見される。
題名 死刑執行中脱獄進行中 
(「岸辺露伴は動かない ~エピソード16:懺悔室~」「デッドマンズQ」)
著者 荒木飛呂彦
出版 集英社
評価 ★☆☆☆☆

 荒木飛呂彦の短編集。四作品が収録されている。そのうちの「岸辺露伴は動かない ~エピソード16:懺悔室~」と「デッドマンズQ」の二作品に鳩が出てくる。
 前者の漫画では、食品市場に勤めている下働きの男が、中空に放り投げたポップコーンを三回とも口の中に受け止めることができなければ命を取られる、という死のゲームを浮浪者から強要されるが、そのシーンにおいて、中空に放り投げられるポップコーンを狙う邪魔者として大量のドバトが登場する。
 後者の漫画では、幽体として現世をさまよっている吉良吉影(『ジョジョの奇妙な冒険』第四部の登場人物)が、午前零時で時効を迎える殺人犯を追い詰める際に、犯人の潜伏先の部屋の窓に鳩をけしかけるシーンがある。犯人は思わず、噴き出して、「鳩だろーが警察だろーが俺のとこまで来れるもんなら来てみやがれってんだァァァ――――――――――!」と叫ぶが、吉良はすかさず、「ありがとう。「許可」が出たのなら入らしてもらう」と言って、部屋に押し入り、犯人をナイフで刺し殺す。幽体の吉良は、室内の人間から許可を得ると、壁、扉、窓などをすり抜けて中に入ることができるのだ(反対に言えば、室内の人間から入室許可が下りない限り、吉良は中に入ることができない)
  題名 こちら葛飾区亀有公園前派出所 (「鳩の恩返し!?の巻」)  *第八十巻に収録
著者 秋本 治
出版 集英社
評価 ★★★☆☆

 けがをした鳩の手当てをする両津巡査長。子供の頃に鳩を飼っていたことがあるので、餌やり、水やり、と、てきぱきこなす。鳩は傷が癒えるまで派出所に置いておかれることになった。
 そのうち、派出所にたむろする鳩が四十羽ほどに増える。けがをした鳩がほかの鳩を釣ってきたのだ。両津は派出所の敷地に鳩舎をこしらえて、鳩を独自に訓練しはじめる。その目的は鳩スパイ網の構築。
 派出所の面々は、両津のスパイ鳩に見張られていることに不安を募らせる。
 
題名 こちら葛飾区亀有公園前派出所 (「天翔ける鳩たちの巻」)  *第百九十巻に収録
著者 秋本 治
出版 集英社
評価 ★★★☆☆

 お寺のお堂で迷い鳩を保護した両津。脚環をもとに持ち主を割り出して、愛鳩家の少年の家に鳩を届ける。
 両津は少年と、鳩に関する話をしているうちに、鳩レースに興味を覚える。
「わしもレースに参加してみたい」
 と、言う。
 すると、少年は、迷い鳩を保護してくれたお礼に、血統書つきの銘鳩を両津にプレゼントする。
 そうして、両津は派出所の屋根に鳩舎をこしらえ、もらってきた鳩――両津号を二百キロレースに出場させる。しかし、当日帰りが基本の二百キロレースだというのに、二日たっても両津号は帰ってこない……。
  題名 うる星やつら (「飛べ、愛の伝書鳩」)  *第三十二巻に収録
著者 高橋留美子
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆


 テンが通信販売で購入した「鳩屋千年堂の伝書鳩」が登場する。この伝書鳩にいとしい相手の顔と住所を覚えさせると、恋文を届けてくれるという。
 テンは麗しのサクラ先生あてに「鳩屋千年堂の伝書鳩」を使って恋文を届けようとする。しかし、サクラ先生に一目ぼれした伝書鳩は恋文を破り捨てて、あべこべにテンと争いはじめる。

     
題名 オバケのQ太郎 (「クークークー」)  *第二巻に収録
著者 藤子不二雄
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆

 友達の伝書鳩を目にした正太が、
「僕も飼ってみたいな」
 と、口にする。
 しかし、友達は、
「伝書鳩の飼い方はなかなか難しいんだ」
 と、言って、まともに取り合わない。
 チェッと舌打ちする正太。しかし、すぐにあることを思いつく。オバケのQ太郎を伝書鳩に見立てようというのだ。
題名 エスパー魔美 (「思い出を運ぶハト」)  *第八巻に収録
著者 藤子不二雄
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆

 翼を痛めた伝書鳩を河原で保護した魔美。その夜、魔美は鳩の心の中のイメージ――三つの山と一本の木が生えている光景をエスパー能力で目にする。頭の中に浮かんだ映像を紙に描いた魔美は、その絵を見た父親から思いがけない話を聞かされる。昭和二十年の八月、山梨県のある村に学童疎開していた父親が、その場所で絵と同じ光景を見た、というのだ。この事実を知った魔美は、その村から伝書鳩が飛んできたものと考え、
「春休みは山梨県の山へいこう!!」
 と、父親にせがむ。
 こうして、魔美と父親が乗った乗用車が、山梨県を目指して出発する。

題名 ドラえもん プラス (「「合体ノリ」でハイキング」)  *第五巻に収録
著者 藤子・F・不二雄
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆

 今朝、寝坊して、みんなと一緒にハイキングに行くことができなかった、のび太。その様子を見かねたドラえもんが、どんな生物とも合体できて、その生物の特徴を自分のものにできる、合体ノリをのび太に見せる。レース鳩と合体して空を飛んでいこうというのだ。
 こうして、友達から借りたレース鳩と合体して翼を得たドラえもんとのび太は、みんながハイキングに向かった山を目指して空に飛び立つ。

  題名 海の闇、月の影(全十八巻)
著者 篠原千絵
出版 小学館
評価 ★☆☆☆☆

 小早川流風(こばやかわるか)と小早川流水(こばやかわるみ)は双子の女子高生。
 ある日のこと、彼女たちはハイキングに訪れた山で、岩の中に閉ざされた集団墳墓を見つける。そして、墳墓の中に入った途端、カビ臭い異臭を嗅いで倒れてしまう。古代のウイルスに感染したのだ。
 この事件によって、一緒にやってきていた二人の先輩が死亡するが、流風と流水は無事だった。しかし、妙なことが起こる。宙に浮いたり、物体をすり抜けられたりする超能力が双子に顕現したのだ。
 流風の性格は以前と変わらなかったが、流水は超能力に目覚めたことによって精神に変容をきたす。邪悪な心を持つようになったのである……。

 単行本の第九巻から伝書鳩が登場する。五羽の伝書鳩に付された、ウイルスの処方箋を巡って、双子が対立する。
     
  題名 突撃!パッパラ隊(全十八巻)
著者 松沢夏樹
出版 エニックス
評価 ★☆☆☆☆

 月刊少年ガンガンに連載されていたギャグ漫画。不死身の軍人・水島は、地獄の部隊とうわさされているパッパラ隊に配属される。しかし、そこは、少女漫画家を目指している白鳥沢隊長をはじめ、やりたい放題のおてんば娘・ランコ、謎の忍者・とびかげなどが所属する、とんでもないところだった……。

 第二部(六巻~)からX-ハトという伝書鳩が登場する。鳩のくせに大阪弁でツッコミを入れたり、たばこを吹かしたりする様が笑える。

     
  題名 任侠沈没  *第一巻と第二巻に収録
著者 山口正人
出版 日本文芸社
評価 ★☆☆☆☆

 天変地異によって壊滅した日本。中央部播堂会粟侍連合系赤竜流組若頭・大紋字竜伍は、妻と娘の敵を討つために組長の粟侍我竜を求めて荒廃した日本列島を放浪する。

 前述した漫画『レース鳩0777』をもじった伝書鳩が登場する。その名は伝書鳩・嵐。関東大震災のときのように、通信が途絶した状態では、古式ゆかしい伝書鳩が頼りになる。

 
     
  題名 東京ラブストーリー(全四巻)
著者 柴門ふみ
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆

 愛媛県から上京してきた男女三名――永尾完治(ながおかんじ)、三上健一(みかみけんいち)、関口さとみ(せきぐちさとみ)の三角関係を描いた恋愛漫画。その男女三名のほかに、何をしでかすか分からない天衣無縫な女――赤名リカ(あかなりか)も加わり、込み入った恋愛模様が展開される。
 永尾は故郷の愛媛で伝書鳩を飼育していたことから、東京のマンションのベランダにも鳩小屋をこしらえて伝書鳩を飼う(鳩の名はリンチ二世。赤名が名づける)。永尾はかつて愛媛県下一の鳩飼育少年と呼ばれていて、鳩の生態や飼育法に通じている。
     
題名 坂道のアポロン(全九巻)
著者 小玉ユキ
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆

 ジャズに恋に友情に……。
 昭和四十年代を舞台にした青春漫画。
 親の仕事の関係で、関東の学校から九州の高校に転校してきた西見 薫(にしみかおる)
 彼は、対人関係のストレスがかかると、吐き気を覚える悩みを抱えていた。しかし、西見は、同級生らと親交を深めていくうちに、そうした症状に悩まされなくなる。
 西見の親友である川渕千太郎(かわぶちせんたろう)が、サラ・ボーンと名づけた雌鳩を飼っている。
題名 3月のライオン  (「Chapter.64 銀の羽根」)  *第七巻に収録
著者 羽海野チカ
出版 白泉社
評価 ★★★☆☆

 プロ棋士五段の山崎順慶(やまざきじゅんけい)は、将棋界で伸び悩んでいる現状に、頭を抱えていた。また、趣味のレース鳩でも、春の五百キロレースに、最愛の選手鳩である「銀」を参加させるが、いまだに「銀」は鳩舎に帰ってこなかった。
 山崎は、真っ黒な水の底に潜っていくような心地になって、落胆する。挑戦し続けるライバルたちを前に、自分は取り残されていると感じる。しかし、煩悶(はんもん)しているうちに、病を押してまで将棋を指す、二海堂晴信(にかいどうはるのぶ)の姿などに思い当たり、考えを新たにする。
「こいつらのいる世界にもう一度戻りたい……」
 と。
 その後、山崎がいつものように、鳩舎の糞掻き(ふんかき)をしていると、「銀」がふらふらになりながら帰ってくる。
「こんな紙みたいに軽くなっちまって……。でも大丈夫、俺がついてるからな。またすぐ元気になれる。そしたらまた思いっきり飛べるようになる!!」
 ぼろぼろになりながら帰ってきてくれた「銀」に、山崎がいたわりの言葉をかける。
 そして、希望を取り戻した山崎は、こう言う。
「まずは俺が明日、思いっきりがんばってくるから、どっちが先に飛べるか競争だ!!」
題名 仮スマ(全八巻)
著者 桜井リヤ
出版 集英社
評価 ★★☆☆☆

 アーティストのサクは、高い歌唱力とルックスで若い女性たちの人気を集めている。しかし、その実態は、田舎から都会に出てきた地味な男で、普段は方言丸出しの言葉を使って話す。彼のハンサムな外見は、メイクで、ごまかされていたのだった。
 サクは、稲刈りや牛の乳搾りなどを難なくこなす。そして、十九歳になった今でも、中学時代のジャージーを愛用している(部屋着)
 一番驚くのが、つや子という名の雌鳩を、サクが飼っていることである。サクは通信機器を持っていないので、この伝書鳩を使って、手紙のやり取りをする。
  題名 アルカサル―王城―外伝  (「地の果てへの道」)  *第一巻に収録
著者 青池保子
出版 秋田書店
評価 ★☆☆☆☆

 カスティーリャ王国(中世ヨーロッパに存在した一国家)の国王・ペドロ一世の生涯を描いた『アルカサル―王城―』の外伝作。
 「地の果てへの道」という作品の中に、イベリア半島からドイツに向けて鳩が放たれる場面があり、各修道院が伝書鳩の通信網で結ばれていたことが描かれている。

   
題名 鉄十字の鷲と虎  (「電光の鷹」)  第二巻に収録
著者 新谷かおる
出版 秋田書店
評価 ★★☆☆☆

 一九四四年六月、ドイツ軍のクロイツェル大佐は、新型ジェット飛行機の図面を手土産にして、連合軍側に和平工作をおこなおうとする。しかし、これは国家の承認を得ていない反逆行為であったことから、クロイツェル大佐を暗殺せよ、との命令が出される。そうして、クロイツェル大佐の乗る飛行機がノルマンディー上空でドイツ空軍機に撃墜され、クロイツェル大佐は命を落とす。
 このクロイツェル大佐をあやめたのは意外な人物だった。何とクロイツェル大佐の実弟で、自ら裏切り者を抹殺(まっさつ)するためにこの任務に志願したのだった。
 さて、このパイロットの方のクロイツェルは、新型ジェット戦闘機Me262を駆って、いとも簡単に連合軍機をたたき落とす。しかし、新型のジェット戦闘機に乗っているから勝って当たり前、実の兄もそうやって墜としたのか、などと、クロイツェルはJG32のパイロットたちに酒場で中傷される。たちまち、クロイツェルは激高して酒場で大立ち回りを演じ、揚げ句、クロイツェルは、JG32のパイロットの一人に、いすで後頭部を殴られて失神する。
 クロイツェルが目を覚ますと、寝台に寝かされていて、彼の面倒を見てくれた一人の女が傍らにいる。スイス通信ベルリン支局の記者――アネット・シムカと彼女は名乗り、間もなくスイスに帰国する予定だという。
 クロイツェルはアネットに連れ出されて、屋上の鳩舎にやってくる。スイス通信の伝書鳩が百羽いて、アネットの帰国とともに空に放ってスイスの鳩舎に帰らせる手はずになっているという。
 ちなみに、アネットは、反逆行為で暗殺されたクロイツェル大佐の婚約者である。彼女の口からそれを知らされたクロイツェルは、がくぜんとする。
 その後、クロイツェルは愛機のMe262に乗って、アメリカ軍のP-51戦闘機と交戦する。クロイツェルは見事、P-51戦闘機を撃墜するが、そのとき、アネットの放った伝書鳩の群れに出くわし、Me262のエンジンに二、三羽を巻き込んでしまう。いわゆる、バードストライクである。これにより、Me262は空中爆発を起こし、クロイツェルは命を落とす。
題名 ノーブルウィッチーズ 第506統合戦闘航空団  *第三巻に収録
著者 島田フミカネ&Projekt World Witches 原作/南房秀久 ストーリー原案/槌居 画
出版 角川書店
評価 ★☆☆☆☆

 前述した小説の漫画版。原作小説全八巻のうち、第三巻までが漫画化されている。
 本作は登場人物が多く、またそのキャラクター名も外国の姓名ばかりで読者の負担が大きい。原作小説を読む前にこの漫画版でキャラクター名と外見を記憶しておくと読みやすくなる。
 なお、原作小説の第三巻に登場する伝書鳩が、この漫画版第三巻にも登場する。ただし、原作小説に比べて場面が省略されている。限られた紙面の都合か、犯行の証拠である伝書鳩をイザベルが取り押さえるシーンなどがカットされている。
題名 PAILO ~ある戦場の伝書鳩のこと~
著者 柊 ゆたか
出版 デジマ
評価 ★★★★★

 『コミック・ガンボ』(No.34。2007.9.4)に掲載された読み切り漫画。
 一九四四年六月六日、アメリカ軍の戦闘機パイロット――アダム・マクランクは、軍用鳩のパイロ(オス)を愛機に積み込んで出撃する。
 マクランクとパイロは、ともに独り身で、何とはなしに、相通ずるところがあった。
 そうして、空を飛ぶ、一人と一羽だったが、ドイツ軍機の攻撃を受けて、愛機は炎上、爆発し、マクランクとパイロは海にたたき落とされる。
「鳩…?」
 海上に漂うマクランクが、イギリス軍の軍用鳩の死骸を見つけて、そう声を発する。
 プカプカと浮かぶイギリス軍の軍用鳩を手に取ると、脚に通信文をつけている。
 マクランクは、その通信文に目を通すと、
「パイロ――すまない」
 と、言って、胸に抱えているパイロをなでてやる。
 そして、マクランクは、パイロにこう命ずる。 
「一時間後の爆撃目標に友軍のイギリス軍が立ち往生している。この文書を連合軍本部まで届けてくれ」
 こうして、軍用鳩のパイロは、イギリス軍の通信文を携えて、一路、目的地を目指す。
題名 赤の世界 (「鳩の翼」)
著者 びっけ
出版 講談社
評価 ★★★☆☆

 優秀な伝書鳩を育てている愛鳩家・アロイスは、軍の要請を受けて、次々に鳩を献納する。しかし、次第に鳩を消耗していき、フルークと名づけた雄の鳩だけが手元に残る。嫌気が差したアロイスは、フルークを連れて軍の手の及ばないところに逃げようとするが、その道すがら、負傷兵を乗せたトラックが崖下に転落している光景に出くわし、助けを求められる。アロイスは食べ物と水が入った雑嚢を崖下に放ろうとする。しかし、その際に足を踏み外してしまい、自身も滑落してしまう……。
題名 深夜隊(全五巻)
著者 ロクザキ
出版 KADOKAWA
評価 ★★☆☆☆

 日本を中心とする、各国の兵器を擬人化したギャグ漫画。
 本作に登場する、三式指揮連絡機(漫画内の愛称・シキシキ)の肩に、愛くるしい白い伝書鳩が乗っている。その彼?に特定の名前はなく、単に「軍鳩」と呼ばれている。
 この「軍鳩」は、名菓ひよ子に姿が似ていて、戦闘帽をかぶり、かばんをかけている。
 第四巻に載っている設定資料によると、「軍鳩」が手紙を運ぶ際には、かばんの中に手紙を入れるのではなく、口にくわえて運ぶのだという(信書管、信書嚢などは使用しないらしい)
 また、白色の鳩は目立ってしまうので、本来は軍用鳩に向いていないのだが、特殊な理由があったり、優秀な鳩だったりした場合には例外がある、と、ただし書きされている(確かに、日本軍の伝書鳩の写真をチェックすると、白っぽい個体が使翔されている例を、しばしば見かける)
 ちなみに、「軍鳩」以外にも、ドイチュ(独国)の軍用鳩も登場する。ビデオゲーム『MOTHER』に出てくる「どせいさん」に外見が似ている(*あくまで、藤本の感想)
題名 エルネストの鳩舎
(「エルネストの鳩舎」「Parlor Roller 鳩」「鳩を捨てる」)
著者 鳩山郁子
出版 青林工芸舎
評価 ★★★★☆

 商業漫画ではなく、芸術漫画とでも称した方が適切な短編漫画集。
 収録されている作品はどれも上品で、詩情にあふれている。そして、その内容は難しく、『不思議の国のアリス』のような奇妙な物語が展開される。
 本作には、「エルネストの鳩舎」「Parlor Roller 鳩」「鳩を捨てる」という、鳩に関係した漫画が三作品収録されている。しかし、上述したとおり、内容が難解であるために、話の筋を論理的に説明することができない。
 例えば、「エルネストの鳩舎」であれば、縫い物をしている美しい女性が過去の記憶に浸る場面からはじまるのだが、「昔、私は少年で、三角の小窓の並ぶ白い漆喰造りの鳩小屋でたくさんの鳩を飼育する鳩舎守りだったの」などと独白する。
 次の場面では、その言葉どおり、少年だった頃の女性?が現れて物語が進む。ちょっと、普通の感覚では、著者が何を訴えたいのか、理解することができない。
 詩的な感覚に優れている人向けの高級な漫画、だと思う。
題名 寝台鳩舎
著者 鳩山郁子
出版 太田出版
評価 ★★★★☆

 世界博覧会を見に行くために、列車で旅をしている、少年ダヴィーとその両親。
 ダヴィーが子供らしい好奇心から、自分が乗っている列車が何両あるのか興味を覚えて、車両を移動しながら数を数えはじめる。
 ダヴィーが最後尾の寝台車両に至ったときに妙な光景に出くわす。寝台に負傷した少年たちが横たわっていて、うめき声を上げているのだ。
 見れば、彼らの足には信書管がつけられている。
 ダヴィーは少年たちから、マスターに信書を渡してほしい、と頼まれる。
 わけも分からず、ダヴィーは信書管を手にして客車に戻る。そして、大人たちに、最後尾の車両にけがをしている子供たちがいることを伝える。
 たちまち、騒ぎになって、皆が最後尾の車両がある方に押しかける。しかし、列車の最後尾にある扉を開けても、ダヴィーが言うような寝台車両など存在せず、遠ざかっていくレールが映るのみ……。
 ダヴィーは皆から、うそつき呼ばわりされる。しかし、ダヴィーは、けがをした少年たちから託された信書管を間違いなく手にしている。ダヴィーは、いま一度、最後尾の車両に向かう……。

 『エルネストの鳩舎』に続く、鳩がメインテーマになっている、鳩山郁子のアート漫画。漫画という言葉の前にアートの三文字を冠したとおり、内容は難解で、取っつきにくい。
 作品に登場する軍用鳩が、全員、少年に擬人化されていて、その理由が一切、不明なところが、その顕著な例として挙げられる。
 ストーリー展開は、決して難しくないのだが、各シーンで交わされている、せりふの意味をくみ取るのが難しい。絵としても、意味ありげなものが、時折、出てくるのだが、それが何を指しているのか分からない。
 しかし、鳩山郁子は、確かな画力とセンスを持っているので、この作品を読んでいると、一編の名画を見ているような感覚に浸れる。インテリぶって、本作の解釈に取り組むのも一興かもしれない。
 なお、本作の主人公の名がダヴィー(Davy)であるのは、鳩を表すDove(英語で鳩の意)からきているものと思われる。
題名 羽ばたき
著者 鳩山郁子
出版 KADOKAWA
評価 ★★★☆☆

 前述した堀 辰雄の小説『羽ばたき』を漫画化した作品。
 おおむね、その内容は、堀 辰雄の原作に沿っているが、漫画版のオリジナル部分もある。
 顕著なのが最後のシーン。
 原作ではジジがU塔から飛び降りる場面で終わるが、漫画版ではジジの走馬灯、もしくは幻覚(幻想)が挿入される。
 なお、巻末に、堀 辰雄の原作を収録している。小説と漫画の双方を読み比べることができる。
題名 日露戦争物語  *第十四巻に収録
著者 江川達也
出版 小学館
評価 ★☆☆☆☆

 どこからともなく多数の鳩がやってきて、連合艦隊各艦の上空を飛び回る。そして、その同時刻に、福岡市の箱崎八幡宮境内の鳩が一羽もいなくなり、戦争が終わった頃にけがをして戻ってくる。

 この黄海海戦(日清戦争)におけるエピソードが本巻に載っている。
 昔からわが国では、鳩は軍神の使いであるとされている。出師の日に鳩が現れると、これを戦勝の兆しと捉える。
題名 ジョーカー・ゲーム THE ANIMATION
(「file 10.アジア・エクスプレス(前編)」「file 11.アジア・エクスプレス(後編)」)
*第三巻に収録
著者 柳 広司 作/仁藤すばる 画
出版 マッグガーデン
評価 ★★☆☆☆

 上述した小説の漫画版。
 タイトルに「THE ANIMATION」の文字があるとおり、原作小説よりも、後述するアニメ版の方に内容が寄り添っている。
 漫画版の作者――仁藤すばるは、単行本のカバー(第三巻)に、以下の言葉を寄せている。

***

子供がメインで登場するのは、全体を通して今巻収録の2話分のみですが、担当は「フラテが、フラテが…」と言い、私は「鳩が、鳩が…」と言いながら制作していました。動物も活躍する3巻をお楽しみください。
題名 るろうに剣心(全二十二巻)  *完全版
著者 和月伸宏
出版 集英社
評価 ★★☆☆☆

 幕末の動乱期に「人斬り抜刀斎(ばっとうさい)」と恐れられた剣客――緋村剣心(ひむらけんしん)
 緋村は、逆刃刀(さかばとう)と呼ばれる、刀の刃と峰が入れ代わっている不殺(ころさず)の刀でもって、悪人やライバルと戦う。
 劇中に登場する隠密組織――御庭番衆(おにわばんしゅう)が、京都一帯に伝書鳩網を構築している。
 単行本(完全版)第八巻の第七十七幕「死斗の幕開け」では、巻町 操 (まきまちみさお)が、「ルの一番」という名の伝書鳩を放って、柏崎念至(かしわざきねんじ)と連絡を取る。
 単行本(完全版)第十巻の第九十九幕「翔ぶが如く」では、京都を燃やし尽くそうとする、たくらみを防ぐために、巻町 操 (まきまちみさお)指揮のもと、京都中に伝書鳩が放たれる。
題名 AKABOSHI ―異聞水滸伝―(全三巻)
著者 天野洋一
出版 集英社
評価 ★☆☆☆☆

 週刊少年ジャンプに連載された、水滸伝をモチーフにしたバトル漫画。掲載二十四週で連載が打ち切られているため、物語は中途で不自然な終わり方をしている。水滸伝の世界に思い思いの設定を追加した独特の漫画であっただけに、未完であることが悔やまれる。
 替天行道(義賊団)の間者・時遷から放たれた伝書鳩を、主人公・戴宗が食べてしまう場面や、孟州十字坡の酒店で、伝書鳩から届けられた手紙を魯智深が読むシーンがある。

題名 ハトのおよめさん(全十一巻)
著者 ハグキ
出版 講談社
評価 ★★☆☆☆

 わがままで、がめつくて、下ネタが好きな雌の白鳩――通称・ハトよめ(ハトのおよめさんの略)が主人公のギャグ漫画。
 哀れみや慈しみの感情に乏しく、何かといっては暴力に訴えるハトよめは、しばしば、口から「はとビーム」を発射する。
 「はとビーム」の威力はすさまじく、対象物を瞬時に焼き払う。
 擬人化された動物たちが織り成すナンセンスな世界において、「はとビーム」のおかさしさが際立っている。ハトよめが「はとビーム」を発射するたびに腹を抱えて笑ってしまう。
 数あるギャグ漫画の中でも『ハトのおよめさん』の完成度は高い。十年に一度の佳作といってもいい。
題名 トリコロ(全二巻)
著者 海藍
出版 芳文社
評価 ★★☆☆☆

 七瀬八重(ななせやえ)をはじめとする四人の女子高生たちに、八重の母親・幸江を加えた面々の織り成す、ほのぼのとした日常を描いた四コマ漫画。
 七瀬家で飼われている鳩の「ななせ」が登場する。「ななせ」は人の頭の上に座るのが好きで、本作の登場人物の頭上によく乗っている。
 もとは伝書鳩かレース鳩であったらしく、脚環から台湾からやってきたことが分かっている。ドバトの中に交じっているところを拾われて、以後、七瀬家で暮らしている。
題名 トリコロプレミアム
著者 海藍
出版 芳文社
評価 ★★☆☆☆

 『トリコロ』のイラストレーション、設定資料、四コマ漫画、CD-ROM(Windows用スケジューラー機能付カレンダー、デスクトップ用壁紙、ショートカット用アイコン)などが詰まったファンブック。
 「気流」と題した作品に鳩の「ななせ」が出てくる。設定資料の項では、「ななせ」がつけている脚環について述べられているほか、「七瀬八重は羽根を広げたななせを頭に乗せて走る事によりななせの羽根から生じたダウンフォースを利用し通常の1.3倍安定して走る事ができるのだ!(あの声で)」との冗談めかした記述がある。
題名 トリコロ MW-1056 特装版
著者 海藍
出版 メディアワークス
評価 ★★☆☆☆

 芳文社からメディアワークスに版を移して発売された一冊。『トリコロ』の事実上の第三巻と考えてよい。MW-1056という副題が意味深だが、多分、メディアワークスの頭文字二文字と、本作の題名を数字の語呂合わせで表したものだと思う。
 七瀬家に居着いている鳩の「ななせ」が全編にわたって登場する。芳文社版よりもキャラクター性が進化していて、人語を解したり、キャミソールやセーラー服を着たりする。
題名 サーティライフ応援マガジン 稀刊ツエルブ
著者 海藍
出版 メディアワークス
評価 ★★☆☆☆

 『トリコロ MW-1056 特装版』の付録冊子。三十代を応援する架空の雑誌を装っている。
 著者・海藍の初期作品や『トリコロ』などが載っている。
 なお、原稿の紛失によって、ページの一部を初出雑誌から起こしている。
 再現度に難あり、との断りの一文が巻末に載っている。
題名 はとがいる
著者 てっけんとう
出版 角川書店
評価 ★★★☆☆

 カレーが大好きな女子高生・はっちゃんと、その幼なじみのよっちゃんが暮らしている家には、大量の白鳩がすみ着いている。しかし、はっちゃんは鳩が大嫌い。はっちゃんに見つからないように鳩を遠ざけることが、よっちゃんの日課になっている。
 ほのぼのとした絵柄のギャグ漫画。個人的に、かなり好きな作品。
題名 はとがきた(全二巻)
著者 てっけんとう
評価 ★★★☆☆

 『はとがいる』の番外編が載っている同人誌。コミックマーケット75で『はとがきた』、コミックマーケット76で『はとがきた2』が、それぞれ頒布されている。
 両作品とも、はっちゃんとよっちゃんの子供時代にスポットを当てていて、彼女たちの友情がいかにして育まれていったかを描いている。
 子供の頃は内気な性格で、周囲になじめなかったよっちゃんが、無邪気なはっちゃんと触れ合ううちに心を開いていく姿がほほ笑ましい。
題名 でんしょ!(全二巻)
著者 へかとん
出版 アスキー・メディアワークス
評価 ★★★☆☆

 国家が電話を管理していて、学校や交番などの「緊急の連絡を必要とするところ」にしか電話を設置してはならない世界――。通称「でんしょ」と呼ばれている伝書鳩が、その代わりの連絡手段として普及している。ただし、通常の伝書鳩と異なり、大きさは小鳥くらいしかなく、通信方法も独特だ。通信紙を用いずに、人の想いを直接、相手に言葉として伝えるのである(テレパシーのようなものに近い?)
 この不思議な伝書鳩たちを統括・制御しているのが、少女の姿で顕現している鳥神(とりがみ)さま。鳥神さまは、鳩を襲う猫を目の敵にしていて、日々、伝書鳩を守るために働いている。
 さて、このお話の主人公・南 聖鳩(みんなみ みはと)は、猫が大好きな女子高生。
 ある日、聖鳩(みはと)は、鳥神さまに抱きついた拍子に、鳥神さまの頭の上に浮いている輪っかを落としてしまう。途端に、伝書鳩たちが暴走しはじめる。鳥神さまに不測の事態が起こったり、鳥神さまの精神が不安定な状態になったりすると、伝書鳩のコントロールが失われてしまうのだ。
 そんなことがあった後、突然、鳥神さまが聖鳩(みはと)の家にやって来て、一緒に住むようになる。そして、聖鳩(みはと)は、鳥神さまの半身になるのだが……。
題名 がっこうぐらし! 第六話「おてがみ」  *第一巻に収録
著者 海法紀光 作/千葉サドル 画
出版 芳文社
評価 ★☆☆☆☆

 ゾンビの大量発生によって平和な日常が崩壊した世界――。
 学校に立てこもって、サバイバル生活を送る女子高生たちは、その日々の生存闘争を部活動に見立てて、「学園生活部」を名乗る。

 劇中、学外に手紙を出すために、ドバトをつかまえるシーンがある。捕獲した鳩を丈槍由紀(たけやゆき)は「鳩錦鳩子」(はとにしきはとこ)と名づけるが、恵飛須沢胡桃(えびすざわくるみ)が同意しない。『シートン動物記』の一編『伝書鳩アルノー』にあやかって、「アルノー」にしようと抗弁する。
 そんな二人を見かねた、若狭悠里(わかさゆうり)が、「間をとって アルノー・鳩錦でどうかしら?」と言うと、由紀と胡桃は「オッケー!」と答えて、受け入れる。
題名 ベルゼブブのメイド
著者 さくらえびちま
出版 未発売(ウェブサイト掲載のみ)
評価 ★★☆☆☆

 ウェブサイト「ニコニコ静画」に掲載されたギャグ漫画。
 魔王ベルゼブブのメイドとして働く、ルコ、オセ、リチェのほのぼのとした日常を描く。
 時折、内容にそぐわない残虐な描写があるが、かわいらしい絵柄でうまく処理されていて、嫌みがない。ギャグとして、きれいに成立させている。さくらえびちま(作者)のセンスが光る。

 劇中に、ハトが出てくる。
 主人公のルコは、ハトの踊り食いをするのが好きで、これをオセとリチェに振る舞う。オセとリチェは、言うまでもなく、ドン引きする。しかし、リチェは以前に、ルコに話を合わせるために、ハトの踊り食いが結構好きだ、と述べていたので、オセのように断ることができない。そこで、困ったリチェは、今日はハトの踊り食いをする気分じゃない、と言って、その場を切り抜ける。
 ルコは三人分のハトを踊り食いした後、予備のハトを取り出して、こう言う。
「このハトはあと一週間後くらいが食べ頃だから、リチェちゃんが食べたくなったら食べてね」
 ハトをプレゼントされたリチェは、脂汗を流しながら、こう思う。
(ハトの踊り食いから逃れられない!?)

*その後、リチェは、このハトと一緒に暮らすうちに、彼女(ハトはメス)を飼うことにする。情が移ってしまったのだ。
 これを知ったルコは、ポロポロと涙を流しながら、
「ごめん、泣いちゃって…。ハトの踊り食い仲間が出来てすごい嬉しかったんだけど…それなら仕方ないね…」
 と、言って、納得する。
 これ以降、リチェの頭には、いつもこのハトが乗っていて、彼女(ハトはメス)は、本作にレギュラー出演を果たす。
題名 魔界から来たメイドさん(全三巻)
著者 さくらえびちま
出版 集英社
評価 ★★☆☆☆

 前作『ベルゼブブのメイド』の後日譚(ごじつたん)
 ルコは、メイドの最高階級である「逆さ五芒星(ペンタグラム)」に昇進するために試験を受ける。その内容は「人間界の人間一人を主人とし、一年間過ごすこと」
 こうして、ルコは、五十嵐和真(いがらしかずま)と、その彼の妹である五十嵐真夜(いがらしまや)のもとにやってきて、一年間、メイドをすることになるが……。

 前作に引き続いて、ハトが登場する。ただし、このハトは、前作に出てきたハト(メスのハト)の息子で、名をコバトという。
 コバトは、とんでもない大食漢で、自分の体の何倍もある食べ物をペロリと食す。人間の言葉を解し、筆談で自分の意思を示す。そして、異常に強靱(きょうじん)で、伝説の魔獣ベヒモスと互角に争うほどの実力がある。
 このコバトは、大抵、ルコの頭の上に乗っている。ちょうど、前作のハト(メスのハト)と同じ立ち位置で、本作にレギュラー出演する。

*劇中に『仮面マイザー』という、『仮面ライダー』のパロディー特撮が出てくる。この『仮面マイザー』の中に、ハト怪人というのがいて、作中でフィギア化(ソフトビニール製。698円)されている。
 ハト怪人は怪人なのに、世界征服するために必要なことは、
「愛だね」
 と、述べる(ルコがハト怪人のソフビを手にしながら、このせりふをハト怪人の声色で言う)
 鳩といったら平和の象徴なので、さくらえびちま(作者)はこれを踏まえて、ハト怪人にそう言わせているように思われる。
    題名 てるみな Gleis 19「PIGEON」  *第四巻に収録
著者 kashmir
出版 白泉社
評価 ★★☆☆☆

 少女のミナは、駅構内で一羽の鳩を見かける。
「どこかから迷い込んだのかな」
 と、ミナは思うが、その鳩が電車の中にまで入ってきてしまう。
 駅員に預けた方がいいと思ったミナは、鳩を捕まえようとする。
 しかし、ちょうど近くにいた、日本新ハトレース協会の男性が、
「おっと失礼、手出しは無用です」
 と、ミナに言う。
 男性の話によると、今は新ハトレースの最中なのだという。
 昔、ハトは飛行でレースをしていたが、あるとき、茨城で放鳩された一羽の鳩が常磐線や両毛線の電車を乗り継いで移動する。
 そこから、新ハトレースがはじまり、鳩は電車やバスなどの公共機関を使って、帰還地である鳩ノ巣(奥多摩)を目指す。
 ミナは偶然、新ハトレースの選手鳩に出会ったのだった。
     
題名 はとえん
著者 斉藤的作
出版 未発売(ウェブサイト掲載のみ)
評価 ★★★☆☆

 鳩の楽園と呼ばれている某動物園――通称・はとえん。
 ここで暮らすドバトたちの日常は、至って平穏だ。ゴリラのまさる君やワニのジャスティンの食料をつまみ食いしたり、人間から餌をもらったりしながら、ほのぼのと生きている。

 ウェブサイト上で読めるギャグ漫画(「comico」「ニコニコ静画」「LINE マンガ」など)
 鳩の絵柄が妙にリアルで、躍動感のある作画が見どころ。しかし、その割に、ドバトたちの会話や行動が、とことん、くだらなくて、クスッと笑ってしまう。
  題名 鳩レース ~嫁に来ないか~
著者 大町四天王
出版 未発売(ウェブサイト掲載のみ)
評価 ★★★☆☆

 愛鳩家の演歌歌手として知られる新沼謙治を主人公にした鳩レース漫画(ウェブトゥーン創作プラットフォーム「コミチ」、「note」などで連載)
 ある日、新沼謙治は、新宿の歌舞伎町で一羽のドバトと出会う。
 そのドバトは汚くて痩せているが、どこかトキメキを感じさせる桜色の眼をしていて、圧倒的な筋肉量がある。
 心を奪われた新沼は、そのドバトの前で腰をかがめて、手を差し出し、
「嫁(うち)に来ないか」
 と、誘う。
 こうして、このドバトは、メリーミー号(嫁に来ないか号)と名づけられ、新沼鳩舎所属のレース鳩となる。
 新沼と、メリーミー号(嫁に来ないか号)は、二人三脚で、鳩レースでの優勝を目指す。
     
題名 PIGEON WORKS アナログ探偵事件録
著者 好本雄一
出版 講談社
評価 ★★☆☆☆

 『月刊少年マガジンプラス』(Vol.3。平成二十四年)に掲載された読み切り漫画。
 並木街道(なみきかいどう)高校の生徒――北風和也(きたかぜかずや。2-C組)が学校の屋上から転落して命を落とす。
 ただの事故のように思われたが、北風には、よからぬうわさが立っていた。生徒会長を務める女性徒――静和はこ(しずわはこ。2-C組)をストーカーしていて、盗撮行為に及んでいた、というのだ。北風の遺体のそばに、壊れたデジタルカメラが転がっていたことから、北風は、盗撮写真を撮ろうとカメラを構えているときに、誤って屋上から足を滑らせた、と考えられたのである。しかし、はこは、北風がそんなことをする人間には思えなかったので、事件の真相を解き明かすために動き出す。高校生ながら、数々の事件を解決してきた名探偵――藤原 新(ふじわらあらた。1-B組)に、事件の捜査を依頼したのだ。
「実体の無いモノが嫌い」
 と、ことあるごとに述べて、パソコンや通信機器などのデジタルデバイスを全く使わない藤原は、もっぱらその通信手段を伝書鳩に頼っている。
 藤原が根城にしている、校内の一角に伝書鳩がいて、この伝書鳩が新聞部や県警に飛んでゆく。
 県警から伝書鳩を介して手に入れた三枚の写真が事件解決の決定打になる。

*伝書鳩の帰還率の低下については、通信機器などから発せられる電磁波の影響が指摘されて久しい。藤原が、その彼の根城に一切のデジタル機器の持ち込みを禁止しているのは、劇中で彼が言い放つせりふに示されている。
「ハトの帰巣性能がくるったらどうするんだ」
題名 鳩ボイルド探偵 ポームズ
著者 林 雄一
出版 KADOKAWA
評価 ★★☆☆☆

 『月刊コミックアライブ』(平成二十七年九月号)に掲載された読み切り漫画。
 シャーロック・ホームズが着ているような服をまとった、中学生探偵の小日向鷹音(こひなたたかね)が、ため息をつく。
「はあ、探偵の出番が必要な事件とか起こらないかな」
 そんなとき、彼女の隣から、同じような、ため息が聞こえてくる。
「はあ、巨乳美少女のおっぱいもめねえかな」
 びっくりした鷹音が横を見ると、シャーロック・ホームズのような格好をした鳩がいる……。
 常に下品なことを口にする、おかしな鳩――ポームズ(鳩ボイルド探偵)が主人公のギャグ漫画。
  題名 ちゅんトーク(全〓巻)
著者 初丸うげべそ
出版 イースト・プレス
評価 ★★☆☆☆

 ハト先輩(ハードボイルドで優しい)、スズメくん(素直)、バブチュン(スズメくんの妹)、ギンバトさん(あまえんぼ)などの鳥類の日常が描かれているギャグ漫画。全編フルカラー。
     
題名 ハトのハト子
著者 たかの宗実
出版 竹書房
評価 ★★★☆☆

 鳥飼い歴四十年の女性漫画家が、翼を折って飛べなくなった鳩を保護し、飼いはじめる。本作は、その飼育体験から生まれた、四コマ漫画集。
 鳩と過ごす、ほのぼのとした日常が丹念に描かれている。また、実体験を漫画にしているだけあって、鳩の生態が正確に描写されている。
 鳩飼いであれば、共感すること間違いなしの作品。
題名 OLはとぽっぽ(全二巻)
著者 たかの宗実
出版 芳文社
評価 ★★★☆☆

 頭の上に鳩を乗せたOL・幹森ハナの奇妙な日常を描いたギャグ漫画。
 ある冬の日のこと、強風によって飛ばされてきた鳩がハナの頭に突き刺さる。医者が言うには、ハナの脳に鳩が融合している、とのこと……。
 まともに考えたら、噴飯ものの状況だが、そこは漫画の世界。
 会社の上司や同僚たちは、それほど疑問を覚えることなく、頭の上に鳩が乗っているハナを受け入れる。
題名 鳩の王
著者 河合あめ
出版 双葉社
評価 ★★★☆☆

 大学生の鈴井優樹(すずいゆうき)は、引っ込み思案で、人づき合いが苦手。
 大学の仲間から、いじめられていて、彼らの代わりにレポートを書かされたり、講義の代返(だいへん)を押しつけられたりしている。
 また、アルバイト先でも失敗ばかりやらかすので、「まともな接客ができない」との理由で、アルバイト先を首になってしまう。
 そうして、アルバイト先を解雇された日のこと、優樹が夜道をトボトボと歩いていると、ドバトが猫に襲われている現場に出くわす。
 慌てて、止めに入る優樹。
「大丈夫か…?」
 ぐったりしているドバトに、優樹が声をかける。
 ドバトは、その声にハッと目を覚まし、たちまち、どこかに飛んでいく。
 その夜、優樹が自室でレポートを書いていると、突然、ベランダの窓ガラスを誰かがノックする。
 優樹がカーテンをめくると、何とそこには、長身の若い男が立っている!
「私はノア。普段は鳥の姿を持ち、この地域の鳩を率いております。仲間を助けていただいた礼を伝えるため、ヒトの姿で参りました」
 「鳩の王」が人の姿を借りて、お礼に来たのだった。
題名 辻占売 第九十九話「迷子」  *第十七巻に収録
著者 池田さとみ
出版 ぶんか社
評価 ★★★☆☆

 小林舞子(こばやしまいこ)が屋外で鳩笛を吹いていると、その音に反応して、中年の男性、中年の主婦、十歳にも満たない少年がやってくる。三人は、名前、住所、電話番号が分からず、帰る場所も不明だという。いわゆる、迷子である。
 舞子は、易者の常代 閑(とこしろしずか)の案件だと確信し、三人を閑(しずか)のところに連れてゆく。
 閑(しずか)は帰る方向を指差して、こう言う。「まっすぐに進まれるといずれそれぞれが望まれたところへいけるでしょう」
 こうして、閑(しずか)の案内に従って、三人はそれぞれ帰路に就く。しかし、その帰り着く先は、思いもよらない場所だった。
 また、彼らの正体とは……。
  題名 きみは謎解きのマシェリ 第二十五話「ひみつを運ぶ伝書鳩」
*第五巻、第六巻に収録

著者 糸 なつみ
出版 双葉社
評価 ★★☆☆☆

 銀座探偵事務所の、星野美津子(ほしのみつこ)と吉田 朔(よしださく)のもとに、依頼者から一羽の鳩が持ち込まれる。穀物につられて穀物屋の庭に迷い込んできた鳩だという。
 背中に通信筒を背負っていて、その中に写真と原稿が入っていることから、新聞社の伝書鳩だと思われる。
 「鳩を飼い主に返すこと」――それが今回の依頼だ。 
 そうして、美津子と朔は、この伝書鳩を手にして東京一二三新聞を訪ねる。
 折よく、二人がロビーに入ったところで、同社の国枝記者と出くわす。国枝によると、この伝書鳩は昨日、火災現場の写真とその速報記事を付して放たれたもので、いまだ帰ってきていなかったとのこと。
 国枝は伝書鳩が運んできた写真を手にすると、
「助かった! これで記事ができます!」
 と、大喜びする。そして、鳩舎は一階にあって鳩係に声をかければよいと説明してくれるが、同時に変なことも口にする。
 鳩係の土井丸は社内でも風変わりな男で、人との関わりを避けて鳩としかしゃべらないという。伝書鳩を使ってスパイ活動しているうわさまであるらしい。
「鳩舎の大男に用心を」
 と、国枝は美津子と朔に警告する。
     
題名 手品先輩(全八巻)
著者 アズ
出版 講談社
評価 ★★☆☆☆

 種無高校(たねなしこうこう)の奇術部が舞台のギャグ漫画。
 通称・助手と呼ばれている一年の男子生徒と、通称・先輩と呼ばれている三年の女子生徒(奇術部の部長)とのやり取りを中心に話が進む。
 先輩が手品用のギンバトを飼っていて、劇中にこのギンバトが、ちょくちょく登場する。
 先輩は、勉強するときも風呂に入るときも就寝するときも、ギンバトを肌身離さず、そばに置いている。
 また、奇術部のウェブサイトでは、ギンバトの様子を記事として載せている。
題名 拝金(全二巻)
著者 堀江貴文 作/竹谷州史 画
出版 徳間書店
評価 ★★★☆☆

 上述した小説の漫画版。
 原作は文章表現が簡潔すぎて、物語や登場人物に厚みがなかった。しかし、この漫画版では、絵の力によって、そうした欠点が補われている。また、原作を忠実にコミック化しているので、原作とほぼ同じ情報がこの漫画に詰まっている。
 原作よりも漫画版の方がお勧め。
題名 獣医ドリトル (「帰巣本能」)  *第四巻に収録
著者 夏緑 作/ちくやまきよし 画
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆


 ドリトルこと鳥取健一は腕利きの獣医。「獣医はビジネス」と言い放つ現実主義者ではあるが、誰よりも優しい心を持つ好人物でもある。

 第四巻のカルテ6「帰巣本能」で伝書鳩を取り上げている。鳩が媒介する病原菌やドバトの糞公害について述べている。

題名 スカイハイ (第六死「pigeon house」)  *第二巻に収録
著者 高橋ツトム
出版 集英社
評価 ★★☆☆☆


 週間ヤングジャンプ誌上で好評を博した、高橋ツトムの怪奇漫画。
 第六死「pigeon house」に五十年も同じ会社に勤めている守衛が登場する。彼は悲運の死を迎えるその日まで面白みのない毎日を送る。生前、会社の屋上で飼っている鳩の世話係でもあった彼は、帰巣本能に優れた鳩のごとく、死してからも「巣」である会社に執着して現世をさまよう亡霊となる。

題名 螺旋じかけの海 (「金色を渡る鳩」)  *第二巻に収録
著者 永田礼路
出版 講談社
評価 ★★☆☆☆

 体の一部が獣化(鹿、鳩、イルカなど各種)した人々に用いる非合法な薬を、音喜多涼彦(おときたすずひこ)が、トキ婆(ときばあ)の依頼を受けて、調合する。この薬は、鳩便で運ぶ予定になっているが、不法な鳩便業に手を染めているトキ婆(ときばあ)は、目下、警察にマークされていて、うかつに鳩に薬を付して飛ばすことができない。
 警察の足止めをしてほしい、と、音喜多(おときた)は、トキ婆(ときばあ)から頼まれるが……。

 劇中に、配送用のキメラ種(大型化目的や知能修飾の遺伝子改良を施した鳩)が登場する。
 この鳩便の鳩が、よく仕込まれていて、写真を見せてやれば、場所と人物を記憶して、目的地に飛んでいく。
題名 将国のアルタイル(全〓巻)
著者 カトウコトノ
出版 講談社
評価 ★★★☆☆

 トルキエ将国に属する主人公――トゥグリル・マフムート・パシャ(犬鷲のマフムート将軍)の活躍を描く、架空世界の歴史巨編。マフムート・パシャ率いるトルキエ軍が、自国の内乱を鎮めたり、バルトライン帝国との一大戦争に臨んだりする。
 マフムートと同じトゥグリル族出身のカラ・カネット・スレイマン・バシュカン(黒翼のスレイマン長官)が、諜報組織を統括していることから、伝書鳩を用いた通信をおこなう。劇中に、スレイマンが登場すると、高確率で伝書鳩も出てくる。
 また、これに限らず、作品の各所に伝書鳩が登場して、通信のやり取りがされる。

 
『三丁目の夕日 [三丁目動物記]』
  題名 三丁目の夕日 (「飛べ!伝書バト」)
著者 西岸良平
出版 小学館
評価 ★★☆☆☆


 探偵小説『怪人二十面相』の世界に憧れている少年のお話。
 少年探偵団の小林少年のように、犯人の隠れ家を伝書鳩で知らせることができたら……と夢見ながら、少年はハト丸という鳩を飼っている。
 そんなある日のこと、少年は興信所のおじさんに弟子入りして不審人物の尾行をはじめるが、あえなく捕らえられてしまう。少年は放り込まれた物置の格子からハト丸を放って助けを呼ぶが……。
   
  題名 ウルトラマンA 完全復刻版 (「鳩を返せ! 大鳩超獣ブラックピジョン登場」)
著者 田口成光 作/内山まもる 画
出版 小学館
評価 ★★★☆☆

 後述する特撮ヒーロー作品『ウルトラマンA』の漫画版。小学館の児童雑誌『小学二年生』の昭和四十七年五月号から昭和四十八年三月号に掲載される。
 本編と漫画版では筋運びや小道具などに違いがみられるが、一番の変更点はレース鳩の小次郎の生死。実写版では死んでしまうが、漫画版では超獣の姿から生還して飼い主の少年を喜ばせている。

   
題名 はーとふる彼氏 公式ガイドブック
著者 玻都もあ
評価 ★★★☆☆

 後述するPCゲーム『はーとふる彼氏』の公式ガイドブック(同人誌)
 各キャラクターの立ち絵、ジャケット・エンドカード・アイキャッチ・ロゴデザインなどの絵、各キャラクターの攻略ルート、設定資料(鳥類史年表、登場鳥+人物概要)、書き下ろしのショートストーリー、短編漫画などが収録されている。
題名 はーとふる彼氏 公式ファンブック
出版 一迅社
評価 
★★★☆☆

 後述するPCゲーム『はーとふる彼氏』の公式ファンブック。
 各キャラクターの紹介、各キャラクターの攻略ルートの解説(外伝作『はーとふる彼氏 HolidayStar』の攻略含む)、聖ピジョネイション学園の学校案内、『はーとふる彼氏』の歴史、メイキングノート、描き下ろしの各キャラクターラフ集、ショートストーリー、短編漫画、制作者や声優陣へのインタビューなどが収録されている。
題名 はーとふる彼氏
著者 玻都もあ
出版 
竹書房
評価 
★★★☆☆

 後述するPCゲーム『はーとふる彼氏』の漫画版。webコミックサイト「まんがライフWIN」に連載されていた漫画を単行本化している。
 収録されている漫画は、act.1からact.13の全十三話。おまけとして、ゲームの攻略対象をどの鳥にしたらいいか迷ったときに使える「タイプ別診断チャート」(自分とシンクロ率の高い鳥を探すことができる)と、描き下ろし漫画「なぜ?なに?質問箱」がそれぞれ載っている。
 
題名 はーとふる彼氏 はみでた! もれでた! EX ~インコ湯よ永遠なれ~
著者 玻都もあ
評価 ★★★☆☆

 後述するPCゲーム『はーとふる彼氏』の漫画版(同人誌)。竹書房から出ている単行本『はーとふる彼氏』に載せることができなかった漫画が本作に補塡(ほてん)、掲載されている。
 収録作品は、「連載第13話」、「連載第14話」、「連載第15話」、「連載第16話」、「インコ湯に行こう!!」、「なぜ?なに?質問箱 復活戦」。ほかに、「ハートフルハウス擬人化設定画」と「WEBシリーズ予告編」が載っている。
題名 伝書鳩から届いた手紙
著者 あやこ
出版 
カナール書房
評価 
★★★☆☆

 コミティア125で頒布された同人誌。
 ある町に独りで暮らしている少女のお話。
 少女は伝書鳩を介して、母親と手紙のやり取りをしている。そして、今日も伝書鳩が飛んできて、母親の手紙が届く。
「お手紙のお返事どうしようかしら」
 と、悩む少女。
 しかし、少女は、
「学校へ行ってからゆっくり考えたほうがよさそうね」
 と、思って、取りあえず、学校に行くことにする。書きたいことがたくさんあって、うまくまとめられそうになかったからだ。
 そうして、学校にやってくる少女だったが、教室には誰もいない。全員、風邪で休みを取っているらしい。
「……そうだわ。お母さんに会いに行こう!」
 はたと思いついた少女は、お母さんの家を訪ねるが……。

 ストーリーはシンプルだが、内容はやや哲学的。
 ――なぜ、少女は、母親と離れて独りで暮らしているのか?
 ――なぜ、少女を取り巻く人々は、少女と同じ帽子をかぶっているのか?(少女自身?)
 などと、さまざまな疑問を覚える(ネタバレになるので、疑問箇所を詳しくは述べられない)
 かわいらしい絵柄なので、その雰囲気に油断していると、最後にガツンとやられる短編漫画。


『One Hundred Years Ago 1 「鳥と機関銃のお話(前編)」』
題名 One Hundred Years Ago 「鳥と機関銃のお話」
著者 TROOPINGOUT
評価 ★★★★☆

 同人サークル「TROOPINGOUT」が制作した同人誌。『One Hundred Years Ago 1 「鳥と機関銃のお話(前編)」』と、『One Hundred Years Ago 2 「鳥と機関銃のお話(後編)」』の前後編からなる。
 ときは第一次世界大戦の西部戦線(一九一四年十一月)、独軍陣地に向かって魚の小骨のように突き出している丘に敵軍(連合軍)がこもっている。このままでは北に構築している塹壕と独軍陣地との連絡が絶たれてしまうかもしれない。
 独軍は、丘を半包囲した状態を維持しつつ、重砲の到着を待って、敵を攻撃する手はずを整える。
 そんな頃、独軍の獣医科に所属する、ジークフリート・ウェストファール大尉は、鷹匠の少女・ゲアトルートを連れて丘に向かう。敵の軍用鳩を捕らえて手柄を立てるためだ。
 ふいに、ゲアトルートの愛鷹・ノインが反応して、空を見上げる。敵の軍用鳩が飛び立ったのだ。「伝書鳩が上がった!」「追えるかッ!?」。ウェストファール大尉がゲアトルートに言う。「目で追っています」「いけます!」。ゲアトルートの左手からノインが飛び上がり、敵の軍用鳩に向かって狙いを定める……。


『別冊ビッグコミック ゴルゴ13シリーズ No.163』
題名 ゴルゴ13 (「ダーティー・ウィング」)
著者 さいとう・たかを
出版 小学館
評価 ★★★☆☆


 最も権威あるレースとして知られるバルセロナ・インターナショナル。優勝鳩舎が浴す栄誉はこの上もない。しかし、そうであるが故に、不正な手段を用いてでも優勝を狙うやからがいる。
 ゴルゴ13が、薬物を投与された鳩(ドーピング鳩)を狙撃せよとの依頼を受ける本作は、愛鳩家にはたまらない内容になっている。特に鳩レースの規則を踏まえたオチが面白い。



紙芝居

題名 軍馬 軍鳩 軍用犬
著者 山根輯一郎 作/黒崎義介 画
出版 
信宏社
評価
 ★★★☆☆

 馬のタロウ、犬のジロウ、鳩のサブロウの家族は、それぞれ、軍馬、軍犬、軍鳩のお役目に就いている。そして、馬のタロウも犬のジロウも、将来は軍馬、軍犬になって、お国にご奉公するつもりでいる。しかし、鳩のサブロウだけは、遊んでばかりいる、大変な怠け者だった。人からもらった豆を食らうだけの、漫然とした日々を過ごしている。
 そんな姿を見かねた、馬のタロウと犬のジロウが、鳩のサブロウをしかる。
 鳩のサブロウは、しばらく頭を垂れて考えた後、涙を流しながら、こう言う。
「ボクダツテ ニツポンノ ハト ダ。イマカラ ココロヲ アラタメテ オカアサンノ ヤウニ グンバトニ ナツテ イノチヲ ササゲテ オクニノ タメニ ゴホウコウ スルカラ」
 こうして、馬のタロウ、犬のジロウ、鳩のサブロウは、みんなで日本のために働こう、と誓い合うのだった。
  題名 でんしょばとクック
著者 水口 敬 作/山内 健 脚色/船井かよ子 画
出版 
学研
評価
 ★★★☆☆

 伝書鳩のクックは、今日もおじいさんの背中のかごに乗って、山奥に行く。
 山には電話がないので、急ぎの用事があると、おじいさんの記した手紙をクックが携行して、おばあさんのもとに持っていくのだ。
 さて、おじいさんが、杉の苗木を植えたところに行くと、昨日の大風によって、杉の苗木が倒れそうになっている。
 苗木を一つひとつ起こしてやるには、あしたまでかかりそうなので、おじいさんは今晩、山小屋に泊まることにする。そして、おじいさんは、そのことを知らせる手紙を書く。
 こうして、クックは、おじいさんの手紙を持って、おばあさんのもとを目指すが……。
題名 でんしょばとのポー
著者 
たはらともみ
出版 
教育画劇

評価 ★★★☆☆

 アンナ姫が三人の悪者に誘拐されて身代金を要求される。
 アンナ姫がかわいがっている伝書鳩――ポーに、ダイヤモンドをもたせて、こちらまで届けろ、というのだ。
「アンナは ぼくの たいせつな ともだちなんだ。ぼくが アンナを たすける!」
 ポーはそう言って、重いダイヤモンドを抱えて、犯人のもとに向かう。


映像作品

題名 コンバット (第七十四話「人間嫌い」)  *DVDの第二十五巻に収録
製作国 アメリカ
発売元 角川書店 ハピネットピクチャーズ
評価
 ★★★★★

 川の対岸四、五百メートルの地点にドイツ軍が何かを構築しているらしい。V2発射基地、もしくは弾薬集積所かもしれない。森が深く、対空砲火が厳重なため、偵察機による写真撮影は不可能だという。
 そこで、サンダース軍曹らは、鳩兵・キーリー軍曹とともに森を偵察しにいく。
 鳩を使ったある方法により、写真撮影するというが……。

  題名 史上最大の作戦  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 20世紀フォックス・ホームエンターテイメント・ジャパン
評価
 ★☆☆☆☆

 ノルマンディー上陸作戦(ネプチューン作戦)を描いた長編映画。公開当時、多大な製作費が投じられていることが話題になった。
 劇中、連合軍が上陸したノルマンディー海岸で軍用鳩が放たれる。しかし、鳩係の願いとは裏腹に独軍陣地の方に飛んでいってしまう。

     
  題名 ローマを占領した鳩
製作国 アメリカ
発売元 未発売
評価
 ★★★☆☆


 第二次世界大戦の末期、アメリカ軍のマクドゥガル大尉とコンチニ軍曹は、ドイツ軍の占領下にあるローマに、スパイとして潜り込む。そして、収集した情報を、無電で本部に送る。しかし、マクドゥガル大尉らが送る情報はドイツ軍に筒抜けだった。ドイツ軍が新式の電波探知機を装備していたからだ。
 この事態を重くみたアメリカ軍の司令官は、マクドゥガル大尉らのもとに伝書鳩を送るが……。

     
題名 まぼろしの市街戦  *DVD版
製作国 フランス
発売元 紀伊國屋書店
評価
 ★★☆☆☆


 一九一八年十月、北フランスのとある町にドイツ軍が時限爆弾を仕かける。フランス語が話せるイギリス軍の鳩兵・プランピック二等兵は、爆弾を処理するため、軍用鳩を片手に町に潜り込む。

 コメディタッチで描かれている反戦映画の佳作。厭戦物といえば、湿っぽい展開と、陳腐な平和思想が延々と垂れ流されるだけ、というのが多いが、この映画にはそういった演出が全くない。

  題名 魔王  *DVD版
製作国 フランス・ドイツ・イギリス(合作)
発売元 日活
評価
 ★★☆☆☆


 ドイツ軍の捕虜になったフランス軍の鳩兵・アベルは、ひょんなことからヒトラー青年団の雑用係を命じられる。純粋無垢な少年たちを愛するアベル。しかし、そんな生活はいつまでも続かなかった……。

 ドイツ軍の許可をどうやって取りつけたのかよく分からないのだが、アベルは収容所内で軍鳩を飼っている。この鳩をアベルの上官が無断で絞めてしまう場面が面白い。

     
題名 マイ・ボーイ・ジャック  *DVD版
製作国 イギリス
発売元 ポニーキャニオン
評価
 ★☆☆☆☆

 ときは第一次世界大戦。
 海軍士官を目指し、志願したジャックだったが、近視のため、身体検査に落ちてしまう。仕方がないので、次は陸軍の身体検査をジャックは受ける。しかし、今回も近視のため、落ちてしまう。
 しょんぼりとするジャック。そんな息子を見かねた、ジャックの父親が、陸軍の元帥に口添えを頼む。すると、不合格が一転、ジャックは辛うじて、陸軍への入隊を果たす。
 訓練を終えて少尉に任官したジャックは、北フランスのルースに出征し、ドイツ軍陣地を攻撃する。
 ジャックは、指揮下の兵たちに軍用鳩が入ったかごを持たせる。無事に目標まで到達できたら、司令部に知らせるために鳩を放つのだ。
題名 ファイブ・デイズ・ウォー  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 スポックス
評価
 ★★★★☆

 一九一八年、ムーズ~アルゴンヌ攻勢において、米第七十七師団の一個大隊が独軍の包囲を受ける。しかも、悪いことに、大隊の陣地に向かって、友軍から誤砲撃されてしまう。大隊長のチャールズ・ホワイト・ホイットルシー少佐は、この危機を師団司令部に知らせるため、軍用鳩を放つように部下に命じる。軍用鳩シェラミ(仏・Cher Ami。英・Dear Friend〈の意〉)は途中、ドイツ軍に射撃されて大けがを負うが、何とかして師団司令部に帰り着く。こうして、ホイットルシー少佐の大隊は、シェラミの活躍によって全滅を免れる。
*補足(藤本)
 史実を映画化した『ファイブ・デイズ・ウォー』に関して一点補足。
 マルタン・モネスティエ『
図説 動物兵士全書』という訳書と、この本の記述を引用している、黒岩比佐子『伝書鳩 もうひとつのIT』という新書が、シェラミ(Cher Ami)のことをベラミ(Bel Amiのカタカナ表記?)と誤記している。
 また、ホイットルシー少佐の大隊を「ロスト歩兵大隊」と両書は記している。
 私の家にあるシェラミに関する洋書を数冊調べてみると、この訳語に相当すると思われる原語は「The Lost Battalion」であることが分かる。
 「ロスト歩兵大隊」という字面だけを読むと、人物の名や地名などに基づく大隊名のように思える。
 しかし、これは、いかがなものか。
 ホイットルシー少佐の大隊が苦境に陥っている状況を指して、「Lost(失う、などの意味)Battalion(大隊という意味)」、すなわち、「失われた大隊」との意味ではないのか。
 ホイットルシー少佐のことをインターネットで検索すると、ウィキペディアの「Lost Battalion (World War I)」の項に「Commander, 1st Battalion」(第一大隊指揮官)とある。その記述に従えば、部隊の名称は、単に第一大隊である。
 「ロスト歩兵大隊」という名称は、「Lost」という単語を部隊名だと勘違いした訳者がカタカナに翻訳してしまった、不適切な訳語だと思われる。
 ちなみに、『英語研究』(昭和十六年八月号)に掲載された記事「伝書鳩は依然活躍している」(作・サミュエル・ハドソン)を見ると、同記事は「Lost Battalion」を「帰らぬ大隊」と訳している。
  題名 朝日は輝く  *DVD版(紀伊国屋書店『雪夫人絵図』の特典映像に収録)
製作国 
日本
発売元 
紀伊国屋書店
評価 
★★☆☆☆

 昭和四年度のサイレント映画(再現映像と記録映像のミックス)。監督は、溝口健二および伊奈精一。
 朝日新聞社の記者が事故現場に急行し、記事をものにする迫真の場面(再現映像)や、朝日新聞が輪転機で印刷される様子(記録映像)などが見られる。
 劇中で、オーロラ号という船が火災を起こし、朝日新聞社から記者や救護班が現場に駆けつける。
 記者は、取材した内容を手早く通信紙に書き記すと、それを伝書鳩に付して空に放つ。
   
題名 無言の戦士
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★★★★

 昭和十三年に公開された、軍鳩、軍馬、軍犬の記録映画。軍用鳩を用いた通信の様子、ありし日の鳩魂塔、戦場で片脚を失った軍用鳩の姿などを見ることができる。
題名 軍用鳩
製作国 満州
発売元 未発売
評価 ?

 監督・馬場善太郎、撮影・草刈裕夫、昭和十八年度作品。
 映画名をそのまま信ずるならば、軍用鳩を描いた作品なのだろう。残念ながら、詳細不明。

題名 最後の一兵まで
製作国 ドイツ
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★☆☆☆

 ときは一九一八年春、ドイツ軍は最終的な勝利を得るために「ミハエル計画」を策定し、「迷宮」と称される堅固な陣地に立てこもるイギリス軍に対し、攻撃を仕かける。
 戦闘の焦点であるポールヴォアルの村落で、パウル・オットー・ツア・リンデン少佐とその指揮下の兵隊たちが奮戦する。一方のイギリス軍はポールヴォアルを包囲しつつ、ドイツ軍への反撃を試みる。
 ドイツ軍の砲撃はポールヴォアルの村落に向けておこなう必要があった。しかし、リンデン少佐の隊を巻き添えにするわけにいかない。そのため、ドイツ軍の戦車がポールヴォアルに突入し、リンデン少佐らの救出に当たる。しかし、リンデン少佐の腹は決まっていた。――ポールヴォアルに砲火を浴びせろ。それによって、「迷宮」は落ちる、と。リンデン少佐は脱出するのをよしとせず、この村落で玉砕する気でいたのだ。
 リンデン少佐はその旨を記した通信文を軍用鳩に預ける。
 一路、総司令部を目指して飛んでいく軍用鳩の姿をリンデン少佐が見つめる。
 軍用鳩から通信文を受け取った総司令部では、司令官が表情を曇らせる。しかし、司令官はやがて、ポールヴォアルへの砲撃を命じる。
 その後、リンデン少佐らの尊い犠牲により、ドイツ軍有利の形勢となる。
 司令官は沈痛な面持ちでこうつぶやく。――われわれの価値は勝利の大きさでなく、犠牲の深さによって量られるのだ!
題名 怪人二十面相  *DVD版
製作国 日本
発売元 コアラブックス
評価 ★★☆☆☆

 前述した小説の映画版。
 おおむね、原作のストーリーに沿って映画が製作されているが、本作のみの創作や脚色が結構ある。
 例えば、原作では、怪人二十面相に監禁された小林少年が、助けを呼ぶために伝書鳩のピッポを放つが、この映画では、明智小五郎の秘書・高安玲子(たかやすれいこ)と、羽柴家の令嬢・羽柴早苗(はしばさなえ)の二人が、助けを呼ぶために伝書鳩を放つ。
題名 金田一耕助VS明智小五郎 ふたたび  *DVD版
製作国 日本
発売元 ポニーキャニオン
評価 ★★☆☆☆

 同名の小説を原作とするテレビドラマ。しかし、小説とドラマの内容は、別物といっていいほど異なっていて、金田一耕助と明智小五郎が華族の柳條家を舞台に共演する、といった程度の共通点しかない。
 昭和十二年九月、柳條清久(りゅうじょうきよひさ)男爵の娘・柳條星子(りゅうじょうほしこ)が金田一探偵事務所にやってくる。今から二週間前に発生した、柳條清久男爵毒殺未遂事件の真相を探ってほしい、というのだ。星子が言うには、容疑者として逮捕された女医・折口庸子(おりぐち〓〓こ)は、二十年以上も柳條男爵の主治医を務めてきた人物であり、このようなことをするはずがないという。
 こうして、金田一耕助は、柳條男爵邸に赴き、事件の捜査に当たる。
 一方、その頃、名探偵・明智小五郎のもとに、怪人二十面相から犯行予告文が届いていた。
「きたる中秋の名月に注意されたい 尚徳山に伝わる金の如来像を戴きたく ここに通告する」
 この金の如来像は、柳條男爵家に伝わる逸品であったことから、明智小五郎も、犯行を未然に防ぐために、柳條家を訪れる。そして、そこで金田一耕助と合流し、協力して捜査に当たる。

 劇中に、伝書鳩が登場する。怪人二十面相によって、とらわれの身となった明智小五郎が、鳩を放って助けを呼ぶ(ドラマ版のみ。原作小説に伝書鳩は出てこない)
題名 愛と希望の街  *DVD版
製作国 日本
発売元 松竹株式会社ビデオ事業室
評価 ★★★★☆

 都会の喧噪(けんそう)の中で暮らす、母子家庭がある。
 一家の生計は母が靴磨きをして支えているが、彼女は体を壊していて、いつ倒れてもおかしくない。
 貧しさにあえぐ、中学生の正夫は、母を助けようと、進学を諦めて働きに出ることを決意する。しかし、母としては、高校に入学して、こんなみじめな生活を脱してほしいと思っていた。
 未来の見えない日々の中、正夫は生活費を得るために、詐欺まがいの行為に手を染める。調教した鳩を人に売って、その鳩が帰巣本能でもって自宅に帰ってきたら、また同じ鳩を人に売って小銭を稼いだのである。
 原理は簡単だ。鳥の世話をしていれば、みな一度はしくじって、逃がしてしまうことがある。または、鳩の飼い主であれば、普通、放鳩訓練をしたくなる。そうした機会に、仕込んだ鳩が空に飛び出してしまえば、正夫の思惑どおり、鳩が自宅に帰ってきて、そのたびに何度も売りさばく元手ができる、というわけである。
 好ましくない手口ではあるが、正夫としては、貧しい家庭を支えるための致し方のないことだと思っていた。
 そんなある日のこと、正夫がいつものように鳩を街頭で売っていると、裕福な女子高生と知り合って仲よくなる。正夫は、その女子高生に口利きをしてもらい、彼女の父が役員をしている会社の採用試験を受けるチャンスに恵まれるが……。
題名 JA七五〇号機行方不明
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★☆☆☆

 真白な雪を頂いた山脈にぐるりと囲まれた、地方都市――。トラックやオート三輪が走り、商店街は活況を呈して、人々の生活は明るい。その真中に古ぼけた建物の毎朝新聞支局がある。
「もしもし、農協さん? こちら毎朝、出荷情況願います。ハイ、野菜二百貫……」。
 およそ華やかな新聞社とはかけ離れた地味で、ノンビリした空気がこの支局を支配している。ここでは新聞研究室で教えられた正義や人権というものがそのままの形で通らないことが多い。
 東京からこの支局へ転勤して来た若い記者長谷は、こんな空気がたまらなかった。彼が支局へやって来たとき、まずこんな空気をふき飛ばそうと思った。しかし、彼の理想はあくまでも理想だった。町のボスが、マーケットをつぶしてカントリーハウスを建てるという陰謀をすっぱぬいた彼の記事は、支局長の手によって握りつぶされてしまった。その裏にボスの圧力があったことは確かだ。彼のやり場のない怒りも、支局長の命令とあればいたしかたなかった。
 しかし、長谷は、そんなことにへこたれなかった。仕事となると貪欲な眼を光らせて飛びついて行った。彼には非情な記者魂しか持ち合せていなかった。だから人の嫌がる自殺の取材にも喜んで行った。この地方の大地主の娘が自殺したとき、仏壇の上の写真を平気で盗んで来た。それが記者魂だと思い込んでいる長谷に、昔気質の山梨日報の記者木庭は腹が立ってならなかった。たまたま居合せた呑み屋で若い長谷と、万年地方記者の木庭とは激しく口論した。
「新聞記者は特ダネを取るばかりが能じゃない、人を苦しめ、人を悲しませるような記事はいくら書いても何の役にも立たんのだ。中央の記者が華やかにトップ記事を飾っている裏に、小さくベタ記事を書くのが地方記者の勤めだ。人知れず、そっと隅の方の記事を読む読者の何人かは、それで涙も流し、喜びも味わうんだ。俺の地方記者三十五年の生甲斐もただそれだけだったんだ……。」とさとす木庭の言葉に長谷はいつか涙ぐんでいた。
 長谷と木庭の娘京子は恋仲だった。京子の言葉は長谷の気持を更にゆすった。「私は人間の生活の中で一番大切なものは愛情だと思うの。人を愛すること……貴方には愛情が欠けているわ。」
 長谷は淋しい気持を酒にまぎらわせた。「しかし、俺は勝ちたい。特ダネを取りたい。そして、東京へ出て力一杯働きたいんだ。」そのとき、ふと一緒に飲んでいる土工たちの言葉が耳に入った。「山で工事していたときに、故障を起した飛行機が観音経溪谷の辺りに落ちたぜ……。」長谷の記者魂がピクリと動いた。「そうだ、行方不明になっているJA七五〇号機だ。」彼は、月明りの夜道をオート・バイで現場へ向った。
 観音経溪谷――鋭く切り立った岩場の間から、白銀のアルプスが山なみを越えて見え、ぞっとするほど深い谷間が雪と岩と氷とに覆われてつづいている。長谷は雪に足を取られながら飛行機の残がいを求めて歩いた。そのとき木庭の姿が岩蔭にチラッと見えた。彼も飛行機を探してこの溪谷に踏み込んだのだった。二人は雪の中でにらみ合った。やがて二人は雪に覆われた広い溪谷を競って歩き出した。木と木の間、岩と岩の間、二人はへとへとになって探がし廻った。焦った長谷は雪に足を取られてあっという間に谷底深く落ちて行った。
 脚を骨折し、頭や腕に裂傷を負って気を失った長谷を木庭が一生懸命介抱したかえがあって長谷は気を取り戻した。木庭は、「行方不明機発見」のスクープ記事を乗せるため持って来た鳩に、「長谷記者重傷、救援求む」という通信筒を持たせて空へ放った。
 木庭の暖かい瞳と長谷の感謝の瞳がじっとみつめ合った。二人の場所からほど近いところに木庭は墜落した飛行機を発見した。二人の飛行士は死んでいた。「死んだ操縦士の記事よりも、今は生きた一人の生命を守る方がどれ程大切か!」木庭は長谷に明るく笑うのだった。
 やがて、救援隊の人々が駆けつけて来た。担架に乗せられた長谷に木庭は、墜落現場を写した写真と記事をそっと手渡した「木庭さんこれは……。」いぶかる長谷に「いいんだよ。君の手でこれを発表してくれ、そのかわり、僕は人生の特ダネを拾ったことになるかも知れんさ。」と木庭はいうと、駆けつけた京子と長谷の手をそっと結び合せた。
 はるかな山脈の雪が陽光を浴びてキラキラ光っていた……………………。

『JA七五〇号機行方不明』プレスシートから引用

***

 以上、プレスシートから、映画のあらすじを引用した。
 しかし、そのあらすじと映画内容に細部の違いがある。
 例えば、木庭記者は、山梨日報ではなく山梨時事新聞の所属である。また、JA七五〇号機墜落現場の写真と記事は、木庭が京子に手渡し、その次に京子が長谷に手渡す。
 想像ではあるが、映画の脚本をもとに、このあらすじを映画完成前に記したため、そのような違いが生じたように思われる。
題名 ランドリー  *DVD版
製作国 日本
発売元 メディアファクトリー
評価 ★★★☆☆

 知的障害者の青年・テルは、祖母が経営しているコインランドリーで働いている。
 あるとき、水絵という若い女性が洗濯槽の中にワンピースを忘れていく。テルは、忘れ物を届けるために、水絵の実家を目指して旅に出る。
 水絵は以前に、既婚者の男性とつき合っていた。男に妻があることを知らずに交際していたのだ。
 水絵は、だまされていたことを今も悔いていて、心に大きな傷を負っている。その精神的なストレスから、万引を繰り返すようになっていた。しかし、水絵を訪ねてきたテルと交流を重ねるうちに、彼女の心の傷が癒えていく。
 やがて、二人は、テルが旅の途中で知り合った、愛鳩家の中年男性・サリーの家に転がり込む。
 サリーは、結婚式や葬式などの行事ごとで、白鳩を飛ばす仕事をしている。テルは、サリーの助手になって、鳩を放したり、鳩の餌やりをしたりする。
 テル、水絵、サリーの奇妙な共同生活の行方は……。
題名 K-20 怪人二十面相・伝  *DVD版
製作国 日本
発売元 バップ
評価 ★★☆☆☆

 前述した小説の映画化作品。
 怪人二十面相の策略によって、愛鳩家の曲芸師・遠藤平吉が、怪人二十面相として誤認逮捕される。しかし、平吉は、仲間の助けを借りて護送車から脱走し、辛くも警察の手を逃れる。
 自己鍛錬の日々を送った後、平吉は自身の無実を晴らすために、怪人二十面相と対決する。

 映画の随所に白鳩が登場する。江戸川乱歩の小説『怪人二十面相』に出てくる伝書鳩のピッポが、この白鳩のイメージになっていると思われる。
題名 哀憑歌 GUN-KYU  *DVD版
製作国 日本
発売元 GPミュージアムソフト
評価 ★★★★☆

 首都海洋大学の構内の防火水槽で子供が溺死する事件が起こる。その水難事故以来、同大学で教鞭を執る香菜子は、襲ってくる鳩の幻をたびたび目にするようになる。怪現象の裏には、あの防火水槽に水をためてはならない、という、古くから伝わるうわさ話が関係しているようなのだが……。

 陸軍通信学校の鳩部に所属していた用務員が登場する。彼が、『小学国語読本』に載っている「小さい伝令使」を読んでいたり、軍用鳩の世話をしたりしているシーンがある。
題名 アジア三面鏡2016 リフレクションズ  *DVD版
製作国 日本
発売元 独立行政法人国際交流基金
評価 ★★★☆☆

 三本の作品が楽しめるオムニバス映画。そのうちの一本『鳩 Pigeon』(行定 勲監督)に伝書鳩が出てくる。
 マレーシアのペナン島で孤独に暮らす日本人の老人がいる。彼は認知症を患っていて、三人の使用人がその面倒を見ている。月に一度だけ、彼の息子が様子を見にやってくるが、形だけのもので、家族間の愛情は全くない。
 老人の楽しみは鳩の飼育で、放鳩したり、赤旗を振って鳩に舎外運動をさせたりしている。
 ある日のこと、使用人の若い女性――ヤスミンが、ちょっと目を離した隙に、老人の行方が分からなくなる。
 ヤスミンが必死になって町の中を捜すと、老人は警察に保護されていた。鳩を放すために外をうろついていたらしい。
 その後、二人は、海辺に行って、くつろぐ。
 老人は鳩を鳩かごから放つと、
「鳩は裏切らない。鳩を信じてる。何を信じてる、おまえは?」
 と、ヤスミンに言う。
 老人を冷遇している家族に向けた、当てつけの言葉なのか、ヤスミンは何も言えなかった。
 そうして、老人とヤスミンは家に帰るが、老人の徘徊(はいかい)を許したヤスミンは、年長の使用人から解雇を言い渡される。こんなことが続けば、その年長の使用人も首になってしまうからだ。
 弱り目にたたり目とはいうが、ヤスミンが実家に帰ると、今度は暴漢たちが暴れている。ヤスミンの両親が、みかじめ料を払わなかったことに腹を立てているらしい。
 ヤスミンは、なけなしの金を暴漢のリーダー格に差し出すが、彼らは納得しない。
「やめろ!」
 そのとき、老人が助けに入る。
 老人はつえを振りかざして、暴漢たちに、にじり寄る。その気迫に恐れをなしたのか、暴漢たちは逃走する。
 この一件の後、老人の取りなしによって、ヤスミンはまた、老人の世話をすることになる。
 二人で鳩を放すなどして、いつもどおりの暮らしが続く。
 が、そんなとき、老人の息子が血相を変えてやってくる。
 息子の会社が倒産しそうで、実印や預金通帳、不動産の権利書などの場所を老人に聞きにきたのだ。
「誰だ、お前は?」
 老人は息子にそう言う。
 認知症の症状なのか、あえてそういう振りをしているのか、分からない。
 結局、息子が求めていたものは見つからず、彼は肩を落としてこう言う。
「親父はもう俺を憶えてない。親子の情も絆も何もない」
 さて、あるとき、老人の希望により、ヤスミンは老人とともに海に出かける。
 老人は海を眺めながら、
「この海が見たくてマレーシアへ来たんだ。兄たちはここで戦死したんだ。こんなきれいな海で」
 と、言う。
 さらに、老人は、
「鳩を飛ばそう。鳩は平和のシンボルなんだ」
 と、言う。
 そうして、鳩かごから鳩が放たれるが、この出来事を最後に老人は息を引き取る。

 ……鳩は、なかなか鳩舎に戻ってこなかった。
 しかし、ある日のこと、ようやっと鳩が帰ってくる。
 一羽の鳩の脚に手紙が結びつけられてあり、ヤスミンがそれを開くと、鳩の飼い方と老人の財産のありかが示されていた。
 また、老人は、ヤスミンに向けて、
「俺はおまえを信じている。おまえの未来を信じている」
 と、手紙に書き記していた。
題名 波止場  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
評価
 ★★★☆☆

 ニューヨークの波止場は、やくざのジョニーが仕切っていて、誰も逆らえない。ジョニーは、皆の上前をはねて豪勢な生活を送り、意に沿わない者を抹殺する犯罪に手を染めている。
 主人公・テリーの友人であるジョーイが、法廷でジョニーの犯罪について証言しようとしたところ、屋上から突き落とされる。テリーはそのとき、ジョーイを屋上に呼び寄せる役を担当する。しかし、まさか、ジョーイが殺されるとは思っておらず、殴られる程度のことと思っていた。
 テリーはボクサーだったが、八百長試合をさせられて自暴自棄になり、現在はジョニーのもとに身を寄せ、落ちぶれている。しかし、その後、テリーは、ジョーイの妹イディと恋仲になり、正義漢あふれる神父バリーの助けもあって、法廷でジョニーの悪事を証言する。

 劇中に、レース鳩が登場する。テリーとジョーイはそれぞれ、自分の鳩舎を持っていて、その鳩舎と鳩が映画の中で何度も映る。
題名 奇跡を呼ぶ鳩 *注・別の邦題あり――鳩と車イス
製作国 アメリカ
発売元 未発売
評価 ★★★☆☆

 身体の障害に悩む少年が鳩レースを通じて人生の希望を見いだす物語。十六ミリフィルムの作品であるため、公共の視聴覚施設での鑑賞に限定される。
 本作品から鳩レースに興味を覚えた競翔家が意外に多い。

題名 グレートレース  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 ワーナー・ホーム・ビデオ
評価
 ★★☆☆☆

 頭脳明晰かつ運動神経抜群の美男子・レスリーが、ニューヨーク~パリ間の一大自動車レースに挑む。
 レスリーの実力を考えれば、彼が優勝候補であることは明らかだ。しかし、レスリーのことを執拗(しつよう)に敵視するフェイト教授や、フェミニストの女性記者・マギーがレース参加に名乗りを上げたことから、大会の行方は混迷を極める。しかも、レースがおこなわれる先々で事件が起こり、そのたびにレスリーたちを巻き込んだドタバタ劇に発展するから始末に負えない。果たして、最初にパリに行き着く者は誰なのか……。

 劇中で、新聞記者のマギーが、通信用に持ってきた伝書鳩を放したり、その鳩を待ち受けている新聞社の社員が通信文を受け取ったりする。
  題名 はばたけ!天平
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★★☆☆


 十六ミリフィルムで製作された児童劇映画。東京都教育映画コンクール金賞受賞(児童劇映画部門)。指導・島村武房(愛鳩家)、監修・宮沢和男(愛鳩の友社社長、愛鳩家)、協力・日本鳩レース協会。
 レース鳩を主人公にした映画は、この作品が本邦初となる。

 いたずら好きの仲本天平少年が、お堂の鳩にパチンコ玉をぶつける。そして、地上に落ちてきた鳩を保護して、桃太郎という名をつける。しかし、その次の日、桃太郎は死んでしまう。
 天平の父親は、落ち込んでいる息子を励まそうと、名の知れた鳩舎を訪ねて、レース鳩のひなをもらってくる。天平は喜々として、ひなに桃太郎Ⅱ世という名を与える。
 それから、桃太郎Ⅱ世の訓練がはじまる。
 だんだんと距離が延びていって、ついには横浜からの三十キロ放鳩となる。
 実は天平は四歳のときに母親を亡くしている。しかし、天平はまだ、母親が生きていると思っていて、横浜にいると信じている。
 横浜からの三十キロ放鳩というのは、母親に対する天平の思いが込められているのだ。
 その天平の思いが天に伝わったのか、見事、桃太郎Ⅱ世は天平のもとに帰ってくる。
   
題名 鳩
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★★☆☆

 三浦勇の通学している高校には、伝書鳩を飼育している友達が数人いたが、その中で友田一郎の持つている鳩の可愛らしさは特に勇の心を魅いた。銀座に料亭を営んでいる一郎の父は、立派な鳩舎を持つでおり、鳩レースで優勝する程の優秀な鳩の持主だつた。或る日、一郎の家に遊びに行つた勇は、君も飼つてみないかと勧められた。

松竹撮影所宣伝課発行『スタヂオだより No.174』(昭和二十七年九月三日)から引用

***

 実話をもとに作られた映画。
 昭和二十七年一月十八日、奥村タカシ(十七歳)が家出する。友達の蜂須賀明義(十七歳)から借りていた二万円相当の鳩を野良猫に殺されてしまったのを苦にして、山梨県の下富士見村に向かう。そこで奉公してお金をためて鳩を弁償しようと思ったのだ。しかし、この家出は自殺騒ぎに受け止められて世間に知れ渡り、二十二日に迎えがくる。
 翌二十三日、タカシは帰宅するが、自宅に日本鳩レース協会の吉川晃史会長が現れて、訓練済みの伝書鳩のつがいをプレゼントされる。また、ほかにも「うちの鳩でよければ……」との手紙が数通寄せられ、事件から一週間たったあとにも「返済金の一部に……」と貯金や醵金が舞い込む。

参考文献
『アサヒグラフ』(昭和二十七年二月二十日号) 朝日新聞社
  題名 母のおもかげ
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★☆☆☆


 下町を描写した人情もので主役の道夫君が亡き母のおもかげを形見の鳩にしのんでいるため、継母やその子供になじめずだんだん暗い性格になって行くが、誤って失踪させた鳩が幾日ぶりかで帰舎するにおよんで、はじめて明るさを取もどし、ハッピー・エンドになるという筋

『愛鳩の友』(昭和三十四年三月号)の五十一ページから引用
     
  題名 どろんこ天国  *VHS版
製作国 日本
発売元 松竹
評価 ★★☆☆☆

 継母のツネがチンドン屋をしていることから、小学生のピンちゃん(男の子)は周囲から笑われる。しかし、ピンちゃんは、この継母を誇りに思い、その気持ちを文章にしたためる。後にこの作文はコンクールで一等を取り、文集に掲載される。

 劇中に伝書鳩が登場する。家出をしたピンちゃんが手紙を付した鳩を伊豆で放鳩するのだ。
 なお、本作の製作には日本鳩通信協会が協力していて、同協会の指導部に属する石岡勇蔵がその担当者とのこと。
     
題名 モレニータ・スキャンダル 消えた聖女  *DVD版
製作国 メキシコ
発売元 オンリー・ハーツ
評価
 ★★★☆☆

 心臓の病で倒れた祖父の治療費を捻出するために、伝書鳩を用いた、麻薬の運び屋をすることになった青年・マテオ。伝書鳩に付す信書管の中に麻薬を詰めて、やり取りする。
 はじめはうまくいって、報酬を手にするマテオだったが、鳩の帰巣性によって、麻薬入りの信書管をつけた愛鳩が自鳩舎に帰ってきてしまう。そうしたとき、ちょうど、胴元らがやってきて、「横取りして稼いだな」などとして、マテオは締め上げられる。
 ぬれぎぬとはいえ、このままではマテオの命が危うい。五日以内に金を返さないと、家族もろとも殺す、と脅される。
 マテオは、思い詰めた末に、メキシコの至宝「グアダルーペの聖母」を盗み出して、金を工面しようとするが……。
題名 アルファ 殺しの権利  *DVD版
製作国 フィリピン
発売元 アメイジングD.C.
評価
 ★★★☆☆

 国を挙げて麻薬撲滅に臨むフィリピン。町には検問が敷かれ、住民はそこを通行するたびに、麻薬を所持していないか、身体検査を受ける。
 警察もシンジケートをつぶすために、麻薬組織のアジトに警官隊を派遣し、売人たちを逮捕または射殺する。警察に協力する民間人がいて、警官隊が踏み込む際に手足となって働く。しかし、その民間人と、主人公(警察官)が結託して、麻薬組織から押収した覚醒剤の一部を闇で売りさばく。
 覚醒剤の輸送方法が凝っていて、伝書鳩の脚に付して運ぶ。そうすれば、検問に引っかからない、という寸法である。
題名 少年と鳩  *VHS版(仏語字幕版。『最初の教師』と『少年と鳩』の二作品収録)
製作国 ロシア
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★★☆☆

 ある鳩飼いの男と取り引きして、切手帳のコレクションを一羽の伝書鳩と交換した少年がいる。
 少年は胸を躍らせながら、屋根に上がって鳩を放つ。しかし、馴致していない鳩は、当然のように、そのままどこかに飛び去ってしまう。
 少年が鳩のあとを追いかけると、鳩を譲ってくれた男の鳩舎に鳩が舞い戻っているのを目にする。
 「僕の鳩だ」と少年は言う。しかし、鳩飼いの男に難癖をつけられて、鳩を返してもらえない。少年は仕方なく、金魚とレコードを男に渡して、鳩を取り戻す。

『最初の教師』
    題名 はるかな国の兄弟  *BD版
製作国 スウェーデン
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★☆☆☆

 前述した児童小説の映画版(一九七七年スウェーデン製作)。おおむね、原作どおりに映画化している。
 窓枠にとまってカール・レヨンに会いに来る鳩、ソフィア(ハトの女王さまと呼ばれている)が通信用に使っている鳩(パロマ、ビアンカなど)が劇中に登場する。
 また、映画のオリジナルとして、鳩の姿が掘られた墓石が最後のシーンに出てくる。
     
題名 愛と鳩  *DVD版
製作国 ロシア
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★★☆☆

 アマチュアの鳩ブリーダーであるヴァシリーは、妻や子供たちと田舎町で暮らしている。ヴァシリーはある日、仕事中にけがをしたことから、保養地へのチケットを手にする。ヴァシリーはその保養地で、都会の女・ライサと出会い、浮気をするが……。

 劇中に、何度もヴァシリーの鳩や鳩舎が登場する。観賞鳩ばかりなので画面が華やか。ヴァシリーが口移しでクジャクバトに水を与えているシーンなど、見ていて楽しい。
  題名 願い、空を舞う  *VHS版
製作国 デンマーク
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★★☆☆

 平成八年に製作されたデンマーク映画。日本では一度だけ、平成十四年にNHKでテレビ放送されている。劇場公開しろ、とまでは言わないが、ビデオソフト化(日本市場)してほしい作品である。
 貧しい家庭に生まれるも幸せいっぱいの人生を送っている少女・マイブリッドと、裕福な家庭に生まれるも不幸せな人生を送っている少女・クリスティーナ。彼女たちは力を合わせてレース鳩の訓練に励み、鳩レースの大会に出場するが……。
   
題名 不都合な契約  *DVD版
製作国 ベルギー
発売元 NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
評価 ★★★★☆

 コリン・エヴァンスは、アメリカの証券会社に勤めるエリート・ビジネスマン。
 アラブの大富豪――シーク・アブドゥッラー・ナイェドが、コリンの勤める会社から他社に心変わりして、五億ドルの投資を白紙に戻す。コリンは急きょ、中東に飛んで、その説得に当たる。
 面会かなったコリンは、シークが愛鳩家であることを知る。
 そこで、コリンは、シークが欲しがっている銘鳩・ウィテコップ号との交換を条件にして、投資の再開を持ちかける。
 コリンのハッタリだったが、これにシークは喜び、消し飛びそうになっていた取引が持ち直す。
 しかし、この段階では、ただのハッタリであって、実際に鳩があるわけではない。
 こうして、コリンは、ベルギーのジョス・パウエルズ鳩舎に身分を偽って潜入し、シークの欲している銘鳩・ウィテコップ号の入手に奔走する……。

 第一次世界大戦で活躍した軍用鳩・シェラミの挿話や、愛鳩家・シークの、バルセロナ・インターナショナル・レースに対する思い、などが、劇中で語られる。
 伝書鳩ファン刮目(かつもく)の作品。
題名 陸軍大尉になったブラックアダー (前編 第二話「伝書鳩は舞い降りた」)
*VHS版
製作国 イギリス
発売元 バップ
評価 ★★☆☆☆

 コメディ作品『Mr. ビーン』のビーン役で知られるローワン・アトキンソン主演の一作。
 ときは第一次世界大戦、アトキンソン演じるブラックアダー大尉は、進撃命令に従いたくないために、その進撃命令を伝える、電話、電報、軍用鳩を、ことごとく無視する。軍用鳩については銃で撃ち殺して食べてしまう。しかし、メルチェット将軍の愛鳩であったことから、ことが大きくなり、ブラックアダー大尉は軍法会議にかけられる。
 ジョージ中尉のおとぼけ弁護士ぶり、ばかな兵隊・ボールドリックが用意する脱獄グッズ(木彫りのカモ、鉛筆、らっぱ、ロビン・フッドの衣装)、ブラックアダー大尉と銃殺隊の会話のやりとりなど、笑いどころ満載の秀作。
  題名 アニマル・レスキュー・キッズ (シリーズ3 第十二話「ハトが運ぶ幸運」)
*DVDの第三巻に収録

製作国 アメリカ
発売元 ビームエンタテインメント
評価 ★★★☆☆

 集合住宅の屋上で伝書鳩を飼っているホルバートは、同じアパートメントに住んでいるジョンソンから、洗濯物が鳩のふんだらけになっている、という難癖をつけられる。洗濯物のふん被害はツバメによるもので伝書鳩が原因ではない、とホルバートが釈明しても、ジョンソンは全く取り合わない。
 その後、ジョンソンの画策によって、鳩飼育の是非がアパートメントの議題にかけられる。結果は五十三パーセントの住人が鳩を処分することに賛成するが……。
   
  題名 私の20世紀  *BD版
製作国 ハンガリー、西ドイツ
発売元 オデッサ・エンタテインメント
評価 ★★☆☆☆

 リリとドーラという双子の姉妹のお話。
 二人は幼くして親を失い、孤児となった事から、二人の紳士に引き取られて、それぞれ別の家庭で育つ。
 その後、リリは革命を夢見るテロリストになり、ドーラは裕福な人たちから金品を巻き上げる詐欺師になるが……。
 劇中にクジャクバトとギンバトが登場する。
 複数のギンバトが連係して通信文を運ぶシーンがある。
     
  題名 リトル・ヴォイス  *DVD版
製作国 イギリス
発売元 アスミック
評価 ★★★☆☆

 死んだ父親との思い出だけにすがって日々を過ごす少女・ローラ。彼女は誰とも口を利かずに家の中に閉じこもっている。しかし、天才的な歌の才能に恵まれていることが周囲に知れると、にわかにさまざまな人たちを巻き込んだ騒ぎに発展する。

 愛鳩家の青年・ビルが登場する。伝書鳩や鳩舎が何度も映るので、愛鳩家向けの映画といえる。

     
題名 天使にさよなら  *DVD版
製作国 イギリス
発売元 コムストック・グループ
評価 ★★☆☆☆

 ジミー少年(十一歳)の父親は、現在、無職で、病魔に冒されている。そのため、日常生活が荒れていて、ジミー少年につらく当たることが多い。
 ジミー少年は、五歳の頃に、父親に空高く放り上げてもらったことを大切な思い出にしている。ジミー少年は、自分がカモメになったような心地になったのだ。
 あるとき、ジミー少年は、自分を天使にしてほしい、と大天使ガブリエルに願い出る。鳥とともに空を飛ぼうというのだ――あの五歳のときの思い出のように……。

 ジミー少年の祖父が鳩を飼っている。
 祖父は、鳩を売ったお金で、ジミー少年にトランペットを買ってやったり、絞めた鳩で肉料理を振る舞ったりする。
題名 ブレードランナー  *BD版
製作国 アメリカ
発売元 ワーナー・ホーム・ビデオ
評価 ★☆☆☆☆

 主人公のリック・デッカードと、ネクサス6型レプリカントのロイ・バッティが対決するシーンに鳩が登場する。ロイの死とともに、鳩が飛び立っていく光景が胸に残る映画。
題名 ホーム・アローン2  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
評価 ★★☆☆☆

 ときはクリスマス・シーズン。
 ケビン少年とその一家はフロリダに旅行することになっていた。しかし、ケビン少年が飛行機を乗り間違えてしまって、ニューヨークに行ってしまったことから騒ぎになる。
 ケビン少年の捜索願が出される中、ケビン少年は一人たくましく、ニューヨークのプラザ・ホテルに泊まって、日々をすごす。
 そうした中、ケビン少年は、ニューヨークの街中で二人組の悪者と出くわす。以前にケビン少年の自宅に盗みに入ったことのある泥棒である。
 この二人組の泥棒が、ダンカンのオモチャ・デパートに盗みに入ろうとしていることを知ったケビン少年は、先回りして彼らを待ち受ける……。

 劇中に、公園の鳩に餌づけしているホームレス(高齢の女性)が出てくる。
 彼女が出てくるたびに、たくさんのドバトが画面に映る。
 映画の最後、彼女は友情の証しとして、キジバトの飾り物をケビン少年にプレゼントする。
題名 エバン・オールマイティ  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 ジェネオン・ユニバーサル
評価 ★★☆☆☆

 テレビキャスターのエバン・バクスターは、アメリカ下院議員に華麗に転身し、世界を変える、と神に祈る。その言葉どおり、エバンの前に神が現れて箱舟を作るように命じられる。世界を変える、と神に祈ったのは事実だが、そういう意味ではなかったので、エバンはとまどう。しかし、神の不思議な力を何度も目にするうちに、やがて神を信じるようになり、洪水から人々を守るために、箱舟作りをはじめる。しかし、周囲の人たちは、エバンがまるで『創世記』のノアのように変貌していくことに驚き、不審に思う……。

 劇中に、カワラバトやジュズカケバトが登場するほか、ウスユキバトまで出てくる。ウスユキバトの姿を拝める映画はまずないと思われるので、大変、貴重な作品。
題名 クライム & ダイヤモンド  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 ギャガ・コミュニケーションズ
評価 ★★☆☆☆

 刑務所から脱走した詐欺師のフィンチは、高飛びするためにタウトという人物になりすます。タウトはマフィアとのいざこざによって殺されていて、フィンチはこの死人に化けたのだ。しかし、そのことがフィンチの身を危うくする。マフィアは、タウトに化けたフィンチに感づき、タウトを殺し損ねたと早とちりしたのである。
 そうして、毒舌ジムと名乗る殺し屋がフィンチのところにやってきて、フィンチを縛り上げる。
 フィンチはそのまま殺されるはずだったが、毒舌ジムが熱狂的な映画ファンだったことから、奇妙なやり取りが生じる。
 フィンチの語る話が面白ければ、すぐには殺さずにいてやろう、と毒舌ジムが言うのだ。さながら、『千夜一夜物語』のシェヘラザードのようなものである。
 こうして、フィンチは、いや応なく、これまでの体験を毒舌ジムに語る。そして、毒舌ジムは、フィンチの話を興味深く聞き入り、まるで映画のストーリーのようにこれを受け止める……。

 劇中に、伝書鳩が登場する。フィンチとその恋人・テスとの間を飛翔(ひしょう)し、通信文やダイヤモンドを運ぶ。
  題名 レジェンド・オブ・ドラゴン 鉄仮面と龍の秘宝  *DVD版
製作国 ロシア、中国、アメリカ
発売元 カルチュア・パブリッシャーズ
評価 ★★☆☆☆

 ときは十八世紀。
 科学者兼地図製作者の英国人ジョナサン・グリーン、中国の王妃チェンラン、ロシア皇帝ピョートル一世、英国婦人ダドリーなどが、魔女に乗っ取られた中国の港町に集い、この魔女と戦う。
 劇中に、伝書鳩が登場する。
 ジョナサン・グリーンが伝書鳩を持ち歩いて通信する。
     
題名 ヴァリアント  *DVD版
製作国 イギリス
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★★★☆

 第二次世界大戦の英独戦を軍鳩の視点から描いたCGアニメ。
 ある日、鳩のヴァリアントは英空軍の軍鳩に憧れて入隊を決意する。教育担当軍曹の厳しいしごきにたえたヴァリアントは、ドーヴァー海峡を越えてフランスに降り立ち、当地のレジタンスから秘密文書を受け取る。
 D-dayの成否にかかわる作戦やいかに……。

題名 シェラミ  *DVD版
製作国 スペイン
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★★☆☆

 著名な軍用鳩・シェラミ(スミソニアン博物館に剥製が展示されている)をモチーフにしたアニメ映画。
 ディズニーアニメのような雰囲気なので、シリアスなものを期待してはならない。子供向けのギャグ作品だと思って見た方がよい。しかし、そうは言っても、信書管を下げた鳩が猛禽類の襲撃から逃れようとして必死に飛び続けるシーンや、塹壕を低く飛ぶ鳩の姿などは見応えがある。先に紹介した『ヴァリアント』に比べると見劣りするが、鳩が登場するアニメとしてそれなりに評価できる。
題名 白雪姫  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
評価 ★☆☆☆☆

 ウォルト・ディズニーが製作した、言わずと知れた傑作アニメ。世界初のカラー長編アニメでもある。
 映画の冒頭、白雪姫が歌を歌っているシーンに、たくさんの白鳩が登場する。その白鳩たちのアニメーションが圧巻で、現代のアニメ作品をもしのぐ、きめ細やかな動きをする。原点にして頂点、などと褒めたたえても言い過ぎにならない。
 パブリックドメインになっているので、本作は無料で視聴できる。未見の方にお勧めしたい。
  題名 ノートルダムの鐘  *BD版
製作国 アメリカ
発売元 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
評価 ★☆☆☆☆

 舞台は中世のパリ。
 ノートルダム大聖堂の鐘楼にカジモドという名の青年が住んでいる。彼は先天的な奇形をわずらっていることから、人目を忍んで、ここでずっと一人で暮らしている。
 また、最高裁判事クロード・フロローから「この世の中は冷たくて、お前をいじめ抜く」などと吹き込まれているので、一生涯をノートルダム大聖堂に引きこもって生涯を終える……。カジモドにはそんな人生が待ち受けていた。
 カジモドの友達は銅像と鳩だけだ。銅像はもちろん、動かないのだが、こういう引きこもりの男は想像力が豊かなので、その銅像とおしゃべりできる。
 鳩はこの鐘楼にたくさん飛んできて、ねぐらにしているので、カジモドと日常的に接している。
 さて、そんな孤独なカジモドだったが、年に一度おこなわれる、道化の祭りに、身を隠して参加するが……。
   
題名 ボルト  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメント
評価 ★★☆☆☆

 テレビドラマの中でスーパードッグを演じているボルトは、その作り物の出来事を本当のことだと思っている。自分自身に超能力が備わっていると信じているのだ。
 そんな中、飼い主の少女・ペニーが、ドラマの中で悪役にさらわれる。
 ペニーを助けようとして、勢い余って、スタジオを飛び出すボルト。
 彼はそのまま迷子になってしまう。
 野良猫のミトンズとハムスターのライノ、そして、たくさんのドバトと協力しながら、ボルトはペニーのいる、ハリウッドの撮影スタジオを目指す。
題名 パディントン  *DVD版
製作国 イギリス、フランス
発売元 ポニーキャニオン
評価 ★★☆☆☆

 ペルーの山奥から、イギリスのロンドンにやってきた小熊・パディントンを主人公にした子供向け映画。
 パディントンが、かけがえのない家族として、ブラウン一家に迎え入れられるまでの顛末(てんまつ)を描く。
 一見すると、ただの子供向け作品なのだが、物語の核心に移民問題を据えていて、大人が見ても充分に考えさせられる内容に仕上がっている。

 ラストの、悪者とのバトルシーンで、ドバトが活躍する(ほかにも、ドバトが何度も劇中に登場する)
  題名 ザ・スター はじめてのクリスマス  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
評価 ★★★☆☆

 毎日の粉ひきに飽き飽きしている、ロバのボーは、王家のキャラバンへの参加を夢見る。町から町を旅して世界を見て、偉い人たちと会い、世界一立派な馬とともに行進するのだ。
 そうして、ボーは、王家のキャラバンを追うために粉ひき小屋を脱走する。しかし、その途中、足を痛めてしまい、ヨセフとマリアの家に保護される。
 さて、マリアのおなかの中には救世主イエスが宿っていたが、この救世主の誕生を恐れたヘロデ大王が刺客を放つ。イエスを亡き者にするために……。
 ボーは、鳩のデイヴなどと協力しながら、この刺客に立ち向かう。
     
題名 ピジョン:インポッシブル  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★★☆☆

 ここはアメリカのワシントン。
 エージェントのウォルターは、仲間から通りすがりにブリーフケースを渡される。
 実はこのブリーフケースには核ミサイルの発射ボタンが納められている。そのほかにもレーザー銃を内蔵していたり、ジェット推進によって空を飛べたりする。普通では考えられないような特別なブリーフケースなのだ。
 さて、ウォルターがベンチに腰かけて、ベーグルをかじりながらブリーフケースの中身を確認していると、一羽の鳩がやってくる。ウォルターが食べているベーグルを狙っている。
 ウォルターは仕方なく、ベーグルのかけらを鳩に放ってやる。しかし、鳩はかけらでは満足できないらしい。
 ウォルターが手にしているベーグル目がけて、鳩が向かってくる。
 ウォルターはまとわりついてくる鳩を追い払うために、ベーグルを前方に放り投げる。しかし、具合の悪いことに、投げられたベーグルを追っていった鳩がブリーフケースにとまった拍子に、ブリーフケースのふたが閉じてしまう。
 ここから大騒動になる。ブリーフケースの中に閉じ込められた鳩があちこちのボタンやスティックをいじるので、レーザー銃やミサイルが発射され、町がパニックになる。そして、最後には、核ミサイルの発射ボタンまでもが……。
  題名 スパイ in デンジャー  *BD版
製作国 アメリカ
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★★☆☆

 諜報組織H.T.U.Vに属する、すご腕のスパイ――ランス・スターリング。
 このランスが変身薬を誤って飲み、鳩の姿になってしまう。
 ランスは、この姿のまま、科学者のウォルター・ベケットや鳩たちと協力して、テロリストのキリアンを追う。
     
  題名 映画 トムとジェリー  *BD版
製作国 アメリカ
発売元 ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
評価 ★☆☆☆☆

 成功を夢見てニューヨークに出てきた若き女性――ケイラ・フォレスター。
 このケイラが、立派な経歴を持つ他人になりすまして、名門のロイヤル・ゲート・ホテルに臨時職員として潜り込む。しかし、この高級ホテルに、トムとジェリーがやってきて、騒動を巻き起こす……。
 劇中に、鳩DJ(鳩アナウンサー)が登場する。この鳩が歌を歌ったり、結婚式がおこなわれることをアナウンスしたりする。
     
題名 ベテーの伝書鳩
製作国 アメリカ
発売元 キングフィルム
評価 ★★☆☆☆

 いわゆる「ベティちゃん」として知られる、ベティ・ブープのカートゥーン作品の一つ。
 原題は「Pudgy in TRAINING PIGEONS」
 物語の内容の一部と音声をカットし、幻灯機用の35ミリフィルムとしてまとめたものが、本作『ベテーの伝書鳩』である。

 旗を振って、愛鳩たちに舎外運動をさせているベティ。やがて、舎外運動を終えた鳩が次々に鳩舎の中に戻ってくるが、一羽だけがどうしても帰ってこない。言うことを聞かずに、いつまでも空中にとどまっている。
 ベティの愛犬・パジーが業を煮やして、盛んにほえたてる。しかし、鳩は一向に戻ってこない。パジーはむきになって鳩を追い回し、何とかして入舎させようとするが……。 
題名 鳩と少年
製作国 日本
発売元 学芸社
評価 ★★★☆☆

 幻灯機用のフィルム作品。
 ある少年が、自宅のベランダに鳩小屋を作って、鳩を飼いはじめる。しかし、彼は、苦難に見舞われる。暴風雨がやってきたり、鳩が猫に襲われたりしたのだ。
 暴風雨については、鳩小屋にシートをかけて、一晩中、番をして、やり過ごす。しかし、猫の襲来は防げなかった。
 無残にも、愛鳩の一羽を失ってしまう。しかも、この殺された鳩は、武君(友達)の父親から預かっている、二万円もする鳩だった。
 少年は思い悩んだ末に家を出る。外に働きに出て、失った鳩の代金を弁償しようというのだ。
題名 星の子ポロン (「落ちた伝書鳩の巻」)
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★☆☆☆☆

 新しい鉄砲を持って、鳥を撃ちにいくオオカミ。
 手頃な野鳥を見つけて引き金を引く!
 ――しかし、うまくいかない。
 仕方がないので、今度は、民家で飼われている伝書鳩に目をつける。
「キャー、よして~!」
 オオカミに銃口を向けられた伝書鳩が悲痛な声を上げる。
 しかし、その光景を、偶然、見かけたポロンが、
「あっ、危ない!」
 と、言って、額につけているバンドの星からビームを発射する。
 たちまち、オオカミの鉄砲がグニャリと曲がって、爆発する。
「降参です~」
 オオカミが、まいった、をする。
「オオカミ君、鳩を撃っちゃいけないんだよ。みんながけがをしたときや、ニュースを運ぶとき、大切な役目をしてくれるんだよ」
 ポロンはオオカミを、そう、たしなめる。
  題名 キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争  *BD版
製作国 アメリカ
発売元 ワーナー・ホーム・ビデオ
評価 ★★☆☆☆

 ディッグス(犬)、ブッチ(犬)、ピーク(犬)、キャサリン(猫)、シェイマス(鳩)が諜報チームを結成し、世界征服をもくろむ雌猫――キティ・ガロアの野望を阻止するために奮闘する。

 余談だが、CGで描かれた伝書鳩・シェイマスを確認したいがために、私は映画館に足を運んで本作を鑑賞している。
   
題名 スカイキッド・ブラック魔王  *DVDボックス版
製作国 アメリカ
発売元 ワーナー・ホーム・ビデオ
評価 ★★☆☆☆

 敵国の伝書鳩・ポッピーを捕まえるために、ケンケンとブラック魔王が毎回あの手この手の奇策を弄(ろう)するドタバタアニメ。
 ハンナ・バーベラ・プロダクション製作。
  題名 ウッディ・ウッドペッカーの恋人募集中 (「伝書バトは恋のライバル」) *VHS版
製作国 アメリカ
発売元 CIC・ビクタービデオ
評価 ★★★☆☆


 主人公の鳩が彼女にいいところを見せようとして軍鳩隊の入隊検査を受けにいく。各志願者が胸囲検査を受ける中、主人公は風船で胸を膨らませて検査官の目をごまかそうとする。しかし、うそっぱちの鳩胸はすぐに露見して入隊検査に落ちてしまう。しょんぼりしながら帰っていく主人公。ちょうどそんなとき、猛禽類に襲われて怪我を負った軍用鳩に出会う。主人公は彼から、国の大事にかかわる極秘文書が入った信書管を託される。主人公は無事に通信文を届けることができるのであろうか。
     
題名 ウッディ・ウッドペッカー (「ウッディー、ハトになる」) *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 パイオニアLDC
評価 ★★☆☆☆

 キツツキの仕事を怠けてばかりいるウッディは、罰として女神さまから鳩の姿に変えられる。「お願いします。女神さま、キツツキに戻してください」。そう懇願するウッディに、女神さまは、「鳩の仕事をちゃあんとすれば、また考えてあげてもいいですよ」と条件を出す。
 そうして、鳩の会社で働くことになったウッディだったが、真面目に働こうとしない。
 銅像にふんをする仕事では、白いペンキを像にかけてごまかすだけ。
 鳩の宅配便の仕事では、荷物を背負って飛んでいかずに、人間がやっている宅配便サービスを利用して配送業務を済ませてしまう。いや、そればかりでなく、南国行きの荷物の中に潜んで南の島に密航し、バカンスまで過ごす。
 ツバメを鳩の餌場から追い出す仕事では、南国行きのパッケージツアーが無料であるとうそをついて、ツバメたちに偽のチケットを配って立ち退かせる始末。
 ウッディの不正行為は目に余るが、表面上は、よい成績を収めている。ウッディは女神さまからキツツキの姿に戻してもらうことに成功する。しかし、鳩の会社の上司がウッディのいんちきを写した証拠写真を持って女神さまに訴えたから大変。またもやウッディは、女神さまから罰を受ける羽目になる。
題名 フィニアスとファーブ (シーズン1 第六話「ツリーハウス対決」)
製作国 アメリカ
発売元 未発売
評価 ★★☆☆☆

 悪の科学者であるハインツ・ドゥーフェンシュマーツ博士が開発したライト――「ポッポネーター」。このライトを鳩に浴びせると、ターゲットの画像が鳩の脳に埋め込まれる。
 さて、町の功労者として表彰される、ロジャー・ドゥーフェンシュマーツ(博士の兄弟)の晴れ舞台を邪魔しようと、ドゥーフ(博士の略称)が悪事を企てる。鳩たちに命じて、ロジャーの頭上に大量のふんを降らせようというのだ。
 町の式典の最中、たくさんのドバトがお尻を向ける。そして、今まさにふんの雨が降ろうとしたとき、カモノハシのエージェントPが、「ポッポネーター」にドゥーフの画像をセットして鳩たちに照射する。途端に鳩たちは、ターゲットをドゥーフに切り替える。
 ドゥーフはエレベーターを使って逃げようとするが、かご内に鳩たちが突っ込んできて、ドゥーフはこてんぱんにやっつけられる。
題名 ぼくらベアベアーズ (シーズン1 第一話「バックパックを取り戻せ」)
製作国 アメリカ
発売元 未発売
評価 ★★☆☆☆

 三頭のクマが、バスケットボールに興じる(ハイイログマのグリズ、ジャイアントパンダのパンダ、ホッキョクグマのアイスベア)
 しかし、プレーを終えてベンチに戻ると、そこに置いておいた、黄色のバックパックがなくなっている。財布、スマートフォン、手裏剣が入っていたというのに……。
 その後、クマたちは、黄色のよく似たバックパックを持っている青年を見つけ、彼からバックパックを取り返す。しかし、中には、映画のビデオしか入っていない。クマたちの物ではなかったのだ。
 そんなとき、不審なクマがいる、との通報を受けて、警察がやってくる。
 ビルの外壁に追い詰められたクマたちは、観念して、空気式救助マットに飛び降りる。
 しかし、一人ずつ飛び降りるように、と警察はアナウンスしていたのに、三頭同時に飛び降りたものだから、クマたちは、いきおいあまって、マットに、はね返される。
 そうして、クマたちは、向かいのビルの窓を割って、その一室に飛び込んでしまう。
 クマたちが室内を見渡すと、何とそこは、盗品の保管所になっていて、無数の鳩がたむろしている。
 この鳩の窃盗団が、クマたちのバックパックをはじめ、いろいろな物を盗み出していたのだ。
 これにより、クマたちの無実が証明される。
題名 マイク・タイソン・ミステリーズ *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 日本市場向けビデオ未発売
評価 ★★★★☆

 ボクシングの世界ヘビー級チャンピオンのみならず、愛鳩家としても知られているマイク・タイソン。その彼がアニメの登場人物になって縦横無尽に活躍する。
 酒好きの鳩、タイソンの養子・Yung Hee、幽霊で同性愛者のクィーンズベリー侯爵とともにミステリーチームを組んで数々の謎に挑む。
 主要キャラクターの一人(一羽)がアルコール中毒の鳩なので、彼が常に画面に映る。また、タイソンが飼っている鳩たちが脚に依頼の手紙をつけて鳩舎に持ち帰る。鳩好き必見の内容に仕上がっている。

 現在、日本語版のDVDは発売されていないので、英語版を見るしかない。しかし、はちゃめちゃな、分かりやすいアニメなので、英語が苦手な人でも大体の内容を理解できる。
題名 ミラキュラス レディバグ&シャノワール (シーズン1 第六話「ミスター・ピジョン」)
製作国 フランス
発売元 未発売
評価 ★★☆☆☆

 悪漢ホーク・モスによって、鳩好きの男ラミエルがミスター・ピジョンという怪人に変えられる。ミスター・ピジョンはたくさんのドバトをけしかけて、町中の交通機関をまひさせたり、人を襲わせたりする。
 レディバグとシャノワールは、ミスター・ピジョンをおびき寄せて、これを退治しようとするが、反対に鉄の檻(おり)に閉じ込められてしまう……。


『おさるのジョージ たのしいおてつだい』
題名 おさるのジョージ (「ハトさんのおうち」) *DVDボックス版
製作国 アメリカ
発売元 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
評価 ★★★☆☆

 おさるのジョージがバルコニーで絵を描いていると、脚環をつけた鳩に出会う。
 黄色いぼうしのおじさん(テッド)が言うには、必ず自分の巣に帰る特別な鳩――伝書鳩なのだという。
 ジョージは、この伝書鳩のために、お手製の「木」をこしらえる。
 コートかけを「幹」にして、そこに、傘、テニスラケット、ゴルフのクラブ、野球のバットなどをくっつけて「枝」に見立てた……ちょっと変な「木」である。
 ジョージがその「木」の根元に土をかぶせると、伝書鳩はこれを気に入ったらしく、「枝」に止まってくれる。
 その後、ジョージとテッドが暮らしているマンションのドアマンが、伝書鳩の飼い主だと知れる。
 伝書鳩の名はコンパス。
 物語の最後、コンパスとその仲間の鳩たちが飛んできて、ジョージの作った「木」に止まる。
 ジョージの「木」は、鳩たちに大人気なのだ。

*本話以外にも、このアニメには、鳩がたびたび登場する。


『おさるのジョージ たのしいおてつだい』
題名 おさるのジョージ (「ポッポ時計」) *DVDボックス版
製作国 アメリカ
発売元 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
評価 ★★☆☆☆

 おさるのジョージが、ワイズマン博士の鳩時計を壊してしまう。鳩時計のからくりを、伝書鳩のコンパスに見せてやろうとしたところ、長針を折ってしまったのだ。
 困ったジョージは、鳩時計をいじくりまわすが、部品がバラバラになり、かえって状況が悪化する。
 ジョージは図書館に行って、鳩時計の組み立て方を調べようとするが……。

*本話以外にも、このアニメには、鳩がたびたび登場する。


『ベルヴィル・ランデブー』
題名 老婦人とハト  *DVDの特典映像に収録
製作国 フランス
発売元 ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント
評価 ★★☆☆☆

 腹をすかせた中年の男が、公園の鳩に餌をやっている老婦人を見て、ある悪だくみを思いつく。鳩に化けて彼女からごちそうしてもらおうというのだ。
 鳩の着ぐるみを着て、老婦人の家に日々通う中年男。老婦人は半分ぼけているのか、鳩の格好をした男に手料理を振る舞い続ける。中年男はぶくぶくと太っていくが……。

 伝書鳩は出てこないが、全編に鳩が登場するアニメーション作品。鳩好きなら、必見の価値あり。


『シートン動物記』
題名 伝書鳩アルノー  *VHSの第三巻に収録
製作国 日本
発売元 バップ
評価 ★★★☆☆


 アーネスト・T・シートン作『アルノー』をアニメ化した作品。藤原英司の日本語訳を参考に制作されている。
 全体的に映像表現が子供向きに手直しされているが、原作の雰囲気を損なっていない。伝書鳩のことを全く知らない人にとっては、ちょうどよい入門アニメになると思う。しかし、残念なことに、バップから発売されているビデオが廃盤になっていて、愛鳩家の間でさえ本作の存在が忘れ去られている。

題名 アラビアンナイト シンドバッドの冒険  *LD版
製作国 日本
発売元 東映
評価 ★★☆☆☆

 ある老人が波打ち際に打ち上げられる。シンドバットとアリはこの老人を助けるが、老人から不思議な話を聞く(以下、その話)

 大昔のこと、とある南の島に星が落ちて、異様な爆発を起こす。
 島の形はすっかり変わり、光輝く石でいっぱいになる。そして、この宝石は、恐ろしい怪獣が守るようになった。

 老人から財宝の地図を手に入れた、シンドバッドとアリは、ハムディ船長の船・ボルダー号に乗り込んで南の島に向かう。
 旅の途中、王女のサミール姫が一向に加わる。
 サミール姫は、クッピーという名の鳩を連れていて、この鳩が王様に手紙を届けたり、振りかけると眠ってしまう不思議な粉を運んだりする。
題名 グリックの冒険  *VHS版
製作国 日本
発売元 バップ
評価 ★★☆☆☆

 前述した書籍のアニメ版。
 シマリスのグリックはアパートメントの一室で飼われている。
 グリックは伝書鳩のピッポーから北の森があることを教えられると、その森をふるさとだと思い込む。そして、グリックは、抑え難い衝動に突き動かされて、北の森を目指して旅立つ。
 ドブネズミのガンバとの出会いを経て、グリックはその後、たくさんのシマリスが暮らしている動物園に行き着く。
 グリックが動物園の暮らしになれて、北の森への執着心を失いかけた頃、のんのんというシマリスの女の子から、こんなことを言われる。「グリック、あなたはもう北の森へ行くつもりはないの? もうずうっと、ここで暮らすことにしたの?」。その言葉を聞いて、グリックはわれに返る。
 グリックは夜中、おりの中から抜け出して北の森に向けて走り出す。のんのんもグリックのあとを追って、おりの外に出て行く。
題名 小さなバイキングビッケ (第十八話「鳩とビッケとあざらしと」)
*VHSの第五巻に収録

製作国 日本
発売元 バンダイビジュアル
評価 ★★★☆☆

 主人公・ビッケは、女友達・チッチと協力しながら鳩の面倒を見ている。しかし、ビッケの父・ハルバルから、鳩の飼育を禁じられてしまう。
 チッチとともに思い悩むビッケ。
 が、ビッケは、はたと思いつくと、ハルバルに勝負を持ちかける。村で一番足の速いチューレと鳩をビッケの家まで競争させて、先に鳩が舞い戻ってきたら、飼育を許可してほしい、と。
 鳩が帰ってくるとは思っていないハルバルは、あきれながらビッケの提案を受け入れる。
 果たして、勝負の行方は……。
題名 新ドン・チャック物語 (「鳩がはこんだ友情」)  *DVDの第二十二巻に収録
製作国 日本
発売元 ICHI
評価 ★★★☆☆

 チャック、ララ、ダイゴの三人が石投げをして遊んでいると、一羽の鳩が飛んでくる。
 鳩の脚には手紙が結びつけてある。
「お願いです、僕を助けて、毎日が苦しくて死にそうなんだ。お願い、誰でもいいから助けて。キラキラ森のピート」
 ピートのことが心配になったチャックたちは、鳩に案内されながら、キラキラ森のピートの家に向かう。
 ピートは、教育熱心な親から、勉強をするように言いつけられていて、家から一歩も出られない生活を送っていた。ピートは、この思いを誰かに伝えるために、鳩に手紙を結んで放したのである。
 チャックたちは、ピートのことをふびんに思う。そして、どうにかして、ピートを家の外に連れ出そうとするが……。
題名 スプーンおばさん (第四十三話「名犬ブービィ」)
*DVD-BOX上巻に収録

製作国 日本
発売元 TCエンタテインメント
評価 ★★☆☆☆

 タカに襲われて、けがをした伝書鳩が、スプーンおばさんに保護される。鳩の名前はクックといい、トロロン村に住んでいるリッテのもとに手紙を運んでいる最中だという。
 恋する乙女・リッテは、恋人である羊飼いから、一週間に一度、手紙を受け取っている。クックが言うには、手紙が届かないと、リッテは悲しみのあまり、重い病気になってしまうかもしれない、とのことである。
 こうして、スプーンおばさんと、そのおばさんの愛犬・ブービィは、けがをしたクックを連れて、トロロン村に向かう。
題名 シンデレラ  *DVD版
製作国 日本
発売元 エー・アール・シー株式会社
評価 ★★★☆☆

 テレビ朝日系列で放送されたアニメ番組「グリム名作劇場」の中の一作。前後編からなる。
 このテレビアニメ版の『シンデレラ』は、不幸なシンデレラが王子と結ばれて幸せになるという、グリム童話の大枠のストーリーを踏まえているだけで、お話の作りは、ほぼオリジナルである。そのオリジナル性がいい具合に作用して、全編にたくさんのドバトが登場する。
 このドバトが画面に映る頻度が高くて、驚かされる。そして、ことあるごとにシンデレラを手助けする。その活躍ぶりは、八面六臂(はちめんろっぴ)の四文字をつけ足してもよいほどだ。
 ドバトがシンデレラに次ぐ重要なキャラクターとして描かれている、希有(けう)なアニメ。
題名 ロビンフッドの大冒険 (第十一話「略奪された四人の花嫁!?」)
*DVD-BOX1に収録

製作国 日本
発売元 アイ・シー・エフ
評価 ★☆☆☆☆

 イギリスに伝わるロビン・フッド伝説をもとにして作られたアニメーション作品。
 ときは十二世紀のイングランド――ノッチンガム州。領主のアルウィン男爵は権勢を欲しいままに領地に圧政を敷いていた。恐怖政治がまかり通る中、アルウィン男爵に逆らったハンティングドン家は取りつぶされ、主人公のロバート・ハンティングドン(通称――ロビン・フッド)とそのいとこらは、難を逃れるためにシャーウッドの森に逃げ込む。
 両親を殺され、家を焼き払われたロビン。
 彼は怒りを胸にアルウィン男爵に対して反攻ののろしを上げる……。

 第十一話の「略奪された四人の花嫁!?」に伝書鳩が登場する。ノッチンガム城に幽閉されているマリアン・ランカスターが、シャーウッドの森に宛てて、手紙を付した伝書鳩を放つ。
題名 鞍馬天狗 角兵衛獅子  *DVD版
製作国 日本
発売元 松竹ホームビデオ
評価 ★★☆☆☆

 上述した時代小説の映画版。
 おおむね、原作どおりに映像化しているが、筋運びがところどころで異なっていたり、暗闇のお兼(くやらみのおかね)が礫のお喜代(つぶてのおきよ)という人物に入れ代わっていたりする。
 本作の見どころは、美空ひばり演じる杉作。
 子役とは思えないほど、演技がうまい。滑舌がはっきりしているので、せりふが通る。
 一見の価値あり。
題名 新鞍馬天狗  *DVD版
製作国 日本
発売元 KADOKAWA 角川書店
評価 ★★☆☆☆

 前述した時代小説の映画版。市川雷蔵主演。
 物語の大筋は、『鞍馬天狗』の中の人気作『角兵衛獅子』(かくべえじし)に基づいていて、そこに脚色を加えている。
 大阪城代のもとに届けられた、伝書鳩の文によって、鞍馬天狗の正体が露見するシーンに、日本風の鳩舎が登場する。作りは木造なのだが、鳩舎の屋根が、塀の瓦のような意匠をしている。
 城内に設置されている鳩舎の感じが、よく出ている。
題名 八幡鳩九郎
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★★☆☆

 上述した時代小説の内容を換骨奪胎して作られた劇場版。
 もとになった小説は登場人物が多く、細かな事件もちょくちょく起こる。全体的にとりとめがなく、冗長である。しかし、この映画版では、登場人物が絞られ、主人公らが直面する事件も一本線にまとまっている。ただし、原作では、あえて紫公方の正体を意味深に伏せていたのに、本作では実につまらない人物に設定されている。
題名 八幡鳩九郎
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★★☆☆

 前述した時代小説をもとに作られたテレビドラマ版。昭和五十六年に時代劇スペシャルとして放映される。
 本作はおおむね、原作の前半部に従って映像化を試み、そこに筋運びや設定など、幾つかの変更点を加えている。
 目立つところでは、紫公方の正体。
 原作では素性が明かされないまま完結しているが、本ドラマでは、八幡鳩九郎の兄を紫公方に仕立てている。
題名 まぼろし城 (第五話「富士の使い鳩」)
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★☆☆☆

 まぼろし武士の一党によって、江戸から甲府にもたらされた使い鳩の文が書き換えられる。
「山絵図、月之介ならいざ知らず、余人が江戸に持ちかえるは危険多し、又飛騨の探索一日も猶予はならぬ。そのまゝ飛騨に向うが良い。土井利勝………」
 という内容が、
「山絵図の一巻、甲府勤番の伊賀のもの、堀田真三郎に託し江戸に急送のこと。月之介はそのまゝ飛騨へ………土井利勝」
 という中身に……。
 隠密武士・木暮月之介は、まぼろし武士のはかりごとを危惧して、文の内容に疑問を覚える。しかし、堀田真三郎は、自分の手柄を横取りしようとして、月之介がそう考えているものと誤解する。
題名 水戸黄門 第三部 (第十二話「消えた密書」)  *DVDの第四巻に収録
製作国 日本
発売元 日本ソフトサービス
評価 ★★★☆☆

 尾張領に入った、水戸のご老公一行。
 この地のある村では、村がお鷹場(おたかば)に指定されたことから、百姓の生活が脅かされていた。鷹狩りのたびに、侍衆がやってきて田畑を踏み荒らせば百姓の生活が成り立たない。そこで、一人の百姓が郡奉行(こおりぶぎょう)のもとを訪れて、お鷹場(おたかば)指定の取り消しを願い出る。しかし、郡奉行(こおりぶぎょう)は、一揆を起こそうとした、との難癖をつけて、この百姓を捕縛する。これに動揺した村人は、捕らえられた百姓のお解き放しを訴えるために、郡奉行(こおりぶぎょう)の陣屋に向けて駆け出す。しかし、水戸黄門は、この一団を押しとどめて、こう諭す。
「皆さんがそろって郡奉行(こおりぶぎょう)のところに押しかければ、徒党を組んで強訴したことになりますぞ。見す見す、相手に弾圧の口実を与えるようなもんじゃ」
 水戸黄門の主張は、もっともだったことから、一団は解散する。
 ところで、この光景を観察している一人の鳥刺しがいた。彼は郡奉行(こおりぶぎょう)の隠密で、伝書鳩を使って通信のやり取りをしている。
 鳥刺しに化けている隠密は、郡奉行所(こおりぶぎょうしょ)に出頭して、目にしたことを郡奉行(こおりぶぎょう)に話す。
 郡奉行(こおりぶぎょう)は悔しそうに、こう述べる。
「すると、旅の老人が百姓どもを説得して解散させたと申すのだな。余計なことを致すやつじゃ。百姓どもが押し寄せてくれば、徒党強訴の罪で主だったやつらを召し捕り、一気にらちを明けてしまうつもりであったものを」
 さて、水戸黄門一行は、今回、どのようにして、この郡奉行(こおりぶぎょう)を懲らしめるのか……。
題名 暴れん坊将軍Ⅱ (第十八話「飛脚鳩 ちゃんを訪ねて乱れ舞い」)
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★★☆☆

 小普請の旗本・福本左太夫が佐渡金山の御用金を強奪する。そして、福本は、目立たぬように数度にわたって御用金を溶かし、金の仏像をこしらえる。仏像の販売は、仏具問屋を営む奈良屋善兵衛が請け負う。
 仏像の受け渡し場所や仕入れの数は、福本と奈良屋が伝書鳩を介して連絡し合う。福本の屋敷で飼われている鳩と、奈良屋の屋敷で飼われている鳩を交換し、その鳩がおのおのの鳩舎に向けて飛んでいくよう、通信路を確立しているのだ。
題名 必殺仕事人Ⅳ (第二十五話「主水の上役転勤する」)
*DVDコレクションの第七十一巻に収録

製作国 日本
発売元 キングレコード
評価 ★★★☆☆

 浪人・宮部友右衛門(みやべともえもん)が、材木問屋北条屋の娘に、ほれられる。
 北条屋の主人・北条屋利兵衛(ほうじょうやりへい)がやってきて、娘と結婚してほしい、その代わり、北条屋の財産を全て差し上げる、うんぬん、と、宮部に言う。
 ただし、問題があった。
 宮部は既婚者で、おさわという妻がいたのだ。
 そこで、宮部と北条屋は謀って、おさわを暗殺する。道中、おさわが賊(ぞく)に襲われたように見せかけたのだ。 
 しかし、おさわは、いまわの際に気力を振り絞って、携行してきた一羽の鳩を空に放つ。
「夫にころされた このうらみを」
 との血文字で書いた布切れを付して……。
題名 必殺からくり人 (第十二話「鳩に豆鉄砲をどうぞ」)  *DVDの第四巻に収録
製作国 日本
発売元 キングレコード
評価 ★★☆☆☆

 強気をくじいて弱気を助ける、からくり人。その一員である夢屋時次郎が置き手紙を残して姿をくらます。
 からくり人の元締である花乃屋仇吉をはじめ、八尺の藤兵ヱ、仕掛の天平、花乃屋とんぼ、八寸のへろ松が時次郎の行方を追う。
 その後、時次郎が鉄砲鍛冶に頼んで狙撃銃を作らせていたことや、時次郎が懇意にしていた女郎・しぐれが、時次郎のかつての婚約者・アキとそっくりであることが判明する。そして、しぐれは以前に、蘭学者の小関三英の執刀によって命を助けられていた。
 以上の事実から、時次郎の狙いが明らかになる。
 いわゆる、蛮社の獄と呼ばれている、蘭学者に対する弾圧事件によって、渡辺崋山、高野長英などが捕らえられ、小関三英が自決に追い込まれていた。このことに憤った時次郎が、事件の首謀者・鳥居耀蔵を暗殺しようとしていたのだ。
 ちなみに、時次郎が姿をくらませたのは、単独犯を貫きたかったからである。仲間が芋づる式にお縄にならないようにしたのだ。

 劇中、狙撃しようと待ち構えている時次郎が、五重塔にすみ着いている鳩とたわむれるシーンがある。しかし、この鳩が、時次郎の運命を大きく変えることになる……。
  題名 雲霧仁左衛門 (第五話「使い鳩」)  *DVDボックス版
製作国 日本
発売元 松竹
評価 ★★☆☆☆

 希代の泥棒・雲霧仁左衛門の率いる雲霧一味と、これを取り締まろうとする火付盗賊改方との息詰まる攻防を描いたテレビドラマ(平成七年放送)
 本作は、池波正太郎の原作小説をもとに、ストーリーや人物の役割などを大幅に改編している。

 第五話「使い鳩」で、火付盗賊改方の密偵・お京が、因果小僧六之助(雲霧一味)の所在を知らせるために、使い鳩を放とうとするシーンがある(ドラマオリジナル。原作にはない場面)
     
  題名 逃亡者おりん  *DVDボックス版
製作国 日本
発売元 SEGA
評価 ★★★☆☆

 「手鎖」(てぐさり)と称する暗殺組織の一員である、おりん。この「手鎖」は、幕府に仇(あだ)なす者どもを排除するための一団である。しかし、「手鎖」を率いる植村道悦(うえむらどうえつ)こそが、実は幕府に仇(あだ)なす張本人であった。
 さて、おりんは、この植村に強姦(ごうかん)されて赤子を産んでいる。そして、この赤子は誕生後すぐに死んだものとされていた。しかし、その後、赤子が生きていたことを知ったおりんは、「手鎖」を足抜けする。おりんは、成長したわが子に会うために旅に出る。
 一方、「手鎖」は、このおりんの勝手な行動を許さなかった。
 旅の先々で、植村の放った刺客がおりんに襲いかかる。
 果たして、おりんは、生きて子供に会うことができるのだろうか……。

 劇中に、使い鳩が登場する。徳川幕府第九代の将軍・家重が鳩をめでている。
 物語の各所に、この鳩が出てきて、通信文のやり取りがされる。
 登場話数は、以下のとおり。
 第一話(鳩の鳴き声のみ)、第二話、第四話、第九話、第十三話、第十四話、第十八話、第十九話、第二十話。
     
題名 太陽にほえろ! (第百三十話「鳩が呼んでいる」)
*テキサス刑事編ⅠのDVDボックスに収録

製作国 日本
発売元 バップ
評価 ★★★☆☆

 愛鳩家の青年が警備員殺しの犯人に間違えられる回。
 物語の最後、青年の飼っている伝書鳩が犯人の居場所を突き止める。
 昭和五十年三月号の『愛鳩の友』によると、レース鳩のことを世間にアピールするため、日本鳩レース協会の広報がこのドラマの制作に協力しているという。

題名 太陽にほえろ! (第五百七十九話「鳩の舞う街」)
*1983DVD-BOXに収録

製作国 日本
発売元 バップ
評価 ★★★☆☆

 東都大学医学部研究所に保管されていたウイルスが何者かによって盗み出される。ウイルスの詳細は不明だが、とても危険なものであるらしい。さっそく、警視庁七曲警察署の刑事たちが目撃情報などをもとに捜査をはじめる。
 そんな折、ラガーこと竹本淳二刑事は、歩道橋の上でうずくまっている一人の少年を見かける。
 小学五年生の栗原 充少年である。
 ラガーが声をかけると、うずくまって気落ちしていた理由を、充が話す。長野県松本(放鳩地)の二百キロレースに愛鳩のフェニックスを出場させたが、いまだに帰ってこないという。
 充はラガーに、フェニックスを探してくれ、と懇願する。その哀れな姿に心を動かされたラガーは、フェニックスの捜索を約束する。
 その後、ウイルス盗難事件が重大な局面を迎える。犯人がウイルスをばらまく、と脅してきたのだ。
 犯人は、鳩にウイルスを付着させて、町にばらまくつもりらしい。
 ことは一刻を争う。めぼしをつけた容疑者宅に七曲警察署の刑事たちが急行する。そして、鳩かごを手にした犯人と出くわし、その場で身柄を取り押さえる。しかし、そのとき、一羽だけ、鳩を取り逃がしてしまう。その鳩こそ、くだんの迷い鳩・フェニックスであった。
 ラガーは充の自宅に急ぎ、フェニックスの帰舎を待ち受ける。そして、羽ばたくフェニックスの姿を目に捉えると、拳銃を構える。
 殺さないで、と充が絶叫する。しかし、危険なウイルスを帯びている鳩である。野放しにはできない。ラガーは涙を流しながら、拳銃の狙いを定める……。
題名 愛しの刑事 (第七話「美談!警視総監賞を辞退した男」)  *DVDボックス版
製作国 日本
発売元 ポニーキャニオン
評価 ★★★☆☆

 「りょう」という名の伝書鳩を飼っている北川少年。
 彼は現在、母親と、その母親と内縁関係にある山田の三人で生活を営んでいる(北川少年の実父は、二年前に他界している)
 さて、ある日のこと、この北川少年が悪漢にさらわれる。
 実は、北川少年と一緒に暮らしている山田は、過去に強盗事件を起こしていた。そして、ともに犯行に及んだ男に山田は狙われていた。山田はローン会社から奪った一千万円を今も秘匿していて、いまだに分け前を男に渡していなかったのである。
 男は、山田を脅す材料として、北川少年を誘拐したのだった。
 一方、誘拐された北川少年は、助けを呼ぶために伝書鳩を空に放つ。
 鳩の脚には信書管がつけられていて、今いる場所の地図が入っている。
題名 相棒 (Season6 第八話「正義の翼」)  *DVDの第五巻に収録
製作国 日本
発売元 ワーナー・ホーム・ビデオ
評価 ★★★★☆

 大東亜戦争中に活躍した「中野五三八号」の系統鳩が登場する。この「中野五三八号」の系統は南部系に似た特徴があるという。
 「中野五三八号」はドラマの制作者がこしらえた架空の軍用鳩だが、中陸系を踏まえた設定には現実味がある。日本鳩界史に精通している人物が撮影に協力しているのかもしれない。

  題名 獣医ドリトル  (第五話「鳩が結ぶ50年越しの夫婦愛」)  *DVDボックス版
製作国 日本
発売元 TBS
評価 ★★★☆☆

 前述した漫画のテレビドラマ版。
 鳥取獣医師が、けがをしたレース鳩の治療に当たる。自宅の庭に迷い込んできたという、この鳩を、ある老婦人が鳥取動物病院に持ち込んだのだ。「レース鳩は足環で飼い主も分かるから治療が済み次第、問い合わせてみよう」と、鳥取が話すと、老婦人がおかしなことを言う。「ああ、よかった。きっと飼い主も心配しているわ。実は私も待ってるんですよ、主人の鳩が帰ってくるのを。五十年間ずーっと」
 その後、老婦人の息子が鳥取動物病院にやってくるが、こんなことをこぼす。母が自宅の庭でドバトに餌づけをしていて近所迷惑になっている、と。
 実は、老婦人が鳩にこだわっているのには理由があった。
 新聞記者だった、老婦人の夫は、取材で訪れた山中で遭難し、命を落としている。そして、その際に、携行していた伝書鳩が行方不明になっていた。その伝書鳩がいつか通信文を携えて帰ってくるのではないか、と老婦人は思っていたのである。

   
題名 ゴースト・ドッグ  *DVD版
製作国 アメリカ
発売元 日本ビクター
評価 ★★☆☆☆

 主人公の殺し屋が愛鳩家なので、随所に伝書鳩が登場する。赤旗で追い立てながら、鳩に舎外運動をさせている場面が個人的に気に入っている。
題名 劇場版 東京スカイツリー 世界一のひみつ  *DVD版
製作国 日本
発売元 角川書店
評価 ★★☆☆☆

 東京スカイツリーの建設現場の様子を記録したドキュメンタリー映画。
 本作のマスコットキャラクターである二羽の鳩――クルックー(雄)とジョンピー(雌)が、最先端の建設技術で建てられている東京スカイツリーを解説する。

 東京が武蔵国と呼ばれていた頃からの名誉ある仕事「守り鳩」。守り鳩は、東京の出来事を見届ける役目を負っている。
 東京スカイツリーに降り立ったクルックーとジョンピーは、東京スカイツリーを建てた人々の物語を語りはじめる。
題名 仮面の忍者 赤影(全四巻)  *DVD版
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★☆☆☆

 四部構成(金目教篇、卍党篇、根来篇、魔風篇)の特撮テレビシリーズ。全五十二話。
 飛騨の里の影一族(赤影、白影、青影など)が、奇怪な宗教団体、世界制覇を狙う秘密結社、邪悪な忍者軍団と戦う。
 劇中に、文(ふみ)を運ぶ使い鳩が登場し、活躍する。
 第五話「謎の独楽忍者」では、竹中半兵衛の放った鳩が、赤影、白影、青影のもとに飛んでくる。堺から鉄砲を運ぶ途中、輸送隊が何者かに襲われたため二回目に出る輸送隊を護衛して欲しい、との依頼である。この役目は白影が引き受けることとなり、その旨を記した文(ふみ)を鳩に付して空に放つ。しかし、何者かによってその鳩が打ち落とされる。青影が現場に向かうと、そこには金目教の教祖・甲賀幻妖斎(こうがげんようさい)がいた……。
 第七話「妖術一つ目」では、木下藤吉郎(豊臣秀吉)が金目教にさらわれ、竹中半兵衛が鳩を放って、そのことを赤影らに知らせる。こうして、赤影、白影、青影は、藤吉郎が捕らわれている地獄岳に向かう。
 第三十七話「怪忍獣ジャコー」では、織田信長の入京に当たり、白影が鳩を放って、その道案内を伊賀忍者・ましらの甚内に依頼する。京の都は、信長に謀反を起こした夕里弾正(ゆうざとだんじょう)が目を光らせていて、通常の経路では進入不可能だったからだ。しかし、白影の放った鳩は、根来忍軍の十六夜月心(いざよいげっしん)に打ち落とされ、ましらの甚内の手に渡る前に文(ふみ)の内容を読まれてしまう。
 第四十話「魔風忍者の来襲」では、赤影、白影、青影が、飛騨の影部落に向けて、文(ふみ)を付した鳩を放ち、元気である旨を故郷に伝える。
題名 仮面ライダー(全十六巻)  *DVD版
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★★☆☆


 第七十四話で「少年仮面ライダー隊」が結成される。少年隊員たちは異変を察知すると、伝書鳩を放って本部との連絡に当たる。第七十四話以降、そうした場面がところどころに出てくるので、仮面ライダーファンならずとも愛鳩家も楽しめる。

*注・伝書鳩がしっかりと画面に映り、通信の用を果たしている様子が見られるのは、第七十四話、第七十五話、第七十七話、第七十九話、第八十四話、第八十九話、第九十一話の計七話。
題名 変身忍者 嵐(全八巻)  *DVD版
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★☆☆☆

 血車魔神斎(ちぐるままじんさい)率いる血車党(ちぐるまとう)と、悪魔道人(あくまどうじん)率いる西洋妖怪軍団が日本征服をもくろむ。
 変身忍者 嵐(へんしんにんじゃあらし)は、仲間の伊賀忍者とともに、この悪の組織と戦う。

 劇中に、文(ふみ)を運ぶ使い鳩が登場し、活躍する。
 第二十二話「恐怖怪談!透明人間対ナゾの剣士」では、伊賀忍者の四天(してん)が、西洋怪人・ミイラ男の動向をつかむ。その情報は使い鳩によって、江戸の伊賀屋敷にもたらされる。
 第二十五話「恐怖怪談!魔女ゴルゴン呪いの城!!」では、少年忍者ツムジが「目下のところ異状なし」との報告を使い鳩に託して空に放つ。しかし、魔女ゴルゴンから冷気を浴びせられて、使い鳩は凍りついてしまう。
 第二十六話「死ぬか嵐!恐怖のスフィンクス!!」では、伊賀忍者・名張のタツマキ(なばりのたつまき)が伊賀の里に向けて使い鳩を放つ。伊賀忍者の始祖・百地三太夫(ももちさんだゆう)の孫娘――千明(ちあき)は、これにより、タツマキが国境まで来ていることを知る。
 第二十七話「妖怪!毒ぐもタランチュラ!!」では、伊賀忍者・忍兵衛(にんべえ)が、けがをしている、千明の使い鳩を保護し、その脚に結びつけられている文を目にする。忍兵衛は、この文の内容から、伊賀忍者の頭領・百地源太夫(ももちげんだゆう)が偽物(替え玉)であることを知る。
 第三十五話「消えた嵐?妖怪集団が狙う!!」では、変身忍者 嵐が、ドラキュラ、狼男(おおかみおとこ)、フランケンの待ち伏せによって、とらわれの身となり、彼らから袋だたきにされる。
 謎の剣士――月ノ輪(つきのわ)、タツマキ、ツムジの助力を得て、嵐は命からがら逃げ出すが、西洋妖怪たちがその後を追う。
 この危機に対し、タツマキは、使い鳩を放って、伊賀忍者に招集をかける。
題名 キカイダー01 (第三十四話「呪いの大時計 ビジンダー危機」)
*DVDの第三巻に収録

製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★☆☆☆

 シャドウ殺人部隊のロボット――キチガイバトが登場する回。
 キチガイバトから発せられるセコンドサイクル電波を浴びた人間が暴徒と化し、街の至るところで乱闘が起こる。
 セコンドサイクル電波が人間の血液に作用して、凶暴な闘争本能が呼び起こされるのだ。
 イチローは、セコンドサイクル電波を発しているキチガイバトが、公園の大時計に化けているのを見破る。
「ゼロワンチョップ!」
 イチローの手刀打ちがキチガイバトに命中する。
 この攻撃を受けたキチガイバトが大時計の擬態を解く。
「俺の名はキチガイバト」
「とうとう正体を現したな、キチガイバト。セコンドサイクル電波を出していたのがお前だって分かっていたんだ。来いっ!」
「クークルー。よくぞ見破った01。だが、俺にはまだやることがある。クークルー!」
 突如、爆発が起こり、煙幕が張られる。
「しまった……」
 キチガイバトを取り逃がしたイチローがつぶやく。
 果たして、イチローことキカイダー01は、キチガイバトを倒せるのだろうか……。

題名 イナズマンF (第十五話「大洪水作戦!!」) *DVDの第二巻に収録
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★☆☆☆

 イナズマンに倒されたデスパー怪人――ドリルデスパー。しかし、デスパー軍団は、ドリルデスパーを改造して、パワーマシンを腹部に組み込む。
 このパワーマシンを用いると、ドリルデスパーは、ドリル破壊光線を発射できる。ドリル破壊光線の威力はすさまじく、ダムを決壊させることも可能だ。
 ドリルデスパーらは、これをもくろんで、奥沢ダムに現れ、ここの主任技師らに襲いかかる。しかし、ちょうどそのとき、主任技師の息子――ケンジ少年がやってきて、父親がドリルデスパーらに暴行されている光景を目にする。そして、不意に、ドリルデスパーと主任技師がもみ合ったときに、ドリルデスパーの腹部からパワーマシンが外れて、ケンジ少年の足元に転がる。すかさず、ケンジ少年は、パワーマシンを拾って、一目散に駆け出す。やがて、自鳩舎まで来ると、愛鳩のポピーをつかんで、空に放つ。ポピーの脚に、「化物が奥沢ダムに現れた。助けて下さい」との手紙を付して……。
題名 忍者キャプター(全四巻)  *DVD版
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★★☆☆

 日本征服をたくらむ、風魔烈風(ふうまれっぷう)とその忍者軍団に対し、天堂無人(てんどうむじん)配下の七人の忍び――忍者キャプターが立ち上がる。
 劇中に、忍鳩(しのびばと)と呼ばれる白い伝書鳩――ポッポが登場する。風忍キャプター6(かぜにんキャプターシックス)の泉 敬太(いずみけいた)の愛鳩である。
 第十五話「まんじ谷から鬼が来た!」では、さらわれた人質の居場所を知らせるために、敬太がポッポを放つ。
 第二十一話「キャンプ場は風魔の墓場の決戦!!」では、敬太がキャンプ場から、以下の手紙をポッポに付して放つ。「早いもので、キャンプに来て、もう一週間になりました。毎日毎日、のんびり楽しく、すごく元気です。でも、山の生活には少し飽きはじめてきたところ、昨日、面白いうわさを聞きました。何でも、この山奥に、忍者の墓場と呼ばれる谷があるそうです。今日、そこを探検する予定です。また、手紙を飛ばします」
 第二十七話「新しい敵! 甲賀忍者団!」では、忍将軍(しのびしょうぐん)こと暗闇忍堂(くらやみにんどう)の招集により、日本各地に散らばる忍者の代表が小田原城に集まる。この席において、暗闇忍堂は、日本征服の野望を明らかにして、その協力を要請する。しかし、天堂無人をはじめとする天堂流、紀州流、武田流がこれに反対したことから、暗闇忍堂の怒りを買って、彼ら良識派の忍者は人質にされてしまう。
 一方、主人の帰りが遅いことを心配した、雷忍キャプター1(らいにんキャプターワン)の袋 三郎兵衛(ふくろさぶろうべえ)と、土忍キャプター4(つちにんキャプターフォー)の黒川 団(くろかわだん)が小田原城に潜入する。しかし、暗闇忍堂の仕掛けた、わなにかかって、団が倒れ、三郎兵衛は命からがら脱出する。困った三郎兵衛は、ポッポを放って、仲間に救援を求める。
 第三十四話「電話機から悪魔の手が出る!」では、甲賀イタチ丸に捕らえられた、金忍キャプター5(かねにんキャプターファイブ)の大山 昇(おおやまのぼる)が、携行していたポッポを取り上げられる。
 甲賀イタチ丸は、偽手紙をポッポに付して放ち、忍者キャプターをおびき出そうとする。
題名 スカイハイ (第六死「pigeon house」)  *DVDの第三巻に収録
製作国 
日本
発売元 
アミューズソフトエンタテインメント
評価 
★★☆☆☆


 同名の漫画をドラマ化した作品。しかし、出来映えは芳しくない。鳩の世話係という設定になっている守衛が鳩舎に入ると、鳩がおびえて片隅に集まってしまうし、舎外運動をさせている鳩が舞い戻ってくるのは当たり前のことなのに、彼はその光景に感心さえしている。とてもじゃないが、守衛が鳩の世話係であるとは信じ難い。もう少し鳩の生態を勉強してから撮影に入るべきだった。
 
題名 秘密戦隊ゴレンジャー *DVD版
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★☆☆☆

 スーパー戦隊シリーズの第一作目。
 世界征服をたくらむ黒十字軍と、国際秘密防衛機構イーグルに属するゴレンジャーとの戦いを描く。
 第一話「真赤な太陽!無敵ゴレンジャー」の序盤で、黒十字軍がイーグル日本ブロックの各支部を奇襲し、多くの部員が殺害される。ミドレンジャーの明日香健二(あすかけんじ)の命も危うかったが、彼は偶然、イーグル関西支部の屋上にある鳩小屋で、鳩の世話をしていたために難を逃れる。
 第三話「大逆襲!黄色いつむじ風」で、黒十字軍の怪人・青銅仮面が新型爆弾を開発する。その威力はすさまじく、地底五百メートルにまで被害が及ぶという。
 国際秘密防衛機構イーグルは、黒十字軍の研究所に003というスパイを送り込んでいた。003は、研究所の見取り図と、金庫の写真が写っているマイクロフィルムを、伝書鳩に託してイーグルに送り届ける。
題名 バトルフィーバーJ (第十八話「鳩よ悪の巣へ急げ」)  *DVDの第二巻に収録
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★☆☆☆


 「鳩が一定の場所に帰るのは磁力コンパスを帯びたバクテリアを身につけているからだといわれる」とのナレーションが作中に流れる。そして、エゴス(悪の組織)は「マグネット怪人」という敵を送り込んでくる。
 この話に登場する伝書鳩・流星号が空を飛んでいると、マグネット怪人の磁力によって、その飛翔を妨害されるシーンがあるのでは、と期待しつつ鑑賞していたが、不思議とそういった演出がなかった。設定だけあっても、それを生かせなければ意味がない。
題名 超電子バイオマン *DVD版
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★☆☆☆

 スーパー戦隊シリーズの第八作目。
 レッドワンの郷 史朗(ごうしろう)が動物と会話できる能力を有していて、鳩、犬、猫などの協力を得て戦う。
 新帝国ギアのジューノイド――メッツラーの攻撃によって、「鳩連絡員001号」が殺されてしまう第四話が印象に残る。
 「鳩連絡員001号」が第三話と第四話に、「鳩連絡員002号」が第十話と第三十五話に登場する。
題名 鳥人戦隊ジェットマン (第三十五話「鳩がくれた戦う勇気」)  *DVDの第四巻に収録
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★★☆☆

 聖京医科大学病院に入院している少女・牧村恵理(まきむらえり)は、パルという名の白鳩を飼っている。
 恵理は、このパルに通信文を持たせて、ジェットマンと連絡を取る。町をおびやかしている、バイラムの次元獣・毒ガスネズミをやっつけてほしい、と依頼するためだ。
 さて、恵理は、心臓病を患っていて、手術を受けなければならない。しかし、手術を受ける勇気が、どうしても出ない。いまだに、手術を拒否している。
 ブルースワローの早坂アコが、手術を受けろ、と説き伏せようとするが、
「手術なんて絶対嫌!」
 と、恵理は言って、涙を流す。
 そうして、感情を高ぶらせた恵理は、車いすに乗ったまま、逃げ出してしまう。
 そんなとき、恵理は、毒ガスネズミと出くわし、あわやというところをアコに助けられる。
 しかし、バイラムの攻撃は止まらない。
 今度は、裏次元伯爵ラディゲが襲いかかってきて、恵理の命を狙う。
 ここで、恵理の危険を察したパルが助けに入る。
 パルは、たくさんのドバトを引き連れて、ラディゲを一斉攻撃したのだ。
 崖下の湖に突き落とされたラディゲが、
「おのれ~、よくも邪魔してくれたな」
 と、言って、悔しがる。
 その後、毒ガスネズミが巨大化する。
 ジェットマンはジェットマシンでもって、これを撃退する。
 勇敢なパルの姿に心を動かされた恵理は、手術を受けることを決意する。
題名 動物戦隊ジュウオウジャー (第三十七話「天空の王者」)  *DVDの第十巻に収録
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★☆☆☆☆

 動物彫刻を専門とする、森 真理夫(もりまりお)が、鳩が入った鳥かごを持って、みんなの前に現れる。
 ジュウオウエレファントのタスクが、いすから立ち上がって言う。
「鳩?」
 そして、ジュウオウライオンのレオが、
「これ、おっさんが作ったのか? やべえ、本物にしか見えない」
 と、驚きの声を上げる。
 しかし、ジュウオウイーグルの風切大和(かざぎりやまと)が、
「いや、本物だよ、どう見ても」
 と、言って、レオの勘違いを正す。
「今度の彫刻のモデルですか?」
 ジュウオウシャークのセラが、森に聞く。
「いや、いきなり、窓から入ってきたんだよ。僕のなりきりが上手すぎて、仲間と間違えちゃったのかなあ……クルックー、クルックー」
 全身、鳩の仮装をしている森が、とぼけた様子で、鳩の鳴き声をまねる。
 そんなとき、大和があることに気づく。
「うん? これ、手紙?」
 鳩の脚に通信文がついている。
 中を開けてみると、ジューランド文字で記された、ラリーからのものだった。
題名 ウルトラマンA (第十八話「鳩を返せ!」)  *DVDの第五巻に収録
製作国 日本
発売元 ビクター
評価 ★★★☆☆


 第十八話「鳩を返せ!」に登場する怪獣は「大鳩超獣ブラックピジョン」。国内レースで三回も優勝したというレース鳩・小次郎が、ヤプール(敵の宇宙人)によって巨大化させられた鳩の化け物である。
 余談だが、ウルトラマンエース全五十二話の中で、本作は十四・三パーセントの最低視聴率をマークしている。
題名 緊急指令10―4・10―10 (第二十五話「死を運ぶ鳩」)  *DVD-BOX2に収録
製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★★☆☆

 香山ユリは柴田敏夫と婚約している。しかし、愛鳩家の大野克彦が香山ユリに横恋慕していて、何かと、ちょっかいを出す。
 そんなある日のこと、飛んできた伝書鳩に手を触れた柴田敏夫がドロドロに溶けて死んでしまう。
 城南大学医学部教授で、電波特捜隊(毛利チーム)の設立者である毛利春彦は、この事件を細菌兵器による殺人と推定する。
 戦中、日本軍は、秘密研究所で細菌ミクロピラニアを開発している。そして、その研究に、大野克彦の父・大野一郎が関わっている。
 香山ユリにほれている大野克彦は、父・大野一郎から細菌兵器(ミクロピラニア)を手に入れて、恋仇(こいがたき)である柴田敏夫を殺害したのではないか? 毛利春彦は、そう疑いを持つ。しかし、毛利春彦の意を受けた電波特捜隊の、岩城哲夫と花形一平が大野克彦を詰問しても、大野克彦は容疑を全面否定する。
 岩城哲夫が事件現場に落ちていた鳩笛を突き出しても、
「冗談じゃねえよ! それは半月ほど前に盗まれたんだ!」
 と、大野克彦は言って、取り合わない。
 この一悶着(ひともんちゃく)の後、大野克彦は自らの潔白を証明するために、現在、入院中の父親(大野一郎)のもとを訪ねて事情を聞く。 
 そして、大野克彦は、電波特捜隊に電話して、確かに大野一郎は細菌ミクロピラニアを所持していたが、最近それが盗み出されてしまった、と述べる。
 大野克彦は繰り返し、
「うそじゃない!」
 と、言って、自分の鳩と鳩笛が盗まれたことも合わせて主張するが……。
題名 ロボット8ちゃん (第十話「きょうも明るくアッハッハ」)  *DVDボックス版
製作国 日本
発売元 東映
評価 ★★☆☆☆

 飼い鳩のジロウが行方不明になって、笑うことを忘れてしまった少年・トオル。
 トオルは、交通事故で父親を亡くしていて、母親はそのために、毎日、お勤めに出ている。
 一人ぼっちのトオルにとって、鳩のジロウは大切な友達だったのだ。
 そのトオルの姿を見かねた8ちゃんが、トオルをキャッチボールなどに誘って元気づけようとする。しかし、トオルは、一切、笑わない。
 そんなある日のこと、ジロウが突然、帰ってくる。
 喜ぶトオル。
 しかし、二人の悪人がやってきて、鳩をよこせ、と言ってくる。実は、この二人の悪人は、盗み出した宝石をジロウにつけて、今まさに、その盗品を回収しようとしていたのだ。
 これに対し、8ちゃんとその仲間が力を合わせて悪人を追い詰める。そして、二人の悪人を警察に引き渡す。
 こうして、全てがうまくいったとき、はじめてトオルがニコッと笑う。
 8ちゃんは大喜びする。
題名 鉄腕アトム (第百三十四話「脱出作戦の巻」)  *DVDボックス版
製作国 日本
発売元 コロムビアミュージックエンタテインメント
評価 ★★★☆☆

 エリート博士は、宇宙開発に不可欠な高速ロケットエンジンを発明し、この技術を世界に発表して人類の幸福に貢献しようとする。しかし、エリート博士の所属するダーク国がこれに反対する。高速ロケットエンジンの技術を独占して戦争に役立てようと考えたのだ。そのため、エリート博士は、その娘・スピカとともに幽閉され、不自由な生活を送る。しかし、隙を見て、エリート博士とスピカが伝書鳩を空に放つ。鳩には、お茶の水博士宛ての救助要請の手紙が付してある。
 そうして、手紙を受け取ったお茶の水博士は、エリート博士とスピカの奪還をアトムに命じる。
題名 ジェッターマルス (第三話「マルスなぜ泣く」)  *DVDボックス版
製作国 日本
発売元 エイベックス・マーケティング
評価 ★★★☆☆

 科学省の復興パーティーにおいて、ジェッターマルスと、プロファイターのマッドマスクがロボット同士の模範格闘技を披露する。しかし、その試合中、ジェッターマルスがマッドマスクを投げ飛ばした際に、伝書鳩のクルが巻き込まれて、けがをする。これを見たジェッターマルスは、戦闘意欲を失ってしまう。
「私は戦う気のない者とは戦えません。今日のところは私の負けを認めます」
 マッドマスクが野々原首相にそう言って、この勝負はお預けになる。
 その後、マッドマスクから再戦の申し込みがある。しかし、ジェッターマルスの生みの親である山之上博士が、
「その必要はない」
 と、断ったことから事態が急変する。
 これに腹を立てたマッドマスクが、クルをさらって、クルを返して欲しければ私と試合をしろ、とジェッターマルスに迫ったのだ。
 こうして、クルを巡って、ジェッターマルスとマッドマスクの戦いが再びおこなわれる。しかし、この戦いの最中、突如、人造湖からマグマが噴き出し、町が全滅しそうになる。この危険を知らせるために、伝書鳩のクルが町に向かうが……。
題名 ひみつのアッコちゃん (第十九話「受難!夏バテペンギン」)  *コンパクトBOX1(DVDボックス)に収録
製作国 日本
発売元 TCエンタテインメント
評価 ★★☆☆☆

 漫画『ひみつのアッコちゃん』を原作とする、アニメ版の第三作。
 夏の暑いある日、アッコがお出かけをするので、ペンギンの一平が大将のもとに預けられる。
 一平は、夏バテとホームシックで元気がない。
 大将は、一平の夏バテを解消してやろうと、夏バテ解消料理(激辛スパゲティ)を作ったり、銭湯に一平を連れていったりする。しかし、どれも逆効果で、一平は散々な目に遭う。
 そんなとき、アッコは、携帯電話を使って、大将の家に電話する。
 電話口に出た少将に様子を尋ねると、
「夏バテには熱いお風呂に入るのが一番でしゅ」
 との理由で、一平がお風呂に行っていることをアッコは知る。
 たちまち、アッコは、
「何よう、熱いお風呂なんかに入れちゃったら一平ゆだっちゃうじゃない。これはほっといたら大変だわ」
 と、思い、魔法のコンパクトを使って伝書鳩に変身する。そして、翼をはためかせて、一平のもとを目指すが……。
題名 まいっちんぐマチコ先生 (第七十話「伝書バト救助隊」)  *DVDボックス版
製作国 日本
発売元 バンダイビジュアル
評価 ★★☆☆☆


 空中に浮かんでいる風船を伝書鳩がくちばしで挟んで飼い主のもとに持ってくる場面がある。
 猿や犬ならいざ知らず、鳩にそんな芸は仕込めない。また、見栄えがいいという演出意図が先行したのか、白っぽい鳩を登場させている。これにも違和感を覚える。白鳩は伝書鳩として使い物にならない、というのが鳩界一般の常識だからだ。
題名 忍者ハットリくん (第三百六十六話「とんだはとレースの巻」)
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★★☆☆

 少年鳩レース大会に、小学校を代表して、ケン一とケムマキの二人が参加する。ケン一は「ひかり号」、ケムマキは「かみなり号」をそれぞれ出場させる。しかし、ケムマキが邪魔立てして、気球で鳩の集団を脅かしたり、網を張って鳩を捕らえたりする。ハットリ、シンゾウ、獅子丸がケムマキを懲らしめて妨害工作を排除するが、野犬の群れに囲まれて窮地に立たされる。
題名 パーマン (第四百三話「消えたレース鳩」)  *DVDの第三十四巻に収録
製作国 日本
発売元 TCエンタテインメント
評価 ★★★☆☆

 生き物をかわいがる人に憧れている、という、みっちゃん。
 彼女は、カバ夫がレース鳩を飼っていることを知って、
「すごいじゃない、カバ夫さん。鳥を飼う人は優しいのよね。あたし、大好き」
 と、言って喜ぶ。
 しかし、この様子を目にしたミツ夫は面白くない。見えを張って、自分も鳩を飼っている、と言ってしまう。
「本当? 知らなかったわ。ねえ、見せて」
 と、ミツ夫は、みっちゃんから、せがまれる。
 もちろん、うそをついているので、すぐには見せられない。
「後でね……」
 と、ミツ夫は言って、その場をごまかす。
 ミツ夫は家に帰ると、
「鳩、買ってよ」
 と、母親に泣きつく。
 しかし、母親は、
「犬も猫も金魚も、みんなママが世話したんですよ」
 と、言って、ミツ夫の頼みを聞き入れない。
 さて、困ったミツ夫は、神社に行く。
 ひもをつけたバケツを棒で立てかけ、その下に餌をまいて、お堂のドバトを捕まえようというのだ。
題名 オバケのQ太郎 (第十三話「Qちゃんのクークークー?」)  *VHSの第二巻に収録
製作国 日本
発売元 小学館
評価 ★★★☆☆

 キザオが飼っている伝書鳩をうらやましく思った正太が、オバケのQ太郎を伝書鳩に仕立てて、よっちゃん、ゴジラ、担任の先生に手紙を出す。ゴジラ宛ての手紙は「神成さんの家の落書き 君が書いたの 誰も知らないと思ってたら大間違い いいかげんにしないと言いつけちゃうぞ」。よっちゃん宛ての手紙は「あんな難しい宿題を威張り豚のやつ出すなんてあんまりだね 後で行くから答え教えてね」。先生宛ての手紙は「焼きいもはおいしかったですか 僕は優しい先生を尊敬しています」。しかし、Q太郎が、渡す相手を間違えて手紙を配ってしまったから、さあ大変。先生宛ての手紙を受け取って上機嫌になったゴジラはいいとしても、ゴジラ宛ての手紙を受け取ったよっちゃんと、よっちゃん宛ての手紙を受け取った先生は、手紙の文面に面食らい、色をなして正太に抗議する。
題名 ウルトラB (第五十九話「とんだハトポッポ」)  *DVDボックスに収録
製作国 日本
発売元 TCエンタテインメント
評価 ★★★☆☆

 戸坂タテオの愛鳩・タテオ号が鳩レースに参加する。
 このレース前、ウルトラBがタテオ号に興味を持って手で触れようとするが、赤ん坊は乱暴だから、という理由で、タテオに拒否される。
 ウルトラBは泣きじゃくるが、その後、奈良野ダイブツの家(お寺)のドバトをレース会場で見かけて仲良くなる。そして、放鳩されたレース鳩の一群に混じってドバトに飛ぶように仕向けるが、当のドバトは全くその気がない。
 ウルトラBは、あの手この手を尽くして、ドバトを鳩レースに参加させようとするが……。
題名 エスパー魔美 (第八十一話「想い出を運ぶ鳩」)  *DVDの第十四巻に収録
製作国 日本
発売元 フロンティアワークス
評価 ★★★☆☆

 前述した漫画を忠実にアニメ化している。しかし、かえってそれがこの作品の欠点になっている。
 藤子不二雄の原作は左翼じみていて、友一という少年がB29の乗員を土蔵の奥にかくまったことを物語の肝にしている。
 B29の搭乗員といったら、非戦闘員を容赦なく殺戮し、町を焼き払った戦争犯罪者である。当時の住民感情を踏まえると、これをかくまうなど、あり得ない。また、藤子は、この不自然なお話の中に、日本軍の残虐行為や、すさんだ民情などを描いている。
 米航空隊の青年を善良に描く一方で、自国の人間をこのように表現するとは、理解に苦しむ。
題名 キテレツ大百科 (第百七十四話「鳥心器でドッキリ! 鳩のハートに大接近」)
*DVDの第二十二巻に収録

製作国 日本
発売元 ファイブエース
評価 ★★★☆☆

 ある日の朝、耳障りな音に安眠を妨害されたキテレツが目を覚ます。キテレツが窓を開けると、二階の屋根に鳩がとまっていて、しきりに鳴いている。やがて、鳩が飛び立ち、キテレツの部屋に入ってきて、コロ助のちょんまげの先にとまる。コロ助のことを仲間だと思っているらしい。
 そんなとき、勉三さんが訪ねてくる。鳩の脚に脚環がついているのを目にした勉三さんは、鳩が伝書鳩であることに気がつく。
 さて、脚環から鳩の飼い主を割り出した勉三さんは、飼い主に電話して、鳩を保護していることを伝えようとする。しかし、そのとき、コロ助のちょんまげの先にとまっていた鳩が、どこかに飛び去ってしまう。
 そこで、キテレツは鳥心器という発明道具を作る。鳥心器を鳥に向けると、鳥が話している言葉が分かる。
 鳥心器を手にしたキテレツは、鳩の姿を求めて町内を捜索する。
題名 キテレツ大百科 (第三百十九話「今世紀見オサメ!? 幻のリョコウバト」)
*DVDの第四十巻に収録

製作国 日本
発売元 ファイブエース
評価 ★★☆☆☆

 ある朝のこと、ブタゴリラが悪夢にうなされて布団から飛び起きる。ブタゴリラは夢の中で、幼なじみのタイコが暴漢に射殺される光景を目にしたのだ。
 そんなとき、ブタゴリラの部屋の窓に何かがぶつかる。ブタゴリラがカーテンを開けて確認すると、傷ついた一羽の鳥が窓の下に倒れている。
 ブタゴリラは段ボールに鳥を入れてキテレツの家に行く。キテレツなら何か分かると思ったのだ。
 鳥の姿を一目見るなり、
「この鳥は……」
 と、声を上げるキテレツ。
 そして、キテレツは本棚から『絶滅動物図鑑』を取り出し、
「やっぱりそうだ。リョコウバトだよ。アメリカに生息していた鳩なんだけど、一九二〇年頃に絶滅したと書いてある」
 と、ブタゴリラに話す。
題名 ドラえもん (第百十三話「のび太+ハト=?」)  *DVDの第三十一巻に収録
製作国 日本
発売元 小学館
評価 ★★☆☆☆

 上述した漫画(『ドラえもん プラス』〔第五巻〕収録――「合体ノリ」でハイキング)のアニメ版。
 原作に比べて、いくつかの改編が見られるが、大きくは二点、挙げられる。
 まずは一点目。
 原作では、ドラえもんとのび太が合体する相手は、友達が飼っているレース鳩だが、アニメ版では、公園のドバトになっている。
 これは、現代では、鳩を飼育している子供が珍しいことから、友達が飼っているレース鳩、という設定を外して、今でもよく見られる公園のドバト、に表現を変えたように思われる。
 次に二点目。
 原作には登場しない「ハガセール」という秘密道具が出てくる。これは「合体ノリ」の効果を解くときに用いる。原作では、この「ハガセール」がなくても、「合体ノリ」の効果を解消できるが、アニメ版ではこれがないと、「合体ノリ」を剥がせない。
 アニメ版では、「ハガセール」がないと困ってしまうことから、劇中で、「ハガセール」を紛失して探し回る、という展開が生じる。
 原作が十ページしかないので、十分以上あるアニメ版を作るには差し障りがあったのだろう。
 要するに、アニメ版を作るに当たり、「ハガセール」というアイテムを登場させて、それを紛失してしまう、というシーンを挿入すれば、尺を稼げるのである。
 演出家や脚本家の発案によって、この水増しがされたように考えられる。
  題名 はとよひろしまの空を  *VHS版
製作国 日本
発売元 東映
評価
 ★★★☆☆

 上述した本をアニメ化した作品。
 一般作ではないために、VHSが六万六千円、学校特別価格でも三万三千円もする(平成三十年確認。メーカー価格)
 伝書鳩の描写が割合に正確で、愛鳩家向けの作品といえるが、日教組くさい内容が本作の評判をおとしめている。
     
  題名 突撃!パッパラ隊  *VHS版
製作国 日本
発売元 SME・ビジュアルワークス
評価 ★☆☆☆☆

 前述したギャグ漫画のアニメ版。全二十五話収録のビデオ(全六巻)が発売されている。
 第十五話「トライアングル・デートはWannaWannaジェラシー・エモーション♥」と、第十八話「恋のラビリンスはクラッシュハートなデンジャーゾーン♥」で、X-ハトが登場する。しかし、漫画版に比べるとアニメ版のX-ハトは面白みに欠ける。
 声優の配役がイマイチで、また、原作よりも登場シーンが少ない。
   
題名 魔神英雄伝ワタル2 (第二十話「走れスペーストロッコ!」)
*DVDボックスの第二巻に収録

製作国 日本
発売元 バップ
評価 ★☆☆☆☆

 マルダルマにさらわれたプリプリ姫を救うため、ワタル、ヒミコ、シバラク、ポシェットの四名が太陽の塔に向かう。途中、スペース超特急に乗車しようとするが、線路がめちゃめちゃになっていて、乗ることができない。ヒミコが見つけたスペーストロッコに乗って、後を追うこととなる。
 どんどんと速度を上げていくスペーストロッコ。
 速度を落とそうとするが、すわ、ブレーキが故障している。このままでは、いずれどこかに衝突してしまう。「電話さえあれば戦神丸を呼べるのだが」と悔やむシバラク。すると、ヒミコが「あるよ」と答えて、忍部一族に伝わる伝書鳩を取り出す。
題名 からくり剣豪伝ムサシロード (第八話「悪のハンゾウ忍びよるだス」)
*VHSの第四巻に収録

製作国 日本
発売元 バップ
評価 ★★☆☆☆

 武芸大会に参加するため、一路、エドトピアを目指すムサシ。その道中で、けがをしたからくり鳩と、その様子を見守っている子供たちと出会う。「けがしてる? なら、早く手当てしてやらなきゃかわいそうでござるだス」。そう言うムサシだったが、子供たちは、金を払わなければどこかに鳩を捨ててしまうぞ、と鳩の所有権をにおわせながら、金銭を要求してくる。「最近の子供は油断ならないだス」と、ムサシは不満をこぼしつつ、いくらかの小銭を子供たちに握らせる。
 子供たちが去ったあと、ムサシが鳩の具合を見ていると、おなかのところにボタンがあることに気がつく。ムサシがボタンを押すと、腹の部分が開いて、中に入っていた信書管が転がり出る。
「何だス、これは?」
 と、信書管を手に不思議に思うムサシ。
 しかし、そのときである。突如、現れた忍者たちにムサシは襲われる。
 次々に放たれる手裏剣を避けながら、ムサシはわけも分からずに走り出す。そして、何とかして、土の中に身を隠して、ムサシはその場をやり過ごす。
 このときのムサシは知る由もなかったが、伊賀忍者の頭領にして、公儀隠密方であるハンゾウは、その表向きの顔とは別に、裏では幕府転覆をもくろんでいた。実はこの信書管の中に、ハンゾウの悪事を暴く文書が入っていて、彼の手の者がそれを奪い取ろうとしてムサシを襲撃したのだった。

*注・本話以外にも、からくり鳩が登場する回がある。

題名 忍たま乱太郎 (第十二シリーズ 第三十三話「風鬼と雨鬼と鳩の段」)
製作国 日本
発売元 未発売
評価
 ★★☆☆☆

 満月の浮かぶ夜、ドクタケ忍者が忍術学園の裏手の山で火薬つぼを爆発させる。そして、ドクタケ忍者は、その騒ぎに乗じて、忍術学園が兵庫水軍から預かっている伝書鳩を、ドクタケ忍者の伝書鳩とすり替えてしまう。忍術学園の情報を盗むためである。
 一方、忍術学園の教師である、山田伝蔵と土井半助は、程なくして、このドクタケ忍者の企てに気づく。二人は奪われた伝書鳩を取り返すために、ドクタケ城に潜り込む。
題名 ちびまる子ちゃん (第二期 第四百二十話「迷子の伝書鳩」の巻)
*DVDの『「迷子の伝書鳩」の巻』に収録

製作国 日本
発売元 ポニーキャニオン
評価
 ★★★☆☆

 まる子、たまちゃん、はまじ、ブー太郎の四人が、動けなくなったレース鳩を保護する。保健室の先生によると、レースで疲れてしまっただけなので、ご飯を与えて、ゆっくり休ませてやれば元気になるという。
 鳩がまる子に懐いているので、担任の先生が、「さくらさんさえよかったら、その鳩、さくらさんの家で休ませてあげてくれませんか」と言う。
 驚くまる子。
 しかし、保健室の先生からもお願いされると、まる子は鳩の面倒を見ることを喜んで引き受ける。
題名 はっけん たいけん だいすき! しまじろう (第五十八話「ハトのピーちゃん」)
製作国 日本
発売元 未発売
評価
 ★★★☆☆

 しまじろう、みみりん、とりっぴい、らむりん、の四人がボール遊びをしていると、たくさんの伝書鳩が飛んでいるのを目にする。
 興味を持った、しまじろうたちは、伝書鳩を追って鳩舎までやってくる。
 飼い主のおじさんに案内されて、舎内の伝書鳩の様子を見学する、しまじろうたち。
 おじさんと約束して、翌日の朝に、伝書鳩の舎外運動を見せてもらうことになる。
 そうして、次の日のこと、しまじろうたちは、早朝の舎外運動や、舎外運動中を見計らった鳩舎内の清掃、舎外運動後の給餌など、鳩のお世話のあれこれを体験する。
 しかし、一羽の白鳩が、いつまでたっても帰ってこない。
 心配になった、しまじろうたちは、白鳩を探しに外に出るが……。
題名 レッドクリフ Part I、レッドクリフ Part II  *DVD版
製作国 中国
発売元 エイベックス・マーケティング
評価
 ★★☆☆☆


 曹操軍の陣営に孫権の妹が間諜として潜り込んで活動する際に伝書鳩が使われる。しかし、映画的演出が原因なのか、場違いな純白の鳩が用いられる。
 白鳩は猛禽類や敵軍の目につきやすいので、軍隊では歓迎されない。陸軍の教本『軍鳩管理規則』の第一章総則第五条第三項に「羽色ハ目立チ易キ白色ヲ混セサルコト」と記されている。
  題名 ホワイト・バレンタイン  *DVD版
製作国 韓国
発売元 ハピネット・ピクチャーズ
評価
 ★★☆☆☆


 小鳥屋の青年と本屋の娘が白い伝書鳩を介して手紙をやり取りしているが、この往復鳩通信をおこなうには一方の鳩舎を食事用鳩舎に、もう一方の鳩舎を生息用鳩舎に区別する必要がある。しかし、劇中では、両店に何の区分けもなされておらず、また、何の訓練もおこなっていない白鳩が当たり前のように双方を行き来している。
 断っておくが、こんな伝書鳩は現実には存在しない。

     
題名 北斗の拳 (第百二十四話「何が待つ暗黒大陸! そこは伝説の修羅の国!!」)
*DVDの第二十一巻に収録

製作国 日本
発売元 東映アニメーション
評価 ★★☆☆☆

 前述した漫画のアニメ版。
 原作漫画第十九巻の「修羅道! 忍棍妖破陣!!の巻」「誇りとともに!の巻」「死を喰らうヤツら!!の巻」の計三話が本話にまとめられている。そのせいもあって、ケンシロウと修羅の戦闘シーンの一部が、ファルコ対修羅に差し替えられていたり、とらわれのリンが登場する牢獄の場面が、ファルコの死の前に描かれていたりする。

題名 天空の城ラピュタ  *DVD版
製作国 日本
発売元 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
評価 ★★☆☆☆


 主人公の少年・パズーが、れんがでできた円筒形の鳩舎に、純白の羽色をした鳩をたくさん飼っている。
 早朝、愛鳩に舎外運動をさせている間、パズーがラッパを吹くと、ヒロインの少女・シータが、この音を聞いて目を覚まし、寝台から起き上がる。鳩は人慣れしていて、初対面のシータが餌やりをしても怖がらず、われ先にと群がる。
 鳩の作画が非常に細やかで、生き生きと描かれている。
  題名 ウインダリア  *DVD版
製作国 日本
発売元 ビクターエンタテインメント
評価 ★☆☆☆☆


 前述した小説『ウインダリア』のアニメ版。
 小説版とアニメ版には多少の違いがある。
 例えば、小説版では伝書鳩のクックウが怪鳥から逃れるためにウインダリアの木に止まるが、アニメ版では雨宿りのためにウインダリアの木に止まる。また、マーリンがイズーに持たせるお守りが、小説版ではウインダリアの葉だが、アニメ版では短剣になっている。

  題名 テガミバチ (第十八話「テガミバト」)  *DVDの第五巻に収録
製作国 日本
発売元 バンダイビジュアル
評価 ★☆☆☆☆

 手紙の配達と、鎧虫と呼ばれる巨大な虫の退治をなりわいにしているテガミバチ。
 そのテガミバチに対して、テガミバトと称する三人組が挑戦してくる。指定先から手紙を集荷し、どちらが先にスタート地点に戻ってこられるか競い合おう、というのだ。
 こうして、三対三に分かれた競争がはじまる。双方、馬車に乗って、あの手この手の策を用いて対決する。

 父親と手紙のやり取りをするため、アベリという小さな女の子がスペランザという名の伝書鳩を飼っている。
 テガミバチに対して、テガミバトが挑戦してきたのは、このアベリの伝書鳩に関係しているのだが……。
   
題名 シティーハンター2 (第五十八話「リョウのスパルタ教育! ハーレム育ちの悪ガキ王子(前編)」、第五十九話「獠のスパルタ教育! ハーレム育ちの悪ガキ王子(後編)」)  *DVDの第十一巻に収録
製作国 日本
発売元 アニプレックス
評価 ★☆☆☆☆

 シティーハンターこと冴羽 獠(さえばりょう)はプロのスイーパー(殺し屋)
 その冴羽が依頼を受けて、ファウンデ王国の王子・ナリオの護衛に当たる。ナリオは、王位簒奪(さんだつ)をもくろむ彼の叔父・バカラに、命を狙われているのだ。
 冴羽は、ナリオの身の安全を図るために、彼を山奥のログハウスに連れていく。そして、王族であるが故にわがままいっぱいに育てられてきたナリオを、ここで鍛え直す。
 精神的にも肉体的にも、日々、たくましくなっていくナリオ。
 その頃合いを見計らって、冴羽は、相棒の槇村 香(まきむらかおり)が待つ、自宅マンションへ伝書鳩を放つ。
 鳩がもたらしたメッセージは、着替えが欲しいうんぬん、という他愛のないものだった。しかし、この手紙を受けて、山奥のログハウスに向かうことになった香の行動そのものに、実は意味があった……。
題名 こちら葛飾区亀有公園前派出所 (第九十話「誕生!鳩ポッポ刑事」)
*DVDのセレクション3 ドタバタ編に収録

製作国 日本
発売元 バンダイビジュアル
評価 ★★☆☆☆


 伝書鳩が出てくるこの回はアニメ版のオリジナル。原作は『週刊少年ジャンプ』に掲載されている。
 劇中、第一次世界大戦でフランス軍の軍用鳩が活躍したことが語られる。ドタバタアニメとはいえ、それなりの下調べを経て制作されていることがうかがえる。
題名 るろうに剣心(全二十六巻)  *DVD版
製作国 日本
発売元 アニプレックス
評価 ★★☆☆☆

 上述した漫画のテレビアニメ版。
 全九十四話中、伝書鳩が登場するのは計二話。
 第三十九話 「逆刃刀を作った男・新井赤空 最後の一振り!」では、巻町 操 (まきまちみさお)の要請によって、伝書鳩「ルの一番」が柏崎念至(かしわざきねんじ)のもとに飛んでいく。原作の漫画では、緋村剣心(ひむらけんしん)のおでこに「ルの一番」が突き刺さって、血が噴き出すギャグシーンになっているが、アニメではそれが省略されて、シリアスに描かれている。
 第四十五話 「翔ぶが如く! 戦艦煉獄出航を阻止せよ」では、京都大火(きょうとたいか)を防ぐために、巻町 操 (まきまちみさお)指揮のもと、京都中に伝書鳩が放たれる。若干、巻町 操 (まきまちみさお)のせりふが変えられているものの、おおむね、原作漫画どおりに、このシーンがアニメになっている。
題名 るろうに剣心 新京都編 特別版  *BD版
製作国 日本
発売元 アニプレックス
評価 ★★★★☆

 上述した漫画のOVA版。
 原作にある京都編を、新京都編として再構築した作品。
 おおすじのストーリーは、原作に準拠しているが、OVAオリジナルの表現が目立つ。
 特に、伝書鳩の「ルの一番」の登場シーンが格段に増えていて、各所で、この鳩の姿を見られる。しかも、作画が非常に細やかで、ずばぬけている。
 個人的な意見になるが、「日本アニメ史・鳩作画ベスト三」があるとしたら、間違いなく一位、二位を争うレベル。
 星四つの評価は、過大ではない。
題名 トリコ (第三話「芳醇なる七色の果汁! 虹の実をとれ!」)  *DVDの第二巻に収録
製作国 日本
発売元 ハピネット
評価 ★★☆☆☆

 世はグルメ時代。美食屋と呼ばれる、未開の味を探求する者たちがいた。彼らは世界中のあらゆるところを旅して、貴重な食材を探し回る。本作の主人公・トリコも、そんな美食屋の一人である。世界に存在する約三十万種類の食材のうち二パーセントは、トリコが発見したといわれている。
 アニメ版では、グルメTVのキャスターであるティナと、その彼女が連れている伝書風船鳩のクルッポーがオリジナルキャラクターとして登場する。このコンビは、本話以降の各話にたびたび出てきて、アニメ版のトリコを盛り上げる。
 なお、伝書風船鳩は、電波の届かない辺地からグルメTVに向けて、取材映像を届けられる。グルメTVの屋上には鳩舎があって、たくさんの伝書風船鳩が飼われている。
題名 ジョジョの奇妙な冒険 (第十四話「太古から来た究極戦士」)  *BDの第五巻に収録
製作国 日本
発売元 ワーナー・ホーム・ビデオ
評価 ★☆☆☆☆

 前述した漫画のアニメ版。
 原作第七巻に載っている、「スパゲッティーの戦いの巻」「ハトと女の子の巻」「エイジャの赤石の巻」「真実の口にひそむ真実の巻」「究極戦士ワムウの巻」が本話に収録されている(「究極戦士ワムウの巻」は三分の二まで)
 原作に登場する鳩は灰色だが、アニメに登場する鳩は全て白色に変更されている。

  題名 ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン (第十二話「集中豪雨警報発令」)  *BDの第〓巻に収録
製作国 日本
発売元 〓
評価 ★☆☆☆☆

 前述した漫画のアニメ版。
 原作第六巻(通巻第六十九巻)に載っている、「サヴェジ・ガーデン作戦 その⑧」「集中豪雨警報発令 その①」「集中豪雨警報発令 その②」「集中豪雨警報発令 その③」が本話に収録されている。
 伝書鳩サヴェジ・ガーデンの姿をアニメーションとして楽しめる。
     
  題名 岸辺露伴は動かない (「岸辺露伴は動かない ~エピソード16:懺悔室~)
*BD版

製作国 日本
発売元 ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
評価 ★☆☆☆☆

 前述した漫画のアニメ版。
 ほぼ内容は同じだが、細部が異なっている。
 例えば、冒頭、カフェで岸部露伴と広瀬康一が話しているシーンがアニメ版には追加されている。
 劇中に登場するサンドイッチにも違いがある。漫画版では、耳を落とした食パンのサンドイッチだが、アニメ版では、一般的なパンを用いたものに変えられている。また、漫画版では、バスケットの中にサンドイッチが収められているが、アニメ版では紙の袋の上にサンドイッチが置かれている。
 ほかにも、小さな変更点が各所に加えられている。
     
題名 マジンガーZ (第三十話「危うしシロー マジンガーZ出動せよ!!」)
*VHSの第十巻に収録

製作国 日本
発売元 東映
評価 ★★★☆☆

 光子力研究所前の屋外で、兜 甲児(かぶとこうじ)、弓 さやか(ゆみさやか)、兜 シロー(かぶとしろう)の三人が、一羽の伝書鳩を囲んで話し合っている。
「シロー、この鳩、どうするんだ?」
 甲児がそう言う。
「決まっているじゃないさ、こいつは伝書鳩だぜ、いざっていうときの通信に使うんだよ」
 しかし、甲児は、シローの言い分に聞く耳を持たない。
「笑わしちゃいけないよ。今の世の中に伝書鳩を使うなんて、時代錯誤もいいところだぜ、全く。なあ、さやかさん?」
「ええっ、そうよ。何せ、あたしも甲児君も通信のためなら無線を持っているわ」
「じゃあ、この伝書鳩は役に立たないって言うのかい?」
「まっ、はっきり言えば、そういうことだな」
「そんなことないやい!」
「シローちゃん、今は機械文明の時代よ。伝書鳩が活躍した時代は、とっくの昔に終わっちゃったのよ」
「そういうこと」
「かー、頭きた」
 甲児とさやかは、シローの主張をむげに否定し、シローは一人、腹を立てる。
 しかし、その後、伝書鳩の有用性が証明される。シローが、機械獣「ブルタス M3」の襲撃を受けて、山中の洞窟に閉じ込められていることが、伝書鳩によって、もたらされたのだ。
 SOSを受けた甲児は、すぐさま、マジンガーZに乗って出撃し、「ブルタス M3」を撃退する。
 シローは、携行していた伝書鳩によって、命を取り留める。
題名 UFOロボ グレンダイザー (第二十九話「さらば宇宙の友よ!」)
*DVDの第三巻に収録

製作国 日本
発売元 東映ビデオ
評価 ★★★★★

 ベガ星連合軍のコマンダーハルクが愛鳩家の少年に化けて地球に潜入する。宇宙科学研究所を監視して、グレンダイザーの基地を探り当てるためだ。しかし、同研究所は、赤外線警報装置によって外部から侵入できない作りになっていた。
 コマンダーハルクがそのことを、科学長官のズリルに報告すると、ズリルはコマンダーハルクに、こう命じる。
 キジバトをサイボーグに改造して、窓から宇宙科学研究所の内部を監視せよ、と。
 愛鳩家のコマンダーハルクは、即座にその命令を拒絶する。
 しかし、ズリルは、
「ハルク、お前が鳩を好きだということは知っている。しかし、私情に溺れては大事な任務を果たせんぞ」
 と、言って、コマンダーハルクに作戦の実行を迫る。
 不本意ながら、コマンダーハルクは、キジバトをサイボーグに改造して、宇宙科学研究所の内部を探る。そして、円盤獣デラデラに乗って、グレンダイザーとの決闘に臨む。しかし、勇戦むなしく、円盤獣デラデラは、グレンダイザーとの戦いに敗れる。
 グレンダイザーのパイロットである、デューク・フリードこと宇門大介(うもんだいすけ)は、
「鳩が好きな男に悪いやつはいないはずだ。惜しい男を亡くした」
 と、言って、爆発・炎上する円盤獣デラデラを見やりながら、コマンダーハルクの死を悼む。
題名 マグネロボ ガ・キーン (第二十九話「始動開始!! シャベル・パワー!!」)  *DVDの第三巻に収録
製作国 日本
発売元 東映アニメーション
評価 ★★★☆☆

 全国各地で鳩が消える事件が発生する。長野の伝書鳩飼育所が鳩舎ごと消えたのをはじめ、各地の愛鳩家から「自分の鳩も戻らない」という情報が相次ぐ。肥前カオル(びぜんかおる)の愛鳩も同様に、こつぜんと姿を消す。北条 猛(ほうじょうたける)が「すぐに戻ってくるさ」とカオルを慰める。
 実はイザール星人の策略により、全国各地の鳩が盗み出されていた。鳩の帰巣本能をミサイルの誘導装置に利用しようというのだ。そして、このミサイルを神戸と函館の食糧倉庫に打ち込み、日本に食糧パニックを引き起こそうとする。
 この事態に対し、ガ・キーンが出動する。猛は神戸へ、花月 舞(かづきまい)は函館へ、それぞれ向かう。
 猛は神戸で、カオルの愛鳩の首に巻かれていた赤いリボンを発見する。カオルの鳩の死を悟った猛は、「許せねえ」と言って、怒りをあらわにする。
題名 太陽の牙ダグラム (第一話「光りの戦士」)  *DVDの第一巻に収録
製作国 日本
発売元 バンダイビジュアル
評価 ★★☆☆☆

 植民星デロイアの独立を目指す、対地球連邦ゲリラ組織・太陽の牙の戦いを描いたロボットアニメ。
 ゲリラ側の数少ない勢力圏に属するダムシティ。このダムシティにある、地球連邦軍・ダンクーガー基地に、補給物資を積載した軍用列車が向かっていた。ダンクーガー基地に補給物資が届けば、ゲリラ側は苦戦をしいられる。ダンクーガー基地への補給を阻止しなければならない。
 想定される敵戦力は、護衛装甲列車二両、兵員五十名。
 ダグラム(コンバットアーマー)を駆るクリン・カシムらデロイア7(ゲリラのチーム名)は、赤い谷で軍用列車を待ち受ける。そして、首尾よく軍用列車を破壊する。しかし、喜びもつかの間、ラウンドフェイサー(コンバットアーマー)三機を擁する、ミゲロ大尉指揮下の地球連邦軍が不意に現れる。実は地球連邦軍は軍用列車をおとりにして、太陽の牙撃滅の策を講じていたのだ。しかし、能力に勝るダグラムの活躍などによって、太陽の牙は地球連邦軍を撃退する。
 ダンクーガー基地への補給を阻止したデロイア7は、本部にその旨を知らせるために伝書鳩を放つ。太陽の牙に同行しているAPU通信の特派員――ディック・ラルターフは、「この動乱で、伝書鳩が長距離通信の最良策とは皮肉な星じゃな」と述べる。
題名 装甲騎兵ボトムズ 孤影再び  *BD版
製作国 日本
発売元 バンダイビジュアル
評価 ★☆☆☆☆

 二人の子供が手紙を付した伝書鳩を空に放つするシーンがある。しかし、信書管が鳩の右脚につけられている。例外もあるが、信書管は鳩の左脚につけるのが一般的である。
題名 やわらか戦車  (第三十五話、第三十六話)
製作国 日本
発売元 未発売
評価 ★★☆☆☆

 インターネット上に公開されたFlashアニメ。
 ジミおじさんの救出に失敗してから数ヶ月……。
 ジミおじさんの安否を知るすべはなく、第一空挺団の隊員たちは、訓練に明け暮れる空虚な日々を送っていた。
 しかし、そんなとき、北海道のぱーぷる牧場から小包が届く。
 中を開けると、すごいハト胸(筋肉ムキムキの鳩胸)をしたハト(伝書鳩)と、一通の手紙が入っていた。
 手紙は、ジミおじさんからのもので、ぱーぷる牧場に遊びにきてほしい、というものだった……。
題名 ルパン三世(第二シリーズ) (第百四十一話「1980モスクワ黙示録」)
*BDボックスの第六巻に収録

製作国 日本
発売元 バップ
評価 ★★★☆☆

 ロシアのクレムリン宮殿から、シャンデリアにちりばめられたダイヤモンドを盗み出そうとするルパン一味。しかし、国家機密機関スーケーベーのナターシャにそのたくらみを看破されて、ルパン一味はとらわれの身となる。
 ルパンは、獄中で知り合った技術者ダンチョネと協力して、思いがけない方法でダイヤモンドを奪うが……。

 劇中に伝書鳩が登場する。別々の場所でとらわれている、ルパンと次元が、伝書鳩を介して連絡したり、裏切った不二子の居所を伝書鳩のあとをつけて突き止めたりする。
題名 ベルサイユのばら(全八巻)  *DVD版
製作国 日本
発売元 バンダイビジュアル
評価 ★★★☆☆

 ときは十八世紀のフランス、男装の麗人――オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェと、フランス王妃――マリー・アントワネットとの友情を描いたアニメ。
 オスカルやアントワネットを取り巻く、それぞれの恋愛模様や、激動のフランス革命によって生じる悲劇など、著名な作品だけあって、内容が一般によく知られている。
 劇中に、驚くほど、たくさんの白鳩が登場する。
 『ベルサイユのばら』といったら、随所に鳩が飛び交う「白鳩演出」(*注・私――藤本の造語)が多用されている。
 個人の感情が高まったり、状況が大きく動いたりするときなどに、白鳩が画面に映る。
 その登場頻度は、第一話、第二話、第六話、第七話、第九話~第十二話、第十五話、第十七話、第二十話、第二十二話~第二十七話、第二十九話~第四十話(最終話)と、全四十話のうちの四分の三を占める。
 また、実際に白鳩を飛ばす意味も重々しく、オスカル、アントワネット、アンドレという、主要三キャラクターそれぞれの死の場面で、白鳩が画面に映る。
 これほどまでに、鳩を意識したアニメは、なかなかない。
題名 坂道のアポロン(全四巻)  *BD版
製作国 日本
発売元 
評価 ★★☆☆☆

 前述した漫画のアニメ版。第三話、第六話、第十話、第十一話、第十二話に、鳩が登場する。
 特に最終話(第十二話)で、鳩が力強く、空を飛ぶシーンが印象に残る。
題名 3月のライオン (第三十二話「Chapter.64 銀の羽根」)  *BDの第六巻に収録
製作国 日本
発売元 アニプレックス
評価 ★★★☆☆

 上述した漫画をもとに製作されたアニメ版。
 俗に言う「原作派」の人たちであっても、一切の批判を口にできないくらい、原作に忠実に作られている。
 全体的なアニメーションのクオリティーや、声優の演技、奥行きのある背景などを加味すると、原作を超えている、と個人的に思う。
題名 GOSICK ―ゴシック―(全十二巻)  *BD版
製作国 日本
発売元 角川書店
評価 ★★★☆☆

 前述した小説のアニメ版。毎回流れるオープニングアニメーションのほか、本編では、第六話、第七話、第十話、第十六話、第十九話、第二十話、第二十一話に、鳩が登場する。
題名 イクシオン サーガ DT (第二話「ED(Erecpyle Dukakis)」)  *BDの第一巻に収録
製作国 日本
発売元 ポニー・キャニオン
評価 ★★☆☆☆

 高校生の火風 紺(ほかぜこん)は、オンラインRPGをプレイ中、謎の女・アルマフローラの導きによって、ミラという異世界に飛ばされる。突然のことに戸惑う紺だったが、セントピリア帝国の皇女・エカルラート、騎士のセングレン、侍女のマリアンデールと合流し、もとの世界に戻る方法を探るための旅に出る。
 第二話で紺は、マリアンデールから町を案内される。その際にティラノサウルス並の巨大な伝書鳩を目にして、紺は驚きの声を上げる。ミラ世界では、この大きな伝書鳩に手紙を付して通信しているという。
題名 がっこうぐらし! (第七話「おてがみ」)  *BDの第四巻に収録
製作国 日本
発売元 NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
評価 ★★☆☆☆

 上述した漫画のアニメ版。
 第七話の本編以外に、第一話から第十一話までのオープニングアニメーションに鳩が登場する。
 なお、漫画版では、この鳩の名前は「アルノー・鳩錦」だが、アニメ版では「アルノー 鳩錦二世」という名前になっている。
 また、くだんの場面の漫画版では、直樹美紀(なおきみき)と、犬の太郎丸は登場していないのに、アニメ版では一連のシーンに出演している違いがある。
題名 終わりのセラフ 名古屋決戦編 (第十五話「帝鬼軍のヤボウ」)
*BDの第一巻に収録

製作国 日本
発売元 NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
評価 ★★☆☆☆

 突如、蔓延(まんえん)した未知のウイルス……。
 このウイルスの影響によって、十三歳以上の者が死に絶えて、子供たちだけが生き残る。
 世界は滅亡したのである。しかも、生き残った子供たちは、地の底から現れた吸血鬼の支配をも受けるようになる。
 子供たちは、家畜同然の扱いを受けながら、吸血鬼に血液を提供することによって、その生存を約束される。
 しかし、生き残った人間たちは、ただ、この絶望的な状況に甘んじていたわけではなかった。彼らは、機を見て、日本帝鬼軍(にほんていきぐん)という軍事組織を立ち上げたのだ。
 日本帝鬼軍は、吸血鬼の殲滅(せんめつ)を目指して、日々、戦い続ける……。

 第十五話「帝鬼軍のヤボウ」の冒頭シーンに、伝書鳩が登場する。通信網が破壊されているために、伝書鳩が貴重な通信手段になっているのだ。
 日本帝鬼軍が管理している鳩舎には、たくさんの鳩がいて、その鳩たちに囲まれながら、三宮 葵(さんぐうあおい)が、飛んできた伝書鳩から通信文を受け取る。
 葵は、その通信文を、日本帝鬼軍の中将――柊 暮人(ひいらぎくれと)に手渡す。
題名 将国のアルタイル(全四巻)  *BD版
製作国 日本
発売元 アニプレックス
評価 ★★★☆☆

 前述した漫画のアニメ版。全二十四話。単行本の第一巻から第十五巻までの内容をアニメ化している。第九話、第十五話、第十七話、第十八話、第二十話、第二十一話に、伝書鳩が登場する。
 鳩をしっかり保持せずに(つかまずに)、地面に立たせたまま、信書管をつけるシーンがあったり、普通は伝書鳩の飼養は禁止されるはずなのに、スパイが堂々と鳩舎を構えて通信していたり、と作中の描写にやや不満が残る。
題名 かみさまみならい ヒミツのここたま (第二十話「参上!ノラたまトリオ」)
*DVDボックスのvol.1に収録

製作国 日本
発売元 KADOKAWA
評価 ★★☆☆☆

 ものには魂が宿る、という、日本に古くから伝わる考え方を取り入れた、女児向けアニメ。「物の神様」の見習い――「ここたま」が劇中に登場する。
 「ここたま」は通常、人間と契約するのだが、人間と契約を交わしていない「ノラたま」もいる(「ノラ」は「野良」のこと)
 この「ノラたま」が、とある公園を縄張りにしていて、誰も立ち入れないようにしている(実際は、寂れた公園なので、訪れる人がほとんどいないだけ)。しかし、ある老人だけは、公園に出入りできる。この老人は、公園の鳩に餌をやるのを日課にしていて、そのときにまかれるパンの耳を、「ノラたま」も一緒にもらっていたからだ。
題名 ジョーカー・ゲーム (第六話「アジア・エクスプレス」)  *DVDの第二巻に収録
製作国 日本
発売元 KADOKAWA メディアファクトリー
評価 ★★☆☆☆

 上述した小説のアニメ版。
 信書管が灰二引の鳩の右脚についている。軍の教本などを見ると、鳩の左脚につけるように記されていることが多い。しかし、特段、右脚であろうが、左脚であろうが、取り扱いに支障はない。当時の軍用鳩の写真を見ても、鳩の右脚によく信書管がついている(鳩取扱兵の好みに属する)。誤った描写とはいえない。
 また、瀬戸礼二が、スーツの懐に隠し持っていた伝書鳩を取り出すシーンがあるが、これも問題ない。
 手品の知識がない、一般の視聴者が見ると、そんな扱いで大丈夫か、などと、鳩の健康が気にかかってしまうが、実は瀬戸は、内に柔らかいポケットがついている、鳩用ジャケットを着ているのだ(アニメの中では説明なし。原作小説の本文参照)
題名 ブレイブウィッチーズ (第十一話「やってみなくちゃわからない」)
*BDの第六巻に収録

製作国 日本
発売元 KADOKAWA / 角川書店
評価 ★☆☆☆☆

 第二次世界大戦をモチーフにした、空飛ぶ美少女たちの戦いを描いたアニメ『ストライクウィッチーズ』の続編。
 ときは一九四四年、ネウロイと呼ばれる人類の敵に、一撃を加えるための反抗作戦(フレイヤー作戦)が発動される。北方軍が軍用鳩(カメラつき)などを使って偵察したところ、敵の巣であるグリゴーリが、ネウロイの発生源と判明したのだ。
 軍は、超巨大列車砲の、グスタフとドーラを投入して、魔道徹甲弾をグリゴーリに撃ち込むことを計画する。魔道徹甲弾によって核(コア)を砕けば、グレゴーリを破壊できる。
 第502統合戦闘航空団「ブレイブウィッチーズ」は、グスタフとドーラの両列車砲を射程距離まで護衛する任務を与えられる。また、同隊所属の雁淵孝美(かりぶちたかみ)中尉には、魔眼を使って、核(コア)の位置を特定せよ、との特別な指示が下る。
 こうして、作戦がはじまる。しかし、敵の攻撃によって、ドーラが破壊されてしまう。
 軍は慌てて、残ったグスタフを射程距離に移動させようとするが、そんなことをしていたら、グリゴーリは、列車砲の射程外に移動してしまう……。
 ここで、雁淵中尉が決意する。魔道徹甲弾をじかに運んで、そのまま、敵の核(コア)にぶつけてしまおうというのだ。
題名 TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より- (第八話「箱庭の楽天地」)
*BDの第三巻に収録

製作国 日本
発売元 バンダイビジュアル
評価 ★☆☆☆☆

 江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズをモチーフにしたオリジナルアニメ。
 「心が丘団地」の住民が、都市再開発を理由にした立ち退きに抗議し、こう表明する。
「A棟からH棟および団地全域を『心が丘自治区』と命名し、本日、現時刻をもって、日本国から独立することをここに宣言いたします」
 この「心が丘団地」の屋上に鳩舎がある。
 巣箱の中で、たくさんの鳩が飼われていて、この鳩が外部との連絡に用いられる。
題名 異世界食堂 (第三話「menu 6 チョコレートパフェ」)  *BDの第二巻に収録
製作国 日本
発売元 エイベックス・ピクチャーズ
評価 ★☆☆☆☆

 先の皇帝ヴィルヘイムが、伝書鳩から通信文を受け取る。
 現皇帝からだ。
「なるほどな、隣国の港町を……。しかし、好機とはいえ、ここにあの子一人をよこし、戦場に赴くなど……」
 ヴィルヘイムは表情を曇らせる。
 四歳の皇女――アーデルハイドが、このヴィルヘイムの住む、寂しい離宮にやってきたのだ。
 現皇帝は戦争で忙しく、アーデルハイドの面倒など、見ていられない。
 そうしたことから、退位した皇帝がささやかに暮らす、この寂しい離宮に、アーデルハイドは起居することになった。
 アーデルハイドが、ひどく寂しい離宮の暮らしに涙し、帝都を恋しく思っているのは明らかだった。
 しかし、我慢強いアーデルハイドは、何一つ不満を口にしない。その孫娘の痛々しい姿に心を動かされたのか、ヴィルヘイムは、アーデルハイドを、ある部屋に案内する。
 そこは異世界の食堂に通じる秘密の部屋だった……。
題名 プリンセス・プリンシパル (第一話「case13 Wired Liar」)  *BDの第一巻に収録
製作国 日本
発売元 バンダイビジュアル
評価 ★☆☆☆☆

 ときは十九世紀、アルビオン国は、アルビオン王国とアルビオン共和国の二つの国家に分断されていた。
 アルビオンの首都ロンドンを分かつ、「ロンドンの壁」を境界線として、両国のにらみ合いが続く。
 ロンドンは、東西のスパイが火花を散らす、国際的な舞台になっているのだ。
 第一話の劇中に、伝書鳩に通信文を付して放つシーンがある。
 また、第四話では、アンジェ、プリンセス、ドロシー、ちせ、ベアトリスが、自分たちのスパイチームを「白鳩」と命名する。オリーブの葉をくわえた鳩の絵が、鳥の本の表紙になっているのを、プリンセスが目にして、思いついたのだ。
 このとき、アンジェが、
「スパイのこと、鳩って言うしね」
 と、前置きしてから、
「洪水を逃れたノアが世界を知るために放った鳥が鳩なの」
 と、創世記の内容に触れる。
 なお、本作のオープニングアニメーション(一話~十一話)と、エンディングアニメーション(一話~五話、七話~十一話)にも、宙を飛ぶ鳩が登場する。
題名 手品先輩  *BDボックス版
製作国 日本
発売元 エイベックス・ピクチャーズ
評価 ★★☆☆☆

 前述した漫画のアニメ版。通常は一話を三十分枠で放送するが、本作は一話を十五分枠で流すショートアニメ。全十二話。
 内容はおおむね原作漫画に沿っているが、随所にアニメオリジナルのシーンや演出がある。

題名 ポケットモンスター (第二十九話「パチパチやきもち!ワンパチのきもち」)
製作国 日本
発売元 未発売
評価
 ★★☆☆☆

 こばとポケモンのマメパトが、コハルの家の窓に激突して、けがをする。コハルがかわいがっている、こいぬポケモンのワンパチが、この負傷したマメパトを発見し、くわえて持ってくる。
 こうして、コハルの一家でマメパトが一時的に保護されるが、ワンパチは面白くなかった。コハルとマメパトが一緒にいるのが嫌で、へそを曲げる。コハルの父・サクラギ博士によると、ワンパチは嫉妬しているのだという。


 ラジオ劇など

題名 天使従軍
製作国 日本
発売元 未発売
評価
 

空中戦の最中不幸敵の一弾は機に命中基地に還る途中不時着した、敵兵はこれを見るや我機に向ひ突撃して来たこの時軍用鳩のルビーは敵弾の為翼を傷めながらも、不時着地点や重要報告の通信を携へ飛び立ち一度は地に落ちたが雄々しくも味方の空に向つて姿を消した……機上の二人は最早潔く戦つて死ぬ覚悟をする、と、あゝわが天使鳩の到着によつて味方の救援飛行機は爆音勇ましく現れた

『東京朝日新聞』(昭和十二年十月二十三日朝刊)より引用
     
  題名 軍用鳩クロ
製作国 日本
発売元 未発売
評価
 


 今井吾作は黒い鳩を飼つてゐた、黒い鳩だからといふのでクロクロと呼んでゐた、吾作が昨年の秋召集されるとクロも出征して部隊中での人気者になつた。
 北支の戦線も漸く寒さが加はるにつれて、どこかに隠れてゐた支那軍の大部隊がボツ〳〵動き出して、日本兵の手薄に乗じて逆襲する気配を示して来た、この情報を受取つた吾作の部隊は、その事実を確めるために数名の斥候と一緒に何羽かの軍用鳩を本隊との連絡のために携行することになつた

『東京朝日新聞』(昭和十四年二月十四日朝刊)より引用
   
  題名 新聞鳩便
製作国 日本
発売元 未発売
評価
 

 新人記者と先輩記者の二人組が事件や催し物の記事を伝書鳩に付して社に届けるお話。
 満州事変をはじめ、最近の出来事や社会問題、思想問題なども盛り込まれているという。
 作ならびに演出指揮は小野賢一郎。
 なお、『東京朝日新聞』(昭和七年五月八日付)と『常盤毎日新聞』(昭和七年五月八日〔五月七日夕刊〕)によると、午後八時半にJOAKと仙台放送局から『新聞鳩便』が放送されたという。
題名 伝書鳩少年団
製作国 日本
発売元 日本ビクター蓄音機株式会社
評価
 ★★★☆☆

 構成・東 辰三、音楽・服部 正、説明・小林清次、合唱・日本ビクター児童合唱団、伴奏・日本ビクター管弦楽団。大政翼賛会宣伝部選定。
 物語の内容は、前述した書籍『伝書鳩少年団』と同様である。
題名 軍用鳩物語 可憐な荒鷲
製作国 日本
発売元 帝国蓄音器株式会社
評価
 ★★★★☆

 日本人街に匪賊が襲ってくる。
 利一少年のお母さんは、このことを守備隊のお父さん(軍人)に知らせるために手紙を書き、利一少年は裏庭の鳩舎に行って、荒鷲と名づけられた一羽の軍用鳩を持ってくる。
 そうして、荒鷲は、お母さんの書いた手紙を携行して、大空に飛び立つ。
 その後、荒鷲のもたらした手紙によって、日本軍は日本人街の危機を知り、直ちに救援隊を派遣する。たちまち、匪賊は蹴散らされて、日本人街に平和がよみがえる。しかし、荒鷲は、手紙を守備隊に届けた後、敵弾を胸に受けて死んでしまう。
「人間ナレバ立派ナ名誉ノ戦死ヂヤ」
 と、利一少年のお父さんが言う。
題名 漫才 伝書鳩
製作国 日本
発売元 帝国蓄音器株式会社
評価
 ★★★☆☆

 横山エンタツ、杉浦エノスケによる漫才。
 軍用鳩とオウムの合いの子を作れば、通信文をオウムのように暗唱できるから、いちいち通信文を脚に携行しなくてよい、といった、ばか話が聞ける。
題名 はーとふる彼氏 ドラマCD プロローグ
製作国 日本
発売元 フロンティアワークス
評価 
★★★☆☆

 後述する同人ゲームをもとにして制作されたドラマCD。
 「ピジョネイション七不思議」と呼ばれている怪奇現象が、聖ピジョネイション学園でうわさになっている。華原涼太(かわら りょうた)、銀=ル・ベル=朔夜(しろがね=る・べる=さくや)、尾呼 散(おこ さん)の三羽は、怪奇現象の謎を解き明かすために学園内の怪奇スポットを巡る。
題名 はーとふる彼氏 ドラマCD 第一羽
製作国 日本
発売元 フロンティアワークス
評価 
★★★☆☆

 後述する同人ゲームをもとにして制作されたドラマCD。
 広がる荒野と赤く染まった空。緋紅アンヘル(ひぐれあんへる)のダークファンタジー感あふれる妄想が現実化し、突如として聖ピジョネイション学園が魔界化する。
 華原涼太と、銀=ル・ベル=朔夜の二羽は、もとの学園に戻すため、調査に乗り出す。
題名 はーとふる彼氏 ドラマCD 第二羽
製作国 日本
発売元 フロンティアワークス
評価 
★★★☆☆

 後述する同人ゲームをもとにして制作されたドラマCD。
 銀=ル・ベル=朔夜がメイド喫茶の店員をすることになる第一話「朔夜の視察」、岩峰 舟(いわみねしゅう)への対抗心を燃やす錦小路斗織(にしきこうじとおり)が誘拐事件を起こす第二話「アーティスティック鳥質作戦!」、自然公園に出かけることになった藤代 嘆(ふじしろなげき)を埋音陽鳥(うずねひとり)が必要以上に心配する第三話「心配性の埋音」、華原涼太と銀=ル・ベル=朔夜の精神が入れ替わってしまう第四話「僕が君で 貴様が私で?」、聖ピジョネイション学園の面々に次々と尾呼 散の精神が宿ってしまう第五話「おこさんが君で 君もおこさんで?」、錦小路斗織の日々の仕事ぶりを描く第六話「プロジェクトポッポロー ~漫画編集者・錦小路斗織~」の計六話が収録されている。
題名 はーとふる彼氏 ドラマCD 鳩豆スウィートブレンド
製作国 日本
発売元 フロンティアワークス
評価 
★★★☆☆

 後述する同人ゲームをもとにして制作されたドラマCD。
 華原涼太と尾呼 散の二羽が鳩豆を買いに百貨店を訪れる。しかし、完売の立て札が売り場に立っている。
 バレンタインデーならぬ、意中の相手に鳩豆を送るイベント――マメンタインが迫る中、誰からも鳩豆をもらえることはない、と、いじけた錦小路斗織が、鳩豆を買い占めていたのだ。
 上記のストーリー「マメンタイン騒動」を含む、計七話を収録。


ビデオゲーム

題名 隣りのお姉さん 第1弾 早く伝書鳩をとばして!
製作国 日本
発売元 ポニカ
評価
 ★☆☆☆☆

 PC-8801用ソフトウエア。
 隣のマンション(五階建て)に住んでいるお姉さんに会いに行って、男女の営みを成功させるゲーム(俗に言うエロゲー。エロゲーにはじめて伝書鳩が登場した作品だと思われる。昭和五十八年発売)
 お姉さんのいる部屋はランダムに切り替わるので、プレイヤーは各部屋を次々に訪ねていく。プレイヤーが間違った部屋に入ると、一階に落とされて、しばらく動けなくなる。
 プレイヤーがお姉さんの部屋を探している間、お姉さんのお父さんがマンションに向けて歩いてくる。このお父さんが帰宅したらゲームオーバーである。
 お父さんの帰宅を阻むには、お父さんの会社に電話をかけて伝書鳩を呼ぶ必要がある。
 会社から飛び立った伝書鳩が帰宅途中のお父さんに手紙を渡し、いったん、お父さんを会社に引き戻してくれる。
題名 メタルギア2 ソリッドスネーク
製作国 日本
発売元 コナミ
評価
 ★☆☆☆☆

 MSX用ソフトウエア。
 ソ連、中国、中近東に隣接する軍事国家――ザンジバーランドは、世界各国の廃棄用核兵器貯蔵庫を襲撃し、同国は核保有国になる。また、ザンジバーランドは、高純度の石油を精製する微生物「OILIX」を生み出したチェコの科学者――キオ・マルフ博士を拉致する。
 本作の主人公――ソリッド・スネークは、ザンジバーランドに潜入し、マルフ博士の救出に当たる。

 ゲーム中、敵に捕らえられているマルフ博士が助けを呼ぶために伝書鳩を放つ。しかし、内容は暗号化されていて、『HELP! WIS,OhIO KIO MARV...』という謎の一文が……。
     
題名 MOTHER3
製作国 日本
発売元 任天堂
評価
 ★★☆☆☆

 コピーライターの糸井重里がゲームデザインを手がけた、MOTHERシリーズ第三作。ゲームボーイアドバンス、もしくはニンテンドーDSでプレイすることができる。
 ゲームの冒頭、リュカ(主人公)の母親・ヒナワが、手紙を付した伝書鳩を放つ。また、何も盗まない泥棒・ダスターが行方不明になる章では、その父・ウエスから伝書鳩を託され、息子を見つけたら放鳩してほしいと頼まれる。
 序盤から中盤にかけて、ところどころに伝書鳩が登場する作品。
題名 江戸川乱歩の怪人二十面相DS
製作国 日本
発売元 タカラトミー
評価
 ★☆☆☆☆

 前述した小説のゲーム版。ニンテンドーDS専用ソフトウエア。
 怪人二十面相に捕らえられて、地下室に幽閉される小林少年。
 小林少年は、天井近くの小窓に縄ばしごをかけてのぼると、小窓の鉄格子の間から、からくり伝書鳩・ピッポちゃんを放つ。ピッポちゃんに手紙を持たせて、助けを呼ぼうというのだ。
「マユミさんがあの手紙を読んだら、警官隊はすぐにここへ駆けつけてくれるだろう。そうすれば、あの大悪党、怪人二十面相を捕まえることができるぞ!」
 そう意気込む、小林少年だった。
 なお、ゲームの大詰めでも、ピッポちゃんは活躍する。怪人二十面相目がけて飛びかかって、この賊(ぞく)をひるませる(怪人二十面相逮捕までの時間稼ぎ。原作小説にはないシーン)

*からくり伝書鳩・ピッポちゃんは、本ゲームのオリジナル。
 羽柴壮二(はしばそうじ)君が発明した、機械仕かけの白鳩。
題名 キャッツ&ドッグス ザ・リベンジ・オブ・キティ・ガロア
製作国 イタリア
発売元 日本市場向けゲーム未発売
評価
 ★★☆☆☆

 前述した映画のビデオゲーム版(ニンテンドーDS専用ソフトウエア)。日本仕様のニンテンドーDSでもプレイすることができる。
 ディッグス(犬)は重い物を運べ、キャサリン(猫)は二段ジャンプができ、シェイマス(鳩)は空を飛べる。状況に応じてキャラクターを使い分けるアクションゲーム。

題名 北斗の拳5 天魔流星伝 哀★絶章
製作国 日本
発売元 東映動画
評価
 ★☆☆☆☆

 スーパーファミコン用ソフトウエア(ロールプレイングゲーム)。二千数百年のときを超えて復活した魔皇帝と、その支配に立ち向かう拳士たちの戦いを描く。
 ジャコウ総督によって、秘密の地下室に捕らえられている、元斗皇拳の使い手・ファルコ。
 主人公らは彼を救い出すために、ファルコ城に乗り込んでジャコウを追い詰める。しかし、ジャコウは戦おうとしないで逃げ出してしまう。
 ジャコウのあとを追っていく途中、主人公らは一人の大工と出会う。彼が言うには、こき使われていることの腹いせに、ジャコウの部屋にある、飾り物のライオンの目に黄金石を入れるとファルコ城が崩れるように細工しているという。
 そうして、主人公らはパサリー鉱山で黄金石を手に入れ、ジャコウの部屋にある、飾り物のライオンの目に黄金石をはめる。
 大工の言葉どおり、ファルコ城は崩れ落ち、ジャコウは飾り物のライオンの下敷きになって命を落とす。
 そんなとき、元斗の伝書鳩が飛んできて、同じ場所にとどまり続ける。いぶかしく思った主人公らが鳩のいる辺りの地面を調べてみると、地下室への通路が見つかる。
 主人公らはその後、ファルコを地下室から救い出し、重要アイテムである「光のマント」を手に入れる。
題名 ファイナルファンタジーⅥ
製作国 日本
発売元 スクウェア
評価
 ★☆☆☆☆

 スーパーファミコン用ソフトウエア(ロールプレイングゲーム)
 千年前に起こった魔大戦によって、世界から魔法が失われる。人々は、鉄、火薬、蒸気機関などの文明の力を使って、世界をよみがえらせる。しかし、ここに、今や伝説となった「魔法」を復活させ、機械との融合を謀る者が現れる。ガストラ帝国の皇帝である。彼は魔法と機械が合わさった力――「魔導」によって、世界を支配しようとしているのだ……。

 ゲーム中、伝書鳩を使って外部と連絡している、モブリズの村が出てくる。村の伝書鳩屋で手紙を出すと、歩くだけでヒットポイントが回復するアイテム「タマのすず」が手に入る。
  題名 初音ミク -Project DIVA-
製作国 日本
発売元 SEGA
評価
 ★☆☆☆☆

 クリプトン・フューチャー・メディアから発売されている音声合成ソフトウエア『キャラクター・ボーカル・シリーズ01 初音ミク』で制作された楽曲を用いたリズムゲーム。プレイステーション・ポータブルで遊ぶことができる。
 動画投稿ウェブサイト「ニコニコ動画」で人気を博した曲『ハト』が収録されているが、ムービーの出来はいまいちである。初音ミクが草原で踊ったり、海辺を歩いたりしているだけで、鳩の姿がほとんど出てこない。もう少し、歌詞の内容に沿った映像作りをしてもらいたかった。
   
題名 初音ミク -Project DIVA- 2nd
製作国 日本
発売元 SEGA
評価
 ★☆☆☆☆

 初音ミク -Project DIVA-』の続編。前作では初音ミクのミクにちなんで三十九曲が収録されていたが、本作では曲数が五十五曲に増えている。
 『初音ミク -Project DIVA- 2nd』には風見レンが作詞・作曲した『ハト』が再録されている。しかし、相も変わらず、『ハト』のいまいちなムービーが流れる。
 動画投稿ウェブサイト「ニコニコ動画」には、『ハト』に絵をつけた動画が有志によってアップされている。私としては、こちらの方をお勧めしたい。プロが作ったものよりも素人がこしらえた動画の方がクオリティーが高いのだ。私がチェックした限りでは、三、四本、いいのがあった。
題名 神さまと恋ゴコロ
製作国 日本
発売元 TAKUYO
評価
 ★★☆☆☆

 プレイステーション・ポータブル専用ソフトウエア(乙女向け恋愛シミュレーションゲーム)
 主人公の水無川愛梨は十六歳のシスター見習い。夢はもちろん、立派なシスターになること。しかし、忙しくも充実した日々を過ごすうちに、シスターとして生きるのか、恋に生きるのか、選択を迫られる……。

 ゲーム中、鳩小屋の伝書鳩の世話をするミニゲームが楽しめる。また、その伝書鳩を用いて、意中の男の子と手紙のやり取りをすることができる。
題名 ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~
製作国 日本
発売元 ガスト
評価
 ★★☆☆☆

 ビデオゲーム『マリーのアトリエ』からはじまる一連のアトリエシリーズの中で、アーランドシリーズに位置する本作『ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術師~』に伝書鳩が登場する。プレイステーション3専用ソフトウエア。
 道中を行く主人公・ロロナが、アーランド王国の騎士・ステルクの手紙を伝書鳩から受け取ったり、ステルクの愛鳩にロロナがクッキーを与えようとしたりするシーンがある。
題名 メルルのアトリエ ~アーランドの錬金術士3~
製作国 日本
発売元 ガスト
評価
 ★★☆☆☆

 ビデオゲーム『マリーのアトリエ』からはじまる一連のアトリエシリーズの中で、アーランドシリーズに位置する本作『メルルのアトリエ ~アーランドの錬金術士3~』に伝書鳩が登場する。プレイステーション3専用ソフトウエア。
 ステルクとアールズ王国のルーフェスが伝書鳩の羽色について論争したり、愛鳩と言葉を交わしているステルクの姿を見たロロナが当惑したりするシーンがある。
題名 インフィニット アンディスカバリー
製作国 日本
発売元 スクウェア・エニックス
評価
 ★★☆☆☆

 Xbox 360専用ソフトウエア。
 深き森の奥にある封印軍(シール)の監獄に、フルート吹きの少年・カペルがとらわれている。カペルは、封印軍に抗する、解放軍の英雄・シグムントと、うり二つの容姿をしていたために、誤って収監されてしまったのだ。
 カペルが捕まってから三日後、解放軍の少女・アーヤが牢獄に現れて、シール・ジェイラー(看守)を打ち倒す。
「シグムント様! 私です、助けに参りました」と、アーヤが言う。しかし、カペルは、シグムントに似ているという事情を知らないので、当惑するばかり……。
 そうこうするうち、騒ぎを聞きつけたのか、別のシール・ジェイラーがやってきて、背後からアーヤに襲いかかる。
 シール・ジェイラーの攻撃によって、壁に打ちつけられるアーヤ。
 カペルは剣を取って、シール・ジェイラーと一戦交える……。

 ゲーム中、伝書鳩が飛んできて、別行動をしている仲間から現状報告(レポート)を受け取れる。レポートには仲間からの指示や連絡事項が記してある。
題名 イースⅣ―ザ・ドーン・オブ・イース―
製作国 日本
発売元 ハドソン
評価
 ★☆☆☆☆

 PCエンジンSUPER CD-ROM2用ソフトウエア。
 ゲーム中、所定の位置で「風のフルート」を吹くと、樹海警備隊の女隊長・カーナが飼っている伝書鳩・ルースが飛んできて、彼女から手紙を受け取れる。
  題名 風へ 翼よ、愛あるところへ…
製作国 日本
発売元 ハート電子産業
評価
 ★★★★☆

 平成四年にPC-9801シリーズ用ソフトウエアとして発売された、鳩レースのゲーム。箱にリアルタイムピジョンスポーツシミュレーションと銘打たれているが、実際にプレイしてみると、たいしたことはない。しかし、鳩レースをゲーム化するという、希有(けう)な試みは評価できる。
 関東地区連盟所属の千姫(女性の鳩飼い!)が私のお気に入り。

題名 レジェンド オブ ベオウルフ
製作国 ロシア
発売元 オーバーランド
評価
 ★☆☆☆☆

 沼地に潜む怪物・グレンデルの襲撃を受けたフローベール王らを救うため、主人公のベオウルフが奮闘するという内容のPCゲーム(思考アドベンチャーゲーム)。Windows 2000/XP/Vista対応。
 ゲームの冒頭、フローベール王らの危急を知らせる手紙を付された伝書鳩がベオウルフのいる小屋に飛んでくる。しかし、伝書鳩は室内に入れず、その背後から猫が迫る。
 本作はまず、この伝書鳩がもたらした手紙をどうやって読むか、というところからスタートする。
題名 フェイブル・オブ・ドワーフ
製作国 不明
発売元 ブンティ ジャパン
評価
 ★☆☆☆☆

 Windows用ソフトウエア。
 資源や資材を集めて施設を建設し、レベルごとに定められたノルマをクリアしていくショップゲーム。

 ドワーフの王・ボブが眠りに就くが、何度も寝返りを打つ。三人の兄弟がどうしているか心配で、なかなか寝つけない。
 と、そんなとき、窓をノックする音がする。
 見れば、三羽の伝書鳩がいて、三人の兄弟それぞれから託された手紙を携行している。
 手紙を読んでみると、商売がうまくいかない三人の兄弟たちが、ボブに助けを求めるものであった。
 ボブは秘書のニラヤムを呼んで、こう言う。
「問題は深刻で一大事だ。私たちには救世主が必要だ…アンティン・ブレッドドックを呼び出そう!」
 しかし、ニラヤムは、こう答える。
「彼は今、北極にペンギンを助けに出かけています。」
「それなら、ジョー・プレッドキンは!」
「殿下…他に誰もいません。」
「誰か探し出すんだ!」
「しかし、警備隊や客室係などがどうやって救世主になれましょう?」
「思い出すんだ!すべての偉業はドワーフによって成し遂げられた。生まれつきの救世主はいない。努力して救世主になるのだ!ねえ、良いこと言ったから書き留めといて。」
 こうして、ボブは、三人の兄弟のために、優秀な人材を派遣しようとするが……。
題名 バトルフィールド1  *コレクターズエディション
製作国 アメリカ
発売元 エレクトロニック・アーツ
評価
 ★★★★★

 Windows、PS4、Xbox One対応のFPS(ファーストパーソン・シューター)ゲーム。「血と泥濘の先に」というキャンペーンに軍用鳩が登場する。
 ドイツ軍に囲まれて、絶体絶命の危機に陥った、イギリス軍の戦車兵が、車内から軍用鳩を放つ。しかも、その後、放たれた軍用鳩の視点にゲーム画面が切り替わり、友軍陣地に通信文を届けるため、プレーヤー自ら鳩を操作する。
 軍用鳩を操れるFPSは、このゲームが世界初であろう。また、軍用鳩が放たれる、この一連のシーンがCGムービーになっている。
 ほかにも、マルチプレイで遊ぶ際には、「ウォー・ピジョン」という、ゲームモードが用意されている。味方と敵が軍用鳩を飛ばし合って、友軍に砲撃要請をおこなえる。
 なお、本作のコレクターズエディションを購入すると、フィギュアやトランプなどのほかに、実物大の通信筒がついてくる。
 造形が安っぽいのがいただけないが、そうはいっても、軍用鳩の通信筒が商品化されようとは思いもかけないことである。
 世界中の軍用鳩ファンがプレーすべき――購入すべき――ゲームである。
題名 エンジェルリング
製作国 日本
発売元 ムーンストーン
評価
 ★☆☆☆☆

 Windows XP/Vista/7対応のアダルトゲーム。
 主人公の遠海 悟(とおみさとる)が、家路に向かって夜道を歩いていると、突然、頭上から女の子の悲鳴が聞こえてくる。そして、何かの影が躍りかかってくる。
 次の瞬間、悟は、影に押しつぶされて、地面にはいつくばる。しかし、起き上がった悟が辺りを見渡しても、人っ子一人、目に入らない。真っ白い羽色をした鳩が地面に倒れているだけである。
 鳩が直撃したところで、人間を地面にたたき伏せるほどの威力になるとは思えない。結局、影が何だったのか悟には分からなかった。
 鳩が弱っているのを見て取った悟は、その鳩を自宅で保護する。その夜は座布団の上に鳩を寝かせて、悟も床に就く。
 翌朝、悟が目を覚ますと、隣に見知らぬ美少女が寝ているから、びっくり。しかも、美少女は素っ裸だった。
題名 未来ラジオと人工鳩
製作国 日本
発売元 ラプラシアン
評価
 ★★☆☆☆

 Windows Vista/7/8/8.1/10対応のアダルトゲーム。
 ときは二〇六一年、千葉県鳴山市(なりやまし)
 空を飛び交う人工鳩(じんこうばと)が妨害電波を発していることによって、人類の通信網は完全にまひしていた(通称・電波喰い)
 今から十五年前のこと、通信インフラを確立するために放たれた人工鳩(じんこうばと)が、突如、暴走し、人類にあだなしたのだ。人工鳩(じんこうばと)は電波を喰いながら、止めどなく増え続け、今では一面の空を覆っている。
 鳴山公空学園(なりやまこうくうがくえん)に通う月見里ソラ(やまなしソラ)は、部品を集めて、一台のラジオを作り上げる。不思議なことに、このラジオは、人工鳩(じんこうばと)の影響を受けずに、放送を受信できた。しかも、それは、未来から届けられたラジオ放送であった。
 ソラは、級友らと力を合わせて、ラジオ放送をはじめる。近い未来に起こる悲劇を防ぐために……。
題名 はーとふる彼氏 ~希望の学園と白い翼~
製作国 日本
制作者 玻都もあ
評価 
★★★☆☆

 コミックマーケット80で頒布された個人制作の同人ゲーム(女性向け恋愛シミュレーションゲーム)。Win/Mac両対応。
 攻略対象が鳩をはじめとする鳥類のみ、という異常な設定が一部で話題を呼び、コミックマーケット80終了後、同人商品を扱っている専門店に本作が納入されると、一日で完売する騒ぎになる。
 残念ながら、本ゲームに伝書鳩は登場しない。
 ぜひとも、次回作は、恋する伝書鳩たちが愛の通信使となって恋文を交換する仕様にしてほしい。本作に続いて、鳩狂いの私は、絶対に飼う、もとい、買うと思う。
題名 はーとふる彼氏 完全版
製作国 日本
制作者 玻都もあ
評価 
★★★☆☆

 前述した同人ゲーム『はーとふる彼氏』の完全版。ヒムネバトの緋紅アンヘルが攻略対象として追加されている。また、一定条件を満たすと、華原涼太視点で進む長編シナリオをプレーできる。
題名 はーとふる彼氏 HolidayStar
製作国 日本
制作者 玻都もあ
評価 
★★★☆☆

 前述した同人ゲーム『はーとふる彼氏』の外伝作。メインとなる中短編シナリオのほか、イベントCGを見られるギャラリーモード、プレーヤーからの質問に答えるラジオモードが収録されている。


音楽



『軍歌 戦時歌謡 作家別作品集 4』
曲名 勇ましき軍鳩
アーティスト名 近衛八郎 松島詩子
発売元 キングレコード
評価
 ★★★☆☆

 軍用鳩の歌「勇ましき軍鳩」が収録されている珍しいCD。現在、廃盤。
 


『森田童子全集Ⅱ/マザー・スカイ』
曲名 伝書鳩
アーティスト名 森田童子
発売元 ワーナー・パイオニア
評価 ★★☆☆☆

 シンガー・ソングライターの森田童子の作品を集めたCD。
 目にしみるぞ 青い空 淋しいぞ 白い雲 ぼくの鳩小屋に 伝書鳩が帰ってこない――との歌詞の『伝書鳩』という曲が収録されている。


『天空の城ラピュタ イメージアルバム 空から降ってきた少女』
曲名 ハトと少年
アーティスト名 久石 譲
発売元 徳間ジャパンコミュニケーションズ
評価 ★☆☆☆☆

 前述したアニメ映画のイメージアルバム(CD)。二曲目に『ハトと少年』が収録されている。


『初音ミク ベスト ~impacts~』
  曲名 ハト
アーティスト名 風見レン
発売元 ソニー・ミュージックダイレクト
評価 ★☆☆☆☆

 ウェブサイト「ニコニコ動画」に投稿されたオリジナル曲『ハト』が収録されているCD。曲のモチーフは伝書鳩ではないが、旧約聖書に登場する、オリーブの葉をくわえた鳩を想起させる歌詞がよい。
   


音楽ビデオ



『初音ミクDVD~impacts~』
  曲名 ハト  *DVD版
アーティスト名 風見レン/ブラザーP
発売元 ソニー・ミュージックダイレクト
評価 ★☆☆☆☆

 風見レンが作詞・作曲した『ハト』に、ブラザーPがアニメーション映像をつけた作品が収録されている音楽ビデオ。
 動画投稿ウェブサイト「ニコニコ動画」には、『ハト』にイラストをつけた、有志のミュージック・クリップがいくつかアップされているが、ブラザーPが制作したものが『ハト』の歌詞に一番沿っている。ノアの箱舟から放たれた鳩がオリーブの葉をくわえて戻ってくるまでの苦難をしっかりと描いている。

   
曲名 瀬戸の花嫁、HEART ~鳩とお嫁さん~
歌手 若林正恭(オードリー)
発売元 キングレコード
評価
 ★★☆☆☆

 日本テレビのアニメ枠「ユルアニ?」で放映された、『ハトのおよめさん』のミュージッククリップを収録しているディスク(CDとDVDの二枚組)
 お笑い芸人「オードリー」の若林正恭(わかばやしまさやす)の音痴丸出しな歌が妙に味わい深い。『ハトのおよめさん』のナンセンスな世界を再現している、といえる。



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